国民経済と社会発展の第十次五ヵ年計画綱要に関する報告
   ――国務院総理 朱鎔基


代表のみなさん

 今年から、わが国は新世紀最初の五ヵ年計画を実施する。中国共産党第十五期五中全会で採択された『国民経済と社会発展の第十次五ヵ年計画の策定に関する中国共産党中央委員会の建議』は、今後五年間の経済及び社会発展を目ざす奮闘目標、指導方針及び主要任務を提起している。この『建議』の趣旨に基づいて、国務院は各方面の意見に真剣に耳を傾け、『国民経済と社会発展計画の第十次五ヵ年計画綱要(草案)』を策定した。私はここに国務院を代表して、大会に政府活動報告を行い、『綱要(草案)』とともに審議を求め、全国政治協商会議の委員のみなさんからもご意見を求めたいと思う。

一 「第九次五ヵ年計画」期の国民経済と社会発展の回顧

過去の五年は、全国各民族人民が中国共産党の指導の下、団結奮闘し、開拓に取り組んで新生面を創出し、各方面ともに重要な成果を勝ち取った。

 国民経済は持続的でテンポの速い、健全な発展を遂げ、総合国力はよりいっそう増強された。国内総生産(GDP)は二〇〇〇年に八兆九四〇四億元に達し、平均して年間八・三%伸びた。一人当りの国民総生産を一九八〇年の四倍増にするという任務はすでに繰上げて超過達成した。国民経済の持続的な成長と効率の改善を基礎に、二〇〇〇年度の歳入は一兆三三八〇億元に達し、平均して年間一六・五%伸びた。主要工業製品・農業生産物の生産高は世界の前列に位置し、商品が不足する状況は一応終息した。産業構造の調整には積極的な進捗が見られた。食糧など主要農産物の生産能力は目立って向上し、農産物の供給は長期不足の状況から一応総量としてバランスがとれ、また豊作の年には余剰が出るという歴史的転換を実現した。立ち遅れた工業生産能力の淘汰、過剰な工業生産能力の圧縮で成果を収め、重点企業の技術改良が絶えず推進された。情報産業などのハイテク産業は急テンポで成長した。インフラ建設には顕著な成果が見られ、エネルギー、交通、通信及び原材料の「ボトルネック」の制約が緩和された。

 経済体制改革が全面的に推し進められ、社会主義市場経済体制が初歩的に打ち立てられた。国有大・中型企業が現代企業制度を打ち立てる改革は重要な進展を勝ち取った。大多数の国の重点企業は公司(株式会社)制改革を行い、そのうち、かなりの企業が国内か海外で上場している。企業の赤字縮小・黒字増大の成果は顕著で、二〇〇〇年度、国有及び国有持株工業企業は二三九二億元の利潤を達成し、これは一九九七年の二・九倍である。国有大・中型企業の改革及び三年間で苦境から脱出する目標は基本的に達成された。公有制経済がいっそう発展をとげるとともに、私営、個人経営の経済はかなり急テンポな発展を遂げた。市場システムの構築は引き続き推進され、資本、技術及び労働力などの要素市場が急速な発展をとげ、市場が資源配置の中で果たす基礎的役割は明らかに強化された。財政・税務体制が引き続き整備された。金融改革のテンポが速められた。都市部住宅制度、社会保障制度及び政府機構等の面の改革には重要な進展が見られ、国のマクロ・コントロールシステムはいっそう整備された。

 対外開放はたえずレベルアップされ、全方位対外開放の枠組みが一応形成された。対外経済貿易体制の改革は穏当に推し進められ、輸出型経済は急速に発展している。二〇〇〇年の輸出入総額は四七四三億ドルに達し、そのうち、輸出額は二四九二億ドルで、それぞれ一九九五年比、六九%と六七%伸びた。輸出品構成が改善され、機械電子製品及びハイテク製品の占めるウェートが向上した。対外開放の分野が逐次拡大され、投資環境が引き続き改善された。外資利用の規模は大きくなり、その質も向上した。五年間に、実際に利用された外資は合計二八九四億ドル、「第八次五ヵ年計画」期より、七九・六%伸びた。国の外貨保有高は二〇〇〇年末には一六五六億ドルに達し、一九九五年末より九二〇億ドル増えた。

