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激変する経営環境--企業はどう動く 三井物産福島利宏氏
発信時間: 2008-12-10 | チャイナネット

只今ご紹介に預かりました三井物産の福島でございます。

最初に三井物産の中国に於ける活動を簡単にご紹介申し上げます。

戦前に迄遡りますと、「旧」三井物産は創立の翌年の1877年に最初の海外支店として上海支店を開設しており大変古い歴史がありますが、戦前のことはさておき、戦後は、先ず1980年に北京に駐在員事務所を開設して以来、上海・天津・大連・広州・青島・南京・ハルピン・重慶・武漢・成都・長春の順に駐在員事務所を開設し、主として日本製品の中国への輸出を行って参りました。但し、駐在員事務所は自ら契約当事者になることは認められず、日本の本社や支店の契約行為をサポートする所謂liaison行為しか許されておりませんでした。1992年には上海の外高橋保税区に最初の「保税区現地法人」を設立し、「保税区」という限られた地域内ですが現地法人が契約当事者となれるようになりました。1995年には中国商務部が推奨した「外商投資性公司」(投資会社)を北京に設立し中国国内での投資活動が始まりました。2005年には中国のWTO加盟に伴い認められるようになった「輸出入・国内販売が自由に行える現地法人」を北京・広州に新設すると共に、上海・大連・天津・青島の保税区現地法人の経営範囲の拡大も認可され同様の「自由に商行為の行える現地法人」に衣替えしました。

私自身は2004年4月から2007年4月の3年間三井物産の中国総代表として北京に駐在しておりました。この時期は2001年12月の中国のWTO加盟、2002年11月の胡錦濤政権発足のちょっと後で、中国の経済発展が一層加速すると共に、グローバル化・科学的発展観・調和社会などのキーワードに象徴されるように中国がより「洗練された経済大国」に変貌していく時期でありました。私の駐在期間中に三井物産も中国のWTO加盟に伴う一層の規制緩和の恩恵を受け、先程申し上げましたように中国で自由に商行為と投資ができる体制を築くことができたことを大変光栄に思っている次第です。

現在は在北京の中国総代表をヘッドに、北京・上海・広州・香港の「4ユニット体制」で中国全土の経営に当たっています。日本人の駐在員数は182名、中国人社員数は441名で合計623名です。今年に入り内蒙古自治区のフフホトに事務所を新設し日本人スタッフも駐在させました。

当社は現在全社的に「人事のグローバル化」を推進しており、中国でも北京ユニットの長で北京の現地法人の総経理も勤めているのは中国人です(このポジションは本社の部長に相当します)。更に、地方の店長や部門の部長にも徐々に中国人社員を登用したり、中国人社員の東京本社や他のアジア店への転勤も進めています。

当社の中国関連の売上高は中国経済の発展に伴い化学品・鉄鋼製品・金属原料・エネルギーを中心に順調に拡大しており、2008年3月期の連結売上高は2兆3,307億円でした。当社全体の連結売上高が17兆円ですので、中国関連が約14%を占めていることになります。

中国での投資先は143社で投資総額は約600億円です。1件の工場で数百億円の投資をされるメーカーさんと異なり、投資総額はそれ程大きくはありません。代表的な投資事例を挙げますと?

(1)先程JFEの數土社長からもご紹介のありました内蒙古自治区のオルドス電力冶金公司とJFE・当社の合弁会社である「EJMマンガン合金」、及び当社からオルドス電力冶金公司への25%出資。この25%出資額は約180億円で、当社の中国に於ける1件当りの投資額としては最大です。オルドス電力冶金公司の親会社であるオルドスカシミヤ集団は世界最大のカシミヤメーカーで、当社は繊維ビジネスで30年来の取引があります。この長年の信頼関係がオルドス集団の新規事業である石炭・電力・合金鉄分野での新たな合弁事業に発展した訳です。

(2)中国最大の鉄鋼メーカーである宝鋼集団との合弁会社で自動車や家電向けの鋼材の加工とJust-In-Time供給を中国の各地で展開している「宝井鋼材」。

(3)清華大学系列の泰豪科技とパナソニック電工・当社との合弁会社で、ビルの照明や空調などを総合的に最適化・省エネルギー化するエンジニアリング・施工会社である「北京泰豪智能科技」。既に人民大会堂や北京オリンピックの複数の施設の施工実績があります。

(4)食料分野でもエビの養殖、鶏肉及び加工品の一貫生産、鶏卵の生産などに取り組んでいます。

米国の金融危機に端を発する世界経済減速の影響は当社の中国ビジネスにも表れています。

化学品・電子材料・鉄鋼製品・合金鉄など幅広く影響が出ています。しかも、今年9月以降日に日に状況は悪くなっています。化学品の中間原料の類では欧米向け輸出の減少や国内での買い控えで出荷量が激減し在庫が急増、原油・ナフサ価格の急落もあって全商品で価格が30%から70%下落、取引先でも資金繰りに窮したり倒産に至るところが増えています。鉄鋼製品の主要用途である自動車についても、中国全体の生産台数は今年も伸びてはいますが伸び率が大きく下がっています。当社の最大の客先である上海GMでは生産台数が落ちている為当社の在庫が通常の2倍以上に膨らんでいる状態です。オルドス電力冶金の合金鉄生産も操業率が3分の1に落ちています。中国の鉄鋼メーカーのブラジル産鉄鉱石の引き取りは9月までは順調でしたが10月にかなり落ち込み、11月・12月は殆んどゼロとなります。当面は厳しい情況が続くと思いますが、それでも中国経済は年率8%から9%の成長をしており先行きに大きな不安は持っておりません。中国政府の政策対応能力も立派なものです。従い、当社は引き続き中国を最重要国の一つと捉え取り組みを拡大していきます。特に、貿易のみならず、中国に根を張った「事業」に一層注力していきたいと考えております。

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