中国の民主政治建設

三、人民代表大会制度


人民代表大会制度は中国人民が主人公になる根本的な政治制度である。人民は全国人民代表大会と地方の各クラス人民代表大会を通じて国家権力を行使する。

中国は自国の国情に基づいて西側諸国が実行している二院制ではなく、一院制を実行している。中国憲法は、中華人民共和国全国人民代表大会は最高国家権力機関であると規定している。中国では、国の行政機関、裁判機関、検察機関はいずれも人民代表大会によって選出され、人民代表大会に対し責任を負い、その監督を受ける。国の重要な事項は人民代表大会によって決定される。行政機関は責任をもって人民代表大会の可決した法律、決議、決定を実行する。法院(裁判所)、検察院は法によってそれぞれ独立して裁判権、検察権を行使し、行政機関、社会団体、個人の干渉を受けない。

全国人民代表大会と地方の各クラス人民代表大会はいずれも民主的選挙によって選出され、人民に対し責任を負い、人民の監督を受ける。中国憲法の規定によると、満18歳になった公民は、民族、種族、性別、職業、出身家庭、宗教信仰、教育程度、財産状況、居住期限を問わず、法によって政治的権利を剥奪された人を除き、みな選挙権と被選挙権がある。中国の県、郷2クラスの人民代表大会の代表は有権者によって直接選出され、長年来、選挙権と被選挙権を享有する人数は満18歳以上の公民数の99%以上を占め、選挙参加率は90%前後である。中国の実情に基づいて、現在県以上の各クラス人民代表大会代表は間接選挙によって選出されている、つまり一級下の人民代表大会が一級上の人民代表大会代表を選出するわけである。直接選挙と間接選挙を問わず、法によって差額選挙を実行する。有権者と選挙部門は法的手続きに従ってその選出した代表を罷免するか更迭する権限がある。現在、全国の各クラス人民代表大会代表は280余万人おり、彼らは各民族、各業種、各階層、各党派から来た人たちで、広い代表性を持っている。各クラス人民代表大会代表の中に労働者、農民の代表がかなりいる。第10期全国人民代表大会代表の中に、労働者、農民の代表が総数の18.4%を占めている。国家の権力が真に全人民の手に握られるのを保証するため、代表は職責を履行する時、必ず人民の利益と意思を反映、代表しなければならない。代表は法によって議案を提出し、各項の議案と報告を審議し、各項の議案に対し表決することができ、人民代表大会の各種の会議での発言と表決は法によって保護されている。

中国の憲法と法律は、全国人民代表大会、地方各クラスの人民代表大会の任期は一期5年であり、全国人民代表大会は毎年会議を一回開き、地方各クラスの人民代表大会は毎年会議を少なくとも一回開くと規定している。中国の選挙法はまた、全国人民代表大会の代表人数は3000人を超えないと規定している。全国人民代表大会の代表人数がわりに多く、つねに会議を開くのが不便であるため、全国人民代表大会は中国憲法の規定に基づいて、全国人民代表大会の閉会期間に最高国家権力機関の職能を行使する常務委員会を設置している。全国人民代表大会常務委員会は一般に2カ月ごとに会議を一回開くことになっている。全国人民代表大会常務委員会は委員長、副委員長若干名、秘書長、委員若干名によって構成される。第10期全国人民代表大会常務委員会の委員は175人で、その中に委員長1人、副委員長15人いる。中国の県クラス以上の地方各クラスの人民代表大会にも常務委員会が設置されており、全国人民代表大会常務委員会と県クラス以上の地方各クラス人民代表大会常務委員会の構成人員は代表大会で代表の中から差額選挙によって選出され、一期の任期は代表大会と同じである。

