読者:「南京!南京!」中国の声を世界から日本へ

japanese.china.org.cn  |  2009-05-04

読者:「南京!南京!」中国の声を世界から日本へ。

タグ:読者 「南京!南京!」 中国の声 世界

発信時間:2009-05-04 10:39:54 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

チャイナネットが4月に、『陸川監督の「南京!南京!」』という特集を出したが、4月30日に話題の映画「南京!南京!」を中国で見た宮田さんは次のような感想を寄せた。

陸川監督の「南京!南京!」(特集)

 

一 劇場の様子

客席はほぼ八割方埋まっており、この映画に対する並々ならぬ関心の高さが窺えました。お客は老若男女様々ですが、若年カップルが多いようでした。初めは、気楽な様子で、お菓子を持ち込んだり、お喋りなどしていましたが、映画が始まると間もなく、場内の空気は重く沈み、嘆声や嗚咽が聞こえるようになりました。ただ、この映画の最後は子供の笑顔―未来への希望、勝利への確信―で終わりますので、放映後の場内には、激しい悲しみと痛みの後の、静かな自信が漂っている様子でした。

二 完成度の高い映画

「南京!南京!」は、戦争映画としても、また人間ドラマとしても、芸術的技術的にとても優れており、完成度の高い映画だと思いました。抗戦映画としては所謂「経典」以来の最も優秀な作品の一つでしょうか。とにかく、監督をはじめ、スタッフ、俳優、エキストラの皆さん全てが、1937年の”あの日”の再現へ全力を尽くしたという感じでした。

また、民族的でありながら普遍的であり、戦争と平和、生と死、善と悪、勇気と狂気、無私と利己、優しさと冷酷、希望と絶望・・・それらの根源的な激烈な対比が、見る者の全ての感覚と思想を直撃し、映画でありながら、まるで一幅の巨大な絵(その絵の題名は「中国不会亡!」)に圧倒されるようで、2時間という時の長さを少しも感じさせませんでした。

三 全体的な感想―衝撃と解放感

「南京!南京!」は、日本人として、やはり大変衝撃的な映画でした。しかし、この映画が糾弾しているのは、あくまで日本の軍国主義であり、日本全体でも、個々の日本人でもありません。無論、この映画が、当時の中国と世界の人々の目に映った「日本人の姿」を、できるだけ客観的に、そして劇的に再現したものであることは間違いありません。しかし、だからといって、それが現代の日本や日本人のイメージを大きく損なうとは思えません。むしろ、この映画を声高に批判したり、無関心を装ったりして、事を済まそうとすれば、かえってその悪意と偽善を見抜かれ、見損なわれてしまうでしょう。

この映画では、様々な日本人―将校や兵士、文官、記者、慰安婦等々が、とても繊細に人間的に描かれており、確かに、かつて存在していた血も肉もある日本人だと感じました。ただ私としては、「殺される側」の中国の群衆の対比として、「殺す側」の日本の群衆、即ち所謂「南京陥落」の歓喜に湧く、当時の日本の庶民の姿をも描いてほしかったです。その方が、この侵略戦争の本質をより明確にし、日本軍国主義の狂気と罪悪を際立たせることができたと思うのです。

何故なら、本来決して悪人ではない普通の人々が、どうしてあのような、正に「鬼」としか言いようのない、残酷で卑劣な行為を平然と或いは嬉々として行い、支持することができたのか、単に「戦争の狂気」や「騙された」では済まされない、日本の特有の思想や体制というものの正体を、そして、それらが現在の日本において、どのような形で残存し、日本人の心に巣食い、蝕んでいるのかを、私は真剣に考え、追及したいと思いますから。

日本人はこの映画を見るべきでしょうか。私はできるだけ見てほしいと思います。「南京」は、日本人にとって、無知では済まされない歴史、決して忘れてはならない記憶、見なければならない鏡なのです。都合の良い事実だけ拾い、手前勝手な解釈を施し、不快で苦痛な事実は拒否する、そんな「歴史」から導かれた日本の自己認識などに、私は魅力や共感や誇りなど、微塵も感じることができません。むしろ、どんな大きな罪を犯し、どんな愚かな過ちを犯し、どんな奇行に走っても、事実は事実、日本人は日本人として受け入れることで、逆に本当の日本人の良さも見えてくると思うのです。

ただ、この映画が私に与えたのは、決して苦痛や恐怖だけではありません。何故なら、この映画を通じて私は、人間の素晴らしさ、平和の尊さ、日中友好の有難さを改めて痛感するとともに、ある種のカタルシス―心の奥の暗く重いものから解放され、軽くなるよう感覚をも味わうことができましたから。


四 角川と百合子の死―彼らの魂は何処に

この映画には、哀れな日本人として、憲兵の角川と慰安婦の百合子が描かれています。角川は自殺、百合子は前線で非業の死(病死か自殺か戦争に巻き込まれたか不明)を遂げました。

角川の自殺の理由ですが、私なりの解釈として、”絶望”と”抵抗”があります。

絶望とは、当時の彼の場合、「鬼として生きることは、死よりも苦痛であり、人として生きるために日本を裏切ることは、死よりも恐怖である」ということです。人が人として普通に生きることを許されない恐怖政治下の日本では、彼のように自ら命を絶った人、或いは不当な暴力によって無念の死を遂げた人が、決して少なくなかったと思うのです。

