王夢奎
 

国務院発展研究センター主任で、経済学者の王夢奎氏は、あるシンポジウムで次のように述べた。

 
 

 

 

西部大開発は中国現代化の全局に関わる重要な戦略的問題であり、次のような八つの内容を含んでいる。

一、 西部開発は中国現代化の全局にかかわる。中国現代化の難題は東部ではなく、西
部にあり、中国現代化の着地点もおそらく最終的に西部地区にあるため、西部開発は長期的に堅持すべき発展戦略で、長期的な戦略任務であり、21世紀全体にわたって西部開発の問題を重視すべきである。

二、中国の経済発展における現段階の位置づけ。中国在来の工業化が未完成で、現代化のプロセスが始まって間もない段階で、経済システムと経済成長方式の根本的な転換がまだ完成しておらず、地域間の発展レベルには大きな格差がある。現在の発展段階における問題をいかに総体的に正確に判断するか。経済のグローバル化が加速し科学技術が日進月歩で発展するなかで、中国が工業化と現代化を完成させるにはおよそどのような段階を踏むのか。その他の国と比べてどのような共通性と特殊性があるのか。こうした問題について中国の実状から出発し真剣に研究しなければならない。これは中国の工業化と現代化の問題を研究する際、必ず考えなければならない問題であり、西部開発の問題を研究する際の前提の一つでもある。

三、西部開発の段階性。西部開発は、真剣に計画し、順序立って一歩一歩進める必要がある。まず西部の現状をはっきりさせ、現在から現代化の基本的実現までに西部地区が大体どのような発展段階をたどるか、各段階はどのような特徴があり、何を目標とし任務とするのかを研究し、計画的かつ段階的に現代化を実現すべきである。当面の急務は西部開発の第一段階、すなわち「第十次五カ年」計画期あるいはさらに長期間における西部地区発展の重点、経済成長の潜在力および内部と外部の条件を確定することである。

四、全国の発展は不均衡であり、西部地区の発展も不均衡である。地域格差の問題は基本的に都市と農村の格差の問題であり、工業化、都市化のレベルの格差でもある。中国の工業化と現代化のスタート地点は都市にあるが、最終的な着地点はむしろ農村にある。中国の現代化の困難な点は都市ではなく、広大な農村にある。この問題は本質的には、数億人という農業人口の非農業化もしくは都市化の問題であり、現段階における中国の特色ある都市化の道を研究し、西部開発を進める中で非農業化もしくは都市化の特徴を研究する必要がある。

五、西部開発は全国と協調させながら進める。一部の地区がまず豊かになることを認めるのは大局であり、共同発展、共同富裕を実現することもまた大局で、中国の目標であり、いずれも堅持しなければならない。西部開発は全国の産業構造調整、地区の経済構造調整と結びつけて考えるべきである。いまは、西部開発を通じていかに西部地区の経済振興を促し、全国経済との協調的な発展を促すかを深く研究しなければならない。

六、中国経済は新たな発展段階に入った。西部開発を含む国の全体的な発展について、中国経済が新たな発展段階に入ったという大きな背景の下で考える必要がある。つまり、国内市場の需給関係の根本的変化を十分考慮に入れ、市場メカニズムをより多く利用することを考え、対内、対外開放をいっそう拡大するという背景の下において、中国の経済発展を考え、西部開発の問題を考えるべきである。

七、西部開発の政策的支持。西部開発においては政府が大きな役割を果たす必要があるのは間違いない。検討する必要があるのは、政府はどのような資源を提供できるのか、どのような政策・手段を運用できるのか、政策実施効果をいかに高めるかということである。移転支払いの度合いを大きくし、インフラ建設の面で西部地区により多くの支持を与えることは国がすでに進めており、その続行も疑いない。だが中央の財力にも限りがあるため、主に改革と経済システムの整備を通じて、対内・対外開放を拡大し、経済発達地区、国内外の資源を市場の牽引の下でより多く西部に投入するよう促さなければならない。 

八、西部開発は西部地区の発展の加速化と結びつけなければならない。現在の東部、中部、西部という区分は地理的位置、行政区画、経済発展レベルを総合して考えられたもので、いずれも十分に行き届いているとは言い難い。どのように区分しようとも、経済的に立ち遅れた地区がいかにして強みを生かし、潜在力を掘り起こし、発展を速めるかという問題に本質的な意味がある。中部地区は国の発展の中で重要な位置を占めており、その発展に留意する必要がある。実際、現在国が打ち出している優遇政策の一部は、中部を西部と同じ位置づけの中に置いて実施しているのである。