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japanese.china.org.cn |02. 01. 2025

GXが拓くイノベーションインパクト

タグ: GX
中国網日本語版  |  2025-01-02

 編集ノート:東京経済大学は2024年11月30日、国際シンポジウム「グリーントランスフォーメーション(GX)にかける産業の未来」を開催した。後援:北京市人民政府参事室、China REITs Forum。メディア支援:中国インターネットニュースセンター。セッション2「GXが拓くイノベーションインパクト」では、周牧之東京経済大学教授、索継栓北京市人民政府参事・中国科学院ホールディングス元会長、岩本敏男NTTデータグループシニアアドバイザー・元社長、石見浩一エレコム社長・トランス・コスモス元共同社長、小手川大助大分県立芸術文化短期大学理事長兼学長・IMF元日本代表理事が両国企業の取り組みと成果を報告し、GX分野での中日協力について展望した。

 ■ ムーアの法則駆動時代を駆け抜ける

 司会の周牧之東京経済大学教授は、いまの激動の時代を「ムーアの法則駆動時代」と定義した。インテルの創業者でもあったゴードン・ムーアが1965年、同法則を発表し、半導体集積回路の集積率が18カ月ごとに2倍になり、価格が半減するとした。その後60年間、半導体はほぼ同法則通りに進化し、人類社会を大きく変える数々の新しい製品やサービスを誕生させた。この時代、ハイテク技術を基盤にしたイノベーションが社会発展の原動力となり、産業発展を牽引した。今日議論するテーマGXも同様に、テクノロジーの影響を受けて進行していく。これからの社会は、イノベーションが一層重要な役割を果たし、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上など、持続可能な社会の実現に向けた技術的な解決策が求められると述べた。

 ビデオ動画で参加した索継栓北京市人民政府参事・中国科学院ホールディングス元会長は、中国政府は炭素排出量のピークアウトと炭素ニュートラルの実現を戦略的に進めていると説明した。中国科学院は低炭素技術の開発など、多くの施策を講じてきた。特に注力しているのが、ゼロからイノベーションを生み出す技術の開発だ。二酸化炭素削減に向けて、既存技術の改善だけでなく、新たな技術を創造し、飛躍的に進歩することが求められる。

 中国科学院は、研究機関と企業との連携強化も非常に重視している。基礎技術の開発から重要技術のブレークスルー、さらにはその技術の実証まで、総合的な開発体制を築いてきた。これにより、化石エネルギーの転換、新エネルギー技術、再生可能エネルギー技術の進展など、さまざまな分野で顕著な成果を上げてきた。

 索氏は、数々の中国科学院の研究成果を紹介した。例えば、石炭を原料とした合成油という技術開発により、石炭資源の効率的な利用が可能となり、環境への負荷を低減できた。また、リチウム電池をはじめとするエネルギー貯蔵技術の研究に長年取り組んだ結果、現在のリチウム電池産業の発展に大きな影響を与えた。特に、固体リチウム電池の開発は、EV(電気自動車)や電動船舶、ドローン等さまざまな分野での利用が期待される。さらに、ナノ粒子電池の研究も、将来的にエネルギー貯蔵の分野で広く応用されることが予想されている。

 岩本敏男NTTデータグループシニアアドバイザー・元社長は、NTTデータが1988年に独立し、現在では売上高約4.4兆円、従業員数約20万人の規模に成長し、50カ国以上に拠点を持つと述べた。NTTデータの取り組むイノベーションとして、JAXAの衛星データを活用した全世界デジタル3D地図の技術と、バチカン図書館のデジタルアーカイブプロジェクトを紹介した。これらの技術はGX、自然災害復興、インフラ整備、人類の遺産の保全と活用などに役立っている。

 石見浩一エレコム社長は、同社が創業から38年を迎え、現在ではPCやモバイル周辺機器だけでなく、調理家電やペット家電など、多岐にわたる製品を開発していると詳述。製品の93%が中国で生産されているのに対し、マーケットとしての海外シェアはまだ3%であり、この3年間で20%を達成したいと力説した。そのためには何よりも「人」が大事で良い人材を育成し、企業のビジョンを実現するための取り組みを続けたいと述べた。

 エレコムが取り組むGX活動については、森林再生プロジェクトや太陽光発電の活用、石油由来プラスチックの削減などを説明。また、新ブランド「think ecology」を立ち上げ、環境に優しい素材や再生可能な素材を使用した製品を提供していると紹介した。