 人民の生活は引き続き改善され、全体としてまずまずのレベルに達した。農村住民一人当りの純収入及び都市部住民の一人当りの可処分所得は二〇〇〇年に、それぞれ二二五三元と六二八〇元に達し、平均して年間実質伸び率は四・七%と五・七%となった。市場には商品が豊富に出回り、住民の消費水準は絶えず向上し、社会消費財の小売総額は平均して年間一〇・六%伸びた。都市部住民の住宅、電信・電話及び電気などの生活諸条件はかなり大きく改善された。住民の預貯金残高はこの五年で二倍以上に伸び、株券、債券等その他の金融資産も急速に増えた。農村の貧困人口は大幅に減少し、「八・七」貧困扶助・難関突破(七年間に八〇〇〇万人を貧困状態から脱却させる)を目指す目標は基本的に達成された。

 科学技術、教育の発展は加速され、社会事業は全面的に進歩している。「八六三(ハイテク技術研究・発展計画綱要)」計画は順調に実施された。航空・宇宙飛行、情報、新素材及びバイオテクノロジーなどのハイテク分野で多くの重要な成果をあげた。基礎研究と応用研究には新たな進展が見られた。部門に所属する応用型研究院・研究所の企業化をはかる改革が基本的に完成し、その他の科学研究院・研究所の体制改革も全面的に繰り広げられた。科学技術研究成果の市場化、産業化へのプロセスが加速された。各級、各種の教育は全面的な発展を遂げている。九年制義務教育を基本的に普及させ、青壮年の非識字者を基本的に一掃する目標は初歩的に達成された。高等教育管理体制の改革は大きな進展を見せた。大学の学生募集の拡大は大衆から広く歓迎されている。人口と計画出産の仕事は新たな成果を収め、生態建設と環境保全には明らかによりいっそうの努力が払われた。文化、医療・衛生、スポーツなど諸般の社会事業は引き続き発展を遂げた。廉潔政治の建設と反腐敗闘争は絶えず成果をあげている。社会治安の総合対策はよりいっそう強化された。社会主義精神文明の建設と民主・法制の建設に新たな進展が見られた。国防と軍隊の建設では新たな一歩が踏み出された。

 「第九次五ヵ年計画」期に、わが国政府は香港、澳門に対する主権の行使を回復し、祖国の平和統一の大事業は歴史的進展を勝ち取った。香港、澳門が祖国に復帰して以来、「一国二制度」の方針と基本法が全面的に貫かれている。特別行政区政府の活動にはめざましい成果が見られ、香港特別行政区、澳門特別行政区の社会は安定し、経済は発展している。

 「第九次五ヵ年計画」の完成につれ、われわれは現代化建設の第二段階の戦略目標を達成し、「第十次五ヵ年計画」の実施を目指して、第三段階の戦略目標へと踏み出す良好な基礎をうち固めた。これはわが国の社会主義建設事業が勝ち取った偉大な成果であり、中華民族の発展史における新たな一里塚といえる。

 「第九次五ヵ年計画」期に収めた経済と社会発展の大きな成果は並々ならぬ困難を克服して勝ち取ったもので、並大抵のことではなかった。われわれは、国際的な突発事件の挑戦に成功裏に対処し、アジア金融危機の衝撃を効果的に防ぎ止め、「第九次五ヵ年計画」期前半のインフレの影響を克服したのみでなく、中・後期のデフレ傾向をも抑え、深刻な洪水・旱魃の災害にもうち勝った。こうした成果を勝ち取ったことは、江沢民同志を中核とする党中央が数多くの矛盾と困難が入り組んだ局面に対し、戦略決定を練り上げ、一連の正しい政策決定や処置を適時行い、全国人民がそのために団結奮闘した賜物である。私はここに国務院を代表し、各分野と職場で勤勉に働き、貢献した全国各民族人民に対して、崇高な敬意を表すものである。祖国の建設と統一に関心と支持を寄せる香港特別行政区、澳門特別行政区の同胞及び台湾の同胞並びに海外の華僑同胞に対して、心からの感謝の意を表すものである。

 「第九次五ヵ年計画」期の実践は、われわれが社会主義市場経済を発展する要請に基づいてマクロ経済の管理・規制を強化し、改善する経験をより豊かなものにした。

第一、発展という手段により前進途上の問題を解決することを堅持した。発展は絶対的な道理である。さまざまな社会矛盾に直面し、われわれは終始経済建設というこの中心をしっかりつかみ、効果のある措置をとり、国民経済の持続的でテンポの速い、健全な発展を促進して、他の矛盾を上手に処理するための基礎を築き上げた。これと同時に、「両手でつかみ、両手ともに力を入れる」方針を堅持し、絶えず社会主義精神文明の建設と民主・法制の建設を強化し、経済建設に力を集中させるために良好な政治・社会的環境を作り上げ、さらにそのために強大な精神的原動力を提供した。

