杭州市人民代表大会常務委員会は中国で初めてインターネット上で「実名制」を要求する地方規定、「杭州市コンピュータ情報ネットワーク安全保護管理条例」を採択した。しかし、実際には1カ月近く経った今でも実質的な措置は取られていない。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。
「条例」では今年5月1日以降、書き込み・ブログ・オンラインゲームの際に有効な身分証明の登録が義務付けられた。
同常務委員会は、インターネット上での交流方式の増加に従い、ネットユーザーやインターネットカフェの数が急増、コンピュータの情報ネットワークに関する安全問題も日増しに浮き彫りとなっているのを受け、国の安全、公共利益、社会の安定を保護し、国民や法人、その他組織の合法的な権利を守るための地方法規を制定する必要があるという考えを示した。
杭州市人民代表大会の匿名希望者は、「発言者は自分の言葉に責任を持つべきだ!過去に多くのネットユーザーが極端な言葉で人を攻撃し、人のプライベートを侵害し、巨大な損害を招いている。法を通じてネットユーザーの行為を規範化するべきだ」と語る。
しかし20日以上経っても、条例に規定される「有効な身分証の登録」に関して、具体措置は取られていない。記者が試したところ、杭州網のBBSでは書き込みをする前に、ユーザー名・パスワード・電子メールアドレスなどの情報記入が必要だが、身分証を登録する必要はなかった。記者は10秒程度でID登録を完了し、自由に書き込みができるようになった。
「杭州網」や「19楼」など地元有名サイトのBBS相談窓口に問い合せると、これらのサイトではまだネットユーザーに身分証の登録を義務付けていないという。
地元サイトの担当者は「ユーザー情報の真偽を確認するのは難しい」と話す。「登録情報の真偽を確認するために、ユーザーに同社まで来てもらうのか、それとも登録の段階で偽りのない情報記入を要求するのか、今のところ具体的な規定は打ち出されていない」という。
実際、この「新規定」は社会各界から疑問の声があがっている。専門家やネットユーザーの間では、この「実名制」がネットユーザーの自由な発言権や監督権(国民が国家機関やその職員の公務活動を監督する権利)に影響を与えるのではという懸念の声も多い。
「人民網日本語版」2009年5月26日