経済> |
japanese.china.org.cn |17. 12. 2024 |
<粵港澳大湾区の新しいチャンス>若者の創業助ける政策
李家祺=文
香港と深圳の境目にある河套深港科学技術イノベーション協力エリア内の実験室での研究、広州市南沙区の創新工場でのプロジェクト発表会、珠海市横琴のオフィスビルでの越境業務など、GBAではどこでも意気盛んで気迫に満ちた光景が見られる。近年、夢を抱いた創業者たちがここに来て、奮闘の日々を送っている。
場所や資金をサポート
一筋のレーザー光が高精度測定顕微鏡によってサブミクロン粒子をはっきりと見えるようにしたばかりか、「サブミクロンサイズのピンセット」のようにそれらの粒子を正確に移動させられる。広州市の南沙粤港澳(国際)青年創新工場にある広州市凱佳光学科技有限公司(以下、凱佳社)では、科学研究者たちがこの「光ピンセット」というハイテク製品を急ピッチで調整中だ。
「数々の技術的な難関を克服し研究開発した独自の知的財産権を持つホログラフィック光ピンセット製品は、細胞や細菌の移行など幅広い実験に応用可能です」。凱佳社総経理で「85後」(1980年代後半生まれ)創業者の娄凱さんは語る。
江蘇省出身の娄さんは2021年に香港科技大学の温維佳教授と協力し、南沙粤港澳(国際)青年創新工場に凱佳社を設立し、精密な光学機器の研究開発に力を注いでいる。
「技術を何年も磨いてきましたが、創業は生まれて初めてのことでした。創新工場に用地の提供から政策の解説、そして市場ルートとの橋渡しなどまでやってもらい大変助かりました」と娄さんは感謝の言葉を口にした。
広州市南沙区の香港科技大学霍英東研究院は南沙粤港澳(国際)青年創新工場の運営機関だ。3万2000平方㍍以上の面積を誇る同研究院内に、創新工場はハッカースペースをつくり、スタートアップしたチームにオフィスや共同実験室、研究開発テスト、設備やテスターなどのサービスを提供し、運営コストを削減させた。
「会社設立当初、創新工場からオフィスをもらい、専用の実験室までサービス価格で貸してもらえたことで、金銭的負担が大幅に減りました」と娄さんは振り返る。
創新工場はこのほかにも創業者が企業を運営していく上での政策指導やアドバイスも行っている。当初、娄さんは会社を小規模・零細企業として登記しようとしたが、創新工場のスタッフから南沙区が行っている科学技術型企業向けの奨励政策の説明を受けたばかりか、市場の見方や考え方まで教えてもらい、協力パートナーの企業的規模や資質を重視するクライアントは少なくなく、小規模・零細企業(8)は資金調達ルートや市場の展望が比較的限られると教わった。
「会社の実際の成長を加味し、創新工場のアドバイス通りに、21年に企業を小規模納税人から一般納税人に変更しました。これによって、会社はより多くの協力パートナーからの信頼を得て、販売・サービス体系をさらに整えられました」と娄さん。
広東省では近年、創新創業コンクールを開催してハイテク産業プロジェクトの大事な担い手の発掘・育成に取り組んでいる。南沙粤港澳(国際)青年創新工場が企画・運営する香港科技大学賞金100万元国際創業コンクールの広州予選が22年に行われ、凱佳社のプロジェクトがその予選の1位となり、知名度アップにつながった。その年の凱佳社の売上高は1000万元を突破し、昨年は2300万元以上だった。
秩序立った環境づくり
19年4月、珠海市にある横琴粤澳深度協力エリアにやって来た「90後」のマカオ人の黄茵さんは横琴・マカオ青年創業バレーで湾谷科技研究(珠海市)有限責任公司を登記・設立し、マカオ本社が研究開発した中医薬製品を生産している。近年、横琴での業務量は増える一方で、黄さんの収入も大幅に上がったが、彼女の個人所得税は珠海ではなくマカオ基準で支払われている。
広東・香港・マカオで個人所得税の徴収基準は異なる。税務部門は横琴で働くマカオ居住者や、深圳の前海協力エリアや河套深港科学技術イノベーション協力エリアで働く香港居住者、南沙で働く香港・マカオ居住者に対して「港(香港)人港税」「澳(マカオ)人澳税」政策を実施した。これにより、個人所得税が香港ならびにマカオでの課税負担を上回ればその部分は免除されるようになった。また、「香港・マカオ居住者優遇減免試算」オンラインサービスが打ち出されたことで、関係者はスマホ上で税金還付が手軽に申請できるようになった。「複雑な三つの地域の規則のすり合わせや、スマート化したデータの瞬時計算によって、使いやすく実用的になりました」と黄さんは感想を語った。
近年はGBA三地域の経済ルールのすり合わせやシステムの連結が進み、市場の一体化レベルが向上し、GBAの若い創業者により良い創業環境と多くのチャンスをもたらしている。
この中で、横琴とマカオの中医薬産業協力も多くの恩恵を受けている。21年9月に発表された「横琴粤澳深度協力エリア建設の全体プラン」によって、マカオで認可され登記し、協力エリア内で生産する中医薬製品、食品および健康食品は「マカオ製品検査」「マカオ製造管理」「マカオ設計」のロゴの使用が認められるようになった。黄さんはこれについて、マカオは土地資源に限りがあり、企業の生産能力拡大も制限されているため、これらのロゴの使用が認められることにより、関連製品のブランドを守り、もともとの市場と顧客を安定化させ、マカオ関連企業の協力エリアへの投資をよりよく呼び込めると考える。
経済ルールの秩序立ったすり合わせに従って、横琴とマカオ両地の産業協力が加速し、横琴で登記されたマカオの医薬品・健康食品企業は4000社を超える。広東・香港・マカオが共同発表した183項目から成る「GBA基準」は食品、中医薬、高齢者介護など32分野をカバーしている。「基準が統一されることで、全国という大きな市場に製品を広めやすくなります」と黄さん。
GBA内のビジネス環境と創業支援政策、融合的発展のレベルが向上するに伴い、多くの若者がGBAを拠点とし、創業する中で成長している。GBAで創業・就職する若者たちの多くが、GBAは全体的な概念となりつつあり、「GBA青年」の夢を支えていると考えている。
「人民中国インターネット版」より2024年12月17日