 第二、経済情勢の変化に応じて、適時にマクロ規制政策の方向性と力の入れ具合を調整した。インフレの対策においては、経済の持続的な成長の維持に気を配り、「ソフトランディング(軟着陸)」を成功裏に実現した。デフレ傾向の抑制にあたっては、内需拡大の方針を堅持し、積極的な財政政策を躊躇なく実施し、さらに実践の中で諸般の政策措置をたえず整備した。国債を増発し投資を拡大する一方で、都市部中・低所得層住民の収入を適度に増やし、消費の増大を奨励し、二つの面から経済成長を牽引した。輸出における税還付率の引き上げおよび密輸に対する厳しい取り締りなどの措置をとり、あらゆる方法を講じて、輸出を拡大し、国際収支のバランスをはかり、人民元の貨幣価値を安定させた。穏健な通貨政策を実行して、利子率など多種多様な手段の運用によって経済成長を支えるとともに、マネー・サプライを調節し、融資投入の方向づけをおこない、金融リスクを防ぎ止め、解消することに気を配った。

 第三、内需拡大と経済構造の調整を密接に結びつけたこと。通常の加工工業の生産能力が普遍的に過剰に陥っている現実状況に基づき、国債の投資の重点をインフラ建設の面に置くとともに、農業と科学技術、教育への投入を増やし、企業の技術改良を下支えした。生産財と生産能力が相対的に余剰になっている時期を利用して、長年取り組もうとしてもできなかったいくつかの大事業をやり遂げ、当面の経済成長を牽引したばかりか、経済発展の持続力をも強化した。

 第四、改革、発展、安定の関係を正しく処理したこと。複雑で困難な状況の下で、改革は停滞しなかったばかりか、困難を押して、積極的に整然と推し進められ、経済発展を力強く促した。これと同時に、終始改革実施への取り組みを社会の受容力に適応させることに気を配った。構造調整と改革の深化が深層の利益諸関係とぶつかることを免れ得ない場合、これらのことを高度に重視し、さまざまな政策措置を講じて、広範な大衆の基本的利益を守った。再就職プロジェクトを大いに実施し、国有企業の一時帰休者の基本生活費と定年で引退あるいは退職した職員・労働者の基本養老年金を全額遅滞なく支給することを確保して、農民の余剰食糧の保護価格による無制限な買付を堅持し、社会の安定と経済の持続的成長を全体的に維持した。

 こうした成果を十分に肯定するとともに、経済と社会生活にはなお少なからぬ問題が存在していることも冷静に見て取るべきである。それは主として次のようなものである。産業構造が不合理で、地域間の経済発展のバランスがとれていないこと。国民経済の全般的体質が劣り、国際競争力が強くないこと。社会主義市場経済体制がなお完備しておらず、生産力の発展を妨げる体制的要因が相変わらず際立っていること。科学技術、教育がかなり立ち遅れ、科学技術の革新・創造力がかなり弱いこと。水、石油など重要資源が不足しており、一部の地域では生態環境が悪化していること。就業の圧力が強まり、農民と都市部における一部住民の収入が伸び悩み、なおかつ収入格差がさらに大きくなっていること。一部の分野では市場経済の秩序がかなり混乱し、安全に関わる重大な事故がときどき発生していること。汚職腐敗、贅沢、浪費の現象と形式主義、官僚主義の作風がまだかなりひどいこと。一部の地方の社会治安状況がよくないこと、などである。これらの問題が生起した原因はかなり複雑で、われわれの仕事のうえでの欠点と誤りにかかわっていることも少なくない。われわれはそれを高度に重視し、さらに施策を講じて、その解決に努めなければならない。

 二 「第十次五ヵ年計画」期の奮闘目標と指導方針

 新世紀初めの内外の情勢を展望して、これからの五年から十年までの期間は、わが国の経済と社会の発展にとってきわめて重要な時期であるといえる。世界では新しい科学技術革命が迅速に発展し、経済のグローバル化の勢いが強まり、多くの国は積極的に産業構造の調整を推し進め、周辺諸国が発展を加速させている。これはわれわれにとって厳しい挑戦であるとともに、それに追いつき、飛躍的な発展を遂げるための歴史的チャンスでもある。国内においては、われわれは経済構造調整のかんじんな時期にあり、改革は難関突破の段階にあり、世界貿易機関(WTO)の加盟にあたっても若干の新たな問題にぶつかるであろう。各方面の任務が非常に繁雑で重く、多くの深層の矛盾の解決が必要とされている。こうした情勢はわれわれに、チャンスをとらえて発展を速めることを求めている。それと同時に、われわれには数多くの有利な条件が備わっており、かなり長期間において国民経済を比較的速いテンポで発展させることができる。

