朱鎔基総理が記者会見
 

朱鎔基総理が記者会見

 3月15日午前11時、第九期全国人民代表大会第五回会議は北京の人民大会堂で記者会見を催し、朱鎔基国務院総理が経済成長の目標、積極的な財政政策、貧富の格差、農民の収入、香港の経済、台湾問題、中日関係、中ロ経済貿易関係、今期政府の活動、政治改革などについて中外の記者の質問に次のように答えた。

 

経済成長の目標について

 記者: 世界経済が低迷している中で今年、中国は7%の経済成長率を目標にしているが、この目標は達成できるのか、主な措置は何か。

朱鎔基: 今年の経済成長率の目標である7%は、世界経済の成長率の後退等を含めた諸方面の様々なマイナス要素を綿密に考慮に入れて制定されたもので、達成可能だと思う。具体的措置はすでに政府活動報告の中で述べられているので、ここでは重複しないことにする。

今年の第1四半期の状況から見ると、予想より良かったように思う。国家統計局の予測によると、今年の第1四半期はGDPの成長率が昨年同期と比べて7.5%増えている。したがって、今年の経済成長率の達成には自信がある。即ち、7%の成長率の達成には自信があるということである。

積極財政政策について 

記者: 今年の中国の財政赤字は3098億元で、国内総生産の3%

を占めている。総理は中国の財政リスクをどのように見ているのか、次期政府に影響が及ぶことにならないか。

朱鎔基: 手元の資料を調べてみたが、二十数カ国のものしか調べていないが、2000年においては、19カ国もの国が赤字を抱えており、その中には先進国も含まれる。そのため、重要な点は財政に赤字があるかどうかではなく、この赤字のレベルが耐えられる範囲内にあるかどうかということである。特に、その赤字はどこに用いられたのか、どこが赤字になっているのか、ということである。

今年の中国の予算の赤字は3098億人民元で、今年の国民総生産の約3%を占めている。国債発行残高は合計2兆5600億元で、国民総生産の約18%である。この二つの数字は公認されている国際的警戒線以下にあり、まだかなりの余地がある。最も重要な点はこの赤字が経常的予算の穴埋めに用いられたのではなく、基盤施設の建設に投入されたことである。

政府は5100億の国債でもって、銀行資金とその他の資金ルートをけん引し、2兆元のプロジェクトを着工した。この2兆元のプロジェクトには、高速道路1万3000キロを含む10万キロの道路、5000キロの幹線鉄道が含まれる。電化、複線化をも計算に入れれば、1万キロ以上改善されたことになる。また、9億5000万キロワットの発電所を建設し、農村の送電網を全部改良し、携帯電話と固定電話加入者数はこの4年で3億2000万回線増加した。これは確実な成果である。

そのため、次期政府に残されるのは債務だけではなく、2兆5000億元の高品質の資産もあり、将来中国の経済の発展に長期的に多大な経済収益と社会的収益をもたらす役割を果たすことになる。

さらに重要な点はこの5100億元の国債に銀行からの貸付を加えれば、工業全体の生産、国民経済の高速成長、毎年の財政収入の大幅増を促すことができる。これにより、我々は職員・労働者の生活水準を高めることができる。ここ数年に、職員・労働者の給料はほとんど倍増した。我々は比較的健全な社会保障体系を構築し、多額の資金を教育と科学技術の研究に投入することもできた。

同時に、人びとの預金もここ数年間に絶えず増え、毎年7000億元〜8000億元の水準が維持されている。つまり、このような積極的な財政政策と穏健な貨幣制度を実施しなければ、中国の経済は崩壊した可能性があるといえよう。

そのため、この点から見れば、この積極的な財政政策はほどよい度合いのものである。この四年来、物価は全然上昇せず、あまり下落もしておらず、1%程度上下しているのであり、ほどよいといえる。カンフー(中国拳法)が上手だと言っても過言ではない。

中国での積極的な財政政策の実施により、アジア金融危機の衝撃を克服し、このチャンスを利用して中国経済の空前の発展をもたらしたのであり、これに対し誇りに思っている。

中日関係について 

記者: 今年は日中国交正常化30周年であり、指導者、トップ間の交流が多い。私は中国が外交ルートを通じて皇太子ご夫妻の訪中への期待を示しているということを耳にした。ご夫妻が訪中すれば、日中関係の発展を推進できるのか、中国の人々に歓迎されるのか。

