代表のみなさん
ここに国務院の委託を受けて、二〇〇〇年度国民経済・社会発展計画の執行状況と二〇〇一年度国民経済・社会発展計画案を大会に報告し、審議を求めるとともに、全国政治協商会議の委員のみなさんからもご意見を求めたいと思う。
一 二〇〇〇年度の国民経済と社会発展計画の執行状況
過去の一年間は、中国共産党の正しい指導の下に、全国各民族人民は団結奮闘し、国民経済と社会発展において著しい成果を収め、経済全般の運営には良性循環の方向に向う重要な転機が現われ、計画執行状況は良好であった。
国民経済は比較的テンポの速い発展を保ち、成長の質と効果は絶えず向上した。国内総生産(GDP)は八兆九四〇四億元を達成し、八%増となって、伸び幅は前年度より〇・九ポイント上がった。物価の全体的レベルは下落が止まって安定を取りもどし、住民消費者物価は〇・四%上昇した。一定の規模をもった工業企業の利潤は四二六二億元を達成し、同期比八六・二%増となった。そのうち、国有および国有持株企業は二三九二億元の利潤を達成し、前年度の二・四倍となった。工業製品の販売率は九七・七一%で、前年度に比べて〇・四六ポイント伸びた。
経済構造の調整は積極的に推進され、有効供給の能力はさらに増強された。農業構造の調整は新たな一歩を踏み出した。特別用途優良小麦、優良早稲および大豆の栽培面積はかなり大きく拡大した。深刻な干害を被った状況のもとで、食糧の総生産高は四億六二五〇万トンに達した。重要農作物の生産は優位産地へ集中し始めた。肉類、家禽、卵類、牛乳および水産物の生産高は安定した伸びを見せている。ハイテク産業は速いテンポで発展し、新たな成長要素になっている。電気通信機器関連製造業の総生産額は初めて一兆元の大台を突破し、製造業のなかで最大の産業となった。移動通信の携帯電話は一三〇%増で、半導体集積回路は五一・五%増となった。固定通信電話綱と移動通信電話綱の規模はいずれも世界第二位になっている。企業を主体とする技術創造・革新システムの建設はさらに強化され、産・学・研協同による協力項目は一四万件に達した。紡績業種の構造調整の重点は、立ち遅れた生産能力の淘汰・圧縮から工業製品の品質向上・グレードアップへと逐次転換し、これにより一群の企業は競争力を増強した。石炭、冶金、石油、化学工業、機械、建材、製糖などの業種も立ち遅れた生産設備を淘汰し、製品構成調整のテンポを速めるうえで積極的な進展をみせた。
固定資産投資は安定した成長を示し、国債利用プロジェクトの建設は著しい成果をあげた。全社会の固定資産投資は三兆二六一九億元を達成し、前年度比の九・三%増となった。電子工業と科学研究技術サービス業の基本建設に対する投資はそれぞれ四八・九%と一九・二%増え、技術改良への投資は一三・二%増えた。西部地区への投資は一四・四%増で、それぞれ東部と中部地区よりも六・一ポイントと〇・六ポイント多い。
中央財政の国債増発は経済・社会の発展を促進するうえで重要な役割を果たした。ここ三年来、長期建設国債を合わせて三六〇〇億元発行し、その押し上げにより地方、部門、企業の関連資金の投入及び銀行の貸付は計七五〇〇億元に達し、多年来やろうとして実現できなかった次のような一部大事業を力を集中して成し遂げることができた。一つは、インフラ建設の進展が速まったこと。大河川・大湖沼の堤防を一万六〇〇〇余キロ補強し、節水灌漑面積四三三万三四〇〇ヘクタールを新規増加させた。自動車道路を一七万四〇〇〇キロ新規開通し、そのうち、高速道路は一万二三〇キロになった。鉄道の新規敷設は二〇七〇キロである。農村部電力綱の建設と改造工事を基本的に完遂した県(区、市)の数は一〇〇〇にのぼり、高圧・低圧送電線路の新規架設と改造は二〇〇万キロ近くになった。現在建設中または完工した国家食糧備蓄倉庫の容量は三五〇〇余万トンになる。都市部の給水、給熱、ガス供給と汚水処理能力は改善された。二つは、企業の技術進歩と産業のグレードアップを推し進めたこと。