“狗不理包子”を食べなければ、天津へ行ったとは言えない。蒸篭から取り出されたばかりの熱々の旨そうな包子は、薄霧の中で菊の蕾が今まさに開かんとしているが如くで、一噛みすればスープが溢れでて芳しい香りが漂い、いくら食べても飽きることがない。 狗不理包子の美味しさの秘密は、材料の選定、調整、攪拌から小麦粉の練り方、のし方に至るまで全てに秘訣があり、特に包子頂部の襞は均一にバランスがとれ、少なくとも15以上の襞が織りこまれている。 既に百有余年の歴史を持つ“狗不理”包子店は、元来の店名を“徳聚号”と言い、店主は幼名“狗子”と称された高貴友であった。貴友は父が40歳の時の子であったため、その平穏無事な成長を願って狗子と名付けられたのである。彼の作る包子は非常な評判をとり商売は大繁盛、狗子は包子売りに忙しく顧客とろくに話をすることもできなかった。そこで顧客たちは“(狗)子、包子売りに精出して、ほかの事は一切お構いなし(不理)”と笑い囃した。長い間、このように言い慣わされたため、包子が有名になるとともに高貴友の高名は忘れ去られてしまった。狗不理包子は西太后に好まれたという歴史を有するばかりではなく、今現在も一般庶民や外国人にも親しまれており、すでに多くの外国にも進出している。 |