2002年の中国の国防

六、国際安全保障協力

    国際安全保障協力は世界と地域の平和と安定を維持する中でますます重要な役割を果たしている。中国政府は国際安全保障協力を高度に重視し、それに積極的に参与し、「国連憲章」、平和共存五原則およびその他の公認の国際関係準則を踏まえて、国際安全保障協力を展開することを主張している。

地域の安全保障協力

    アジア太平洋地域諸国と対話、協力を展開するのは中国のアジア太平洋地域安全政策の重要な内容であり、中国の善隣友好政策の構成部分である。中国は隣国と友好的に付き合い、隣国を仲間と見なすことを堅持し、地域間の協力を絶えず強化している。2年来、中国は上海協力機構の形成と発展の推進に努め、ASEAN地域フォーラム(ARF)、相互協力及び信頼醸成措置アジア会議(CICA)、アジア太平洋地域安保協力理事会(CSCAP)、東北アジ協力対話会議(NEACD)など多国間安全対話と協力を引き続き支持し、それに参加し、アジアの特色をもつ地域安全保障協力を深めるために積極的な役割を果たした。

    2001年6月、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国は上海協力機構を発足させた。この機構は「上海5カ国」メカニズムの基礎の上で設立された地域的多国間協力組織である。同機構は設立以来、前後して「テロリズム、分裂主義、極端主義に打撃を加える上海公約」、国防相共同コミュニケ、首相声明、法律執行安全部門責任者声明、外相共同声明を発表した。2002年6月に開かれた上海協力機構レニングラード会議で、6カ国首脳は「上海協力機構憲章」、「地域のテロリズム反対機構に関する協定」、「上海協力機構加盟国元首宣言」の三つの重要な法律と政治文書に調印した。上海協力機構は新しい型の安全観、区域協力パターン、国家関係を提唱し、軍事分野の信頼と協力を強化し、テロリズム、分裂主義、極端主義に打撃を加える面の実質的協力を強化し、国際紛争を防止し、平和的に解決する中で互いに協力することで共通の認識に達した。上海協力機構は相互信頼、互恵、平等、協議、多様な文明への尊重、共同発展の上海精神を発揚し、公正かつ合理的な国際政治経済新秩序の樹立を積極的に推進し、地域の安全と安定を促進した。

    中国は相互協力及び信頼醸成措置アジア会議(「亜信」と略称)の信頼と協力を強化し、地域の安全を守る主旨と原則に賛同し、各加盟国と建設的な友好協力を展開している。2002年6月、「亜信」第1回首脳会議は「アルマアタ文書」と「テロリズム排除、文明対話促進に関する宣言」を可決したが、「亜信」の活動は重要な成果をあげた。

    中国はASEAN地域フォーラムが既定の目標に向かって絶えず前進することを支持する。中国はずっとASEAN地域フォーラム外相会議、高官会議および非公式会議に積極的に参加している。中国はフォーラム海洋情報ウェブサイトプロジェクトを引き受け、それを正式に開通し、フォーラムが信頼措置をつくる国際犯罪専門家グループ会議に参加し、国際犯罪問題の国別報告を提出し、フォーラム年度安全展望レポートを定期的に提出している。2001年に開かれた第8回フォーラム外相会議では、中国はフォーラムが非伝統的な安全領域の対話と協力をちくじ展開するのを支持することを提出し、多国的共同軍事演習を通報し人員を派遣して観察する提案を重ねて提出した。2002年5月、中国はフォーラムの高官会議に 「非伝統的な安全領域の協力強化に対する中国側の立場についての文書」を提出した。2002年7月に開かれた第9回フォーラム外相会議で、中国は「新しい安全観に対する中国の立場に関する文書」を提出し、新しい安全観を共に育成すべきであり、対話を通じて信頼を深め、協力を通じて安全を促すことを強調した。2002年11月、中国はASEAN と「非伝統的な安全領域における協力に関する共同宣言」を発表し、中国とASEAN が非伝統的な安全領域での全面的協力をスタートさせた。中国はまた2002年9月に、北京でASEAN地域フォーラム軍隊後方勤務保障社会化シンポジウムを催した。