三〇〇件余りのハイテク産業化プロジェクトをサポートし、八八〇件のプロジェクトが国債の利子補助による重点技術改良計画に組みこまれた。三つは、生態建設と環境保全を強化したこと。重点地域の生態環境建設の総合対策、天然林資源の保護、天然草地の保護および中・西部地区における傾斜地の耕地を林地、草地に復原させる試行プロジェクトを実行に移した。北京の環境汚染対策プロジェクトを支持し、北京・天津風砂発生源地区の整備に取り組んだ。「三つの河」(淮河、海河、遼河)、「三つの湖」(太湖、巣湖、滇池)流域の水汚染対策プロジェクトを四四件完成させた。こうして重点地域の生態と環境の状況は初歩的に改善されるようになった。四つは、社会事業の発展を促進したこと。教学、実験、科学技術研究などのためのインフラプロジェクトを六九四件建設し、大学の運営条件を改善した。各地区、各関係部門は絶えず国債利用プロジェクトの管理措置を完備させ、重大プロジェクトに対する監察活動を強化した。建設基金が流用され、工事下請けで規定に違反する行為があり、かつ深刻な品質問題が存在しているプロジェクトに対して厳しく取り調べて、処分し、工事の質と資金の安全を確保した。
消費需要は安定した回復をみせ、人民生活は引き続き改善されている。社会消費財小売総額は三兆四一五三億元で、実質一一・四%増となった。住宅、観光等の新たな消費のホット・スポットが徐々に形成されている。個人が商品化住宅の購買に当てる支出は五〇・六%伸び、商品化住宅の総売上高の八四・八%を占めている。春節、「メーデー」、「国慶節」が休日消費の「ゴールデン・ウィーク」になった。通年で国内旅行に出たものは延べ七億四〇〇〇万人に達し、観光収入は三一七六億元で、一二・一%伸びた。都市部住民の一人当たりの可処分所得および農村住民の一人当たりの純所得はそれぞれ六二八〇元と二二五三元に達し、価格要因を差し引くと、年間実質伸び率は六・四%と二・一%であった。都市部一人当たりの居住面積と農村部一人当たりの居住面積はそれぞれ一〇平方メートルと二五平方メートルになる。貧困扶助教育プログラムは進展をみせた。開発型貧困扶助の度合いは一段と強化され、衣食問題がまだ解決されていない農村貧困人口は引き続き減少し、「八・七(七年間で八〇〇〇万人)」貧困扶助の難関突破計画目標は基本的に達成された。
財政収入は大幅に伸びており、金融の運営は安定を保っている。全国の歳入は一兆三三八〇億元で、前年度比一六・九%伸び、歳出は一兆五八七九億元で、二〇・四%増となった。全国の財政収支を差し引くと、歳出は歳入を二四九九億元上回っており、そのうち、中央財政の赤字は二五九八億元で、補正予算で定められた赤字額より二〇〇億元減少しており、地方財政は九九億元の黒字である。引き続き穏健な通貨政策を実施し、信用政策の運用によって貸付の投入方向を導いた。年末、広義のマネー・サプライ(M2)と狭義のマネー・サプライ(M1)はそれぞれ一二・三%と一六・〇%伸び、通年の現金通貨流通量は一五〇〇億元以内に抑えられている。全金融機構の各種の貸付残高は九兆九〇〇〇億元で、年間一兆三〇〇〇億元増えた。個人預金実名制が導入された。年末の国家外貨準備高は一六五六億ドルに達し、一〇九億ドル増えた。
国有企業改革と三年間で苦境脱出をめざす目標は基本的に達成され、その他諸分野の改革も絶えず深化している。国有大・中型中堅企業の現代的企業制度確立作業は積極的な進展を見せた。「債権の株式化」の実施、企業の上場規模の拡大および国有重点大型企業に対する監査役会の派遣は、国有企業の経営メカニズムの転換と経営状況の改善を促進した。一九九七年末に赤字を抱えている国有および国有持株大・中型工業企業は六五九九社にもなるが、二〇〇〇年末には、七〇%以上も減少した。社会保障システムの整備のテンポが加速している。国有企業の一時帰休者の基本生活費および企業の引退・退職者の基本養老年金を期限通り全額支給することを確保する仕事が強められた。基本養老年金給付の社会化の割合は九〇%を超え、失業保険制度は逐次打ち立てられ、基本医療保険制度の実施が始まっている。