朱鎔基: 今年は中日国交正常化30周年にあたる年で、昨年、私は小泉首相と会見した際、今年を中日友好の年にすることで合意した。双方は交流と往来を強化し、中国で日本文化年を開催し、日本で中国文化年を開催するなどを含む一連のイベントで国交正常化30周年を記念することになっている。皇太子ご夫妻の訪中について、中国は早くから招請しており、訪中を受け入れることを願っている。中国を訪問されれば、必ずあたたかく歓迎されるだろう。

貧富の格差について

記者: 私は現在、中国では二極分化が深刻だと思っている。一部の専門家もこのことを改善しようとすれば、中間層、すなわち中産階層を育成、拡大することが必要と見ているが、それに同意するか。同意するとすれば、どんな措置をとって中産階層を育成するのか。

朱鎔基: 中国における二極分化或いは貧富の差が拡大しているという現象についてであるが、私は依然としてそれは存在していると思っている。鄧小平氏がかつて述べた「一部の人々が先に裕福になることを認める」ということを覚えていることであろう。その反面、一部の人々が裕福になっていないことでもあるわけだ。従って、貧富の差が拡大するという現象は一定の歴史的時期においては避けられない。

しかし、私達は「一部の人々が先に裕福になる」という政策を実施すると共に、絶えず低所得層或いは弱者層を支援する。例えば、農民の収入増については政府活動報告のかなりのスペースが割かれ、中心的な仕事として推進されると言える。例えば、社会保障システムへの重視を通じて、一時帰休者、失業者、定年退職者、定年引退者を支援することは私達の仕事の重点となる。政府は財政予算を通じて貧富の差を縮小するほかに、最も大切な手段は徴税である。私達は徴税政策の改革で裕福になっていない一部の人々を支援することになろう。私は近い将来、貧富の差が徹底的に解決されるものと確信する。

香港経済について

記者: 現在、香港と内陸部は自由貿易区のようなさらに緊密な貿易関係を築き上げることについて話し合っているが、これについて中央政府はどんな政策をとって、香港のアジア金融センターとしての地位を引き続き強固にしていくつもりか。そして、中国のWTO加盟後、香港はどのようにして国内の経済発展に引き続き協力していくのか。

朱鎔基: 香港特別行政区政府の成立以来、つまりアジア金融危機が始まって以来、香港は一時的に経済面で困難に陥った。しかし、私は終始香港は非常に優位な地位にあると思っている。香港のGNPは広東省に相当するものである。近々に香港を上回る大都市はありえない。取って代わることのできないこの優位性によって、当面の一時的な困難を乗り越えることがかならずできるとわれわれは自信をもっている。中央政府が香港にどのような援助と協力を提供できるかについては、中央政府と香港特別行政区政府の関係者は緊密に話し合っているところである。香港に実際のメリットのあることならば、実行してよく、中央政府は全力でその事に当たる。香港がアジア金融センターとしての地位を守ることはきっとできる、とくに中国のWTO加盟後においてはチャンスがさらに大きなものとなる。

記者: 大陸の都市より香港のほうがかなりの強みがあるとさきほどおっしゃったが、現在、大陸の多くの都市が急速な発展をとげていることも事実であり、とくに国の経済発展戦略の中でそれなりの位置づけをもつようになった。香港はこの面でどのような役割を果たすべきかまだはっきりしていない。これから香港はどのような役割を演じるのか、具体的に教えていただけないか?私たちは過去20年のように、外資を導入する役割を演じられなくなるのではないかと懸念している。

朱鎔基:香港はかつてアジア金融センターの役割を果たしてきた。それと同時に他の分野でも文明的な国際都市と見なれて来た。この強みは香港はまだ失ってはいない。特に1970〜1980年代の頃、香港の中国の改革開放に対する寄与は第一位といえるものであった。今後、世界経済の発展につれて、香港はその役割を調整しなければならない。香港のエリートたちはこの問題を検討している。われわれは香港特別行政区政府、香港の人々と一緒に検討してもよい。香港の強みはまだ完全に発揮されていない、香港の未来の役割は限りないものであるとかたく信じている。さきほど話したように、大陸のどの都市も近々に香港の位置に取って代わることはできない。われわれは自信を持つべきで、われわれの目標は必ず実現できることを願っている。