 「第十次五ヵ年計画」期における情勢と任務に基づき、『綱要』では今後五年間の経済と社会発展の主要目標が打ち出された。それは次のようなものである。国民経済は比較的速いテンポの発展を保ち、経済構造の戦略的調整は明らかな効果を上げ、経済成長の質と効率を著しく向上させ、二〇一〇年までに国内総生産(GDP)を二〇〇〇年の二倍増にするために強固な基礎を築き上げる。国有企業が現代企業制度を確立するうえで大きな進捗を勝ち取り、社会保障制度を比較的に健全化させ、社会主義市場経済体制が逐次整備し、対外開放と国際協力がさらに展開する。就業のルートをさらに広く開拓し、都市農村住民の収入を持続的に増やし、物質的、文化的生活をかなり大きく改善し、生態建設と環境保全が強化されるようにする。科学技術・教育の発展を速め、国民の資質をいっそう向上させ、精神文明建設と民主・法制建設の著しい進展を勝ち取る。

 「第十次五ヵ年計画」の『綱要』には次のような重要な指導方針が具現されている。

 発展をメーンテーマとすることを堅持する。発展の速度と効率との統一を強調し、効率向上の前提のもとで比較的速い発展を実現する。市場と効率のある速度こそ、真の発展であり、はじめて絶対的な道理にかなうものである。諸方面の要素を総合的に考慮した上で、「第十次五ヵ年計画」期における年平均経済成長率の所期目標を七%前後と定めた。この成長率は「第九次五ヵ年計画」のもとで実質達成した伸び率よりやや低いが、とはいえ、尚かなり速いものであろう。効率の向上を踏まえたうえで、この目標を達成するには、並々ならぬ努力を払わなければならない。また、国外、国内いずれも一部の不確定要因が存在するため、計画における所期目標は余裕をもたせなければならない。このようにすれば、各方面の主要な力を構造調整と効率の向上に傾けるよう導き、経済の過熱および低レベルの重複建設を防ぐことに役立つのである。

 構造調整を主線とすることを堅持する。我が国の経済は今や調整がなければ発展できない時期に来ている。従来の構造や粗放型成長パターンで経済を発展させていくなら、製品に市場がなくなるばかりか、資源や環境もこれを受容できなくなる。必ず発展の中で構造を調整し、構造調整の中で比較的速い発展を維持しなければならない。今後五年間、産業構造、地域間経済構造と都市農村構造の調整に力を入れ、特に産業構造の調整をカギとしなければならない。農業の基礎としての地位をうち固め、強化し、工業の再編、技術改造と構造の最適化、グレードアップを速め、サービス業を大いに発展させ、国民経済と社会の情報化を速め、引き続きインフラ建設を強化する。

 改革開放と科学・技術の進歩を原動力とすること。経済発展や構造調整は、いずれも体制の革新と科学・技術の創造・革新によって推し進めなければならない。今後五年間、確固としてゆるぎなく改革を推進し、開放を拡大し、生産力の発展を妨げる体制上の障害を突き破って、経済と社会の発展のために大きな原動力を作り出す。科学技術、教育の発展を際立った位置に据え、科学技術・教育による祖国振興の戦略をさらに実施し、科学技術を振興させ、人材を育成し、科学技術、教育と経済の緊密な結びつきを促さなければならない。

 人民の生活水準の向上を根本的な出発点とすることを堅持する。都市農村人民の生活を絶えず改善することは、われわれが経済を発展させる根本的な目的であり、内需を拡大し、経済の持続的な成長を促すための差し迫った必要でもある。引き続き人民の生活水準の向上を重要な位置に置き、就業ルートを拡大し、住民の収入を増やし、収入の分配関係を合理的に調整し、社会保障システムを健全化させ、人民大衆がさらにゆとりがあるようになり、まずまずのレベルの生活へと進むことを保証しなければならない。

