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評論:国民の関心はどこに
発信時間: 2009-03-08 | チャイナネット

林国本

 

全国人民代表大会が3月5日開幕した。全国政協会議も3日開催した。

全人代の代表や政協の委員を人民大会堂前で追うように取材合戦を繰り広げるマスコミ各社の人たち。

取材に答える地方の代表や委員たち。ほとんどは地元と関連のある話をしていた。一、大学卒や出稼ぎ農民労働者の就職、就業問題、二、社会福祉と社会保障の問題、かなりの人の話題はこの二つに集中していた。私もその気持ちは十分理解できる。しかし、私は数十年間国際ジャーナリズムの世界で暮らしてきたので、インフラ整備、構造改革もおろそかにしてならないと考えている。観光のための割引券を配ることも、たしかに内需拡大にプラスとなろう。しかし、その場かぎりで使ってしまうのでは、次ぎの三十年の改革、開放とつながらない。つまり、長期的視野に立っての戦略構築が必要である。

さいきん、北京・瀋陽間の高速鉄道などの着工も間近に迫っている。北京の郊外区への鉄道の着工もそろそろ始まる。こういうプロジェクトは、割引券のような即効性はないが、次の世代の人たちがそのメリットを十分に享受できることになる。もちろん、庶民の一人として即効性のある措置の受益者となることができるので、私も興味がないわけではない。

ではなぜ、前述の一と二に注意力が集中するのかというと、かなりの庶民にとって一番身近かな問題だからであろう。

一人っ子政策が実施された時代に生まれた子供たちが、過保護に近い状態で中学、高校、大学というコースを経て、社会に出て、就職難にぶつかるとは、両親も本人も想像していなかったはずである。おそらく、かなりの卒業生は就職できると私は見ている。なぜなら、経済成長率が伸びているのだから、仕事はかなりあるはずである。問題となっているのは、専攻科目と求人側のニーズとのミスマッチングと、国際経済危機による一部分野の求人の激減という状況に直面したことも原因のひとつだと思う。

さいきん、私は日本の著名な数学者、数学の分野のノーベル賞とも言うべきフィールズ賞を受賞した人の随筆集(文庫版)を読んだことがある。この人は学生時代からいろいろなアルバイトをし、ときには弟にも仕送りして学業をつづけた。今の中国の若者たちは、農村出身者は別として、かなりが過保護の状態にある。だから、いったん思う通りにいかないと戸惑いを覚え、不適応に陥りやすい。私も一介のジャーナリストとしてかなり順調な人生コースを歩んできたので、ものすごく苦労してやっとジャーナリストになった人たちをみると、いつも感心しているのだが、人生の道理として、ある種のまわり道、あるいは大きくいえば挫折も成長のチャンスかもしれないと考えるに至っている。そういうことで、まことにたいへんなことであろうが、今の若者たちがこの世界的な経済危機の大津波をウィンド・サーファーのように乗りきることを願っている。

さらに言うならば、今の中国のトップ層の中には、大学卒後、西部の町で何十年も過ごした人もいる。なかには、農村の村の党支部書記となり、県から地区、地区から省へとの昇り詰め、ついには中央のポストについた人もいる。したがって、さいきん、大学卒の若者たちに末端部にいって、村役場などで勤務してはどうか、ということもマスコミで提起されている。農村育ちの若者なら、すっと入っていけるだろうが、都会育ちにとっては、これも人生のチャレンジだろう。しかし、私はその中からきっと、何億、ひいては十三億の中国国民のリーダーか、それに近い人材が育ってくると確信している。また、自分の専攻とあまり関係のない仕事につくようなこともありえよう。私のような、初めから自分の好きなことばかりをして、かなり順調に第一の人生を過ごし、今また第二の人生を楽しんでいるものが、こういうことを言うのは、まことに恐縮であるが、人生いろいろというではないか。とにかく人間というものは、自分たちが生を受けた時代環境によって与えられたもろもろの課題を解決する中で成長していくものだ。

そして、社会保障、社会福祉もそうだ。人口が急速に高齢化する中で、これも重要な課題。

今回の全人代の審議で、よりよいソリューションが可能となることを願っている。

 

「チャイナネット」 2009年3月8日

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