中国とロシアの経済貿易関係について

記者: 総理は今年に再びロシアの首相と会談することになっているが、中ロ関係の現状、さらには両国の経済貿易協力関係の見通しについて話して願えないか。

朱鎔基: 中ロの戦略的協力パートナーシップは、ここ数年非常にめざましく発展を遂げている。とりわけ昨年、江沢民国家主席とプーチン大統領が「中ロ友好善隣協力条約」に調印し、両国の友好協力関係はよりいっそう強固なものになっている。それは経済分野でも実際の効果が現われている。おおまかな統計によると、昨年の中ロ両国間の貿易額は、前年に比べて1/3にあたる33.3%増えた。これは公表された数字のみのことであり、まだかなりの額の国境貿易がその中に含まれていない。この発展ぶりは非常にめざましいものである。 

中ロ両国の総理は昨年、サンクト・ペテルブルクとモスクワで定例の会談を行い、経済貿易ならびに諸分野における協力を更に強化することを合意するとともに、向こう2〜3年間に、現在の中ロ両国の経済貿易協力レベルが倍増するだろう、と見ている。 

今年、両国の総理は上海で定例会談を行い、中ロ両国の経済貿易および各分野における協力の速やかな発展を共に促すよう、更に話し合うことになっている。

農民の収入について  

記者:総理、1998年の最初の記者会見の際に比べて、いま見ると、総理は同じようにハンサムであるが、少しお疲れの様子。わたしがたずねたいのは、13億の人口をもつ国の出来事を取り扱っており、どのようなありさまなのかを想像しがたいが、それについて話しねがえないか。あなたが国務に当たる際に、最も頭が痛い、眠りに眠られないことは何か。あなたは総理を担当してから、大きな成果をあげたと思うか。いくつかの事は、恐らく今でも完成していないのではないか。どの方面でまだ足りないかを話して願えないか。そのほか、また次期総理を担当するのかどうか。

 朱鎔基: わたしは1998年に比べて疲れているように見えるかどうか、わたしはご在席の皆様がどう見ているかは知らない。しかし、すでに4年が過ぎており、人間はとにかく年を取るものだと思っている。

 しかし、わたしはこの4年来、終始少しも疲れを覚えることなく自分の担当している政府の仕事に取り組んできたと思っている。

 わたしはこの4年らい今期政府が多くのことを行い、特にさきほど述べたアジア金融危機を克服し、そのチャンスを利用し、わたしたちみずからをかってなく発展させてきた。もちろん、わたしは多くのことをまだ完成していない。わたしが最も頭が痛いと思うのは何か。わたしは一日中頭を痛めており、最も頭が痛いことはというと、いまのわたしに言わせれば、主に農民の収入を増やすことである。

 この4年間に、国の公務員はほとんど賃金を倍増したが、物価は上昇していない。国有企業は3年間ですでに苦境から抜け出し、そのうち多くの企業の従業員の給料も大幅にアップしている。引退・退職した従業員は社会保障システムの整備によって、その待遇も向上している。この人たちは喜んでいる。しかし、それに比べると、8億の農民については、その収入の向上は速くはなく、個別のところでは下がる傾向も見られる。

 この問題に対して、この数年、中国政府は大きな努力を払い、わたしの政府活動報告の中でも、多くのスペースをさいているが、この問題の解決は容易なことではない。最も根本的措置は、農業の作成あるいは産業の構造調整によるべきであり、現在中国の食糧はすでに供給が需要を上回っており、農産物はますます多くなり、栽培するとそれが多くなる。価格は引き上げられないので、農民の収入も増加することができないわけだ。

 特に中国のWTO加盟後、アメリカの農産物は大量に中国に入ってくることになろう、われわれの農産物の価格はさらに下げなければならなくなり、農民は困難にさらされることになる。これがつまりわたしが頭を痛めていることである。

 あなたは、アメリカから中国に輸出されているダイズが中国の全部生産高に相当し、1500万トンだということを知っているか。

 わたしたちが遺伝子組み換え農産物管理に対する方法をとり、国際上の多くの国が実行した方法を実行しようとすると、あなたたちアメリカの指導者はわたしたちとダイズの間で問題に言及し、アメリカの10億ドルの輸出にひびくので、もう少し慎重な態度を取ってもらいたいと言って来たが、あなたたちは中国が輸出鉄鋼製品に対し、8%ないし30%の税を課することを明らかにしている。そうなれば中国の3億5000万ドルの鋼材はアメリカ向けに輸出できなくなる。そのため、わたしはアメリカの指導者がダイズに関心を示すようにわれわれの鋼材に関心を示してはと思っている。われわれもダイズに30%の税を課してよいというのか。