 ■ 起業家精神が時代を牽引

 続いて周氏は、資本市場における企業評価の変遷を解説した。1989年の世界時価総額ランキングトップ10では銀行、通信、電力などを中心に日本企業が多く占めていたが、2024年現在は、マイクロソフト、アップル、エヌビディア、テスラ、アルファベット、メタ、アマゾンなどテック企業が主導する形になっている。これらテック企業7社すべてがスタートアップ企業だった。その時価総額が現在12兆ドルを超え、「マグニフィセント7」と呼ばれ、圧倒的な存在感を持つ。ムーアの法則に基づく成功は、創造力に支えられたスタートアップ企業が、リスクを取りながら成長していくパターンだ。対照的に、大企業はリスクを取ることが苦手で、新技術の開発や新規事業の立ち上げに消極的になりがちであると指摘する。

 周氏は、アメリカと中国の時価総額トップ100企業の中では1980年代以降に創業した企業が多く、創業者がリーダーシップを発揮して産業の変革を牽引していると言及した。技術力と企業家精神が企業の発展を左右し、特にGX時代においては企業家精神が成長と変革の鍵となると述べた。

 石見氏は過去に200社以上の企業の面倒を見た経験から、成功する経営は「実行」に他ならないと強調した。実行するために必要なのは、計画段階で目標を定めることであり、目標達成に向けどう行動するかを考え続けることだとした。

 具体的には、企業のビジョンの明確化が最重要で、10年後、20年後にどんな企業になりたいかを考えることが、企業の方向性を決定づける。ビジョンがないと、企業文化や戦略も定まらない。マーケットやテクノロジーの変化を意識し、変化に対応できる戦略や戦術を立てることが、企業家精神の一部だと述べた。

 実行力にはリーダーシップが求められる場面も多く、決断が速かったことが成功の鍵となった。特に、ベンチャー企業はスピードが重要で、新製品やサービスを開発し、市場の動向に迅速に対応し、変化し続ける力が不可欠だとし、失敗後の回復力を強くし、失敗を恐れず、復活するために必要なエネルギーと強い意志を持ち続けることだと力説した。

 ■ IOWNで究極のデータセンターGXを

 岩本氏はAIの進化により、データセンターの電力消費はますます増加するとした。AIの学習には大量の電力が必要で、特にエヌビディアのようなGPUを使う処理は非常に高い消費電力を伴う。これに対して、NTTグループは、AI向けのデータセンターの効率化を進める技術を導入している。エネルギー効率を向上させる「IOWN(アイオウン)」という計画がある。これは、光通信技術を使い、従来の電気を使った通信インフラを光に置き換える。光通信は非常に低消費電力であり、遅延が少なく、大容量のデータを効率的に扱うことができるため、今後の通信インフラにおいて大きな役割を果たす。この技術を使うことで、さらにカーボンニュートラルに向けた効率化が進む。これが、GXの将来に向けて重要な役割を果たすと強調した。

 これについて周氏は、今、世界はAIブームで沸騰中だ。しかし、AIは膨大なエネルギーを必要とし、さらにそのエネルギーで発生する熱を冷却するために非常に高いコストがかかる。この問題が驚くべき規模で進行している。すでに「原子力」の復活の議論にまでつながり、原子力ブームを再来させる可能性もある問題だとした。この問題の解決には、IOWNプロジェクトが非常に重要なイノベーションとなる。同プロジェクトは、光技術を活用し、エネルギー消費を最小限に抑え、究極のデータセンターGXを実現できる。

 ■ GXにおける中日の協力

 岩本氏は百数十回にわたる中国訪問歴があり現在、NTTデータは中国に約10カ所の拠点を構え、4千人以上の従業員を擁している。中国企業と信頼を持って協力し合えると述べた。将来的にも、中国との関係を深め、ビジネスや文化、そしてGXの交流を促進していく意向を示した。

 石見氏は、中国の製造能力と技術に依存している現実を認識し、中国と協力して世界市場を開拓する必要性を強調し、新たにR&Dセンターを設立して製品検証を進めていると紹介した。GXを進めるうえで、最も大事だと思うのは「協同」だとし、グループ会社や中国の製造パートナーとの協力が不可欠で、目的や具体的な取り組みを共有し、一緒に進めていくことが成功への鍵だとした。アジア市場では、中国と共に新しいビジネスモデルを構築し成長していくことが必要だとし、日中両国が協力してバリューチェーンを構築し、グローバル市場でも競争力を発揮する努力が、最終的にGXの実現に繋がると展望した。

 小手川氏は、日中は地理的に隣接し、経済的にも非常に深い結びつきがあるため、今後も友好的な関係を築いていくことが必要不可欠だとした。日本の背後にはアメリカという大きな影響力を持つ国が存在し、その政治的な立場や方針には、時に理解し難い面もあると述べた。アメリカは常に自国の利益を最優先に考え、ルールや倫理より自国の経済的利益を追求する。これを鑑みれば、今後の日中米関係では、単に表面的な外交政策や交渉にとどまらず、各国の実際の行動と戦略の見極めが求められると述べた。特に、日本と中国、アメリカとの関係は非常に微妙であり、いかにして互いに利益を得るための協力を深めていくかが、今後の鍵となると語った。

 「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年1月2日