冷戦終結後、国際の軍備抑制、軍縮および核拡散防止分野は一連の成果をあげたが、ここ数年来、一連の消極的な事態はこの良好な勢いを挫折させた。当面の情勢の下で、世界の戦略的均衡と安定および国際軍備抑制と軍縮の法律体系を守るのは極めて重要である。現有の国際軍備抑制と軍縮の法律体系は、国連を中心とするグローバルな集団安全保障枠組みの重要な構成部分である。中国政府は国際社会とともに、国際の軍備抑制と軍縮の法律体系を守り、軍備抑制、軍縮および核拡散防止の推進に貢献することを望んでいる。
核軍縮問題
中国は一貫して核兵器の全面禁止・完全廃棄を主張している。中国は核兵器を保有した日から、いかなる時、いかなる状況のもとでも先に核兵器を使用しないと厳かに声明した。その後また、非核兵器保有国と非核地帯に対し無条件に核兵器を使用しないか、または核兵器を使用すると威嚇しないことを約束し、すべての核保有国が法律の形式で上述の約束を確定することをずっと推進している。中国は核兵器の発展に対し終始きわめて抑制的態度をとっており、中国の核兵器庫の規模は自衛に必要な最低水準を維持しているだけである。中国は、最大の核兵器庫を擁する国が核軍縮に特殊で優先的な責任を負っており、率先してその核兵器庫を大幅に削減し、削減した核兵器を廃棄すべきだと考えている。中国は米ロが新しい攻撃的戦略兵器削減条約を締結することを歓迎し、米ロが確実な措置をとって、核軍縮が「調査できる」と「逆転できない」ことを確保し、核軍縮を引き続き推し進め、世界の平和と安定を真に促進することを望んでいる。
「包括的核実験禁止条約」は核軍縮の重要な一歩である。中国は最初の条約調印国として、条約組織準備委員会の活動に積極的に参与し、国内の条約履行の諸準備を真剣に進めている。中国政府は審議・批准を求めるため、条約を全国人民代表大会常務委員会に上程した。中国は、条約が1日も早く発効するように国際社会とともに努めることを望んでいる。交渉によって「核兵器用核分裂物質生産禁止条約」(「カットオフ条約」と略称)を締結するのは核軍縮のプロセス推進と核兵器拡散防止に役立ち、中国は軍縮交渉会議が全面的、均衡的活動計画を達成する基礎の上で、できるだけ早く条約交渉を始めることを支持している。
化学兵器・生物兵器削減問題
中国は一貫して化学兵器の全面禁止と完全廃棄を主張している。最初の条約締結国として、中国は積極的に「化学兵器禁止条約」の主旨と目標を支持し、条約に規定された諸義務を真剣かつ厳格に履行している。中国は政府に専門の条約履行機構を設置し、最初の宣言と各種年度宣言を期限どおりに一つ欠かさず手渡し、化学兵器禁止組織の調査を55回受け入れ、同組織と視察員研修班、シンポジウムを共催した。
中国の領土には今なお日本の遺棄した大量の化学兵器がある。中国側は日本側が中日両国政府が締結した「日本が中国の国内に遺棄した化学兵器の廃棄に関する覚書」の関係精神にしたがって、「化学兵器禁止条約」の廃棄義務を確実に履行し、関係活動を加速し、日本が中国に遺棄した化学兵器の実質的な廃棄作業をできるだけ早く開始するよう促している。
中国は一貫して生物兵器の全面禁止と完全廃棄を主張している。中国は1984年に「生物兵器禁止条約」に加入し、自ら担った義務を真剣かつ全面的に履行している。1987年以来、中国はずっと条約審議会議の決定に基づいて、条約と関係ある信頼措置醸成面のデータと状況を逐年国連に報告している。
中国は条約の実効性を全面的に強化する活動を支持し、条約締約国特設作業グループの条約議定書の交渉・制定活動に積極的に参加したが、議定書が期限どおり達成せず、条約の第五回審査会議が余儀なく休会したことを遺憾に思っている。中国は、多国間交渉を通じて内容が均衡的で、措置が効果的な議定書を制定するのは、依然として「生物兵器禁止条約」の実効性を強化する最もよい方途であると考えている。中国は各側とともに、各国の普遍的参与と多国間枠組みの中で条約の実効性を強化する措置を引き続き模索することを望んでいる。
ミサイル防御と宇宙空間の軍備競争防止問題
中国のミサイル防御問題に対する立場は一貫した明確なものである。中国は関係国が大規模殺傷兵器とその運搬手段の拡散問題をめぐる安全に関心をもっていることを理解しているが、多くの国と同じように、この問題は国際社会の共同の努力のもとで、政治と外交手段を通じて解決すべきであると考えている。
