小暑の養生
7月7日は小暑の日である。「斗が辛を指すと小暑であり、この日は天気が暑くなり、まだ極点に達しておらず、ゆえにこの名がある」。太陽の黄経は105度である。天気はすでに非常に暑くなっているが、まだ最も暑い時には至らず、ゆえに小暑と言う。小暑になると、すでに初伏の前後であり、至る所で木が生い茂り、多くの地域の平均気温はすでに30度近くになり、時には熱波が襲来の感があり、暴雨もしばしば小暑の節気にわが国の大部分の地域で降っている。この期間には降雨量が集中するため、水害対策はとりわけ重要である。

 小暑の季節になると、気候が非常に暑く、いらいらして落ち着かず、疲れて力がなくなる。保養と鍛錬の際には、われわれは五臓が時を主とし、夏は心を主とすることに基づいて心の陽を養い、心が平静で気持を落ち着け、心臓の機能の旺盛を確保すべきである。これは「春、夏は陽を養う」という原則に合致させるためである。漢方医の養生は「平」という字を主張し、つまりいかなる状況の下でも過激であってはならず、例えば喜びすぎるならば悲しむことになり、悲しむならば心臓がどきどきし、気持ちがたるんで、精神が集中できず、精神的非常におかしい状態になる。心は五臓六腑の大きな主であり、すべての生命の機能はみな五臓の機能の集中的表われであり、このすべてはまた心に支配され、「心が動くならば五臓六腑が全て揺れる」という言い方があるが、心臓と精神が損なわれるならばその他の臓腑に関連しないはずはない。情、志の面で、喜は心の志であり、この「喜」はそれを越えない状況の下で、気持ちをのびのびさせて気、血を和らがせることになる。

そのため、夏季の養生の重点が「心静」という二字を際立たせるのはそのためである。

 夏季は消化器官の病気が多発する節でもあり、飲食による養生の面で飲食をコントロールしない、飲食が清潔でない、飲食に好き嫌いがあるなどのよくない習慣は変えなければならない。飲食は適量をとるべきである。飢え過ぎるならば、物を十分に食べることができず、変化の源が不足し、気、血の不足を招き、体の疲れとやつれをもたらし、正気が虚弱となり、抵抗力が小さくなり、その他の病状を引き起こすことになる。食べ過ぎるならば、脾臓、胃の消化、吸収、運動変化の機能を上回ることになり、飲食のとどおこりをもたらし、胃、腹のもたれと胃酸、食に飽き、吐く、下痢をするなど脾臓、胃を傷つける病気になる。

夏季の飲食が清潔でないと多種多様な胃腸の疾病を引き起こすもととなり、例えば赤痢、寄生虫などの病気は、変質した有毒の食物を食べるならば、食中毒を招き、腹痛、吐く、下痢をすることになり、ひどい場合は人事不省になるかあるいは死亡することさえある。

 飲食の好き嫌いは栄養不良の原因の1つであり、飲食の調節が適切であってこそはじめて、人体に必要な栄養物質を保証することができるのである。飲食の好き嫌いとは、冷たすぎたり、熱すぎたりし、五味(各種の味覚)の好き嫌いがある、ということである。生もの、冷たいもの、寒いもの、涼しいものを多く食べるならば、脾臓、胃の陽気を傷つけることになり、寒、湿気が体内に発生して腹痛、下痢になり、偏食は辛、温、のぼせ、熱、胃、腸に熱をうっ積させることになり、ノドが渇き、腹が膨れて痛みを感じ、便秘となり、ついには痔になる。五味の好き嫌いは人の精神、気、血が五味から誘発されるものであり、五味は五臓に対応するもので、例えば酸は肝臓に入り、苦みは心に入り、甘は脾臓に入り、塩辛いものは腎臓に入る。もし長期にわたってある種の食物を好むならば、臓腑の機能を盛んにし過ぎることになり、衰えすぎるようになり、歳月の流れとともに内臓を傷つけることになり、病気になる。もし塩辛いものを偏食すれば、血管の流れを止め、顔色は血色を失うことになる。苦味を多く食べれば、皮膚が乾燥し毛髪が抜けることになる。辛の味を多く食べれば、筋肉・脈を縮めさせて爪、甲がかさかさとなる。酸味を多く食べれば、皮膚と筋肉が堅くなり、厚くなり、縮むことになる。口、唇が薄くなり、巻き上がる。甘い味のものを多く食べれば、骨格に痛みを覚え髪の毛が抜けやすい。