また、抵抗とは、戦前は無論、現在もなお個人の主張が厳しく抑圧される日本において、自殺は時に個人に残された”最後の自己主張”だということです。角川の場合、捕虜を釈放した以上、彼を待つ運命は銃殺以外ありません。しかし、彼は、銃で自ら頭を撃ち貫くことで、この運命に、消極的ではあるが、最後の抵抗をしたのです。

このような角川は、中国人の目には、或いは理解しがたく、弱者と映るかもしれません。確かに、集団主義の中で育った日本人は、団結して見せる強さとは裏腹に、一人一人は非常に脆く弱いのです。ですから追いつめられると、実に簡単に狂気に陥ったり、自殺したります。そして、そうした自身の弱さを、正にその弱さゆえに、日本人は頑なに認めようとしないのです。

百合子の死因が特定されないのは、その必要がないからでしょう。彼女は正に軍国主義の”犠牲品”だからです。恐らく彼女は貧窮の農家に生まれ、幼い頃両親に売られて娼妓となったのでしょう。人並の生活は無論、故郷にも帰れず、運命に絶望した彼女は、「このまま生きるのも、死ぬのも同じ」と戦地へ来たのかも知れません。彼女の唯一の慰めは、角川の中に、自分と同じ虐げられ傷ついた人間の心を見出したことです。しかし、その角川と結ばれるなど、到底叶うはずない事でした。

彼らの魂は何処に・・・?私は考えずにいられません。恐らく、日本に帰ってはいないでしょう。何故なら、彼らは日本にとって”存在しない者”であり、彼らの生も死も日本の歴史の闇に葬り去られているからです。(中略)

ですから、この映画を少しでも多くの日本人が見れば、彼らの魂も慰められることでしょう。でももし、日本人が誰一人見なかったとしても、彼らは中国の人々の心に残ることで、永遠の日本人像として生き続けることができるわけですから、日本で偽りの歴史の中に封じ込められるより、案外幸せかも知れません。

五 日本での上映―中国の声を世界から日本へ

私は、状況さえ整えば「南京!南京!」の日本上映は可能だと思います。無論、「ジョン・ラーベ」と同様、現在の状況は相当困難です。あからさまな上映禁止や妨害がないまでも、無関心や萎縮からほとんどの日本人は見ようとしないでしょう。仮に見たとしても、内容の重みと映像の衝撃に耐えられないかも知れません。(知人のご主人は中年の日本人で、よく商売で広州へ来たりしますが、ある時ホテルのテレビで抗日戦争映画を見て、ショックの余り一晩眠れなかったそうです。)

ではどうするか。”外堀から攻める”というのはどうでしょう。そもそも「南京」は先の大戦の象徴的事件であり、戦争と平和、暴力と抵抗、ファシズムと人道主義という、人類普遍のテーマを扱うものですから、単に日本人だけが知るべきものではでなく、広く全世界の人々に知ってもらう必要があります。

ですから、この映画が、中国から、同じ痛みを共有するアジア諸国、反ファシズムのヨーロッパ、特にその筆頭であるアメリカ、そして、未だ暴力の恐怖に苦しむイスラムやアフリカ諸国等々と、世界中の国々で受け入れられ、高く評価されることで、様々な情報が自然に日本人の眼や耳に入り、偏見や拒否感、恐怖感を変えていくと思うのです。

例えば、中国政府で国連に働きかけて、12月13日の「南京大虐殺の日」を「国際人道の日」とし、国際会議等で「南京!南京!」や「ジョン・ラーベ」等の映画を放映するとか、100年に一度の金融危機ですから、「自信を持って危機を乗り越えよう!」で、中国式マーシャルプランに乗せて、中国人の頑強精神の象徴としての「南京」を宣伝してしまうとか・・・。

また、個人的な計画ですが、私はこの映画(DVD版)を学生に見てもらい、討論したいと考えています。日本の映画「私は貝になりたい」(無実で処刑されるBC級戦犯の話。2008年にアイドル主演で話題に。)や「望郷」(古典名作。異郷で死んだ日本人慰安婦の話。中国でも上映)も合わせて見てもらうと、歴史を更に多角的に深く捉えることができます。日本の文化(漫画やアニメ、ドラマ)が大好きで、日本へ留学したり、日本関連の仕事に就こうという彼らですから、尚更、歴史問題を理解してもらい、彼らの日本語能力、持前の明るさと積極性で、日本の若者の無知と偏見を溶き解してもらいたいのです。

改革開放以降、中国の国力は目覚ましく増強し、世界中の人々が中国に訪れると共に、中国の人々特に若者が、どんどん世界へ飛び立っていきます。こうして中国の影響力が日増しに大きく高まると同時に、「南京!南京!」のような中国の”声”も、もっと大きく、もっと強く、世界へ発信することができるでしょう。

こうした流れの中で、、「南京!南京!」が日本で上映される環境も次第に整っていくと思うのです。

最後に、このような素晴らしい映画を届けてくれた、全ての関係者の皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。

2009年5月1日 宮田

「チャイナネット」2009年5月4日

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