憲法と立法法の規定によって、現在の時点における全人大の立法権は主に①立憲権②立法権③立法監督権④その他の立法権など4つの面からなる。全人大の立法活動はこの4つの立法権を運用し、その調整できる範囲内で立法活動を行う。全人大の立法権は一つの面から全人大が確かに最高の立法権を行使することを反映するものである。全人大のほかの3つの立法権は一般の立法権ではない。立法権は国家の基本法律を立法する権限であり、授権立法権は全人大常務委員会および他の立法主体を授権対象とする立法権であり、立法監督権は全人大常務委員会およびその他の立法主体の立法活動を監督する監督権である。
完璧な立憲には①憲法の制定②憲法の改正③憲法の解釈④憲法の廃棄などが含まれる。憲法のある国にとってその国の政権は転覆されないかぎり、立憲は憲法の改正と解釈を指す。立憲権の構成と立憲の内容は一致する。中国では1954年の憲法と1975年の憲法は全人代が憲法を改正する職権を行使するとしか規定していなかった。1978年の憲法と1982年の憲法は全人代が憲法を改正する職権を行使し、全人代常務委員会は憲法を解釈する職権を行使すると規定していた。これらの憲法が憲法の制定権と廃棄権の帰属を規定しないのは、1954年の憲法が生まれた後、中華人民共和国にとって一定の時期に憲法を改正する必要がある以外に、新しい憲法の制定と廃棄の問題が存在しなかったからである。
全人代の立憲活動には3つの内容が含まれる。①新しいタイプの憲法を制定する。この憲法は元来存在していた憲法を改正したものではなく、立憲者は一定の理論、原則、綱領、実践によって新中国の国家、社会、公民に真新しい総則を提供するため、作るものである。1954年に制定した憲法はすなわちこのタイプの憲法である。②現行の憲法を改正し、補完し、削除する・大きな,全面的な改正を行い、新しい憲法を公布した。1975年の憲法、1978年の憲法、1982年の憲法はそれである。③現行の憲法の一部あるいは個別の個条を改正し、ある形式で公布する。第5回全人代第2回会議以来の憲法に対する変更はそれである。②と③の立憲の形は変更憲法と称してもよい。
全人代が法律を制定し、変更する権限は表現形態の上で長い発展段階を経てきた。現行の憲法が実施されるまで、全人代しか法律を制定する権限がなかった。全人代常務委員会は単行の法規か法令を制定する権力しかない。当時の法律は基本法と他の法律を区別してはいなかった。1982年の憲法はこの状況を変え、全人代常務委員会は全人代と共同で、国家の立法権を行使すると同時に、法律を基本法と他の法律に分け、それぞれ全人代とその常務委員会が制定することを規定した。これは法律上全人代の権限はすべての法律の立法権を行使することから一部の法律を制定し、変更する権限を行使することへとシフトしたことを示している。立法法は引き続きこの制度を規定した。
立法監督は中国立法制度の弱い環である。現行の憲法と立法法の規定により、全人代は2つの面で立法監督権を行使することができる。①全人代常務委員会の不適切な決定を改正し、削除する権限を持つ。これらの決定の一部は規範性をもつ法律的決定であり、法律の範囲に属する。例えば、『全人代常務委員会が経済の重罪を犯したものを厳重に懲罰する決定』はその範囲にある。これは憲法に規定される全人代の主要な立法監督権である。②憲法の実施を監督する権限がある。この権限には憲法違反による立法が憲法の実施を妨げる立法活動を監督する権限がある。
立法法は全人代の立法監督権をさらに規定している。立法法第88条の規定によると、全人代には①その常務委員会が制定した不適切な法律を改正し、削除する②全人代常務委員会に批准された憲法と立法法に規定される権限の範囲を超える自治条例と単独条例を削除する権限がある。立法法に規定されたこの2つの立法監督権は憲法に規定される立法監督権とたぶる部分もあれば、異なる部分もある。
一方、憲法と立法法はまた全人代常務委員会が制定した全人代の制定した法律以外の法律を制定することを規定する。全人代の閉会期間にしか全人代の制定した法律を補完、改正することができず、当該法律の基本原則と抵触するものであってはならない。国務院の行政法規は憲法、法律に基づいて制定される。国務院の部門規則は法律、行政法規に基づいて制定される。地方的法規は憲法、法律、行政法規と抵触するものであってはならない。これらの規定は憲法、法律上全人代の国家立法権の国の立法権力の核心的な地位、最高的地位を確定し、保障するものであるが、全人代がすべての立法活動が憲法に符合するか、違反するか、憲法の実施に役立つかなどを監督する権限も確定されていた。
上述の3つの面で全人代は立法権を行使する権限がある以外に、必要に応じて他の立法権を行使することもできる。この権限は憲法第62条第15項の「全人代が最高国家権力機関が行使すべきほかの権限を行使する権限がある」ということによって規定されたのである。他の立法権の中で、主要なものは主体立法を授権する権限である。この立法権は立法法の中で何箇所も規定されている。立法法第9条は法律の範囲に属する事項に対して、法律を制定していない場合、全人代およびその常務委員会は国務院に授権し、実際の状況に応じて一部の事項について行政法規を制定する権限があると規定している。ただし犯罪や刑罰、公民の政治権力の剥奪、人身の自由の制限などの強制的措置、処罰、司法制度などの事項は含まない。立法法第65条には経済特別区所在地の省、市の人大およびその常務委員会は全人代の授権により、法規を制定し、経済特別区内で実施することができると規定している。この2つの立法法の規定に基づいて、全人代は国務院と経済特別区所在地の省・市の人大およびその常務委員会が関連法規を制定することを授権できる。国務院が関連の行政法規を制定する権限を授権する権限は全人代およびその常務委員会によって行使されるが、経済特別区所在地の省・市が関連法規を制定する権限を授権するのは全人代しかない。