人民代表大会とその常務委員会は十分に民主を発揚し、有益な意見を広く吸収し、人民の意思と根本的利益を代表、反映する。人民代表大会とその常務委員会は各項の議案を表決する時、絶対的多数の原則を実行する。つまり構成人員の半数以上が賛成してはじめて可決できることである。全国人民代表大会の憲法改正は、代表全員の三分の二以上の賛成を得なければならない。

人民代表大会とその常務委員会が会議を開く時、関係部門の責任者が列席し、関係部門と個人が傍聴することができる。列席する人は発言権はあるが、表決権がない。傍聴する人は発言権がない。彼らは常務委員会が審議する議案に対し意見があれば、書面で常務委員会の事務機構に提出することができる。ここ数年来、一部の地方は常務委員会会議を開く時、公民の申し込み順に従って傍聴者を確定している。

人民代表大会の職権は主に立法、監督、人事任免、重要事項決定の四つである。これは中国人民が人民代表大会制度を通じて主人公の権利を行使する主な体現でもある。

――立法権。中国憲法の規定によれば、全国人民代表大会とその常務委員会は国家の立法権を行使し、主に憲法を改正し、刑事、民事、国家機構とその他の基本的法律を制定、改正する。省クラス人民代表大会とその常務委員会は所在する行政地区の具体的状況と実際の必要に応じて、憲法、法律、行政法規に抵触しない前提の下で、地方的法規を制定することができる。わりに大きな市の人民代表大会とその常務委員会は同市の具体的状況と実際の必要に応じて、憲法、法律、行政法規および同省、自治区の地方的法規に抵触しない前提の下で、地方的法規を制定し、省、自治区の人民代表大会常務委員会に報告し、批准されてから実施する。経済特別区所在地の省、市の人民代表大会とその常務委員会は、全国人民代表大会の授権と決定に基づいて、法規を制定して経済特別区の範囲内で実施することができる。民族自治地方の人民代表大会は、現地の民族の政治、経済、文化の特徴に基づいて、自治条例と単行条例を制定し、法律と行政法規の規定を変通させる権限がある。

1949年の中華人民共和国成立から1978年までの30年間に、全国人民代表大会は134件の法律を制定したが、そのうちの16件はいまなお有効である。改革・開放以来、中国の社会主義民主法制建設は斬新な時期に入った。全国人民代表大会は1982年に憲法を全面的に改正し、その後はまた四つの憲法修正案を可決した。全国人民代表大会とその常務委員会は現在実施している有効な法律と法律問題に関する決定をそれぞれ200余件制定し、地方人民代表大会とその常務委員会は現在実施している有効な地方的法規を7500余件制定し、民族自治地方の人民代表大会は自治条例と単行条例を600余件制定した。

ここ数年来、中国の立法民主はたえず前進している。法案の起草はほとんど専門家座談会、論証会などの形式で専門家の意見を聴取した。立法機関が直接社会研究部門に委託して起草させた法案も一部分ある。重要な社会関係の調整に関する立法項目については、地方人民代表大会常務委員会はつねに公聴会を開いて、利害関係を異にする各方面に意見を発表させている。中国の立法法は立法公聴会について規定を行っている。1982年以来、全国人民代表大会とその常務委員会は憲法改正案、婚姻法改正案、契約法案、物権法案を含む10件以上の人民の切実な利益にかかわる重要な法案を制定する過程で、その法案を全国民に公布して意見を聴取した。人民大衆が直接法律の制定に参与することは、立法の質を高め、法律に人民の願いと要求を十分に具現させるばかりでなく、全社会の法的意識を強め、可決後わりに順調に実施できるようにした。

