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japanese.china.org.cn |14. 05. 2024

草:エコ大移住で牧畜民も増収

タグ: 草
人民中国  |  2024-05-14

李家祺=文

 春の中国は一面に新緑が広がる。もし森を「地球の肺」に例えるなら、草原は「地球の肌」といえるだろう。

 中国は草原資源の大国だ。12年以降、中国は生態保護修復の重要プロジェクトに力を入れ、国土の緑化を科学的に推進することによって、草原の生態を回復し続けてきた。「2023年中国国土緑化状況公報」のデータによると、中国の年間植草の面積は23年に437万9000㌶に達し、そのうち、人工植草の面積は105万4000㌶で、改良した草原の面積は332万5000㌶に達した。

 黒い砂地が良質な牧草地に

 「私は草原で育ったので、草原を守り、この黒い砂地を緑にしなければなりません」。夜が明けると、青海省ゴロク(果洛)チベット(蔵)族自治州達日県窩賽郷の草原管理・保護員の砂群さんは家を出て、一日の巡視を始めた。

 平均標高4200㍍という達日県は、黄河の源となる重要な水源保水地である。だが、過放牧や気候変動などの多重的な原因の影響で、かつて美しかったこの高冷草原は次第に荒れ、黒褐色のまだらな地肌がむき出しの「黒い砂地」になってしまった。

 こうした現状を改善するため、近年、達日県では生態管理と保護を第一の任務とし、草原の生態修復活動を積極的に推し進めている。

 「見てください。昔あの山の斜面はネズミの穴だらけで、砂地になりかけていたのですが、今では草がよく生えていますよ」と、砂さんは言い、近くに広がる緑を指した。

 達日県は17年、退化草地総合管理試験区のモデル事業を届け出た。科学研究チームの技術指導の下、達日県は黒い砂地を修復する経験を徐々に積み重ね、全国の高冷牧草地の修復事業の手本となった。

 現地の優秀な品種の草を複数選び、これを組み合わせて実験して植生の定着性を高めたり、混合品種の種まきや調合施肥などの技術を総合的に応用したりして黒い砂地を修復した。こうした一連の効果的な措置によって、減少した草原は徐々に昔のうっそうとした緑を取り戻していった。

 「これは不織布です。土壌の温度と湿度を保つことができるので、これさえあれば若い苗もしっかり根を張ることができます。芽が出たら、この不織布はゆっくり風化していきます」と達日県自然資源・林業草原局の賀文靖副局長は話し、丘の斜面を覆っている緑色のフィルムを指差した。不織布を使った栽培方法なら、牧草の活着率を30%から80%以上に高めることができる。

 昨年7月までに、達日県は計246万300ムー(約1640平方㌔)の黒い砂地を修復し、牧草の平均的な高さは30㌢以上に達した。また天然の草地での草の平均生産量は1ムー当たり213㌔を超え、かつての黒い砂地は、今では緑の草が敷き詰められて新しい命の旋律が草原に響き渡っている。

 緑化と増収のウインウイン

 内蒙古自治区通遼市ザルト旗のアルフンドラン草原は、毎年5月になると最も美しい季節を迎える。広大な草原には新緑が果てしなく続き、野生の小動物が出没するのを見かける。だが10年余り前、ここの風景は今とは全く違っていた。

 「昔は人々の生態保護に対する意識が今より低かったのです。誰もが牛や羊を飼えば飼うほど金を稼げると考えていました。この草原がこれほど多くの牛や羊を受け入れられるかどうかなんて、考えてもいませんでした。ところが草が生えなくなり、牛や羊が腹をすかし、牧畜も稼げなくなりました」と、元放牧民のウユン・アオリゲレさんは振り返った。

 長年の過放牧が招いた草原の急速な退化や、複数の河川の断流、放牧収入の年々の低下という厳しい状況に直面。ザルト旗では長期的な将来に着目し、「生態移民」戦略の実施を決意した。

 ザルト旗の下のアルフンドラン鎮では13年、「生態移民」プロジェクトをスタートさせ、11カ所の村から789世帯総計2116人を相次いで移住させ、80万ムー(約533平方㌔)の無人無家畜地帯と360万ムー(約2400平方㌔)の連続した集中生態機能区を構築した。

 長期にわたる放牧・開墾禁止令による保護と自然修復を経て、アルフンドラン草原は鮮やかな「変身」を遂げた――枯れた川に再び水が流れ始め、牧草の成長は年々良くなり、アカシカやキツネなど10種類余りの獣類とアネハヅルやソウゲンワシなど20種近くの鳥類が再び草原に姿を現した。

 生態移民の後、アオリゲレさんの家族は通遼市内に移住し、自身も地元の管理・保護ステーションのスタッフになった。「今は仕事もあるし、市内に団地の部屋も持てて以前よりずいぶん生活条件が良くなりました。車も買ったし、全て今まで想像もできなかったことです」と、アオリゲレさんはほほえんだ。

 農民・放牧民が草原保護に積極的に参加するよう、11年以降、中国は内蒙古やチベット、新疆など13の主な草原・牧畜区がある省・自治区では、草原生態の保護・補助・奨励政策を実施。牧畜民の草原での放牧禁止の展開と、草と家畜のバランスを取る措置の実施に対し、一定の奨励・補助金を与えている。これは、現有する草原への投資規模が最も大きく、影響範囲が最も広く、農牧民が最も直接的な恩恵を得られる政策である。

 21年に発表された「国務院弁公庁の草原保護と修復の強化に関する若干の意見」では、中国の草原保護・修復について段階的な目標が示された。それによると、25年までに草原の総合植生カバー率を約57%に安定させ、35年までに草原の同カバー率を約60%に安定させる計画だ。

 将来、草原には「天蒼蒼、野茫茫、風吹草低見牛羊」と古詩に描かれてあるように、「空はどこまでも青く、草原は果てしなく広がり、風が吹いて草が低くなびくと、放牧された牛や羊の姿が現われる」という美しい風景がさらに増えていくだろう。

 「人民中国インターネット版」2024年5月14日