元宵の佳節には、万民が喜びを共にし、詩人たちも盛んに詩を詠じたので、たくさんの詩が残されている。唐の蘇味道に『正月十五夜』という詩があるが、元宵のきらびやかな情景を、あますところなく詠じている。
火樹銀花合 火樹と銀花は一つに合わさり
星橋鉄鎖開 星の橋は鉄の鎖を開く
暗塵随馬去 暗夜は群馬に随って去り
明月逐人来 明月は人に逐って来たる
遊妓皆儂李 遊妓は皆儂李にて語りあい
行歌尽落梅 その歌声は梅花を落とせり
金吾不禁夜 この金吾の禁じざる夜に
玉漏莫相催 玉漏よ催すこと莫れ
(大意――華麗な灯篭と花火は一つにあわさって、まるで天の河が鉄の錠を開いて、星が舞い降りてくるようである。暗い夜は早馬に乗ったように消え去ってしまい、明るい月が人々に伴ってやってきた。遊びさざめく歌妓たちはみな江蘇や浙江の言葉で話しあっており、彼女たちの美しい歌声は梅の花をもしぼませてしまう。この衛士が戒厳をといた夜に、時を計る水時計よ、あまり早くしたたらないでおくれ)
宋の欧陽修の『生査子・元』も良い詩である。
去年元夜時 去る年の元夜の時
花市灯如昼 花市の灯は昼の如くなりき
月上柳梢頭 月は柳枝の頭にかかり
人約黄昏後 人は約す黄昏の後
今年元夜時 今年の元夜の時
月与灯依旧 月と灯は旧じ依れど
不見去年人 見えず去年の人
涙湿春衫袖 涙は春衫の袖を湿らす
(大意――去年の元宵の夜、花市の灯篭は昼のように明るかった。月は柳の枝の先にかかり、人は黄昏のあとに会うことを約束した。今年の元宵の時、月も灯篭も去年と同じなのに、ただ去年の人は見えなかった。悲しみの涙は春着の袖をしとどに濡らした)
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