国は輸入拡大へ
中国は、内需主導の成長パターンに転換しようとしており、その主役は消費です。
国家の消費といえるのが輸入です。中国は、輸入に比べ輸出が圧倒的に多く、昨年、外貨準備高で世界第一位になりました。黒字が増えすぎると各国との貿易摩擦や人民元の切り上げ圧力などが増えます。中国は輸出を調整し、輸入を拡大するなどして、拡大均衡を図りたい意向です(注1)。
例えばこの5月には、120億ドル程度(外貨準備高のほぼ百分の一)の米国商品(大豆、綿花、機械・電子製品など)を買付けるミッションが米国に派遣されました(注2)。中国にとって米国は最大の貿易黒字相手国(2006年は1443億ドル、米国の統計では2325億ドル)であり、中国が対米経済関係の円滑化に配慮したのです。
経済大国であった宋の時代も、当初、財政は豊かでした。戦争を好まなかった宋は、北方の遼や西方の西夏に莫大な歳幣(絹、銀、茶など)を提供し、平和維持に努めました。時代的背景は異なるものの、経済的手段で対外関係の安定に配慮しているところは、今と似ています。
黒字調整としては、「加工貿易」(注3)の見直しや輸出関連税制の調整、先進技術製品の輸入拡大などがあります。また、中国製品の輸出専門であった広州の中国輸出商品交易会は今年の第百一回から輸出入商品交易会として、輸入促進の場としても対外開放されました。QDII(有資格国内機関投資家)の導入や海外投資の拡大も、黒字額の調整に一役買うことになるでしょう。
日本とはどうでしょうか。日中では貿易統計のとり方が異なっていることから、統計上、双方が貿易赤字を記録していますが、赤字額は多額ではありません。エネルギーや環境問題が深刻化しつつある中国は、今後、省エネや環境保護関連技術・機器で世界の最高水準にある日本から、こうした製品の輸入を増やすことになるでしょう。最近、日本製のコメの対中輸出も解禁されたのも、中国の輸入拡大に一石を投ずると期待したいものです。
主役は内需へ
さて、人民の消費はどうでしょうか。GDPの中身を投資、輸出、消費と分けてみると、これまで消費は脇役でした。外需から内需主導の経済運営に舵を切ったということは消費、突き詰めれば、人民の懐を大いに当てにしようということにほかなりません。
その人民の懐ですが、一人当たりGDP(2006年) についてみると、北京は6000ドル、天津5000ドル、上海7000ドル、広東3000ドルで、全国では2000ドル超(予測)と、順調に伸びており、一人当たりの可処分所得も増えています。
消費について言えば、消費の主導権を握っている女性の場合を例にとると、2006年では消費額の多いのは、都市部では衣類、美容、整形・ダイエットの順といわれます(注4)。農村では日用品、医療費、衣類、飲食で、2007年に購入したいとする上位商品は衣類、携帯電話、化粧品、宝飾品となっており、「美」への消費が高いことがわかります。
男女の別を問わず、マイホーム、マイカー(昨年末時点で2000万台を突破)、国内外観光(昨年、海外旅行した中国人は3400万人)など、大口消費も盛んです。
夜には、飲食、カラオケ、ネットカフェ、映画・演劇鑑賞、公園などでのソーシャル・ダンスや合唱など、人々がレジャーや娯楽で生活をエンジョイしているところなどは、宋の都の開放感に似ているのではないでしょうか。
写真:北京の百貨店の化粧品売場はいつも女性客でにぎわっている。