    ASEANと中国、日本、韓国(10プラス3)の協力は東アジアの指導者が当地域の協力強化について意見を交換する重要なルートであり、東アジア諸国間の相互理解、信頼、互恵協力の増進に役立つものである。中国はこの協力を重視し、それに積極的に参与し、現有の基礎の上に全方位協力を拡大し、経済協力に重点をおくと同時に、協議一致、着実推進の原則にのっとって、政治と安全領域の対話と協力をちくじ展開し、非伝統的な安全領域の協力から始めることを主張している。4年余りの発展を経て、この協力は著しい進展をとげた。

    中国の軍隊はアジア太平洋地域の安全対話と協力に参与している。中国は2002年1月に人員を派遣してシンガポール主催の西太平洋地域の海軍の掃海演習を参観し、2002年4月に人員を派遣して日本が主催した西太平洋地域の潜水艦による捜査・救助演習を参観し、2002年5月に人員を派遣してアメリカ、タイ、シンガポールが行った「ゴールデン・コブラ」という共同軍事演習を参観した。今後、中国は非伝統的な安全領域の多国間共同軍事演習に選択的にちくじ参与する。

テロリズム反対協力

    ここ数年来、テロリズムの活動が著しく増え、世界の平和と発展に対し現実的な脅威を構成している。「9・11」事件は重大な生命と財産の損害をもたらし、国際社会の普遍的関心を引き起こした。中国はテロリズムの被害者であり、「東トルキスタン」のテロ勢力は中国の各民族人民の生命と財産の安全および社会の安定に重大な危害を及ぼしている。2002年9月11日、国連安保理は中国、アメリカ、アフガニスタン、キルギスの共通の要求に基づいて、正式に「東トルキスタンイスラム運動」をその公布したテロ組織リストに組み入れた。中国政府は従来からあらゆる形式のテロリズムに断固反対し、積極的、効果的な措置をとってテロリズムに打撃を加えている。

    中国政府は、国際社会が対話と協議を強化し、協力を行って、共に国際テロ活動を防備し、それに打撃を加え、テロリズム発生の根源を取り除くように努めるべきであると主張している。テロリズムに対する打撃は、証拠が確実で、目標が明確であり、「国連憲章」の主旨と原則および公認の国際法準則に合致し、国連と安保理に主導的役割を十分に発揮させなければならず、すべての行動は地域と世界の平和の長期利益を守ることに役立つべきである。テロリズムを特定の民族あるいは宗教と混同してはならない。テロリズム打撃に二重の標準をとってはならない。テロリズムがいつどこで発生し、誰を対象とし、どんな方式で出現しても、国際社会は共に努力し、断固としてそれを非難し、打撃を加えるべきである。テロリズム反対は表面に現れた問題とその原因を同時に解決し、総合的措置をとらなければならないが、そのうち発展の問題を解決し、南北の格差を縮小し、地域衝突を解決することは非常に重要である。

    中国は国連と安保理が可決したテロリズム反対問題についての一連の決議を支持し、真剣に実行し、安保理テロ反対委員会に安保理第1373号決議実行状況のレポートを提出した。中国は「テロリズム爆発を制止する国際条約」に加入し、「テロリズムへの資金援助提供を制止する国際条約」に加入した。12の国際テロリズム反対条約のうち、中国はすでにその10条約に加入し、1条約に調印した。中国はまたアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、パキスタン、インドなど諸国とそれぞれテロ反対について協議し、安保理テロ反対委員会の活動に積極的に参加している。中国はアジア太平洋経済協力機構 (APEC)指導者上海会議がテロリズム反対声明を発表し、上海協力機構加盟国政府首脳、国防相、法律執行安全部門の指導者と外相が共同声明を発表するように推し進め、同機構がテロ反対常設機構を設立することを積極的に支持している。2002年10月、中国はキルギスと共同でテロ反対軍事演習を行った。中国は金融分野の国際テロ反対協力を非常に重視している。中国はマネー・ロンダリング反対金融行動特別工作グループのメンバーではないが、一貫して同工作グループの活動を支持している。中国はすでに同工作グループに中国が金融分野でとっているテロリズム反対措置を全面的に紹介した。

国連平和維持行動に参与

    中国は国連安全保障理事会常任理事国として、国連が「国連憲章」の主旨と原則の導きのもとで、国際の平和と安全を維持するために積極的な役割を果たすのを一貫して重視、支持している。中国は平和維持行動の改革に対し積極的な態度をとり、国連の平和維持行動の作用をさらに大きくし、その効果を高めることを望み、国連事務局がこれについて取った各項の積極的な措置を支持し、国連総会、安保理が「国連の平和維持行動の改革に関するプラシミレポート」の審議で進展をとげたことに歓迎の意を表わした。