価格改革は更に推し進められた。農村部における電力網の改造と電力管理体制の改革を終えた地区は、都市部と農村部との電力網・電気料金同一化を逐次実現している。国内の精製油の価格は国際市場と徐々にリンケージしている。医薬品、医療サービスにおける価格システムの整頓は成果を収めている。交通、車両に関連する費用徴収を二三八項廃止した。電信・電話料金に対する検査を行い、観光、電力、精製油の価格、公安部門による費用徴収、農村部における小・中・高等学校教育の費用徴収などに対して、特別検査を展開した。
食糧・綿花流通体制の改革は新たな進展を遂げた。国有食糧企業における大量の赤字経営の局面を転換させた。中央備蓄食糧垂直管理体制を初歩的に打ち立てた。食糧、綿花の備蓄施設の建設に力を入れる度合いを強め、国は一般競争入札という形を通じて、ストックされた綿花、砂糖を売却し、市場需給と価格水準を効果的に調節した。
西部大開発は相継いで始動し、この戦略的構想が実行に移された。西部開発の総体的計画を研究、策定し、西部大開発を実施する若干の政策・措置が打ち出された。西部地区における交通、エネルギー、水利の建設は積極的に推し進められている。西安=南京、重慶=懐化間の鉄道線路、重慶のライトレール、青海渋北から西寧を経由して蘭州に至る天然ガスパイプライン等の新規施工プロジェクトは順調に進展している。「西部から東部への天然ガスパイプライン」、「西部から東部への送電」等の重要プロジェクトの前期作業は速められ、貴州洪家渡、引子渡、烏江渡の水力発電所、雲南宣威の六〇万キロワット発電所および一群の高圧送電線路の建設が起工した。建設中の大・中型プロジェクトの進度は加速している。耕地を林地・草地に復原させる示範事業は着実に推し進められ、モデルテスト地区における耕地の林地・草地への復原面積は約七五万ヘクタール、造林に適した禿山・荒地の造林緑化は約五二万ヘクタールに及んでいる。天然林資源保護プロジェクトは順調に進んでいる。砂漠化の防除や、水土保持の総合対策などのプロジェクトは着実に展開している。科学技術と教育の分野で西部地区への支持の度合いを強めた。
輸出入貿易は急速に成長し、外資利用は更に質的に向上している。対外貿易はアジア金融危機のもたらした不利な影響から脱し、輸出入は勢よく伸びており、貿易構造はよりいっそう改善された。輸出入総額は四七四三億ドルで、前年度比三一・五%増となった。そのうち、輸出は二七・八%、輸入は三五・八%増えた。機械・電子製品の輸出は一〇五三億ドルで、三六・九%伸び、輸出総額の四二・三%を占めている。ハイテク製品の輸出は五〇%伸び、輸出総額の一四・九%を占めている。国内で欠乏している機械設備、原材料、工業中間製品の輸入はかなり速いテンポで伸びている。
外資利用の局面は好転している。新しく認可された外商投資プロジェクトは前年度比の三二・一%増で、契約ベースの外資利用金額は五一・三%増えた。外資の実質利用は五九〇億ドル、そのうち、外商の直接投資は四〇七億ドルである。一部の大型企業グループは海外の株式市場で上場し、成功を収めた。「海外進出」という開放戦略の実施を積極的に推進し、条件の整った企業の対外投資を誘導し、奨励した。海外で行った資源の共同開発、加工生産プロジェクトは進展を見せ、ハイテクの研究開発プロジェクトは増えてきた。二国間および多国間の経済・貿易関係は重大な進展を遂げ、わが国の世界貿易機関(WTO)への加盟を実現する会談は最終段階を迎えた。