 経済発展と社会発展を結び付けることを堅持する。社会主義精神文明の建設と民主・法制の建設を大いに強化し、改革、発展、安定の関係を上手に処理し、諸般の社会事業の発展を促進し、社会の安定を確保する。人口、資源及び生態環境の問題を高度に重視し、真剣に解決し、持続可能な発展戦略を一歩進んで実施し、経済と社会のバランスのとれた発展を促進する。

 「第十次五ヵ年計画」の『綱要』は戦略的、マクロ的、政策的性格を強調し、現物指標を減らし、構造の変動を反映した所期指標を増やした。解決を必要とする主要な問題と重点的に発展させる分野をめぐって、努力目標とそれに相応する政策や措置を提出する。計画の実施は市場メカニズムの役割を十分に発揮させることを強調し、政府のマクロ規制は経済の槓杆としての役割、経済政策や法律手段をさらに多く運用しなければならない。計画の策定方法においては、社会諸方面が参与する度合の向上をはかり、計画の策定過程を民主を発揚し、大衆の英知を集めて、より大きな成果をあげる過程、各関係方面が共通認識に達する過程とすることに努める。

三 農業の基礎としての地位を強化し、農民の収入の増加のために努力する

 農業、農村及び農民の問題は改革開放と現代化建設の全局に関わる重要な問題である。「第十次五ヵ年計画」期に、農村における党の基本政策を全面的に貫徹し、農業の基礎としての地位を強化し、農民の収入を増やす。これを経済活動のもっとも重要な任務として、下記のいくつかの仕事にしっかり取り組まなければならない。

 農業と農村経済構造の調整を加速すること。これは農業の経済効率を向上させ、農民の収入を増やす根本的な方途である。耕地を確実に保護し、食糧生産能力の安定化をはかると同時に、品種の優良化、品質と効率の向上をめざして、栽培業の構造を積極的に調整する。牧畜業、林業、水産業の発展を速める。各地方の農業の比較優位を生かし、農業生産の地域的配置を合理的に調整し、特色のある農業を発展させ、規模化、専門化された生産の枠組構成を形成し、商品化率を高める。農業の産業化経営に大いに力を入れ、先頭を行く企業を助成し、「公司と農家の提携」、「注文書に基づいて生産する農業」などの多様な形態を普及し、農産物の加工、貯蔵・運搬、鮮度保持などの産業を発展させ、精加工の付加価値率を高める。郷鎮企業の構造調整、技術進歩と体制革新を導く。町・小都市を発展させ、都市化を積極的かつ穏当に推進し、農民の就業機会と増収のルートを拡大する。科学・教育による農業の振興を大いに促し、バイオ技術、情報技術などのハイテクの研究および開発、応用を強化し、優良品種と実用に適した先進技術を普及し、農業科学技術産業の発展を積極的に助成する。農産物のマーケット情報、食品の安全と品質基準及び検査・測定体系を確立する。構造の調整は地方の状況に即し、市場の法則に従い、農民の生産経営自主権を擁護しなければならず、強制命令のやり方はとらない。

 農村の諸般の改革を積極的に推し進める。土地請負関係を長期間にわたって安定させることを基盤として、条件の備わった地域が積極的に土地経営権譲渡制度の改革を模索することを奨励する。食糧の生産と流通の新たな状況に即して、引き続き食糧流通体制の改革を深化する。中央の食糧備蓄規模を適当に拡大するとともに、食糧の主要販売地では食糧流通の市場化の進捗を速め、食糧の主要生産地区と長期的な安定した、買付・販売関係の確立及び中央食糧備蓄の入替えと調節を通して、食糧の需要を保証する。食糧の主要生産地区は引き続き「農民の余剰食糧を保護価格で無制限に買い上げ、国有食糧買付・販売企業の順ザヤ価格での販売と買上げ資金の一本化政策及び国有食糧買付・販売企業の改革」を堅持し、また農民の余剰食糧の保護価格による無制限買付を堅持し、中央財政は引き続き資金の支援を与えることによって、その食糧生産の優位を十分に発揮する。こうすれば、主要生産区に販売市場を明け渡し、食糧価格を合理的回復を促すのみならず、主要販売区の農業構造の調整、農民の収入の全面的増加を促進するにもプラスになる。基本農地を立派に保護しなければならず、決して耕地を非農用地に無断変更することは許さない。これは超えてはならない「警戒ライン」である。農村における租税・費用徴収制度の改革を推し進め、現行の農業税と農業特産物税の税率を適当に引き上げるとともに、郷による統一調達、村への留保と農民に課されるあらゆる行政的性格の費用徴収を取り消す。これは農民の合法的権益を保護し、農民の負担を減軽する根本的な解決策である。安徽省のテストケースの経験を総括した上で、改革のテンポを速めなければならない。租税・費用徴収の改革と結び付けて、郷鎮機構を簡素化し、人員を削減し、補助手当てを受ける村・グループ幹部の定員数を減らす。条件が整った地方では郷鎮を適度に統廃合する。農村における金融改革を引き続き深化させ、農村の経済発展の要請に適応した農村金融システムを積極的に模索しなければならない。現地の実状に合わせ、農村信用組合の管理体制の改革を急ぐ。ポイントは、財産権関係を明確にし、コーポレート・カバナンス構造を健全化し、リスクを防ぎ止め、緩和、解消する責任をとるようにしなければならないということにある。農村信用組合は農業、農村、農民のために奉仕する方向を堅持し、経営管理を強化し、農村金融における主力軍と農民を繋ぐ金融としての役割を十分に発揮させる。農業銀行及びその他の金融機構は農業や農村経済に対するサポートを強化しなければならない。農村の供給・販売協同組合の改革を深める。