また話を頭を痛める問題に戻すが、頭は痛いが、解決できると思っている。現在食糧の備蓄が2500億キロに達しているため、われわれは倉庫を開いて貧しい人を救済することができ、これによって耕地をもとの森林に戻し、耕地をもとの草地に戻し、耕地をもとの湖に戻すという政策を実行することができ、農民の収入を逐次増やし、同時にわれわれは農村で料金を税金に改める政策を実行しており、農民の負担を軽減している。そのため、わたしはこれらの措置が当面の農民の苦境を緩和することができると信じている。さらにある時期を経ることによって、農業の産業構造が調整され、農民の収入が増えることができるのである。もちろん、これは一定の期間を必要するものである。ありがとう。

今期政府の活動について

記者: 今期政府が就任当初に確定した目標は「一つの確保、三つの実現、五つの改革」である。今期政府が任期内にこれらの目標をすべて実現したかどうかについて聞かせてもらいたい。

朱鎔基: 私の考えでは、私が1998年に提出した「一つの確保、三つの実現、五つの改革」は、この4年のうちにほとんど実現した。

一つの確保は8%の伸び率を確保し、人民元が切り下げられないことを指すものである。人民元は切り下げられていないし、伸び率といえば、7.8%で、私の言った8%より少しは少ないが、周知のように、1998年に中国はかつてない大洪水に見舞われ、それにアジア金融危機による影響を加えると、少しは差があった。

三つの実現というのは、一つは中国の国有企業が3年以内に大中型企業は赤字を黒字にする。この目標は3年がかりで成し遂げた。税金を上納するこれらの国有企業がなければ、中国の財政状況はこれほど好調なものにはならず、毎年国民総生産(GNP)の2倍の成長率で伸びることは不可能である。

金融改革については、われわれは商業銀行の改革に力を入れ、アメリカのRTCの経験を参考にして、不良債務を切り離し、資産管理公司を設立し、商業銀行の経営が大きく変わった。昨年の1年間だけで、不良債務の比率が3ポイント下がった。

国務院機構の簡素化については、その年に完成し、半分を削減した。今や簡素化はすでに省、市、県クラス政府の機構へと推し進められており、いまでもすすめられている。

食糧流通体制の改革、投融資体制の改革、住宅体制の改革、医療体制の改革、財政・税収体制の改革というその他の五つの改革については、すでに完成したのもあれば、すすめられているのもあると言える。私は改革の進展には満足している。

したがって、私は今期政府が全国の人びと、全国人民代表大会に対して行った公約を実現したと思っている。さもなければ、毎回の政府活動報告が圧倒的多数の賛成票で可決されることはありえないだろう。私はわれわれは良心に問うて恥じないと言える。しかし、われわれは立派にすすめられなかった仕事もたくさんあり、引き続き立派にそれをやりとげなければならない。

台湾問題について

 記者: 今年の政府活動報告の中の台湾に関しての部分で、台湾への武力行使の放棄を決して約束しないなど以前よく使われた表現や最近よく耳にしていた「台湾独立」等の表現が使われていないことに気付いているが、これはどのような考慮からか。例えば民進党の台湾での執政の事実を受け入れる等台湾への大陸の新しい姿勢を意味しているのか。

朱鎔基: 中国の台湾問題解決への政策はすこしも変わっていない。我々はあくまでも平和統一、一国二制度の方針と江沢民主席の打ち出した八つの具体的解決措置を貫くものである。したがって、私が強調しなかったからといって私がそれを放棄したわけではない。「武力行使の放棄を決して約束しない」という言葉は「台湾独立」を吹聴する頑迷分子に対しての言葉であり、この言葉は変わってはいない。しかし、変わっていないからといっても毎日それを口にする必要もない。

政治改革について

 記者: 総理を担当して以来、中国は経済分野で広範な改革を行なってきた。間もなく開催される中国共産党第16回代表大会の後には、中国は再び政治の分野での改革を行なうことを強調するか。

朱鎔基: 中国の政治改革、つまり民主的、法制的社会を構築する改革はずっとすすめられている。今後もさらに大きな取り組みぐあいですすめられていくと思う。

「チャイナネット」2002年3月15日

 

 
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