科学技術・教育による国家振興戦略の実施は新たな進展を遂げ、諸般の社会事業は全面的に進歩している。科学技術の発展は一部の分野で重要な突破を遂げた。「風雲二号」気象衛星の打ち上げ成功により、わが国は世界で太陽同期軌道と地球静止軌道の気象衛星を同時に開発・製造し、打ち上げることのできる第三番目の国となった。スーパー・ハイブリッド米の研究は大きな成果を収め、超並列処理型コンピュータ・システム「神威Ⅰ」の主な技術的指標と性能は世界の先進水準に達し、高速広帯域通信網が開通し、世界最初の電磁式バイオ・チップを作り出した。国内で独自に開発・製造した第一台目のヒューマノイドロボットが世に出されたが、これはわが国のロボット技術が世界尖端の隊列に割りこんだことを示している。科学研究機構の管理体制の改革は重要な進展を見た。民間の科学技術企業が急速に生長してきた。国家創造・革新システムの建設は逐次推し進められている。
各レベル、各種の教育は全面的に発展し、資質教育は引き続き推し進められている。九年制義務教育が基本的に普及した地域は全国人口の八五%をカバーし、青・壮年の非識字率は五%以下に減り、「二つの基本」の目標は初歩的に達成された。高等教育管理システムの改革は重大な進展を見せた。一般大学の学生募集人数は二二一万人で、前年度より六一万人増えた。成人大学教育は急速に発展している。「二一一」プロジェクト(二十一世紀に目を向けて、全国で一〇〇の大学や一群の重点学科を優先的に発展させる計画)の第一期建設目標は期限どおり達成した。
文化・芸術や、報道・出版、ラジオ・映画・テレビ、社会科学、計画出産、医療・衛生、スポーツと文物保護などの諸般の事業の発展は加速している。ラジオ・テレビの人口総合カバー率はそれぞれ九二・一%と九三・四%に達した。人口の自然増加率は六・四‰である。医薬・衛生システムの改革には重要な進展が見られた。社会主義精神文明の建設と民主的法秩序の建設は引き続き強化されている。第二七回オリンピック大会において、わが国の代表選手はこれまで同大会に参加して以来の最も優れた成績を上げ、全国人民の愛国心と団結奮闘の精神を奮い起こさせた。
二〇〇〇年度の国民経済と社会発展において獲得した成果は、なまやさしいものではなかった。これは全国人民がともに努力奮闘し、中央の一連の正しい政策を真剣に貫いた結果である。これらの成果はわが国の第九次五ヵ年計画が成功裏に完遂され、現代化建設第二段階の戦略目標がすでに達成され、第三段階の戦略目標の諸措置を実施するうえで確固たる基礎が築かれたことを示している。それと同時に、われわれも経済と社会生活においてなお軽視することのできないいくつかの矛盾と問題が存在していることを冷静に見て取っている。有効需要の正常な成長メカニズムが今なお完全に形成されておらず、経済回復の基盤がまだ固まっていないこと。社会投資がそれほど活発ではなく、集団と私営と個人経済による投資の伸び率はいくらか上昇したものの、社会全体の投資増加に果たす役割はなお十分とは言えず、消費の拡大を制約する要因がまだ若干存在し、農村の消費市場の起動にはなおいっそう力を入れなければならないこと。輸出商品の構成にはまだ不合理な所があり、一部の商品は競争力に欠けていること。農業は自然災害に対する防御能力が弱く、農産物の価格は低迷を続け、農民収入の伸びは鈍く、一部の食糧産地では農民の収入の減少さえみられること。産業構造は完全に合理的であるとは言えず、一般加工業の生産能力過剰にかかわる矛盾は依然としてかなり際立っており、比較的高度の技術含有量を有する新興産業の占める割合がまだ高くないこと。地域経済の発展は余りよくバランスがとれておらず、農村現存の貧困人口をさらに貧困から脱出させるにはまだかなり困難があること。国有企業の経営メカニズムはまだ根本的に転換しておらず、創造・革新力が比較的弱く、一部企業の経営はかなり困難であること。都市部における就業圧力は以前より大きくなり、国有企業ではまだ六〇〇万人余の一時帰休者が再就業を果たしていないこと。一部の地区では養老保険基金の充当が支出に追いつかず、賃金と引退・退職年金を正常に支給するにはまだ少し無理があること。所得分配の不合理による矛盾がより際立ってきていること。