 農業と農村のインフラ建設を強化する。さらに投資を増やして、大河川・湖沼の治水を早急に進め、主要河川をコントロールする性格のプロジェクトの建設を急ぎ、崩壊の危険のある老朽化したダムの補強作業を強化し、洪水に対する調節・貯水能力を高める。大型灌漑区域における節水プロジェクトの改造に力を入れ、大衆を動員した農地・水利施設の建設を積極的に繰り広げ、水土保持に力を入れる。国の商品化食糧や良質農産物の基地の建設を強化し、農業の総合開発を立派に行う。農村の電力網、通信、ラジオ・テレビ、道路、給水などの施設の建設を引き続き強化し、農村における生産、生活及び市場の条件を確実に改善する。

 引き続き農村における貧困扶助活動を立派に行う。「八・七」貧困扶助・難関突破の任務は一応完成をみたが、根本から貧困地区の様相を一新することは、依然として長期的な困難を伴う任務である。中・西部における少数民族地区、かつての革命根拠地、辺境地区と特別貧困地区に対する貧困扶助活動を重点的に、立派に行わなければならない。開発型貧困扶助を引き続き堅持し、様々なルートを通して貧困扶助の資金投入を増やし、公共事業引き受けによる救済の規模を拡大し、貧困地区がインフラ建設の強化を図るのをサポートする。

四 産業構造の最適化とグレードアップを大いに推進する

 産業構造の調整とグレードアップは、経済構造の戦略的調整の重点である。それは次のいくつかの面にとくに力を入れなければならない。

 ハイテクや実用に適した先進技術を導入して技術改良を行うことにより在来産業のグレードアップを目指す。在来産業の再編と改造を重要な位置におき、市場志向によって、企業を主体とし、技術進歩をテコとして、次のいくつかの事業の推進にしっかり取り組まなければならない。一つは、品種の増加、品質改善、省エネルギーと消耗の減少、汚染防除、生産性向上を軸に、エネルギー、冶金、化学工業、軽工業・紡績業、機械、自動車、建材および建設などの業種において、一群の重点企業の技術改良をサポートし、製造技術や設備のレベルを確実に高めること。二つには、自主創造革新と技術の導入により、構造のグレードアップの推進に役立つ共通性のある技術や、カギとなる技術、関連技術の開発を加速すること。装置製造業の振興をはかり、至急必要とされる高能率の先進的な大型プラントを開発、製造する。三つには、株式上場、吸収合併、結合、再編などの形態を通じて、主な業種で独自の知的所有権を有し、本業が明確で、強力なコアコンピタンスを持つ若干の大会社と企業グループを形成し、それを構造調整とグレードアップを促進するための骨幹やよりどころとすること。四つには、旧工業基地の改造を積極的にサポートし、厚い基盤がある、人材が多く集まる優位性を存分に生かして、産業水準の向上に努める。それと同時に経済、法律および必要な行政手段を総合的に用い、製品の品質が悪く、資源を浪費し、汚染がひどく、安全作業の条件が備わっていない工場・鉱山をひきつづき法に基づいて閉鎖し、立ち遅れたものを淘汰し、過剰な生産能力を圧縮するとともに、それを移転して再建することを厳禁する。長期間赤字を抱えて債務超過に陥って黒字転換の見込みのない企業および資源の枯渇した鉱山は破産、閉鎖を実施しなければならない。企業の市場からの退出ルートを積極的につくり出し、逐次規範化させる。