立法法が制定される前の全人代およびその常務委員会が国務院の立法を授権する決定から見れば、国務院の授権立法は特定の事項に対して行うほか、統一的な、固定的な制度はない。例えば、全人代の『国務院に経済体制改革と対外開放の面で暫定的規定あるいは条例を制定することに関する授権をおこなう決定』は国務院がこの授権立法権を行使する際注意しなければならないのは、必要なときにのみこの立法権を行使することを規定している。また憲法に基づいて、関連法律と全人代およびその常務委員会の関連決定の基本的原則と抵触しないことを前提として行使される。暫定規定か条例を制定し、公布することしかできず、全人代常務委員会に報告し、記録にとどめる必要がある。制定した暫定条例あるいは規定は実践を通じて全人代あるいは全人代常務委員会によって法律として制定される。全人代常務委員会の『国務院に商工税を改革し、税収条例草案試行を公布させる授権に関する決定』は国務院がこの授権立法権を行使する場合に注意しなければならないことを規定した。特定の期限すなわち国有企業の税制改革と商工税制を実行する過程でしかこの立法権を行使しない。この立法権を行使する場合、関連条例を制定するのではなく、練り上げただけである。練り上げた条例は草案の形で試行し、正式の形で公布するのではない。また試行の結果によって改正し、全人代常務委員会に審議される。
それぞれの授権される立法は解決しなければならない問題があり、独自の特徴がある。どの授権された立法も共同の規定を守るべきである。国務院の授権立法制度を充実させるため、共同的、統一的な制度を重視すべきである。この制度には次の内容が含まれる。①国務院の授権立法権の出所はどこかあるいはいかに取得したのか②授権に基づいての立法の効力のグレード③授権立法権を行使する目的、時間の範囲、事項の範囲④授権立法の手続き⑤制定した法律はどのような形式を取るべきか⑥授与された権限は他の主体に譲ることはできない⑦授権立法権を行使する場合、いかに全人代およびその常務委員会の監督を受けるべきか⑧授権の中止。
中国は国土が広く、人口が多く、各地方の発展のバランスの取れない国である。国務院は現代化をめざす建設、とくに体制改革を直接指導することを担っている。これらの仕事を上手にすすめるため、立法の役割をかなり発揮させるべきである。このような国情のもとでは、国務院の授権立法権の出所は全人代およびその常務委員会の授権によるものでは足りないのである。国務院は全人代およびその常務委員会に立法の権限を要求することを考えてもよい。国務院の授権立法権には全人代およびその常務委員会からの授権と国務院が要求した授権がある。
行政法規の制定は法律の制定と重要な違いがある。前者の手続きは後者のように複雑ではなく、順序がある。首長責任制のもとでの立法作業である。この区別は行政法規の起草制度が行政法規の質について特別重要な意義がある。立法法は行政法規の起草に対して次のように規定している。①行政法規は国務院が起草を組織する。国務院の関連部門が行政法規を制定する必要があると思えば、国務院に申請すべきである。②行政法規を起草する過程においては、関連機関、組織、公民の意見を幅広く聴取すべきである。座談会、論証会、公聴会などの形で意見を聴取することができる。③行政法規の起草が完成した後、起草機構は草案およびその説明、各方面の草案に対する異なった意見およびその他の関連資料を国務院の法制機構に送付し、審査に委ねる。国務院の法制機構は国務院に審査報告と草案改正稿を提出すべきである。審査報告は草案の主な問題について説明する。立法法のこれらの規定は行政法規起草制度を充実させるため、法律的基礎や基本的枠組みを編み出した。これによって国務院の立法の形でさらに具体的な規定をおこない、効果的実施されるなら、充実した、効果的な行政法規起草制度が形成される。
2001年11月16日に国務院は『行政法規の制定手続き条例』を公布し、第3章で行政法規の起草制度を具体的に規定している。この制度は次のように規定している。①行政法規は国務院によって起草が組織される。国務院の年度立法作業計画では行政法規が国務院の一つの部門あるいはいくつかの部門が具体的な起草作業を担当するか、国務院の法制機構によって起草され、あるいは起草が組織されることを確定した。②行政法規の起草は立法法が確定した立法原則に基づいて、憲法と法律の規定に符合する以外に、次の要求に符合すべきである。(1)改革精神を具現し、科学的に行政行為を規範し、政府の機能が経済の調節、社会の管理、公共へのサービスへと転換することを促す。(2)簡素化、統一、効率的の原則に符合する。同様のものあるいは違いの小さい職能は一つの行政機関が担うことを規定し、行政管理の手続きを簡素化する。(3)公民、法人、と他の組織の合法的利益を確実に保障する。履行すべき義務を規定する同時に、それ相応の権利と権利の実現を保障することを規定すべきである。(4)行政機関の職権は責任と統一の原則を具現する。行政機関に必要な職権を与えると同時に、職権を行使する条件、手続きおよびそれ相応の責任を規定すべきである。③行政法規の起草は調査研究の上、経験を総括し、関連機関、組織、公民の意見を幅広く聴取すべきである。意見聴取は座談会、論証会、公聴会などさまざまな形を取ってもよい。④起草部門は行政法規の起草については他の部門の責任に及ぶもの、あるいは他の部門と関係の密接な規定について関連部門と話し合って、一致させる。十分な話し合いの上、意見が一致しない場合、行政法規草案の審査稿を送付する際、事情と理由を説明すべきである。⑤起草部門は関連管理体制、方針、政策など国務院によって決定される重要問題に及ぶことについて解決案を提出し、国務院に決定される。⑥起草部門が国務院に申請を出した行政法規の審査稿は起草部門の責任者が署名すべきである。いくつかの部門が共同で起草した審査稿はそれらの部門の責任者が共同で署名すべきである。⑦起草部門は行政法規の審査稿を国務院に審査に委ねる際、行政法規審査稿の説明と関連資料をともに送付すべきである。その説明は立法の必要性、確立した主要制度、各方面の異なった意見、関連機関、組織、公民のアンケート調査について説明すべきである。関連資料には内外の関連立法資料、調査研究レポート、考察報告などが含まれる。この7項の制度の構築は行政法規の起草を規範化へ向かって進めていくことを示している。