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japanese.china.org.cn |14. 05. 2024

湖:海浜都市アモイ復活の努力

タグ: 湖
人民中国  |  2024-05-14

夏媛媛=文

 中国には湖が多く、大小さまざまな湖が2万5000カ所近くあり、まるで大地に埋め込まれた「真珠」のように各地に分布している。過去には、一部の地域で乱開発や過剰な汚染水の排出により、湖の面積が縮小し、水質が悪化。「真珠」は砂ぼこりをかぶって輝きを失なった。しかし、中国はここ数年、厳格な生態環境保護制度の導入を通じて湖の生態を継続的に改善し、水質環境の「健康」を維持し、再び清く澄んだ湖水により、人と水が調和し共生できるようになった。

 悪臭の湖を「都会の応接室」に

 廈門(アモイ)市で唯一の人造海水湖である篔簹うんとう湖は、面積1.6平方㌔㍍。海とつながっていることから、この海辺の都市が「街は海にあり、海は街にある」という名声を得た。しかし、1980年代、周辺住民が排出する生活排水や、300余りの工場からの産業排水が処理されずにそのまま湖に流れ込んだため、篔簹湖はゴミの山と雑草が生い茂る劣悪な生態環境となった。

 「かつて篔簹湖は悪臭を放つドブ川として知られ、湖のそばで暮らす庶民は悲惨な状況でした」と振り返るのは、アモイ市篔簹湖保護センターの上級エンジニアで、子どもの頃から篔簹湖の近くに住んでいる傅迅毅さんだ。

 篔簹湖の清らかな湖水を取り戻すため、アモイ市政府は「汚水の遮断と処理、汚泥しゅんせつと堤防の建設、水域の活性化、環境美化」という構想に基づいて篔簹湖の改修を開始した。その後、長年にわたる全面的な改修によって、篔簹湖は汚水があふれる湖から清く澄んだ湖水へと変わった。

 湖水の悪臭をなくすためには、まず汚染源を抑え込まなければならない。アモイ市政府は、汚染水を遮断するために、篔簹湖周辺の産業排水の源である企業100社余りを閉鎖・移転させ、下水処理場を建設。湖周辺の汚水遮断などのプロジェクトを実施し、「晴れた日は汚染水を湖に排出しない」という整備目標を基本的に達成した。

 アモイ市政府は、長年にわたって蓄積した汚染物質を一掃するため、大規模なしゅんせつ工事を実施。沈泥を処理した後、堤防を築き、湖の中央に島を造成した。これにより水質が改善されただけでなく、篔簹湖の水害防止機能も大幅に強化された。

 また地元では、海水の干満差を革新的に利用し、湖と海を結び付けている。海側の堤防に水門を設置して満潮時に水を受け入れ、干潮時には排水。さらに導流堤を建設し、水を循環させて湖全体の治水能力と湖水の交換能力を効果的に向上させた。

 篔簹湖保護センターのデータによると、近年、湖水環境と生態は大幅に改善され、水中のアンモニア性窒素濃度は、87年に1㍑当たり39・4㍉㌘だったのが、2022年には0・067㍉㌘まで低下した。一方、湖ではこれまでに植物プランクトン123種、動物プランクトン73種、鳥類計95種が確認されており、毎年多くのカワウや渡り鳥がやって来て当地で越冬する。

 今では篔簹湖の水は清く澄み、観光客は湖の周りの道路でそぞろ歩きしたり、渡り鳥を観察したりし、生態系の美しさを楽しんでいる。また篔簹湖は、素晴らしい景観を持つ生態エリア都市・アモイの「応接室」と「顔」であるだけでなく、にぎやかな市内中心部にある都市湿地公園でもあり、現代的な都市における人間と自然の調和の取れた共生の実践的な手本となっている。

 20年かけ万物共生の楽園整備

 篔簹湖の湖畔では、導流堤のそばにマングローブの林が連なって植えられているのをよく見かける。時折シラサギが枝先に立ったり、餌を探して戯れたりするなど、人間と自然が調和して共生する様子を表している。

 マングローブは汚染物質を吸収する能力があり、湖周辺の生態景観の美化や炭素の吸収・貯蔵、生物多様性の維持などの面で常に重要な役割を果たしており、「海の緑の肺」「沿岸のガーディアン」として称えられている。篔簹湖周辺でもマングローブが生い茂っていたが、1980年代に一時、海を埋め立てて田畑にしたことにより、周囲のマングローブ林は消えてしまった。

 湖の生態系を回復するために、篔簹湖管理事務所(前アモイ市篔簹湖保護センター)は、湖の近くでマングローブ林の手作業による修復と植林の実験を開始した。「当時、湖の堤防近くの海の泥の量では足りなかったので、湖の奥から泥を運んできて、小舟で干潟まで運びました。そして作業員が、ドロドロの土の塊を膝や腰が隠れるほどの水の中で広げるなど、その作業量は膨大でした」と廈門大学環境・生態学院の盧昌義教授は振り返った。

 植林と修復のプロセスは2001年から現在まで 20年余り続いている。盧教授は、「篔簹湖のマングローブの植林には延べ2000人余りが参加しました。皆が力を合わせ長い間努力してきたおかげで、現在、栽培面積は約2万6000平方㍍に達しています」と語った。

 篔簹湖の湖水の生態系は、今では大幅に向上し、多くのシラサギが餌を求めて飛来し生息。市内には鳥の楽園というオアシスができている。

 「悪臭を放つ湖」から「都市の応接室」へと、篔簹湖の総合的な整備は、中国における生態系回復の典型的な事例となっただけでなく、国連開発計画から「東アジアの海洋汚染防止と管理モデル地区のモデルプロジェクト」としても評価されている。

 篔簹湖の他にも、体系的な生態管理により「華北の腎臓」となった河北省の白洋淀や、漁業資源保護のため10年間の全面禁漁を実施した江西省の鄱陽はよう湖、さらに都市と湖の共生的な発展という新たな状況を切り開いた安徽省の巣湖など、青く波が輝き、魚が跳ね鳥が舞う湖面は、万物が調和し生きる美しい絵巻を描いている。

 「人民中国インターネット版」2024年5月14日