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japanese.china.org.cn |26. 09. 2024 |
幸せの道切り開く高速鉄道
李家祺=文
セルビアのノヴィサドでは早朝、朝日を浴びる「ソコ」号列車がドナウ川をまたぐハンガリー・セルビア鉄道の鉄道橋を急速に駆け抜けている。
セルビア語で「ソコ」はハヤブサの意味。「ハンガリー・セルビア鉄道のベオグラードとノヴィサドを結ぶ区間では、まるで『ソコ』が飛ぶかのような速度を体験することができます」と、ノヴィサド駅で40年働く駅長のシモヴィッチさんは感慨深く語る。「前回セルビア鉄道が整備されたのは、まだ私が仕事を始めたばかりのことでした。中国に感謝したいです。高速鉄道の夢を実現してくれました」
環境と効率を両立
2022年3月19日、「一帯一路」国際協力プロジェクトとして、中国と中東欧関係諸国が共同で建設するハンガリー・セルビア鉄道(セルビアの首都ベオグラードとハンガリーの首都ブダペストを結ぶ鉄道)のセルビア国内のベオグラードとノヴィサドを結ぶ区間(以下、ベノ区間)が正式に開通した。
「私たちはこの路線の常連です」と、市民のマティーナさんは語る。ノヴィサドに住んでいるが、夫はベオグラードで働いており、ほぼ毎日通勤している。ベノ区間の開通後、もともと90分以上だった所要時間が30分程度まで短縮され、夫婦の暮らしはより便利になった。
旧ハンガリー・セルビア鉄道は100年以上前に建設され、平均速度はわずか時速40㌔だった。今回の整備によりベノ区間の最高速度は時速200㌔に達した。アプリからチケットを購入すると、料金は往復で962ディナール(セルビア通貨、日本円で約1325円)。今年5月までに、ベノ区間では1日平均62本の旅客列車が運行され、乗客は計700万人を超えた。
速度が大幅に向上しただけでなく、ベノ区間の開通により、観光客は高速鉄道でドナウ川を渡り、悠久な歴史を持つセルビアの2都市を1日で巡ることができるようになり、沿線の観光業のさらなる活性化につながった。
ハンガリー・セルビア鉄道プロジェクトが始まった当初、建設チームは10カ月かけて1300㌻もある詳細な環境影響評価報告書を作成した。「例えば、川をまたぐ鉄道橋の橋脚や支承の工事において、河川を汚染せず、川の流れを確保するよう、非常に厳格な案を実施しました」と、中国鉄路国際公司ハンガリー・セルビア鉄道セルビア区間プロジェクト副総エンジニアの段偉さんは説明する。
ハンガリー・セルビア鉄道プロジェクトは、従来の鉄道の全面的なアップグレードであり、運営しながら整備作業を進める必要があったので工事は一層難しかった。
「家屋のリフォームで例えるなら、完全に解体してから再建するのではなく、正常な使用を確保しながら改装を進めるのです」と、ハンガリー・セルビア鉄道セルビア区間プロジェクト工事部の李偉副部長は述べた。工事を進める中で、運営側や沿線住民のさまざまな要望をできるだけ考慮したという。検討に検討を重ねた末、中国の鉄道の技術と設備、ソリューションはヨーロッパ市場で認められた。「ベノ区間でのこの2年間の運行の成功が最も良い証しです」と李副部長は語る。
地元の技術人材育成に注力
昨年10月17日、全長142㌔、最高時速350㌔のジャカルタ・バンドン高速鉄道が正式に開通した。これは、インドネシアひいては東南アジア初の高速鉄道であり、全線で中国の技術と基準が採用されている。
かつて、ジャカルタとバンドンを結ぶ普通の鉄道の時速はわずか50㌔だったが、ジャカルタ・バンドン高速鉄道の完成により、両都市間の移動時間は3時間以上から40分程度まで短縮された。今年7月まで、ジャカルタ・バンドン高速鉄道の利用者数は延べ400万人以上に上る。
ジャカルタ・バンドン高速鉄道が走るジャワ島は、インドネシアで人口密度が最も高い島で、常住人口はインドネシア全体の約半分を占めている。また、経済・文化が最も発達した地域でもある。
ジャカルタのハリム駅から高速鉄道で10分ほどでカラワン駅に到着できる。カラワン県には西ジャワ州で最も有名な工業団地があり、多くの外資系の自動車製造工場が存在している。
「工場は高速鉄道の駅から車で約30分で着くことができ、各地の企業関係者の商談や見学がより便利になりました」と、上海自動車グループと米ゼネラルモーターズ、広西自動車グループの合弁会社である上汽通用五菱汽車モータース・インドネシアのアリフ・プラマダナ副総経理は述べた。
「高速鉄道は人のほかに、発展のチャンスも運んでいます。交通ハブを中心に新しい都市建設が計画され、新たな成長分野と雇用を創出することが期待できます」と、西ジャワ州のリドワン・カミル前知事は語る。「そのほか、高速鉄道の整備によって、西ジャワへの海外からの投資の魅力がいっそう高まり、ハイテク産業や製造業分野への投資の増加と、さらなる経済発展につながるでしょう」
ジャカルタ・バンドン高速鉄道プロジェクトの建設において、中国側の建設チームは地元の技術人材の育成に大いに力を入れてきた。
ハイルル・イクマルさんは西ジャワ州プワカダ県マランネンガ村の住民で、もともとは他の地域の靴工場で働いていたが、2019年に中国電力建設グループ水電第七局のジャカルタ・バンドン高速鉄道プロジェクト部に加わり、研修を受けて溶接工になった。
「多くの村の人々が私と同じように、プロジェクト部で仕事を見つけ、収入が大幅に増えました。新しい家具や家電を購入した人がたくさんいますし、私もバイクを買いました」とイクマルさんは語る。プロジェクトが終われば溶接加工店を開き、プロジェクト部で5年間学んだ技術を生かして、フェンスや面格子などを製作する計画だという。
統計データによると、ジャカルタ・バンドン高速鉄道の建設期間中、研修機関の設立や中国人作業員が地元の人々に作業のノウハウを教える「師弟制度」、現場での実習などを通じて、インドネシアの従業員を計4万5000人育成した。今年7月、インドネシアの運転手が単独で時速350㌔のジャカルタ・バンドン高速鉄道列車を運転した。これにより、インドネシアの自主運営に向けた基盤が築かれた。
インフラの相互連結は「一帯一路」イニシアチブの重要な内容だ。疾走する「中国の高速鉄道」は、同じ地球に住むより多くの人々に幸せへの道を開き、開放・協力、互恵・ウインウイン、そして文化の交流を大いに後押ししている。
「人民中国インターネット版」2024年9月26日