一部の地区では偽造品・粗悪品の製造・販売や脱税、税金のごまかし、外貨の詐欺、密輸などの活動がはびこっており、社会の信用が混乱して、財政・経済面の規律違反行為は何度禁じても跡を絶たないこと。少数の国家公務員が職権を濫用して私利をむさぼり、汚職腐敗、贅沢や浪費に走る現象がまだかなり深刻であること。安全生産にかかわる潜在的な災いの要因が多く存在しており、重大なもしくは特に重大な事故によって人民の生命や財産に大きな損失がもたらされたこと。一部の地方では社会治安の状況がよくないこと。これらの問題に対して、各関係部門は非常に重視しており、すでに対策を講じ、これからも引き続き対策を講じて真剣に解決していく。
二 二〇〇一年度経済・社会発展の規制目標と主要任務
二〇〇一年は新しい世紀の第一年目であり、第三段階の戦略目標を目指して、第十次五ヵ年計画を実施する最初の年であり、経済成長が堅調な勢いを保ち、勢いに乗って前進するカギとなる一年でもある。今年の経済活動を立派に完遂することは、国民経済の持続的で、テンポの速い、健全な発展を保ち、第十次五ヵ年計画の順調なスタートを切るうえでかなり重要な意義をもっている。
今年度の経済活動の全般的要請は次のとおりである。鄧小平理論を指針とし、「三つの代表」の要求に従って、中国共産党第十五回大会と十五期五中全会の精神を貫徹、実施し、チャンスを逃さず、発展を速める。内需拡大の方針を堅持し、引き続き積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施し、さまざまなマクロ管理規制の手段を総合的に運用し、経済成長の好ましい情勢をうち固め、発展させる。体制と科学技術の創造・革新に依拠して、情報化によって工業化をリードし、経済構造の戦略的調整を大いに推し進める。農業の基礎としての地位を強化し、農業に対する支援と保護に大いに力を入れ、農民の収入の増加に努める。企業経営メカニズムの転換を速め、企業の管理を強化し、国有企業の改革と苦境脱出の成果をうち固め、拡大する。世界貿易機関(WTO)加盟への諸般の準備活動を立派に行い、対外開放の水準を高め、開放型経済を積極的に発展させる。多ルートを通じて就業機会を創出し、社会保障システムの樹立と整備を急ぎ、人民の生活をいっそう改善させる。改革、発展、安定の関係を正しく処理し、国民経済の持続的で、テンポの速い、健全な発展と社会の全体的な進歩を促進し、第十次五ヵ年計画の順調なスタートの実現に努める。この要請に基づいて、二〇〇一年度国民経済と社会発展の主要な所期目標を次の通りに定める。
――経済成長率は七%とする。
――全社会の固定資産投資の伸び率は一〇%前後とする。
――消費者物価の総体的水準の上昇率を一〜二%とする。
――輸出入総額の伸び率は八%前後とする。
――中央財政赤字は二五九八億元とする。
――通貨発行量は一五〇〇億元以内とする。
――都市部の登録失業率は四%以内に抑える。
――人口の自然増加率は一〇‰以内に抑える。
二〇〇一年度の国民経済と社会発展の主要任務を次のように定める。
(一)内需拡大の戦略的方針を堅持し、国民経済の比較的速い発展の維持に努める。
内需拡大を堅持することは、わが国の経済発展における一つの長期的な戦略方針と基本的立脚点であり、当面の経済生活の中のさまざまな矛盾と問題を解決する重要な措置でもある。経済発展の好ましい勢いを維持するためには、この方針を堅持しなければならない。当面は、引き続き積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実行し、有効需要の増加に力を入れなければならない。
