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japanese.china.org.cn |14. 05. 2024

林:1本から広がった修復物語

タグ: 林
人民中国  |  2024-05-14

王朝陽=文

 森は人類が最も古くから郷愁を覚える場所である。長い歳月にわたり、数え切れない人が森に宿る無限の生命力と豊かな資源を称えてきた。果たして今日の中国の大地では、森についてどんな緑の物語が書かれているだろうか――。

 世界最大規模の人工造林

  公務員の孫茜さん(35)は毎朝起きたら、すぐ携帯電話のアリペイ(電子商取引)アプリ内のミニプログラム「アント・フォレスト」を開いて、自分と友達のエコポイントを受け取る。このポイント活動アプリ「アント・フォレスト」は2016年8月にスタートした。会員は、日々の生活で歩行やアリペイで水道光熱費を支払うなど、環境にやさしいCO2排出削減(4)活動を行ってエコポイントを受け取り、バーチャルの木を育てていく。この木が成長すると、「アント・フォ レスト」とパートナーの公益団体は、生態系の修復が必要な地域で本物の木を植える。そして会員は植樹証明書を受け取 る。

 「私はロイヤル会員です。7年間も続けてきました」と自慢気に話す孫さんは、「アント・フォレスト」のマイページを開いた。すると、そこには彼女の過去数年間のグリーン・脱炭素の取り組みを物語る13枚の植樹証明書があった。今では、「アント・フォレスト」を通じてクラウドの植樹活動に参加しているアクティブユーザーは、累計で6億5000万人を超えた。これは、中国人の植樹への情熱がうかがえる一面だ。

 全国人民代表大会で1981年12月、「国民全体の義務植樹運動の展開に関する決議」が可決された。それから40年余り、植樹・造林や国土の緑化は、中国人一人一人の心に深く刻み込まれた共通認識と自覚的な行動となっている。特にここ数年、ますます深刻化している気候変動などのグローバルな課題に直面し、多くの人は植樹・造林に環境改善の願いを託している。またそれだけでなく、自分自身の日々の小さな努力を通し、気候変動の緩和に向け、さらに強い力を結集して全人類の生存に貢献したいと望んでいる。

 だが地球に目を向けると、森林面積は今も絶えず減り続けている。国連食糧農業機関(FAO)が2020年に発表したグローバル森林資源アセスメント(FRA)によると、1990年以降、世界は1億7800万㌶、ほぼリビアの国土に匹敵する森林面積を失った。このうち2010~20年に森林面積は毎年470万㌶減少した。地球の緑化は一朝一夕になるものではなく、根気強く努力を惜しまず行う必要がある。

 中国は1970年代から、大規模な国土緑化と生態保護プロジェクトに取り組んできた。例えば、「三北(西北・華北・東北地方)」や京津(北京・天津)地域の防護林の建設などだ。過去数十年にわたり、中国人は世界で最多の森林資源の増加と最大の人工造林の面積という抜きん出た成果を自らの手で記してきた。

 現在、中国の森林面積は2億3100万㌶に達し、森林カバー率は24・02%に達した。2000~17年に、世界で新たに増えた緑化面積のうち25%は中国によるもので、その寄与率は世界一だった。

 営林場から広がる植樹の海

 植樹を続け10年――。河北省承徳市と内蒙古自治区の境に位置するサイハンバ(塞罕壩)機械化営林場は、過去数十年にわたる中国の緑化プロジェクトの縮図である。

 「サイハンバ」という名前は、「美しい高原」という意味だ。過去にうっそうと木々が茂っていた当地は、歴史的に清王朝の皇室専用の狩猟場だった。しかし清朝末期から中華民国の時代にかけ、過度の開墾や伐採、連続で発生した山火事により、当地の森林は激減し、土地の砂漠化はますます深刻になった。

 1950年代には、サイハンバは高原の荒れ地へと後退してしまった。林業の専門家が61年に当地を訪れ、数日間にわたって調査したところ、1本のカラマツを見つけた。この孤独な松の木は、環境悪化の証であると同時に、生態回復の希望でもあった。

 サイハンバ機械化営林場は62年、正式に設立された。森林を壊すのはたやすいが、植生を復活させるのは困難を極める。最初の2年間、経験不足のため造林の定着率はわずか8%だった。その後、寒冷で乾燥という劣悪な気候条件に適応できる苗木の育苗法を探し求め、技術者がさまざまな試行を繰り返した結果、ようやく良い解決策を探し当てた。この技術を活用して、緑はついにサイハンバに再び根を下ろした。

 82年に大規模な植林に成功を収めた後、サイハンバのスタッフたちは、また新たな難関に次から次へと挑んでいった。2012年からは、これまで人が入ったことのない岩石質の山の斜面での難しい造林工事を始めた。こうして30年までに、営林場の森林カバー率は最大の86%を達成する――つまり、道路や建物を除く営林場の全ての土地を緑で覆うという目標に向けた取り組みが始まった。

 1本の木から一面が緑の海となったサイハンバは、今では森林面積は115万1000ムー(約7万6733㌶)に達し、植樹本数は約5億本で、世界最大の人工林となっている。ここの木を1㍍の間隔で並べたら、赤道を12周する多さだ。

 サイハンバでは、環境改善のみならず、森林の経済効果も直接的に分かる。中国林業科学研究院の評価によると、サイハンバの森林生態は毎年、水源の保持や土壌流出の減少、炭素固定など毎年100億元を超える生態系サービスの経済価値を提供する。現地の人々も森林資源を生かして、苗木の育成やエコツアーなどの産業を積極的に展開している。周辺では4万人以上がこの恩恵にあずかり、2万2000人の貧困脱却が実現した。

 中国の植林は一定の成果を得たが、森林カバー率は依然、世界の平均である30・7%より低く、1人当たりの森林面積も世界人口1人当たりの3分の1にさえ満たない。中国は22年、「全国国土緑化計画要綱(2022〜30年)」を発表し、「第14次五カ年計画」(2021~25年)の期間に、造林や植栽などにより5億ムー(約3333万㌶)の国土を緑化し、都市の緑化率を43%、村の緑化率を32%にする計画目標を立てた。中国の大地では、緑の物語がこれからも書き続けられていく。

 「人民中国インターネット版」2024年5月14日