中国21世紀の人口と発展


二. 現状と前途




    5、二十世紀70年代以来、特に改革開放以来、中国は人口の増長を抑制し、人口の素質を向上させるという人口政策を確立し、計画出産という基本的国策を全面的に実施してきた。国は遅く結婚し遅く出産することを奨励し、一組の夫婦は子供一人だけを産むことを提唱し、また法律法規に基づき二人目の子供の出産を合理的に認めている。少数民族に対しても国は計画出産を実施している。そして各省、自治区、直轄市は、当地の実情と組合せて具体的政策を規定した。    

    6、中国政府は人口開発問題を高度に重視し、人口開発問題を国民経済と社会発展の全般的企画の重要な構成部分として議事日程に組み入れ、人口の増長は経済と社会の発展に相適応し、資源の利用と環境の保護と相協調したものでなくてはならないと終始強調してきた。二十世紀90年代以来、中央政府は人口開発問題に関する座談会を毎年一回開き、重要問題を研究分析し、重要な政策と措置を制定してきた。国は関係部門と大衆団体を召集して、釣り合いを取りながら、人口と計画出産プランを共同で実施させ、計画出産と経済の発展、貧困の撲滅、生態環境の保護、資源の合理的利用、文化教育の普及、医療衛生事業の発展、社会保障の完全化、女性の地位向上などと密接に組合せ、中国の人口開発問題の抜本的解決に尽力してきた。

    7、この30年近くの努力を経て、中国は自国の特色を持つ人口問題の総合的解決法の模索に成功し、市場経済の要求に適応できる人口調整システム、と計画出産活動管理体制を徐々に確立し、人口開発問題は内外から注目される成果を上げ、公民の生存権、発展権と経済的、社会的、文化的権利は著しく改善された。

    ――人口の早すぎる増長は効果的に抑制された。人口出生率と自然増長率は1970年の33.43‰と25.83‰から1999年の15.23‰と8.77‰にそれぞれ下がり、総和した出産率も交代レベル以下にまで下がって、世界の出産レベルの低い国の仲間入りをしている。中国は経済が発達していない状況のもとで、割合短い期間内に、人口の再生産型の高い出生率から低い出生率、低い死亡率と低い増長率という歴史的転換を実現し、一部の先進国が数十年ないし百年をかけて歩んできた道を歩み終わった。

    ――国民経済は迅速に発展し、総合的国力は著しく増強され、人民の生活レベルは大幅な向上をみせた。計画出産を実施して以来、全国では累計して三億人少なく産んだことになり、これは国と社会のために大量の養育コストを節約し、資源と環境に対する人口過剰の圧力を緩和し、経済の発展と人民生活のレベルアップを促した。国民生産総額は1980年の4倍という戦略目標を繰り上げて実現し、人民の全般的生活レベルは小康の水準に達している。農村の衣食問題が未解決であった貧困人口は70年代の2億5000万から1999年の年末までには3400万に減少し、農村人口に占めるその割合は33%から約3%にまでさがり、農村の貧困人口の衣食問題は一応解決された。

    ――教育、医療衛生など各社会事業の成果は著しい。2000年末までに、全国では9年制義務教育を普及し、読み書きできない青・壮年を一応なくすという目標はほとんど実現される。また1万人あたりに占める大学生の数は1987年の8.9人から1999年には32.8人に増えた。一人一人が初歩的な医療保険サービスを受けられることが一応実現した。妊婦の死亡率は1990年の10万分の94.7から1998年の10万分の56.2にまで下がり、病院での分娩率は1999年には66.85%以上に達した。1999年、人口の平均寿命は71歳にまで高まり、中等の発達国のレベルに達した。

    ――女性の地位は著しく向上し、児童の権利が保障され、高齢者の生活レベルが絶えず向上している。当面、全国の国家機関、国有企業・事業部門の管理者及び専門技術陣では、女性の幹部がその三分の一以上を占めている。1999年、女性の従業員は社会全体の従業員数の46.5%を占め、世界の34.5%というレベルより高く、女性の所得は男性の所得の80.4%となっている。5歳以下の児童の死亡率は、1998年は42‰で、1991年より31.8%低くなっている。1999年の学齢児童の入学率は99.1%にのぼり、小学校卒業生の進学率は94.4%に達した。1999年、全国の一歳児童への計画免疫接種率は、BCGが97.8%、灰白髄炎が97.4%、百日咳・ジフテリア・破傷風は97.8%、はしかは97.5%である。1999年、全国では3000万近くの離職休養・退職者が初歩的な養老保険に加入し、国が設置した社会福祉機構は1000以上に達し、集団的所有制の老人ホームは4万ヵ所近くに上っている。

