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japanese.china.org.cn |17. 12. 2024 |
<粵港澳大湾区の新しいチャンス>科学の粋集まる場所に
王朝陽=文
衛星写真から世界の夜景を見ると、広州から深圳、そして香港、マカオまでさんぜんと輝き、そのエリアの繁栄と活気を映し出しているのが分かる。中国ひいては世界で最も経済発展が活発なエリアの一つとして、GBA経済の繁栄は科学技術・イノベーションと支え合い、促進し合っている。世界知的所有権機関(WIPO)が発表した2023年版グローバル・イノベーション・インデックスの科学技術クラスターランキングで、深圳・香港・広州地域は4年連続で世界第2位だ。これには近年の広東・香港・マカオの深い融合と緊密な協力が深く関係している。
深圳と香港の新たな協力
河套深港科学技術イノベーション協力エリア(以下、河套協力エリア)は両地の科学技術・イノベーション協力が日増しに緊密になるのを何年にもわたって見てきた生きた窓口だ。
「ここは香港城市大学から車でたった三、四十分の場所にあります」。河套協力エリアの深圳パークで電子顕微鏡を研究する同大学福田研究院の陳福栄院長はこう話す。「科学技術・イノベーションには一瞬のひらめきと衝動が欠かせません。香港でアイデアが浮かぶと、すぐにここの実験室で実験できます」
立地の良さがもたらした利便性は協力の基礎にすぎず、イノベーション人材をより引きつけるものはGBAでありふれた技術の実用化シーンだ。香港科技大学の葉玉如学長は次のように考える。香港は豊かな科学研究能力がある世界金融の中心地である一方、深圳や広州などのGBA内大陸部9都市には完備された産業体系と産業チェーンがあり、広大な大陸部の市場とつながっている。広東・香港・マカオの科学技術・イノベーションの長所を合わせ、全国ひいては世界の科学技術・イノベーションリソースをまとめ、世界規模の科学技術・イノベーション環境を構築することができる。
香港中文大学ポストドクターの丁克さんは初期に河套協力エリアに拠点を構えた香港青年の一人で、香港の科学研究の優位性と深圳の産業・サプライチェーンの優位性の相乗効果(9)を身をもって体験した。パートナーと協力して設立した深圳顕揚科技有限公司は香港の大学を頼りに基礎科学研究を行い、深圳に研究開発の本部を据え、佛山や東莞などで組み立てや応用を行うことで、香港で研究開発し、深圳で実用化し、佛山で生産し、全国に販売するという総合的産業チェーンをつくった。丁さんによれば、同社は2018年に設立してから3年足らずで3Dビジョンと産業用ロボット制御技術の製品化に成功し、年収は2000万元以上とのことだ。
科学技術インフラを構築
近年、GBAに続々と配置された世界一流の重要な科学技術インフラクラスターは現地のオリジナルイノベーション能力と科学技術による難関攻略能力を力強く支えている。
香港からたった30分の広東省東莞市松山湖科学城内に中国核破砕中性子源がある。ここはGBA内で初の国家重大科学技術インフラであり、投資規模が中国で過去最大の単一の科学プロジェクトだ。投資総額は23億5000万元、6年半がかりで第1期工事を終わらせた。地下13~18㍍に設けられ、面積はサッカーコート40個分以上、加速器を設置した地下トンネルだけでも600㍍余りあり、「国宝」級の価値がある。
小さな中性子はミクロの世界を探索するツールだ。材料工学、物理、化学化工、生命科学、資源環境などの分野におけるブレークスルーはいずれも核破砕中性子源が欠かせない。香港大学の黄欣明教授のチームは核破砕中性子源装置を使って普通鋼より高い強度とじん性を持つ超強力鋼を研究開発した。厚さ1・5㍉、1平方㌢の鋼材の耐荷重は3㌧で、これはアジア象1頭分に相当する重さだ。
黄教授以外にも、多くのGBA内の科学者が中国核破砕中性子源で革新的な研究をしている。香港城市大学のチームはアモルファス金属のガラス転移の新たなメカニズムを発見し、マカオ大学のチームは熱電材料の磁気構造分野で進展を得た。核破砕中性子源装置の利用者の3分の1がGBAから来ていて、うち香港・マカオの利用者は117組おり、残り3分の2が国内外から来ている。
中国核破砕中性子源、ヒト細胞マップなど九つの国家重大科学技術インフラがGBA内に次々とつくられ、それらは広東・香港・マカオひいては世界のイノベーションリソースが結集する重要な場所となっている。
世界の新たな科学技術革命と産業変革が深く進む現在、GBAは中国の科学技術・イノベーションで最も活力のあるエリアの一つとして無限の発展潜在力を発揮している。今後、ここは科学技術と産業が融合した世界的な影響力を持つイノベーションの重要拠点(10)となり、科学の爆発的発展を促す次の技術的特異点を生み出すかもしれない。あまたの科学研究人材がGBAという出港地から帆を揚げ、科学の大海に出て、科学技術・イノベーションの新たな章を共につづっている。
「人民中国インターネット版」より2024年12月17日