中国の鉱物資源政策


一、鉱物資源とその探査・開発現状




    中国ではこれまでに171種の鉱物資源が発見され、資源埋蔵量を確認されたものが158種あり、そのうち石油、天然ガス、石炭、ウラン、地熱などのエネルギー鉱物が10種あり、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛などの金属鉱物が54種あり、グラファイト、燐、硫黄、カリ塩などの非金属鉱物が91種あり、地下水、ミネラル・ウォーターなど液体と気体の鉱物が3種ある。鉱産地は1万8000カ所近くあり、そのうち大中型鉱産地は7000余カ所ある。

    中国の鉱物資源の基本的特徴は次の通り。

   ――資源総量が大きく、鉱物の種類がわりに揃っている。中国の確認済み鉱物資源の種類はわりに多く、資源総量はわりに豊富である。石炭、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛など支柱的鉱物の確認済み資源埋蔵量がいずれもかなり大きいものである。石炭、希土、タングステン、すず、モリブデン、アンチモン、チタン、石膏、ベントナイト、硫酸ナトリウム、マグネサイト、重晶石、ほたる石、滑石、グラファイトなどの鉱物資源は世界で著しい強みを持っている。地熱、ミネラル・ウォーターの資源が豊富であり、地下水の質は全般的に見てわりによいものである。

    ――一人当たりの資源量が少なく、一部資源の需要と供給がアンバランスである。人口が多く、一人当たりの鉱物資源量が少ないのは中国の基本的国情である。中国の一人当たり鉱物資源保有量は世界では少ない方である。ダイヤモンド、プラチナ、クロム鉄鉱、カリ塩など鉱物資源の供給が需要になかなか追いつかない。

    ――良質の鉱物と劣悪な鉱物が並存し、良質の鉱石もあれば、品位が低く、成分が複雑な鉱石もある。タングステン、すず、希土、モリブデン、アンチモン、滑石、マグネサイト、グラファイトなど鉱物資源の質はわりによいが、鉄、マンガン、アルミニウム、銅、燐など鉱物資源は貧鉱が多く、共生鉱と随伴鉱が多く、選び出して精錬するのが困難な鉱物が多い。

   ――確認済み資源埋蔵量の中で地質コントロール程度の低い部分の占める割合が大きい。確認済み資源埋蔵量の構造の中で、資源量が多く、埋蔵量、基礎的埋蔵量が少なく、経済的に利用できないかあるいは経済的意義が未確定の資源埋蔵量が多く、経済的に利用できる資源埋蔵量が少なく、把握と推定の資源埋蔵量が多く、確認された資源埋蔵量が少ない。

    ――鉱物生成の条件がよく、探査作業を通じてより多くの鉱物資源を探し出す見通しが明るい。石油、天然ガス、金、銅などの鉱物資源を探す潜在力が大きい。旧い鉱山の深部、周辺と西部地区は重要な鉱物資源代替区である。

    中国は世界で一番早く鉱物資源を開発、利用した国の一つである。新中国成立後、中国政府は地質作業を大いに強化し、地質作業が国民経済建設より先行することを明確に要求した。「鉱業開発」という戦略的方針を打ち出すとともに、すべての5カ年計画期に、鉱物資源の探査・開発について配置を行った。鉱物資源の探査・開発は極めて大きな発展をとげ、中国はちくじ世界の鉱物資源大国と鉱業大国になった。鉱物資源の探査・開発は経済建設に多くのエネルギーと原材料を提供し、重要な財政収入源を提供し、区域経済、特に少数民族地区、辺境地区の経済発展を推進し、鉱物資源の開発を支柱産業とする鉱業都市(町)の興起と発展を促し、多くの社会労働力の就職を解決し、国民経済と社会発展に重要な貢献をした。

    ――多くの鉱物資源を相継いで発見、確認した。大慶油田を代表とする多くの油田と天然ガス田は、中国を石油資源の乏しい国から世界の主要な産油国の一つに変えた。バイユンオボの希土類金属鉱、徳興の銅鉱、金川のニッケル鉱、柿竹園のタングステン鉱、欒川のモリブデン鉱、アシュレの銅鉱、焦家の金鉱、玉竜の銅砿、大廠のすず鉱、廠ハ(土に覇)と蘭坪の鉛・亜鉛鉱、東勝――神木炭田、紫金山の銅・金鉱、ヤンバジェンの地熱田など多くの重要な鉱床が発見、拡大された。重要な地下水の給水源が多く発見、確認された。西部地区の鉱物資源集中区域は鉱物探しの明るい見通しをちくじ顕示している。多くの旧い鉱山の周辺あるいは深部で新しい資源が発見された。新しい国土資源の大調査は続々と多くの成果をあげた。50年余りの鉱物資源探査作業は、中国を鉱物資源状況のはっきりしない国から世界の鉱物資源大国に変え、確認済みの地下水源地が少ない状況から全国の給水の中で地下水が重要な役割を果たす状況に変えた。それと同時に、すぐれた伝統と作風および十分な技術力をもつ地質探査陣が形成され、中国の経済建設に重要な貢献をした。

