火樹華政協委員 新疆の高等教育と人材育成について


李嵐清国務院副総理は第9期全国政治協商会議第10回常務委員会で行った「科学、現実重視、革新の精神で西部大開発を推し進めよう」という報告の中で次のように指摘した。「西部地区が大開発を通じて大きな発展を実現できるかどうか、そのカギは人材にある。人材の要素の一つは導入、もう一つは育成だが、西部地区の実際的な必要性から見ると、導入は早急に必要な人材の問題を解決する近道で、育成は西部大開発にとって長期的に必要な人材を満たす根本的な道筋であり、この両方ともに力を入れなければならない」。この指摘の精神を受けて、西部地区に必要な多くの人材を育成するには、教育の発展に力を入れなければならないということを痛感している。教育レベルの相対的な立ち遅れは、西部地区の経済発展を制約している重大な要因である。新疆の高等教育の発展と人材育成は相対的に立ち遅れ、新疆が大きく発展していくプロセスに直接的な影響をもたらしており、この問題を研究、解決する必要性と緊急性がますます明らかになってきている。

一、新疆の高等教育レベルは、以前と比べればいくぶんか向上しているが、西部大開発の要求レベルにはまだほど遠く、次のような問題が存在している。

(一)教育に対する資金投入が不十分である。現在、新疆の教育に対する資金投入は、財政収入の増加速度を上回って教育資金への投入を行う必要があるという中央政府の要求には、一定の開きがある。新疆の各級の財政は程度の差こそあれ不足していて、教育事業に対する投入を深刻に制約しており、とりわけ大学に対する投入不足が比較的大きく、大学は長期的な“貧血”状態にあり、発展速度が緩慢である。新疆の各大学は実験用設備が不足し、実験経費と実習経費の不足は深刻である。特に注意すべきなのは、新疆の教育経費支出の中で個人に用いる割合が大きく、教育経費の増加分が主に教職員の賃金増加に使われているのに対し、公的経費は長年低水準が続いており、教育条件が改善されていないことである。

(二)教育投資の利用率が低い。現在、新疆の大学、高・中等専門学校には、校舎が分散している、学校の規模が小さい、専攻学科が重複して設置され、学科の構成が不合理である、専攻課程の一部の設置が市場の求める人材と乖離している、教育効果が上がっていない、限りある教育投資の利用率が低い、などの問題があまねく存在している。大学、高・中等学校の配置調整は一応進められているが、地区的配置という管理体制から脱出していないため、調整の進み具合は緩慢で、新疆の高等教育の発展を制約している。

(三)ハイレベルな人材の育成の立ち遅れが深刻である。新疆の大学院生の育成状況は、新疆を大きく発展させるという要求を満たすにはほど遠いものである。それは主に、学位を授与できる学科が少ない、募集規模が小さい、緊急に必要な学科が少ない、合理的な学科構成と強みのある学科が形づくられていないなどの点に現われている。新疆全体の大学が持つ博士、修士の学位授与権は、内地の重点大学一校にすらかなわないものである。大学院生の在学生数は800人に満たず、とても新疆の経済、社会および教育・文化事業の需要を満足させることはできない。

二、新疆の大学教師陣は、西部大開発に必要な人材育成の要請に遠く及ばない。

(一)若手教師の職業意識が不安定で、その流出状況が深刻である。大学教師は主に内地、少人数は外国に流れてゆき、その中には中堅教師や高学歴、高資格をもつ者が多く含まれており、大学から研修費や各種の手当てを受けている教師の一部が、博士号、修士号の学位あるいは上級資格を取得したあと流出している。

(二)教師陣の世代に断層がある。学科をリードすべき中・青年教師の占める割合が小さく、学校の顔となるような教師に欠け、教授の肩書きをもつ教師の中には56歳以上の者の割合が多く、各大学の重点学科建設および主要学科の先頭に立つ者の中でも50歳以上の教師が多い。

(三)教師陣の学歴の向上がいまなお緩慢である。教師全体における修士の割合が13%、博士は1.32%しかいなく、一部の大学は当期の本科・専科卒業生の中から教員を募るしかない状況である。これは教育部が提出した「2005年までに大学院卒の教師の割合を、教学・科学研究を中心とする大学では80%以上、教学を中心とする本科大学では60%以上、職業技術学校・高等専門学校では30%以上に高める」という要求とは大きな隔たりがある。

西部大開発に必要な人材の育成は、一方では中部と東部地区からの積極的な支持に頼る必要があり、もう一方では新疆の既存の教育資源に立脚し、より多く、より上手に新疆の大発展に必要な多くの人材を育成する必要がある。これに関して、私は次のような認識と提案を示すものである。

1、 人材を引き止め、人材を育むため、中央政府が「高等教育人材育成基金」を設立することを提案する。その経費は主に次の三点に用いられる。

(1) 業績尊重プログラム 新疆の大学に大きく貢献した専門家、博士指導教官のために、より良い勤務環境と条件をつくり出す。

(2)“西部の光”人材育成プログラム 同プログラムは中国共産党中央組織部と中国科学院が合同で実施する、西部の若手リーダー教師を対象とする人材育成プログラムで、中国科学院新疆分院のほか、新疆の一部重点大学の若手中堅教師を同プログラムに吸収し、計画的、重点的に彼らを育成し、これを学術・事業分野における科学技術のリーダーに仕立て上げ、彼らが科学技術研究を進めるために効果的な資金保障を提供する。

(3)陽光プログラム 大学に赴任する少数民族の若手中堅教師を国内の一流大学、科学研究所に出し、2〜3ヵ月の強化訓練を受けさせて、ハイレベルの科学教育人材に鍛え上げる。基金は、国の支援、社会援助などさまざまなルートを通じて調達する。

2、国による教育宝くじの発行を提案する。教育宝くじは社会福祉的な事業で、教育資金不足を解決する有効な方法であり、国が統一的に発行するが、全国的な統一発行の条件が熟していなければ、先ず新疆で試行する。現在、新疆で発行されている体育宝くじと福祉宝くじはすでに相当な収益をあげていて、貴重な経験を積み重ねており、依拠すべき法があり、適正に組織しさえすれば、教育宝くじの発行は可能である。教育宝くじは貧困救済という性格を具えており、収益金は主として貧困地区、少数民族地区の農牧民の生徒に対する学資補助、農牧区の小中学校の校長と教師に対する継続教育および大学のハイレベルの人材の育成などに用いられる。

3、高等教育機関の教師の募集は公開制を実施する。これによって、自大学の卒業生を育成してその大学の教授にするという弊害を避けられる一方、もう一方では教師陣の脆弱さと不足という問題を解決することもできる。

「チャイナネット」2001/04/06