    1990年に初めて国連の平和維持行動に軍事オブザーバーを派遣してから、中国の軍隊は前後して10項の国連平和維持行動に参加し、軍事オブザーバー、軍事連絡官、軍事顧問、参謀将校を延べ650人以上派遣し、工兵部隊を2回、延べ800人を派遣した。現在、中国は依然として53人の軍事オブザーバーが六つの任務担当区域で任務を遂行しており、2人の参謀将校が国連の平和維持部で仕事をしている。中国の軍隊はこれまでに国連の平和維持行動に参加して犠牲になった人が4人、負傷した人が数十人いる。

    2000年1月に初めて15人の民事警察を派遣して国連の平和維持任務を遂行してから、中国政府は前後して「国連東ティモール過渡行政当局」(UNTAET)と「国連ペルシアとヘルツェゴビナ駐在特別派遣団」(UNMIBH)に198人の民事警察を派遣した。

    1997年5月、中国政府は原則的に国連の平和維持行動の命令待ちに参加することを決定した。2002年1月、中国は国連平和維持行動第1級命令待ちメカニズムに正式に参加し、適当な時に国連の平和維持行動に工事、医療、運送などの後方勤務保障分隊を提供することを計画し、国連の平和維持行動に国連標準工事大隊を一個大隊、国連標準医療分隊を一個分隊、国連標準運送中隊を二個中隊提供することができる。

軍事交流と協力

    中国人民解放軍は積極的に対外軍事交流と協力を展開し、対外往来の分野がちくじ拡大され、内容が日増しに豊富になり、形式がいっそう活発、多様になった。

    中国はすでに100余カ国と軍事関係を樹立し、100余カ国に駐在する大使館に武官処を設置し、70余カ国が中国に武官処を設置した。ここ2年来、人民解放軍は130余回も重要な交流を行い、高級軍事代表団を派遣して60余カ国を訪問し、60余カ国の軍隊の高級指導者が90余回も来訪した。2002年5月から9月までに、中国の海軍艦艇編隊は初めて世界一周航海を行い、航行距離は3万余海里で、10カ国を訪問した。人民解放軍の対外軍事学術交流と専門技術協力も絶えず深く広く発展し、数十カ国と百回にのぼる専門技術グループの交流活動を行い、外国の軍隊と軍事留学生を互いに派遣する規模が年ごとに大きくなっている。2001年10月から11月にかけて、中国は国防大学で第3期国際問題研究討論クラスを催し、18カ国の将校が参加した。2002年10月、中国は国防大学で第4期国際問題研究討論クラスを催し、31カ国の将校が参加した。

    中国は世界各国との軍事関係を積極的に発展させている。中ロ両軍の関係は「中ロ善隣友好協力条約」の導きの下で絶えず強まり、発展し、両軍のハイレベルの往来は良好な勢いを保っている。2001年9月、中米海上軍事安全協議メカニズム専門会議がグアム島で開かれ、1度中断した中米軍事関係が回復した。2002年10月、中米両国元首は会談した際、両軍の交流の回復に同意した。中日の軍事関係は2001年末に回復した。中国とEUの軍事関係は順調に発展している。中国の各クラス軍事代表団は招きに応えて東北アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア地域の多くの国の軍隊を成功裏に訪問した。中国の国境地帯の軍区は隣国の国境警備部隊と相互訪問、交流を行った。中国は引き続き一部の発展途上国に人員の養成と訓練、装備と器材、後方勤務物資、医療衛生などの面の援助を提供し、新しい交流分野を積極的に切り開き、広げている。西アジア・アフリカ諸国との交流に力がいっそう入れられ、中南米諸国との軍事交流が引き続き発展している。

    人民解放軍は何回も人員を派遣してアジア太平洋地域の多国間安全会議、アジア太平洋地域防衛当局担当官フォーラム、東北アジア協力対話会、ASEAN地域フォーラム会議、西太平洋地域海軍フォーラムおよびさまざまな多国間安全シンポジウムなどの活動に参加した。人民解放軍はまたオーストラリア、フランス、ドイツ、インド、日本、カザフスタン、キルギス、パキスタン、ロシア、タイ、イギリス、アメリカなど諸国の国防と軍隊の関係部門と安全協議、会談を行い、相互間の信頼と理解を深めた。