積極的な措置を講じて、全社会の固定資産投資の比較的速い伸びを促す。固定資産投資の重点は次の通りである。建設中の国債利用プロジェクトをしっかりつかみ、農林・水利、交通・通信、都市インフラと環境保全、都市・農村電力網の建設と改造、国家食糧備蓄倉庫の建設を速め、企業の技術改良とハイテクの産業化を助成し、科学技術・教育のインフラ建設を強化し、西部大開発、中・西部地区の発展の加速という戦略的配置を確実に実行する。一群の重要なプロジェクトの着工と建設に取り組む。それには主として次のようなものがある。淮河臨淮崗洪水コントロール・プロジェクト、嫩江ニルジ水利センター、右江百色水利センター、青海=チベット鉄道、西部から東部への天然ガスパイプライン敷設プロジェクト、蘭州から重慶までの石油輸送パイプライン、広西龍灘水力発電所、広州新白雲空港、吉林燃料用アルコール・プロジェクト、海南天然ガス利用化学肥料工場、天津灤河導水路における水源保護プロジェクト、浙江桐柏揚水式発電所、電力網を全国的に連結させる貴州=広東区間、三峡=広東区間、三峡=華東地方区間の三本の五〇〇キロボルト直流送電プロジェクトなどである。北京=福州国道の福建省および江西省域内の区間、北京=珠海国道の河南省域内における新郷=鄭州区間、および北京=河北承徳間の幹線などを含む一群の自動車国道の主幹線とローカル幹線を新規建設する。雲南小湾水力発電所、上海国際海上運送センター、西北と西南部における国境鉄道敷設の前期作業を速める。南方から北方への導水に関する前期リサーチと諸般の準備作業にしっかり取り組み、早期着工に努める。遼寧における東部から西部への導水プロジェクトと山東膠東半島における黄河導水プロジェクトの前期作業を速める。上海宝山製鉄所の三期工事、江蘇南京第二大橋、福建棉花灘水力発電所、湖南江埡水利センター、広東=海南鉄道・海峡フェリー連絡ルート及び四川内江=雲南昆明鉄道を含む一群の重要プロジェクトを今年度中に完工させ、操業・運営に入る。引き続き工事の質と資金管理を立派に行い、プロジェクトに対する監督・管理と検査を強化する。社会投資を制限する不合理な規定を整理し、撤廃して、各種の企業の発展のために公正な競争の環境を作り出し、非国有経済の投資の拡大を奨励し、誘導する。
市場の起動、消費の増大は有効需要の拡大を導くカギとなる一環である。福祉型の消費体制を改革し、消費を奨励する政策措置を完備させる。引き続き電気、住宅、通信と自動車などの面で消費を抑制する規定を整理し、撤廃する。個人信用制度を確立、健全化し、積極的に消費者金融を発展させる。住宅の積立金制度を完備させ、住宅の流通市場の自由化を速め、賃貸住宅市場を育成する。消費分野をいっそう広げ、観光旅行、教育・育成・訓練、コミュニティーサービス、文化・レジャー、スポーツ、健康維持・増強および医療・衛生・保健などの産業の発展を促し、サービス消費を増大させる。消費環境を大いに改善する。引き続き都市・農村における給水、電気、道路、通信などのインフラ建設を強化し、消費拡大を促す良好な環境を作り出す。
(二)農業の基礎としての地位を固め、強化し、あらゆる方法を講じて農民の収入を増やす。
農業と農村のインフラ建設を強化する。長江、黄河など大河川・大湖沼の堤防工事、浚渫工事、水利センター工事の建設テンポを速め、老朽化した危険なダムを補強する。長江流域の囲堤の撤去による洪水の放流、干拓地を湖沼に戻す復原工事、移転住民のための町づくりプロジェクトの完遂を急ぎ、洪水防止貯水地区の建設に取り組む。大型灌漑地区において節水の目的を中心とする関連工事と改造を立派に行い、農村の住民と家畜の飲用水問題の解決を重視する。種子プロジェクト、家畜・家禽と水産の優良品種プロジェクト及び動植物保護プロジェクトの建設に力をいっそう入れる。国家の商品化食糧、良質農産物大型基地および農産物生産地における卸売市場の建設を強化する。全国農村の電力網の改造を基本的に完遂し、都市部と農村部との電力網・電気料金同一化の達成を速め、農村の生産・生活条件を改善する。