中国は「弾道ミサイル反対協定」の失効を遺憾に思っている。中国は終始、世界の戦略的安定と国際軍備抑制、軍縮および核拡散防止体系を擁護するのは極めて重要であり、各国の根本的利益に合致すると考え、関係諸国が真剣に国際社会の意見に耳を傾け、ミサイル反対問題の上で慎重に事を運ぶよう望んでいる。同時に、中国は各側と建設的な対話を展開し、国際平和と安全を守るために共に努力することをも望んでいる。
中国は関係諸国が東北アジア地域で作戦区域ミサイル防御システムを共同で研究、開発し、その配置に着眼することに関心をもっている。これは先進的なミサイル技術の拡散をもたらし、アジア太平洋地域の平和と安定に不利である。中国はいかなる国が台湾にいかなる形式の作戦区域ミサイル防御援助あるいは保護を提供することにも断固反対する。
宇宙空間は全人類に属し、宇宙空間の平和利用は全人類の共通の願望である。現在、宇宙空間は兵器化の危険に直面しており、宇宙空間の兵器化と宇宙空間での軍備競争の防止は、非常に差し迫った現実的な問題となっている。国際社会はできるだけ早く交渉し、必要な法律文書を締結し、宇宙空間に兵器を配置し、宇宙空間の物体に武力を行使するかあるいは武力を行使すると威嚇することを禁止し、宇宙空間の平和と安定を確保すべきである。中国は、ジュネーブ軍縮会議がこの交渉を行う適当な場所であると考えている。中国は何回も軍縮会議に関係活動文書を手渡し、未来の国際法律文書の要点について提案を行った。2002年6月、中国はまたロシアなどの諸国とともに、共同で軍縮会議に「宇宙空間の兵器配置、宇宙空間の物体に対する武力行使あるいは武力行使威嚇の防止に関する国際条約(草案)」と題する活動文書を手渡し、未来の宇宙空間の法律文書の総体的構造と具体的内容について構想を打ち出した。上述の活動文書は多くの国の支持と呼応を得た。中国は、軍縮会議が一日も早く実質的な活動を展開し、関係ある国際法律文書について交渉し、それを締結し、宇宙空間の兵器化と宇宙空間の軍備競争を防止するため積極的に努力するよう望んでいる。
大規模殺傷兵器とその運搬手段の拡散防止問題
中国は一貫して大規模殺傷兵器とその運搬手段の拡散に反対し、拡散防止分野における国際社会の積極的努力を支持するとともに、実際行動で拡散防止事業に貢献をした。中国は、拡散防止の努力は大規模殺傷兵器拡散そのものに限るべきではなく、その根源を探し、解決する必要があると考えている。公正かつ合理的な国際新秩序を確立し、国際関係を普遍的に改善することこそ、脅威を取り除く根本的な方途である。テロ組織など非政府実体の大規模殺傷兵器獲得を防止することは、国際社会が直面している共同の任務である。中国は国際社会とともに、各国が普遍的に参与する公平かつ合理的、効果的な多国間拡散防止メカニズムを構築するために共に努力することを望んでいる。
中国は「核不拡散条約」の締約国であり、ずっと条約の義務を順守し、核兵器拡散を主張せず、奨励せず、それに従事せず、他国の核兵器発展を援助しない政策を実行している。中国はまた平和の目的に使用することを保障する、国際原子力機関(IAEA)の保障監督を受け入れる、中国側の許可を経ない場合、第三国に譲渡してはならないという核輸出三原則を制定した。核輸出抑制メカニズムを強化するため、中国は1997年にサンゴ委員会に加入し、相応の国内法律体系をちくじ樹立し、完全なものにした。1997年9月と1998年6月、中国は「核輸出管制条例」と「核両用品および関連技術輸出管制条例」を公布し、サンゴ委員会のリストと国際現行核両用品リストに含まれる物件と技術の輸出を管理している。上述の条例は、中国の核輸出は政府が指定した専門の公司が経営し、核輸出に対し許可証制度を実行し、国際原子力機関の保障監督をまだ受け入れていない核施設にいかなる援助をも提供しないと規定している。保障・監督制度の有効性を強化し、拡散防止の義務を履行するため、中国は2002年3月28日、中国がすでに保障・監督付加議定書発効の国内法律の手続きを終えたことを国際原子力機関に正式に通知した。中国は核兵器国の中で上述の手続きを終えた最初の国である。
中国は国際原子力機関が規約の主旨と原則に基づいて潜在的核テロ活動の防備に貢献することを支持し、適時に機関の核テロ反対活動に適当な援助を提供する。核施設と核材料に対する保護強化は、核拡散防止と核テロ活動防備に有利である。中国は「核材料実物保護条約」の改正活動に積極的に参加し、条約改正活動を順調に完成するために努力することを望んでいる。
