女優・江一燕は映画「南京!南京!」の中で、強情な性格の売春婦・小江を演じた。平和な時代にも人から卑下されていた彼女は、戦時中でも同じく無力な存在だった。しかし彼女は、日本軍がやってきて中国人女性を慰安婦として100人集めると言ったとき、真っ先に手を上げ、他の人の代わりに自ら犠牲となった。
この小江には、モデルとなった人物がいる。南京大虐殺を体験した米国人Minnie Vantrinさんは日記の中で、「日本人は彼女のいた学校にやってきて、女性を無理やり連れ去ろうとした。さもなくば負傷兵の捜査を理由に安全区に立ち入るところだった。このとき、数人の売春婦が自発的に立ち上がって彼らと共に去った」としている。
江一燕は最も遅く撮影チームに参加した俳優だ。彼女の役・小江はもともと、他の女優が演じることが決まっていた。しかし、(売春婦という役どころもあり、)家族が強烈に反対したことから、最終的にその女優はその役をあきらめたという。
江一燕は「南京!南京!」のオーディションに1度落ちたことを隠さない。「最初に監督が私の会社を訪れて俳優を選んだとき、私は選ばれませんでした。監督は私のことを、高校生のようだと思ったそうです」。しかし江一燕は落選後、思いもよらず陸川監督からのショートメールを受け取る。「内容は簡単でした。『南京!南京!』のなかで強情な売春婦の女の役があり、米と身代わりに自分が(慰安婦になり、)犠牲になったと。陸川監督は、『君の眼から意思の強さを感じたのを覚えている。演じてくれないか』と言ってくれました。私はやってみるべきだと思いました」。
映画「南京!南京!」の撮影が終わった後、江一燕は半年以上をかけて様々なところへ旅行へ出かけた。旅の途中、たびたび悪夢から目覚め、窓の外の太陽の光を見たとき、今という時代は本当にいいなあと感じたという。
江一燕は撮影を振り返り、「日本人の役者との共演中はずっと、複雑な気持ちを感じていました」と語る。役に入り込むあまり、撮影以外のときでも日本人俳優と話をすることはなかったという。しかし最近、杭州で舞台挨拶をしたとき、客席から日本人俳優に罵声が飛び、角川役を演じた中泉英雄さんが舞台の裏で号泣するという出来事があった。「私は彼にティッシュを渡し、励ましました。彼はあまり流暢ではない中国語で、『ずっと平和が続いて欲しいと思います・・・』と言いました。それを聞いて私も一緒に涙しました。あれが、撮影開始から今まで、彼との1度きりの会話です。」
江一燕はまた、「日本の若者に72年前の罪を背負わせるのは不公平です。『南京!南京!』が、両国の人々、さらには世界にとって交流・反省のきっかけとなり、平和への期待につながれば、それこそ私たちがこの映画を撮影した本当の願いです」と語った。
「人民網日本語版」 2009年4月24日