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japanese.china.org.cn |14. 05. 2024

水:希少種スナメリ戻った長江

タグ: 長江
人民中国  |  2024-05-14

段非平=文 

 水は生存の基であり、文明の源である。ここ数年、中国は数多くの「清流防衛戦」を展開し、かつての化学工場に取り囲まれ、泥と砂が流れ、汚水が流れていた河川は、今ではさらさらと水が流れ青く輝く清流となった。  

 病み傷ついた河川の「処方箋」 

 大きな頭部に小さな目、少し上がった口角――江蘇省南京市にある江心洲長江大橋の近くでは、市民が「ほほえみの天使」と呼ぶスナメリが水遊びをする光景がよく見られる。絶滅の危機にさらされたスナメリが、こうして頻繁に長江に姿を現すその裏には、多くの努力があった。  

 中国を横断する長江は全長6300㌔余りの大河で、中華民族の「ゆりかご」となっている。長江経済ベルトは11の省・市をカバーし、その人口規模と総合的な経済力は中国の「国土の半分」を占める。しかし、経済が高度成長すると同時に、長江沿岸の生態環境も深刻な被害に直面した。 

 「長江は病んでいる。それも軽くない」。16年に開かれた「長江経済ベルトの発展を推進する座談会」で、習近平総書記は心を痛めてこう述べた。そこで、長江の「病気」を治すため、一連の「生態保護堅塁攻略戦」が沿岸の各都市で始まった。◇長江上流で最大の中洲である重慶広陽島では、生態修復と環境整備の面積が300万平方㍍を超えた◇三峡ダム区の湖北秭帰しき港岸壁は、「クリーン陸上電力」によって、ディーゼルエンジンのごう音と停泊船の油煙が四方に拡散する光景に別れを告げた◇長江本流沿岸の全ての岸壁で船舶ごみ収集施設の設置を実現した◇21年1月1日午前0時から、長江流域の重点水域で「10年間の禁漁」が実施された――その結果、23年、長江経済ベルトでの優良水質の割合は94%に達し、生態システムが明らかに好転し、美しい長江が戻った。 

 生態システムの退化、深刻な水と土壌の流失、河口湿地の衰退……中華民族の母なる川・黄河も、かつては「病弱」だった。黄河流域における生態保護と質の高い発展は19年、重要な国家戦略となり、水源の維持能力の向上、水と土壌保全能力の強化、湿地生態系の保護など一連の措置により、黄河は次第に新たな姿を表していった。 

 「子どもの頃は、黄河で水をくんだら、半分は砂でした。今、黄河は峡谷の中に『漂う』緑の帯のように、ますます清らかになりました」と、黄河沿いの陝西省楡林市の高西溝村に住む王諾さんは感慨深く語った。 

 経済発展の中で清流を守る 

 水質汚染の源は陸上にある。水質環境を改善するには、生産方式とライフスタイルの転換が鍵となる。 

 敖ごう江は、福建省古田県の鷲峰山脈に源を発する。敖江の上流に位置する古田県鶴塘鎮は、豊富な花崗岩資源によって石材産業を発展させてきた。だが、土ぼこりが舞う採石場の影響で、敖江は一時期、深刻な汚染のため川が牛乳のように白濁する「牛乳江」になった。 

 経済発展と水資源保全のどちらかで、古田県は後者を選んだ。古田県では、16年から連続して4億元を投じて石材産業の整備に取り組んできた。流域内の102カ所の鉱山を閉鎖しただけでなく、企業の生産品目の変更と産業のモデルチェンジを積極的に促し、現代農業やエコツーリズム、サービス・飲食など一連の代替産業を育成した。こうした総合的な整備(3)により、敖江(古田区間)の主要流域の優良水質率は100%に達している。  

 多くの沿岸住民も水質環境の改善で暮らしが変わった。湖南省瀏陽市の蓮花通り街道弁事処(町会事務所)では12年2月、25人の漁師と契約を結び、かつて魚を捕っていた漁師の手は招聘状を受け取り、今では魚を守る手に変わった。 

 漁業資源や水質環境を保護するため、瀏陽市では同市の瀏陽川などの重点水域を指定して禁漁を実施し、禁漁巡視・保護チームを組織した。漁師から禁漁の巡視・保護員に「転業」した羅世桃さん(59)は、小さい頃から漁船の上で育ち、川筋や水域に詳しい「生きた地図」だ。「経験豊富なベテラン漁師に巡視・保護員になってもらうことは、生態的な効果・利益と社会的な効果・利益を結びつけることで、一挙両得の効果を発揮することができます」と蓮花通り農業農村事務室の葉建主任は言う。 

 水質環境の改善には時間がかかるので、長期的かつ効果的なメカニズムを構築しなければならない。2012年以降、エコ文明建設の評価・考課制度と責任追及制度が次々と確立され、「河長制度」(河川保護責任者制度)をはじめとする一連の制度刷新も中国各地で推進されている。  

 張林堂さん(53)は天津市浜海新区新河の街道弁事処の主任で、管轄区域の河川の「総河長」でもある。張さんのノートには、域内の大小河川の状況がびっしりと記されている。 

 昨年夏、水草の過度の成長で水中の酸素が不足し、一部の川に魚が死んで浮かぶということがあった。そこで張主任は直ちに対策グループを立ち上げ、水草と死んだ魚を回収した。この間、回収船は186回出動し、回収物の総重量は640㌧に達した。2カ月の奮闘を経て、川の水は再び青く光る水面を取り戻した。18年6月末までで、中国は31の省・自治区・直轄市で河長制が導入され、各地が共同で清流を守っている。 

 長年の努力を経て、中国の「水機能区」(水資源の保護と最適な利用を保障するエリア)における水質基準の達成率は、12年の63・5%から22年の95・6%に向上した。一連の「清流防衛戦」は、静かに流れる清らかな河川を人々にもたらし、後世へと伝えていく。 

 「人民中国インターネット版」2024年5月14日