share
経済>
japanese.china.org.cn |13. 11. 2025

二千年の古都、産業都市へ躍進した3つの鍵 安徽省蕪湖市

タグ:
中国網日本語版  |  2025-11-13


4c9cdb4aa6e22e622c0b63480a4d7c6.jpg

蕪湖市を俯瞰する様子

長江のほとりに位置し、二千年以上の深い歴史的蓄積を持つ古都・蕪湖市は、安徽省の副省都だ。長江デルタ一体化の重要な拠点として、堅固な工業基盤と明確な転換・高度化の道筋を踏まえ、「第14次五カ年計画」期間(2021−25年)に重要なブレイクスルーを実現した。この都市の工業体系は37の大分類を網羅し、売上高1千億元規模の大手企業である奇瑞自動車、海螺セメント、Mideaの3社、および売上高100億元規模の企業20社が集まる。さらに、低空経済や人型ロボットなど、複数の省レベル未来産業先導区の指定も受けており、製造業の規模は1兆元へ向けて拡大を続けている。この飛躍的な発展の背景には、産業構造の転換・高度化、都市再生による観光・文化消費の促進、そして人材育成・確保戦略における不断の努力と実践がある。

セメント工場から芽を出した「トマトの森」

安徽海螺セメントの白馬山セメント工場

安徽海螺セメントの白馬山セメント工場。機械の轟音や粉塵はなく、明るいサンハウスの中は緑あふれる光景が広がる。高さ2~3メートルのトマトの木が並び、鈴なりの実を付け、作業員が静かに整然と収穫する。現代的な農場の一コマとも思えるこの光景は、実はセメント工場内部の一角だった。

取材に応じた海螺セメントの吴啓弁公室主任

これは、海螺セメントのグリーン転換を象徴する取り組みだ。同社が独自開発した炭素回収技術(CCUS)を活用し、製造工程で排出される工業用二酸化炭素(CO2)を精製、農業用気体肥料へ転換し、トマト栽培に利用している。工場事務所長の呉啓氏によると、この技術は見た目が美しく、糖度が高く収穫期間も長い高品質なトマトを産み出すだけでなく、工業で農業を支援する新たな道を切り開いた。

これは伝統的なセメントメーカーから環境産業グループへの飛躍を示す一例に過ぎない。新たな発展理念の下、同社は「スマート工場」を構築し人材依存度を低減。セメントキルンを利用した一般廃棄物・産業廃棄物の協同処理技術を革新し、炭素循環サイクルを構築し、環境サービスと新エネルギー分野へ進出している。「一帯一路」沿線ではスマート工場技術を広く導入。太陽光発電(PV)、プレハブ工法、環境配慮建材を統合した「ゼロカーボンルーム」は、セメントを中核とし各産業へ放射状に展開する道筋と、蕪湖市における伝統的製造業の高度化・スマート化・グリーン化への道を示している。

旧造船所が「芸術空間」に変貌

造船所跡地

鏡湖区にあった100年を超える造船所跡地は、「蕪湖老船廠1900」プロジェクトとして蘇った。プロジェクトは「本質を守りつつ革新する」という理念に基づき、14棟の歴史的建造物やガントリークレーンなどの象徴的な産業遺産を完全に保存。その一方で巧みな改修を施している。一つには、旧船体組立工場を「工業デザインギャラリー」に変え、既に複数のアート展が開催されている。もう一つには、旧部品組立工場を多目的スペース「REBOX」に変え、今や市民から広く親しまれる活気あふれる場となっている。この「古びた旧産業エリア」から「生活と文化の魅力あふれる回廊」への生まれ変わりは、都市再生プロジェクトが持つ価値を鮮やかに物語る。

造船所跡地

旧造船所の再生は、蕪湖市が系統的に推進する都市再生の一環に過ぎない。蕪湖市は都市再生を都市機能と質向上の重要手段として位置づけ、産業遺産の保存と活用、機能・付帯施設の整備に重点を置き、産業と都市、景観と人々の融合を実現することで、「外観の刷新」と「実質的な質の向上」の両立を図っている。これにより、都市の観光・文化産業も大きな発展を遂げている。これは全国の都市再生に向けた極めて示唆に富む「蕪湖モデル」を提供するものだ。

「奇才」を集め「知恵の船」を支える 

人材は、蕪湖市の産業の高度化と都市の活力の扉を開く重要な鍵だ。蕪湖市は、地域の特性に応じた新たな質の生産力の発展に焦点を当て、科学技術革新と産業革新の深い融合を力強く促進する中で、人材の招聘・集約を特に重視している。同市は、江蘇省・浙江省・上海市の水準を目安として「紫雲英人材計画」のレベルを上げ、地域に特化した「鳩茲科創湾」人材政策を作り、「高度人材を広く集める」博士人材プロモーションブランドを樹立することで、省都ではない都市ゆえの知名度の低さ、人材吸引力の低さ、科学技術イノベーション能力レベルにおける課題を効果的に克服した。その結果、「産業で人材を集め、人材で産業を興し、産業と人材が融合」という発展経路の模索に成功した。全市で新規採用した博士人材は2020年の100人未満から24年には374人に増加。年間新規採用大卒者数も1万6千人から10万人へと急増(2025年には12万人突破を見込む)。革新能力の全国地級市ランキングでは3年間で10位上昇。人材の競争力と吸引力が持続的に強化され、都市に大きな革新の活力と人材支援をもたらしている。

セメント工場の「コンクリートの森」から萌芽したトマトの新緑、古い工業の記憶が蘇る芸術空間、そして人材の肥沃な土壌が育む革新の活力へ。蕪湖市は時代の発展という壮大なキャンバスに、伝統的な工業拠点から現代的なスマート製造都市へ、活力と住みよさを兼ね備えた新たな都市へと劇的な変貌を遂げる姿を活き活きと描き上げている。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年11月13日