農業と農村の経済構造調整を推し進める。各地区は基本農耕地および関連農業施設を確実に保護し、食糧主要生産地においては引き続き食糧生産の優位を発揮させ、食糧生産を安定化し、食糧の生産能力を保護する。農産物市場に関する情報システムをうち建て、農民が市場需要の変化に応じ、品種構成を調整し、優良品種と特別用途品種の生産を拡大するよう誘導する。輸出によって外貨を獲得する農業を発展させ、食品の安全および品質基準システムの確立に拍車をかける。牧畜業、水産養殖業の発展を速め、食糧、畜産品などの農産物の加工・転化を拡大する。条件の整った主力企業が農産物の生産、加工、輸出基地を建設することを重点的に助成し、主力企業が農家との間で農業産業化経営の分業と協力を実施し、互恵と共同発展を図るよう誘導する。積極的かつ確実に小都市を発展させ、郷鎮企業の構造調整と技術進歩を促進する。
多ルートを通して農民の収入を増やす。農村の余剰労働力が多角経営と郷鎮企業へ移動するのを促し、農民出稼ぎ労働の秩序正しい移動を誘導し、より多くの農村労働力をインフラ建設へ移動させる。農村の金融システムを健全化し、農村の金融サービスを改善して、農業と農村経済の発展に対する金融支援を強める。農村における租税・費用改革を速め、確実に農民の負担を軽減する。
まだ残っている貧困人口の衣食問題の解決に努め、再貧困化現象を防止し、減少させる。中・西部における少数民族地区、旧革命根拠地、辺境地区および特別貧困地区に対する貧困扶助に力を入れる。開発式貧困扶助を堅持し、多ルートを通して貧困扶助資金を増やし、貧困地区の基本的生産・生活条件の改善に努力を払う。自然条件が劣悪で、生存に適しない地区では移住による貧困扶助テストを計画的に進める。
(三)積極的財政政策の連続性を保ち、引き続き穏健な通貨政策を実行する。
経済発展の要請から見ると、社会投資の持続的な拡大のメカニズムがまだ形成されていないため、投資の経済成長に対する牽引力を維持し、当面の経済回復の良好な勢いを強固にし、発展させるには、今後も引き続き積極的な財政政策を実施するとともに、必要とする投入規模を保たなければならない。目下物資の供給には余裕があり、社会資金は相対的に潤沢であるため、適当な規模の国債を継続して発行する条件は備わっている。各方面の要因を総合的に考慮した上で、今年度中央財政から商業銀行へ一五〇〇億元の長期建設国債を発行することを提案する。全国財政予算の歳入は一兆四七六〇億元、歳出は一兆七三五八億元とし、中央財政の赤字は二五九八億元となり、地方財政の収支は均衡を保つ。積極的財政政策の効果を発揮させ、政府の投資により社会投資と消費の増大を喚起する。新規増発国債による投資は西部開発の重要プロジェクト向けに充当する一部を除き、残りの部分は建設中の国債利用プロジェクトに集中させ、早期完工を急ぎ効果を発揮させるようにする。増収・支出節約活動をいっそう立派に行い、法により税制を厳しく実行する。
引き続き穏健な通貨政策を実行する。内需拡大、構造調整、消費促進にかかわる諸般の金融・貸付措置を全面的に実行に移し、リスク回避を重んじ、資産の質を向上させた上で、積極的に各方面の資金に対する合理的な需要を満たす。経済発展の需要に応じて、適宜にマネー・サプライを調節する。今年度の広義マネー・サプライ(M2)は一三〜一四%増、狭義マネー・サプライ(M1)は一五〜一六%増、現金通貨流通量は一五〇〇億元以内に抑え、全金融機構の貸付増加総額は一兆三〇〇〇億元と見込んでいる。各種の金融機構に対する監督・管理にいっそう力を入れ、不良貸付の比率を低下させ、収益水準と自己資本比率を引き上げる。引き続き中小金融機構に対する整頓、改革と再編作業をうまく進め、中小金融機構の役割を発揮させる。証券市場に対する審査、監察、管理をいっそう強化し、株式発行の審査・認可制度を整備し、上場会社の質を保証する。引き続き保険市場への監督・管理を強め、保険業の持続的で健全な、秩序正しい発展を促進する。
(四)産業構造の調整と最適化を図り、経済運行の質と効率を絶えず高める。