    ――人口問題への全社会の認識が絶えず深まった。人口増長の抑制は、人口と経済、社会、資源、環境との協調の取れた発展と持続可能な発展の実現に有利であること。産児制限を実施し、制限なき状態をそのままにしてはいけないこと。人口問題の解決では、数量だけに注目するのではなく、素質とリプロダクティブヘルスのレベルを向上させ、人類の生活の質と福祉を高め、人間の全面的発展実現を強調すること。人口問題は実質的には発展の問題であり、経済、社会、文化などの全面的発展があってこそ最終的に解決される。同時に、人々の婚姻、出産や養老に対する観念には深刻な変化が現われた。"早く結婚し早く子を産む"、"子が多いほど福は多い"と男尊女卑などの伝統的観念は、"遅く結婚し遅く出産する"、"少なく産んで健康で優良な子を産む"、"産まれるのは男の子でも女の子でも同じ"など科学的で、新しい、進歩的な観念に代られ、益々多くの人は計画出産政策を自覚して実施している。出産適齢女子の平均初婚年齢は1970年の20.8歳から1998年には23.57歳にまで引き上げられ、既婚女性の総合避妊率は83%に達し、家庭の平均規模は1971年の4.84人から1998年の3.63人に縮小されている。

    ――人口開発分野の国際的協力と交流は絶えず拡大された。中国は自国の人口開発問題の解決は、全世界の人口問題を安定させ、世界の平和と発展促進に重要な意義があることを充分認識しており、これまで毎回の国際人口会議が確定した基本原則と意義に従い、積極的に実施することを確約している。1994年の国際人口開発会議のあと、中国政府は一連の措置を講じ、『国際人口開発会議行動指針』を積極的に実施してきた。ここ数年、中国は国連人口基金、世界保健機関、世界家族計画連合会など国際機構や関係諸国の政府や民間組織とリプロダクティブヘルス保健、青少年教育、緊急避妊、計画出産への男性の参与などの面で優れた成果のある協力をおこなった。中国の人口と計画出産プラン実施成功は、他の多くの国にとって有益な参考となり、国際社会から日増しに評価されている。

    8、これからの数十年、中国の人口と開発は新しい歴史的時期に入る。低く安定した出産レベルの維持という前提の下で、中国の人口は低成長から徐々にゼロ成長へと移行し、総人口はピーク値に達したあとゆっくりと下がっていくだろう。出生人口の減少、社会全般の総扶養比の下降と労働力資源が豊富という歴史的チャンスをとらえ、教育と科学技術を大いに発展させ、社会からの投入を拡大し、蓄積レベルを高め、経済発展を加速し、総合国力を強化させ、人口と経済,社会、資源、環境が相互に協調された持続的可能な発展を実現させるための確固とした基盤を作り出す。同時に、社会主義の市場経済体制の確立とその完全化及び国民経済の持続的で迅速かつ健全な発展は、人口と開発の問題解決に豊富な物質的基盤を提供するだろう。

    9、中国の人口と開発の矛盾は依然として鋭く、多くの困難とチャレンジに直面している。人口の数量がこれからかなり長い時期に引き続き増長し、これからの十数年は、毎年平均1000万の割合で増加し、経済、社会、資源、環境と持続可能な発展に巨大な圧力をもたらすこと。人口の全般的素質がわりあい低いという状況の短期間内の根本的改善はむずかしく、科学技術の迅速な発展の要求には適応できないこと。労働年齢人口が大量に増加し、就業の圧力は弱まりを見せないこと。経済が発達していない状況のもとで高齢化社会に突入し、完備した社会保障システムの確立は難しさを増したこと。地域間の経済と社会発展の不均衡という現象は長期的に存在し、貧困撲滅の任務が非常に困難であること。流動人口が増加し、農村人口の都市部への進入と異なる地域間の人口の再度配置が、伝統的な経済社会管理体制及び人口関連政策に影響を及ぼすこと。社会主義の市場経済体制を完備させていく過程で、各種の矛盾と問題が浮き彫りになり、人口開発問題が直面する複雑性は尚も存在すると中国政府ははっきり認識している。