中国は「化学兵器禁止条約」と「生物兵器禁止条約」に規定された義務を厳格に履行し、いかなる国がいかなる方式で化学兵器と生物兵器を獲得することをも援助、奨励しない。中国は一貫して化学製品、生物製剤と関係ある生産設備・技術の輸出に対し慎重で責任を負う態度をとっている。中国の輸出する上述の物件が化学兵器と生物兵器の製造に使われない目的を確保するため、中国政府は「中華人民共和国化学製品監督・抑制管理条例」とその実施細則などの法律、法規を公布、実施し、関連物件の輸出を厳しく管理している。2001年12月に公布された「中華人民共和国刑法改正案」は、放射性、害毒性、伝染病の病原体などの物質を供給、不法製造、売買、運送・貯蔵、公共の安全に危害を及ぼす行為を刑事犯罪に定め、相応の懲罰措置を規定した。化学製品、生物両用品とその関係技術・設備の輸出に対する管理をいちだんと強化するため、中国政府はまた2002年10月に「化学製品と関連設備・技術輸出管制規則」(輸出抑制リスト付き)、「中華人民共和国生物両用品と関連設備と技術輸出管制条例」(輸出抑制リスト付き)および新しく改正された「中華人民共和国軍用品輸出管理条例」を公布した。
ここ数年来、ミサイル拡散問題は国際社会の広範な関心を引き起こしている。中国も同様にこれを非常に重視している。国際社会は各国の安全が損われないことを確保する非差別の原則をふまえ、対話と協力を通じて、新しい多国間メカニズム構築の可能性の討議を含める解決策を探し求めるべきである。中国は国連がこの分野で重要な役割を果たすのを支持し、国連ミサイル問題政府専門家グループの活動に積極的に参加している。中国は関係国が行った新しい提案に対し開放的態度をとり、建設的態度で「弾道ミサイル拡散防止国際行為準則」案と「グローバルなミサイル・モニタリング・メカニズム」提案の国際討論に参加した。ミサイル拡散防止の面において、中国政府は一貫して厳粛、真剣かつ責任を負う態度をとり、いかなる方式でいかなる国の核兵器の運搬に用いられる弾道ミサイルの発展をも援助せず、ミサイルと関連物件・技術の輸出を厳しく抑制している。2002年8月、中国政府は正式に「中華人民共和国ミサイルおよび関連物件・技術輸出管制条例」と「管制リスト」を公布した。これは中国政府が自国のミサイル拡散防止政策を貫徹し、ミサイルおよび関連物件・技術の輸出抑制をいちだんと強化し、輸出管理法制化を推進する重大な措置である。今後、中国は自国の輸出抑制実践に従って、輸出監督・管理法制化を引き続き推し進め、各側と交流、協力を強化し、国際拡散防止メカニズムの討論に積極的に参加し、最終的に公正かつ合理的、効果的な国際拡散防止メカニズムを構築することに努める。
小型兵器と対人地雷問題
中国は一貫して小型兵器の不法貿易と過度の備蓄でもたらされる各種の問題に真剣に対処し、小型兵器の生産、譲渡に対し一貫して責任を負う態度をとり、積極的に国際社会のさまざまな努力に参与している。中国は2001年7月に建設的な態度で国連が小型兵器不法貿易の各方面の問題を討議する大会に参加し、いまは実際行動で会議で可決された「行動綱領」を実行に移している。中国は積極的に「国連の国に跨る組織的犯罪に打撃を加える条約」に付属する「銃器議定書」についての交渉に参加し、議定書の合意達成に貢献し、いまは議定書締結の問題を積極的に検討している。「中華人民共和国銃器管理法」と「中華人民共和国軍需品輸出管理条例」は銃器、弾薬の生産、運送、販売、配備、出入国管理について詳しい規定を設け、小型兵器など軍用品の輸出に対する厳格な管理制度を確立し、違法行為を厳しく処罰する措置を明確にした。2001年、中国は全国で不法銃器取締特別活動を展開し、大量の不法銃器を没収し、廃棄処分にした。
1998年に「特定通常兵器条約」の新たに改正された「地雷議定書」を批准して以来、中国は引き続き議定書の規定に合わない対人地雷を輸出しない約束を履行し、条約履行のその他の面でわりに大きな進展をとげた。中国人民解放軍は議定書の関係知識を普及させる一連の地雷業務訓練班を催した。関係部門は議定書に基づいて一連の規則と基準を制定しているが、その中に対人地雷の技術と性能および地雷敷設地点表示などの面の国の軍用基準が含まれている。
中国は引き続き国内と国際の対人地雷除去の推進に努めている。中国国内の対人地雷は大体取り除かれた。2001年、中国はカンボジア、エチオピア、エリトリア、モザンビーク、ルワンダ、ナミビア、アンゴラの7カ国に多くの地雷除去設備と器材を寄付した。2002年、中国が国際地雷除去協力に使った資金は300万ドル余りに達し、主にエリトリアとレバノン両国に地雷除去の援助を提供した。両国に地雷除去器材を提供するほか、中国はまたエリトリアに専門家グループを派遣し、現場で地雷除去を指導した。