ユニークな時代劇ーー『麦田』

発信時間: 2010-01-04 | チャイナネット

監督

 何平

2009年 中国 108分

東京国際映画祭アジアの風上映作品

あらすじ

戦国時代(紀元前475〜前221年)。天下統一を狙う秦が趙へ迫り、趙王は40万の大軍を率いて長平で秦軍と対峙する。趙の潞邑の城主、劇葱も新妻の驪に後を託し、15歳以上の男全員を率いて出陣、1年以上が過ぎていた。一方、麦の刈り入れをしたいがために戦場を脱け出した秦の勇士の暇と、臆病風に吹かれて逃げ出した同じく秦の雑兵の輒は、脱走が見つかり秦兵に追われ、崖から川に飛びこんで、趙へと流れ着いてくる。気を失った2人は、女だけで守る潞邑に運びこまれる。

輒の肩に秦の矢が突き刺さっていたことから、女たちが2人を趙兵だと思いこんだのを幸い、驪に戦況を尋ねられた2人は、趙が秦に勝ち、秦兵全員を皆殺しにしたと事実とは正反対の話をする。だが、そこに趙の敗北に乗じて盗賊たちが乗りこんできて、城を占拠しようとする。いきがかり上、2人は盗賊の頭目の冲を殺し、さらには女たちを手伝って麦の刈り入れまでする。すっかり2人を信用した女たちだったが、驪が劇葱に贈った翡翠の飾りを戦場で拾った暇が持っているのを見つけ、疑惑を抱く。驪もまた、趙が勝利を収めたのなら、盗賊たちがやってくるはずがないと悟り、女たち全員に自害を命じる。暇は死のうとしている驪を救出するが、驪は秦軍と共に戻ってきた趙の生き残りの少年兵たちのもとへと去る。

解説

黒澤明ばりの人間ドラマ時代劇を撮りあげた監督の何平を見直す。8年前、現場通訳として参加した同監督の前作『ヘブンアンドアース』は、あまりにスカスカの内容だった。アン・リーの『グリーン・デスティニー』の成功以来、大作時代劇が流行、その波に乗って、かつて『双旗鎮刀客』というきらりと光る時代劇の佳作を撮った何平も、形ばかり豪華な作品にはまってしまったのだった。しかし、最近の中国映画には、地に足のついた個性的な作品が増えつつある。本作もまた、よく脚本の練られたユニークな時代劇となっている。

戦国時代の英雄を主人公とする映画はたくさん作られてきたが、この作品のユニークさは名もない農民兵士と男たちを待ちわびる敵国の女たちを描くことによって、打ち続く戦乱の愚かさを浮き彫りにした点にある。歴戦の勇士でありながら、刈り入れの季節になると農民の血が騒ぎ、実った麦を放っておけない、野性味ある男という主人公の設定がいい。それとは対照的な、いやいや兵に取られ、腕力もなく、何とか生き延びることばかりを考えているいじましい男。そんな2人が女たちを殺して城を占拠すれば昇進できると目論むが、最後は人間性に目覚め、盗賊から女たちを助けるというドラマに人間に対する根本的な肯定があるため、悲惨な結末ながらもこの映画の後味をよくしている。

ただ、一箇所だけ疑問を感じたのは、趙が秦兵の捕虜を虐殺し、12歳以下の少年兵に父や兄たちの末路を見せつけたという残忍な話を聞いても、いくらそれが敵の話とはいえ、その残虐さにいささかの痛痒も感じずに、勝利にのみ感激して涙する城主の奥方の描き方だ。盗賊からは自分の命を賭けても幼児と女たちを守ろうとした彼女が愛を向けるのは、自国の人間だけというように受け止められてしまうのはどんなものだろうか。

見所

タイトルにもなっている黄金色の一面の麦畑が美しい。よくぞ、こんな場所を見つけてきたものである。残虐な戦争と対照的な生と実りを感じさせて見事である。撮影の趙暁時が、『レッドクリフ』の呂楽や張黎と並んで金鶏賞撮影賞にノミネートされているのも納得である。

主演の2人の男優が、初めての大役に大熱演している。暇を演じる黄覚はこれまで映画でもドラマでも二枚目役が多かったが、今回は三船敏郎ばりの野性味ある男を好演していて、悪くない。一方、情けない相棒を演じた杜家毅は、『こころの湯』で30キロも太って銭湯でカンツォーネを歌っていたが、映画出演はこれが二作目。彼は北京の後海畔にある梅蘭芳ゆかりのレストラン梅府家宴の経営者でもあり、「梅蘭芳」の映画化権を獲得し、プロデューサーの1人を務めている。中村梅之助を彷彿とする風貌と抜け目のない三枚目ぶりに、今後の活躍が期待される。美しい范冰冰がこの映画では麦畑と並んで唯一の目の肥やしだが、助演陣がなかなかユニーク。

巫女を演じるのは、かつて大ヒットドラマ『北京人在紐約』や映画『べにおしろい 紅粉』、名作ドラマ『雷雨』で、成熟した美しさを披露していた王姫で、ついにこういう役をやるようになったのかと感慨深い。同様に盗賊役の王志文もまた、かつての二枚目俳優はとうとう性格俳優路線が定着かと、驚愕の扮装ぶりであった。初出演映画『私たち』で東京国際映画祭主演

女優賞を受賞した超ベテランの金雅琴は、サービス出演だと思うが、名優王学圻の城主役は宝の持ち腐れ感がなくもない。

人民中国インターネット版より