中国の拡散防止の政策と措置


三、拡散防止輸出管制システム




    大量破壊兵器とその運搬手段の発展と生産に用いることのできる材料、設備、技術を効果的に管理することは、各国が国際拡散防止義務を履行する重要な一側面であり、国際拡散防止の努力が成功を収める重要な保証でもある。一定の科学技術と工業能力を持つ国として、中国はこの分野で担っている拡散防止の責任をよく知っている。長期以来、敏感な物質と技術の国内管理と輸出規制をとわず、中国政府は厳格な管制措置をとるとともに、情勢の変化に応じて、絶えず改善している。

    以前のかなり長い期間に、中国が計画経済体制を実行し、国は主に行政手段に頼って輸出入を管理した。これは当時の歴史的条件の下で拡散防止政策を実行する面で効果があった。改革・開放の深化につれて、特に世界貿易機関(WTO)に加盟してから、中国の国内経済と対外貿易の環境により大きな変化が生じた。いまでは、中国はすでに社会主義市場経済体制を一応構築し、中国の拡散防止輸出管理パターンは行政管理から法制化管理への転換を実現した。

    ここ数年、中国政府は法に依って国を治める原則にのっとって、拡散防止の法制化建設を絶えず強化し、拡散防止政策の効果的な実施を確保している。中国は国際通用の拡散防止輸出規制規範に対する研究を非常に重視し、関係ある多国間輸出規制メカニズムとその他の国の有益な経験を中国の国情と結びつけ、国際通用の規範とやり方を広く取り入れて、拡散防止輸出管理体制の建設を大いに強化、改善し、相次いで一連の法律と法規を制定、実施し、一連の核、生物、化学、ミサイルなどの各種敏感物質、技術およびすべての軍用品をカバーする、完備した輸出規制体制を形成し、拡散防止の目標をよりよく実現するために十分な法的根拠とメカニズム保障を提供した。この輸出規制体制は普遍的に次のようなやり方をとっている。

    輸出経営登録制度 敏感な物質と技術の輸出に従事する経営者にかならず中央政府の主管部門で登録することを要求し、登録しなければ、いかなる部門と個人も関係輸出活動に従事してはならない。核の輸出、監視する化学製品と軍用品の輸出については、さらに専門の経営部門をはっきり規定し、その他のいかなる実体と個人もこの方面の貿易活動に従事してはならない。

    ライセンス管理制度 敏感な物質と技術の輸出が中央政府の相応の主管部門の逐一審査と認可を経て、エクスポート・ライセンスを取得してからはじめて輸出することができると規定している。エクスポート・ライセンスの所持者はライセンスの有効期限内に厳格に認可した内容に基づいて輸出活動に従事しなければならない。輸出の事項と内容に変更がある場合は、もとのエクスポート・ライセンスを返却し、エクスポート・ライセンスを申請しなおさなければならない。輸出経営者は上述の物質と技術を輸出する際、税関にエクスポート・ライセンスを提出し、「中華人民共和国税関法」と関係管制条例および管制規則の規定に基づいて通関手続きをし、税関の監督・管理を受け入れるべきである。

    最終ユーザーと最終用途の証明 敏感な物質と技術の輸出経営者に敏感な物質と技術を輸入する最終ユーザーが出した最終ユーザーと最終用途の証明を提供するよう要求する。異なる状況、特に輸出する物質あるいは技術の敏感さに基づいて、最終ユーザーが出し、自国の政府機関と関係国駐在の中国大使館・領事館の認証を経た証明書類、あるいは輸入国の政府部門の出した証明書類など異なる種類の証明書類を提供する必要がある。最終ユーザーは上述の証明書類の中で輸入する物質あるいは技術の最終ユーザーと最終用途を明らかにするとともに、中国政府の許可を経なければ、中国が提供した関係物質を最終用途以外のその他の目的に用いないか、あるいは最終ユーザー以外の第三者に譲渡しないことを明確に保証しなければならない。