――監督権。憲法と法律の実施を監督することは、全国人民代表大会とその常務委員会の監督権行使の主な内容である。この種の監督の基本的形式は、法律執行検査と法規登記審査がある。法律執行検査の面では、第9期全国人民代表大会常務委員会は前後して22回にわたり21件の法律の実施状況を監督、検査し、第10期全国人民代表大会常務委員会は2003年と2004年の二年間に10件の法律の実施状況を検査した。地方人民代表大会常務委員会もその行政管理区域の範囲内で法律と関係法規の実施状況を検査した。人民代表大会常務委員会は法律執行検査を通じて、法律と法規実施の真実な状況と存在する問題をいちだんと理解、掌握し、同じクラスの政府と法院、検察院に法律執行活動を改善するよう督促し、法律実施主管機関が法によって事を運び、公正に法律を執行するように促進した。法規登記審査の面では、現在までに全国人民代表大会常務委員会に送付して登記した地方的法規は7500余件、自治条例と単行条例は600余件、経済特別区の法規は300件近くある。第10期全国人民代表大会常務委員会は専門の審査機構を設けて、この活動をいっそう規範化させた。省クラス人民代表大会常務委員会、わりに大きな市の人民代表大会常務委員会も法によって地方政府の規則登記審査を行った。登記審査を通じて、憲法と法律に違反する法規、規則を取り消し、関係ある制定機関に不適当な条文を是正するよう督促することは、国家の法制統一を保障する上で重要な役割がある。ここ数年来、全国人民代表大会常務委員会は最高人民法院、最高人民検察院の司法解釈に対し登記審査を始めた。

同じクラスの政府と法院、検察院の活動を監督することは、人民代表大会とその常務委員会が監督権を行使するいま一つの重要な内容である。政府、法院、検察院の活動報告を聴取、審議することは、人民代表大会とその常務委員会が活動を監督する基本的形式である。人民代表大会が会議を開く時、同じクラスの人民政府、人民法院、人民検察院は大会に活動を報告し、人民政府は大会に予算案、国民経済と社会発展計画案を提出しなければならず、予算案は大会が審査、認可する必要がある。人民代表大会常務委員会は会議を開く時、つねに改革・発展・安定の全局にかかわる重要な問題および人民大衆の切実な利益と密接な関係のあるホットな問題と難しい問題について、特別報告や活動報告を聴取する。第9期全国人民代表大会常務委員会は5年間に40回も特別報告を聴取、審議し、第10期全国人民代表大会常務委員会は最初の2年間に22回特別報告を聴取、審議した。

――人事任免権。人民代表大会とその常務委員会は国家機関の構成員を選挙、決定、任免、更迭、罷免する権限がある。全国人民代表大会は国家主席、副主席、中央軍事委員会主席を選挙し、国家主席の指名に基づいて国務院総理の人選を決定し、国務院総理の指名に基づいて国務院副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、会計検査長、秘書長の人選を決定し、中央軍事委員会主席の指名に基づいて中央軍事委員会のその他の構成員の人選を決定し、最高人民法院院長と最高人民検察院検察長を選挙する。地方の各クラス人民代表大会は法によって地方の関係国家機関の構成員を真剣に選挙、決定、任免、更迭、罷免する。

――重要事項決定権。全国人民代表大会は憲法によって省、自治区、直轄市の設置を認可し、特別行政区の設置とその制度を決定し、戦争と平和の問題およびその他の重要な事項を決定する権限がある。長江三峡ダム工事など国の経済・社会発展の重要な問題は、全国人民代表大会が決議を行ってからはじめて実施することができる。ここ数年来、地方の人民代表大会およびその常務委員会は所在する地区の都市建設計画、環境保全などの重要な事項に対し決定権を行使した。

実践が十分に立証しているように、人民代表大会制度は中国の国情にかない、中国の社会主義国家の性質を具現し、中国人民が主人公になるのを保証できる根本的な政治制度である。同制度は人民大衆の中に根を下ろし、強い生命力を持っており、また広範な人民の共通の意志と根本的利益を代表し、全人民を主人公として国家建設に参加するように動員し、国家機関の調和のとれた高効率の運営を保証し、国家の統一と民族の団結を擁護している。中国の各民族人民は人民代表大会制度を通じて国家と民族の前途と運命を自らの手にしっかりと握っている。