重要なのは嗜好が偏りすぎるため、栄養不良を招くばかりでなく、脾臓、胃とその他の臓腑を傷つけることになり、脚気、夜盲症、腫れ物ができるなどの病気を招く。そのため、わたしは皆さんに食による養生の中で、飲食の五味(酸、苦、甘、辛、塩辛い)は適宜にすべきであり、ふだん偏食せず、病気の時には飲食の禁忌を重んじることをすすめる。食べすぎるならば、蓄えて集め、ノドが渇いて飲みすぎるならば、痰が多くなり、人は非常に飢えるかノドが渇いた際、最も飲み過ぎ、食べ過ぎ、暴飲暴食しやすくなる。そのため、飢えと渇きで耐え難くなった場合、ゆっくりと食事をとるべきであり、その他に食欲がない状況の下で、いやいやながら食事をし、無理に食べてはならない。梁代の医学者陶弘景は『養性延命録』の中で「ノドが渇いていないのに無理に飲めば胃が膨れ、飢えていないのに無理に食べれば脾臓が疲れる」と指摘した。

 上述の論点は飲食に節度があり、飲食の清潔さ、飲食の豊かさの重要性を物語っている。

小暑の節気の献立

リョクズのもやしの炒め物

[その他の材料] 新鮮なリョクズのもやし500グラム、サンショウちょっぴり、植物油、白酢、塩、化学調味料適量

[作り方] もやしをきれいに洗って水をきって乾かし、油の入ったナベが熱くなってから、サンショウをナベの中に入れ、香りが出ると、もやしをナベの中に入れて数回炒め、白酢を入れて数分間炒め、ナベから取り出す時に、塩、化学調味料を加えてお皿に盛り付ければよい。

[効能] 熱を下げて病毒をなくし、できもの、はれ物を治す。

湯葉の油炒め

[その他の材料] 湯葉2枚、植物油、塩、ネギ、化学調味料それぞれ適量。

[作り方] 湯葉を千切りにし、ネギをきれいに洗って千切りにする。油の入ったナベが熱くなるまで火を通し、ネギの千切りをナベの中に入れ、香りが出ると、湯葉の千切りをナベの中に入れて炒め、それから塩を加えて数分間炒めてから、化学調味料をいれ、ゴマ油をたらしてよく混ぜてナベから取り出す。

[効能] 虚を補い、汗をとる。汗が多く、自然発汗、寝汗をかく方の食用に適する。

グルテンの煮込み 『随息居飲食譜』より

[その他の材料]  水でといたグルテン500グラム、ネギ、ショウガ、塩、カタクリ粉、植物油、化学調味料を適量

[作り方] 水でといたグルテンを薄切りにし、ネギ、ショウガをきれいに洗って千切りにして必要に備える。ナベが熱くなるまで火を通し、グルテンをナベの中に入れ、黄色になるまで炒め、ネギ、ショウガを入れて数分間炒めて、水を1碗入れ、塩を入れ、グルテンがよく熟してから、化学調味料を入れて、さらにカタクリ粉であんかけをし、スープが透き通っていればよい。

[効能] 解熱し、気分をすっきりさせ、渇きをいやす。

ソラマメと牛肉の煮込み

[その他の材料] 新鮮なソラマメあるいは水で煮てもどしたソラマメ200グラム、脂身でない牛肉250グラム、塩ちょっぴり、化学調味料、ゴマ油を適量

[作り方] 牛肉を小さな塊にきざんで、先に水の入ったナベの中で少しさっと煮て、すくい取って水をきり、土ナベの中に適量の水を入れて、水が熱くなると牛肉をナベの中に入れ、熟するまで煮込んで、ソラマメをナベの中に入れ、煮沸してから塩を入れてとろ火で肉、豆をよく熟するまで煮込み、化学調味料、ゴマ油を入れてナベから取り出せばよい。

[効能] 内臓を丈夫にし、湿気除けとなり、虚を補い体を丈夫にする。

スイカとトマトのスープ

[その他の材料] スイカ半分、トマト3個(ちょうどよい大きさのもの)

[作り方] スイカの皮を切り取り、トマトにお湯をかけてから、皮をむいて実を取り除く。この二つのものは同時に汁を絞って、2つの液体を合わせ、適量を飲む。

[効能] 熱を下げ、唾液の分泌を促し、渇きをいやす。夏のかぜ、ノドの渇き、体がすっきりしない、食欲不振、消化不良、小便が濃くて熱のある方に特に適している。

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