    リスト規制方法 内容の詳しい関係ある敏感な材料、設備、技術の管制リストを作成した。核、生物、化学の分野で、関係リストは「ザンガー委員会」、「原子力供給国グループ(NGS)」、「化学兵器禁止条約」、「オーストラリア・グループ」などのメカニズム規制リストが監督、規制する圧倒的部分の物質と技術をカバーしている。ミサイルの分野では、中国のリストの範囲は「ミサイル技術管理レジーム」の技術付属文書と基本的に一致している。軍用品の輸出分野では、中国政府が2002年に初めて軍用品の輸出管理リストを制定、公布した際も、関係ある多国間メカニズムとその他の国の関係あるやり方を参考にした。中国政府は実状に応じてリストを適時に調整する。

    拡散防止を根本的な出発点とする審査・認可原則 主管部門はエクスポート・ライセンスを発給するかどうかを決定する際に、関係ある輸出が国の安全と社会の公衆利益および国際と地域の平和と安定に対する影響を総合的に考慮する。審査、認可する時に具体的に参照する要素は、中国の担っている国際義務と国際約束、および輸出する敏感な物質あるいは技術が中国の国家安全と社会の公衆利益に直接あるいは間接的に危害を及ぼすかどうかあるいは潜在的な脅威をもたらすかどうか、国際拡散防止の情勢と中国の外交政策に合致するかどうかを含んでいる。輸出する関係ある敏感な物質あるいは技術の拡散リスクの程度については、審査・認可の重要な参考として、審査・認可部門が独自に技術専門家グループを設立して評価する。審査・認可部門はまた最終ユーザーの所在国あるいは地域の状況を全面的に審査し、最終ユーザーの所在国自体に拡散するリスクとその他の国と地域に拡散するリスクがあるかどうかを重点的に考慮すべきである。その中に輸入国が中国の国家安全に対し潜在的な脅威を構成するかどうか、大量破壊兵器とその運搬手段の発展計画を持っているかどうか、大量破壊兵器とその運搬手段の発展計画を持つ国や地域と密接な貿易往来があるかどうか、国連安全保障理事会の決議の制裁を受けているかどうか、テロリズムを支持するかどうか、またはテロリズム組織と連絡があるかどうかを含んでいる。このほか、さらに輸入国が輸出管制を実施する能力およびその国内の政局と周辺環境が安定しているかどうかも含んでいる。最終ユーザーと最終用途に対する審査は、輸入国が関係ある輸入物質あるいは技術を使用する能力、輸入業者と最終ユーザーが真に信頼できるかどうか、最終用途が合理的であるかどうかなどを重点的に判断する。

    全面的規制の原則 輸出経営者が拡散リスクが存在していることを知っているかまたは知るべきである輸出プロジェクトに対し、たとえ輸出を計画する物質あるいは技術が管制リストの範囲に属さない可能性があっても、エクスポート・ライセンスを申請するよう要求する。輸出の審査・認可部門が輸出の申請を審査し、エクスポート・ライセンスを発給するかどうかを決定する際に、関係ある輸出の最終用途、最終ユーザーおよび大量破壊兵器拡散のリスクを全面的に評価する。いったん拡散のリスクを発見すれば、関係主管部門はエクスポート・ライセンスの発給をただちに停止し、輸出を中止する権限がある。同時に、関係主管部門はまた関係リスト以外の特定の物質の輸出に対し一時的管制を実施することもできる。

    処罰措置 認可を経ないで規制されている物質と技術を勝手に輸出し、認可の範囲を勝手に超えて関連の物質を輸出し、関係あるエクスポート・ライセンスを偽造、変造するかあるいは売買する輸出経営者に対しては、「中華人民共和国刑法」の密輸罪、不法経営罪、国家秘密漏洩罪あるいはその他の罪についての規定に基づき、法に依って刑事責任を追及する。犯罪を構成しない場合は、異なる状況に基づいて、政府の主管部門が行政処罰を実施する。その中に警告、不法所得没収、罰金、その対外貿易経営許可の一時停止と取り消しなどを含んでいる。