    ――鉱物資源の開発規模が急速に拡大する。1949年、中国で比較的に完備している鉱山はわずか300余カ所で、年間原油12万トン、石炭3200万トン、鋼16万トン、非鉄金属1万3000トン、黄鉄鉱1万トン、燐10万トン足らずを生産した。50余年の努力を経て、中国は相前後して大慶、勝利、遼河などの大型石油基地、大同、州、平頂山、「両淮」、ジュンガルなどの石炭基地、上海、鞍山、武漢、攀枝花などの大型鉄鋼基地、白銀、金川、銅陵、徳興、個旧などの大型非鉄金属基地、開陽、昆陽、雲浮などの大型化学工業鉱山基地を作り上げ、エネルギーと原材料鉱産物の強大な供給システムを形成した。多くの鉱業都市が次々とつくられて、中国の都市化建設を促進した。現在、中国の鉱産物の生産量と消費量は世界の上位を占めている。2002年、中国に、大型鉱山があわせて489カ所、中型鉱山が1025カ所、小型鉱山と砂利・粘土採掘場が14万余カ所あり、従業員は907万人に達した。鉱業生産額は4542億元であった。原油を1億6700万トン、天然ガスを327億立方メートル生産した。鉱石、砂利、粘土の採掘量は48億4900万トンで、そのうち原炭は13億8000万トン、鉄鉱石は2億3100万トン、燐鉱石は2301万トンであった。10種の非鉄金属の生産量は1012万トンであった。現在、中国の原炭、鋼、10種の非鉄金属とセメントの生産量は世界第1位を占め、燐鉱石と黄鉄鉱の生産量はそれぞれ世界第2位と第3位を占め、原油の生産量は世界第5位を占めている。国有の鉱山企業は中国の鉱物資源開発の支柱であり、エネルギー、原材料工業の安定した供給基地でもある。原油、天然ガスおよび36%のその他の鉱石生産量は7679社の国有鉱山企業が生産したものである。国有の鉱山企業は工農業発展の基礎を築いただけでなく、人民の生活レベルと総合的国力の向上にも重要な貢献をした。1980年代中期以来、多種経済要素の鉱山企業も急速な発展をとげた。非国有の鉱山企業は14万社に達し、そのうち香港、澳門、台湾の業者が投資した鉱山企業は132社あり、外国業者が投資した鉱山企業は160社ある。

    ――鉱物資源の保護と合理的利用はちくじレベルアップしている。50余年来、中国の物理探査、化学探査、リモート・センシング、ボーリングによる探査、洞窟探査など鉱物資源の探査技術と実験、テスト、計算の技術は大きな進展をとげ、鉱物資源探査の科学技術レベルを向上させた。鉱物資源の総合的利用と回収利用の成果が著しく、資源利用率はちくじ上昇している。現在、中国で廃棄された鋼の回収率は40%で、廃棄された非鉄金属の総合回収率は27.70%である。プラチナと希有元素のほとんどは総合的利用から来たものであり、硫酸を作る原料も3分の1近くが非鉄金属の生産過程で総合的に回収したものである。一部の鉱山企業は石炭に随伴するガス、オイル・シェール、カオリン、高アルミナ粘土を総合的に開発し、ぼた、石炭灰を加工し、利用して、良好な経済効果と環境効果をあげた。

    ――鉱産物の対外経済貿易は急速な発展をとげている。2002年の中国の鉱産物および関係あるエネルギーと原材料の輸出入総額は1111億ドルで、全国輸出入総額の18%を占めた。原油、鉄鉱石、マンガン鉱石、銅精鉱、カリ肥料の輸入量が大きく、鉛、亜鉛、タングステン、すず、アンチモン、希土、マグネサイト、ほたる石、重晶石、滑石、グラファイトなど強みのある鉱産物の輸出量が大きい。中国の鉱物資源分野の対外協力が絶えず拡大されている。海底オイル・ガス資源の対外共同探査を通じて、新しい油田と天然ガス田を陸続と発見し、海底のオイル・ガス生産量は年を追って増えている。国外でのオイル・ガス資源の探査・開発はすでに一定の規模を備え、国外での固体鉱物資源の探査・開発も始まっている。炭層ガス分野でいくつかの国と長期の研究開発協力関係を樹立している。 中国は鉱物資源の探査・開発の面で依然としていくつかの矛盾と問題に直面しているが、主なものは次の通り。

    ――経済の急速な成長と一部鉱物資源の大量消耗との間に矛盾がある。石油、(リッチ)鉄、(リッチ)銅、良質ボーキサイト、クロム鉄鉱、カリ塩などの鉱物資源の供給は需要になかなか追いつかない。東部地区の地質の鉱物探しの難度が増大し、確認済み埋蔵量の増加速度がスローダウンしている。一部鉱山の採掘は中・末期に入り、埋蔵量と生産量は年を追って減少している。

    ――鉱物資源の開発・利用面の浪費現象と環境汚染が依然として際立っている。鉱山採掘の配置があまり合理的でなく、探査と採掘の技術が立ち遅れ、資源の消耗と浪費がかなり大きく、鉱山の環境保全をいっそう強化する必要がある。

    ――地区間の鉱物資源の探査・開発がアンバランスである。西部地区と中部の辺境地区の資源は豊富であるが、自然条件が悪く、生態環境が脆弱で、地質調査評価作業の程度が低く、資源開発を制約している。

    ――鉱物資源探査・開発の市場化の程度が高くない。探査権と採掘権の市場システムはいっそうの健全化が待たれている。鉱物資源の管理秩序は引き続き整頓し規範化させる必要がある。鉱物資源分野の国際交流と協力は拡大する必要がある。