2002年の中国の国防


二、国防政策




    強固な国防を打ち立てることは中国の現代化建設の戦略的任務であり、国の安全と統一を擁護し、いくらかゆとりのある社会を全面的に建設するための重要な保障である。中国は終始防御的な国防政策を実行している。

    中国が国防政策を制定する根本的根拠は、中国の国家利益である。それは主として、国家の主権、統一、領土保全、安全を守ること、あくまで経済建設を中心とし、総合的国力を絶えず高めること、社会主義制度を堅持し、完全なものにすること、社会の安定と団結を維持し、促進すること、長期にわたる平和な国際環境と良好な周辺環境をつくるために努力することを含んでいる。中国はすべての必要な手段をとって国家の利益を守り、同時に他国の利益をも尊重し、協議によって国と国の間のもめごとと紛争を平和裏に解決することを主張している。

    中国の国防の目標と任務は、主として以下の内容を含んでいる。

    ──国防を強固にし、侵略を防備し、それに抵抗する。中国の領土、領水、領海、領空は神聖にして侵すべからざるものである。中国は新しい情勢下の国家防衛の必要に基づいて、あくまで国防活動を統一的に指導し、独立自主と国民全体の自衛の原則を堅持し、積極的防御の軍事戦略を実行し、武装力建設と国境警備、海岸防衛、防空建設を強化し、効果的な防衛と管理措置を講じて、国の安全を守り、海洋の権益を擁護している。ひとたび国が侵略されるなら、中国は憲法と法律に依り、断固として抵抗する。

    ──分裂を制止し、祖国の完全統一を実現する。中国は全国の各民族人民が共に樹立した統一的な多民族国家である。中国政府はいかなる民族に対する差別と抑圧をも禁止し、民族団結を破壊し国家を分裂させるいかなる行為をも禁止する。台湾は中国の不可分の一部分である。中国政府は「平和的統一、一国二制度」の基本的方針および現段階は海峡両岸関係を発展させ、祖国の平和的統一を推し進めるという8項目の主張に基づいて、最大の誠意を尽くし、最大の努力を払って、平和的統一の前途をかち取るが、決して武力行使の放棄を約束しない。中国はいかなる国が台湾に兵器を売却するかまたは台湾といかなる形の軍事同盟を結ぶことにも断固として反対する。中国の武装力は確固として国の主権と統一を守り、いかなる分裂行為をも制止する決意があり、その能力もある。

    ──武装転覆を制止し、社会の安定を維持する。中国の憲法と法律はいかなる組織あるいは個人が武装反乱あるいは武装暴動を組織、画策、実施し、国家政権を転覆し、社会主義制度を覆すことをも禁止している。中国はあらゆる形式のテロリズム、分裂主義、極端主義に断固として反対する。中国の武装力は法に依って社会秩序と社会安定を維持することを重要な職責とし、各種のテロ活動、敵対勢力の浸透と破壊活動、社会の安定に危害をもたらす各種の犯罪活動に厳しい打撃を与え、社会の安定と団結を促進する。

    ──国防建設を強化し、国防と軍隊の現代化を実現させる。中国は国防建設を経済建設と協調して発展させる方針を堅持し、経費の投入がわりに少ないが効益がわりに大きい道を歩むことを堅持し、経済発展を踏まえて国防と軍隊の現代化を推し進める。中国の軍隊は毛沢東の軍事思想、ケ小平の新しい時期における軍隊建設の思想を導きとすることを堅持し、「三つの代表」という重要な思想を全面的に貫徹し、確固として揺るぐことなく中国の特色のある軍隊精鋭化の道を歩み、各項目の改革を積極的に推し進め、世界の軍事変革の趨勢に適応し、機械化と情報化建設の二重の歴史的任務を達成し、軍隊現代化の飛躍的発展を実現するように努める。

    ──世界平和を擁護し、侵略と拡張に反対する。中国は覇を唱えず、軍事グループに参加せず、勢力圏を求めず、戦争政策、侵略政策、拡張政策に反対し、軍備競争に反対する。中国は国際社会が公正かつ合理的に国際紛争を解決するために払う努力を支持し、世界の戦略的均衡と安定の維持に有利なすべての活動を支持し、国際反テロリズム協力に積極的に参与する。

    中国は積極的な防御的軍事戦略を実行し、戦略上では防御、自衛、後から反撃に出て相手を制圧する原則を堅持する。世界の軍事分野の大きな変革と国の発展戦略の要請に適応するため、中国は新しい時期における積極的防御の軍事戦略方針を制定した。

    この方針は現代技術、とりわけハイテク条件下の局地戦争に勝つことに立脚している。中国は国家安全を脅かす各種の要素を総合的に考慮し、最も困難で最も複雑な状況に着眼して防衛作戦の準備をしっかり整えている。人民解放軍は科学技術による軍隊強化の戦略を実施し、国防科学研究と兵器・装備発展を加速し、資質の高い新型の軍事人材を養成し、科学的な体制編成を確立し、中国の特色のある作戦理論を発展させ、共同作戦、機動作戦、多種任務遂行の能力を増強する。

    この方針は戦争の勃発を抑えとめることを重視している。国の発展戦略の必要に基づいて、人民解放軍は各種の軍事手段を弾力的に運用し、政治、経済、外交などの闘争に緊密に呼応して、中国の戦略的環境を改善し、不安全、不安定な要素を減らし、局地戦争と武力衝突の勃発を抑えとめ、国家建設に戦争による衝撃を受けさせないように努力する。中国は終始先に核兵器を使用しない政策を実行し、核兵器の発展に対し極めて自制的な態度をとっている。中国は従来から核軍備競争に参加せず、国外に核兵器を配置するようなことをしない。中国は限度のある核反撃力を保持するのは、他国が中国に可能な核攻撃を行うことを阻止するためである。

    この方針は人民戦争思想を堅持し、発展させるものである。現代戦争の新たな変化に直面して、中国はあくまで人民大衆に頼って国防建設を強化し、国民全体の国防観念を増強し、精鋭な常備軍と強大な予備力が結合する武装力体制を実行している。平時と戦時との結合、軍隊と人民との結合、軍隊が人民に依拠するという方針を堅持し、動員の体制とメカニズムを完全にし、動員の分野と範囲を拡大し、現代戦争の要請に適応した国防体系を確立する。弾力的、機動的な戦略戦術を堅持し、現代条件の下で人民大衆の参戦に適する新しい戦法を編み出し、人民戦争の総体的威力を発揮する。