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翻訳出版業の盛況にひそむ問題
発信時間: 2008-09-04 | チャイナネット

(1)翻訳の質が低下 

中国ではここ数年、翻訳書の出版がさかんとなり、毎年1万種以上の新刊本が出版されている。翻訳書が急速に増加し、翻訳出版業が盛況となるなか、翻訳のクオリティー低下や粗製乱造といった現象も一部で起こっている。天津で1~4日に開催された「第15回北京国際図書博覧会(ブック・フェア)」でも、このような現象に出版専門家らの関心が集まり、今後の対応に向けた分析などが行われた。「新華網」が伝えた。

中国版本図書館資料室の統計によると、1995年から2004年までの10年間に出版された新刊翻訳書は約10万7500種に達した。ジャンル別では、社会科学や文学芸術の分野で多くの翻訳書が出版された。毎年1万種以上にのぼる翻訳書が出版されている計算となるが、翻訳の高いクオリティーを維持することは簡単なことではない。訳林出版社の顧愛彬・社長は、「一部の出版社は年間数百種にのぼる翻訳書を出版している。だが翻訳書の出版は手品ではない。数ばかり追求していては、高いクオリティーを確保することはできない」と語る。接力出版社の白氷・総編集長は、「出版界には現在、目先の利益を求める風潮がある。『一本の剣を十年で研ぐ』ような努力を一部の出版社はしようとしない。このような風潮は書籍市場の空気を不健全にしている。コストも低いがクオリティーも低い翻訳書はこのような状況のもとで生まれてきた」と分析する。

(2)翻訳者の不足 

業界関係者によると、翻訳書のクオリティー低下は単純な問題ではなく、その原因は深い根を持っている。訳林出版社の顧愛彬・社長は、「すぐれた翻訳書を出版するには一流の翻訳者が必要だ。外国語の本を翻訳するには、訳文の一字一句をテキストに照らして推敲(すいこう)しなければならない。そのため、翻訳書の価格は比較的高くなり、価格面での競争力はある程度弱くなる」と説明する。

接力出版社の白氷・総編集長は、「外国文学の翻訳レベルはあまり高くない。翻訳者の不足も日増しに深刻となっている」と語る。翻訳書の出版社の多くが抱える翻訳者不足は、翻訳のクオリティー低下の大きな原因だ。白総編集長によると、英語のような主要外国語であれば翻訳者も多くいるが、スペイン語やギリシャ語のような言語の翻訳者は不足しており、翻訳者を探すのは簡単ではない。これらの言語で書かれた書籍の需要は増えており、一部の出版社の悩みの種となっている。

文学書の翻訳者は現在、大きく2つのグループに分けることができる。1つは年齢の高い経験豊かな翻訳者。もう1つは青年から中年にかけての翻訳者だ。年齢の高い翻訳者は年々減少しており、青年から中年にかけての優秀な翻訳者も供給不足となっている。顧社長は、「優秀な翻訳者が少ないことは現行の制度と関係している。例えば、有名大学や研究機構の多くは昇進審査で考慮される学術成果に翻訳作品を取り入れていない。このことは翻訳の学術的地位を引き下げている」と指摘する。

(3)積極的な措置を

ドイツ図書情報センターの王キン・主任助理は、「購買力の低い読者は安い翻訳書を選択する傾向にある。質が低くても我慢して読む。このような傾向が市場にあれば、質の高いものが質の低いものに負けるということも起こる。だが長期的に見れば、一定期間を経て、質の悪い翻訳書を市場は徐々に淘汰していくはずだ」と指摘する。

だが業界関係者のなかには、翻訳業界の玉石混交の現状に対し、市場の淘汰作用をただ待つだけではなく、出版界でなんらかの措置を取った方がいいという意見もある。王主任助理はこれに対し、「翻訳者の数と質を向上させるための措置を国で取る必要がある」と語る。例えば、「翻訳奨励基金」を設立したり、優秀な翻訳者を毎年10人選出したりすることで、翻訳に従事する人が増えるような良好な環境を作り出すことができる。

訳林出版社の顧愛彬・社長は、「大学や研究機関の昇進審査の考査対象に翻訳作品を学術成果として取り入れてはどうか」と語る。翻訳者の積極性と自発性を高めるねらいだ。ある業界関係者は、翻訳書のクオリティー低下を防ぐため、関連部門が検査基準を設けることを提唱する。翻訳書中の大きなミスの数や不正確な個所の比率などを検査の対象とし、検査で不合格となった場合は出版社に処罰を与えるなどして管理する構想だ。

「人民網日本語版」2008年9月4日

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