新中国成立いらい、中国の民主・法制建設は大きな進展を遂げ、人民の公民権と政治的権利は法によって保護、保障されている。
中国の憲法は、「中華人民共和国のすべての権力は、人民に属する」とはっきり定めている。全国人民代表大会と地方各級人民代表大会は人民が国家権力を行使する機関として、人民の民主的選挙によって選出され、人民に対し責任を負い、人民の監督を受ける。中国では、法によって政治的権利を剥奪された者を除いて、満18歳以上の公民は、民族、人種、性別、職業、家庭出身、宗教信仰、教育程度、財産状況、居住期間の別なく、すべて選挙権および被選挙権を享有する。現在、中国では99.97%の満18歳以上の公民が選挙権および被選挙権を享有している。選挙の状況から見ると、全国の投票率はずっと90%を上回っている。各級人民代表大会の代表の中で、各地区、各民族および各階層、各団体の代表は一定の比率を占めている。1998年の初めに選出された第九期全国人民代表大会の代表は合わせて2979人で、そのうち労働者と農民が18.9%、知識人が21.08%、幹部が33.17%、民主諸党派と無党派の愛国人士が15.44%、解放軍が9%、香港特別行政区の代表が1.17%、帰国華僑が1.24%を占めている。
全国人民代表大会は最高国家権力機関で、国の法律を制定し、国の重大な事項を決定し、国家行政機関、裁判機関、検察機関を選出し、かつこれらを監督する。中国は法によって国を治めることを実行している。改革・開放いらい、全国人民代表大会およびその常務委員会は360件余りの法律および法律問題に関する決定を制定し、地方各級人民代表大会は7000件余りの地方的法規を制定した。全国人民代表大会およびその常務委員会は国務院とその部門、および最高人民法院、最高人民検察院の活動報告を聴取、審議し、法律および法律問題に関する決定の実施状況を検査する。全国人民代表大会の各専門委員会も法律執行状況に対しさまざまな形で検査をおこなう。全国人民代表大会常務委員会はまた人民からの投書、来訪を受理し、司法機関の活動を監督し、法によって公民の合法的権利を保障する。
中国共産党の指導下にある多党協力および政治協商制度は、中国の民主的政治制度の重要な構成部分である。民主諸党派は共産党と親密に協力しあう参政党として、国家政権に参加し、国の大政方針および国家指導者の人選についての協議に参与し、国事の管理および国の方針、政策、法律、法規の制定と執行に参与する。国の重大問題について、政権党の中国共産党は民主諸党派にくりかえし意見を求め、協議してこれを解決する。第九期全国人民代表大会では、民主諸党派、無党派人士が全国人民代表大会常務委員会委員の30%、全国人民代表大会常設各専門委員会委員の21.9%を占めている。現在、国務院の各部・委員会と最高人民法院、最高人民検察院で、指導的職務を担当している民主諸党派の成員、無党派人士がいる。31の省、自治区、直轄市および15の副省クラスの市にも、副省長(副市長)または省長(市長)補佐を担当する民主諸党派の成員、無党派人士がいる。
各級政治協商会議は各党派、人民団体、無党派人士などで構成され、その構成メンバーは広範な代表性を持っている。第九期中国人民政治協商会議全国委員会(以下、全国政協と略す=訳注)の委員は34の分野から来ており、そのなかで民主諸党派、全国工商業連合会、無党派人士が全国政協委員の59.5%、常務委員会委員の63.4%を占めている。政協組織は政治協商、民主的監督、参政・議政を通じて国の政治活動のなかで重要な役割を果たしている。統計によると、1990年いらい、中国共産党中央、国務院が民主諸党派中央、無党派人士を招いて開いた協商会、座談会は100回以上にのぼっている。1992年から1998年にかけて、八つの民主党派中央と全国工商業連合会が改革・開放、経済建設、民主・法制建設、腐敗反対・廉潔提唱などの重大課題について中国共産党中央、国務院およびその関係部門に提出した重要提案は100件以上あり、中国共産党中央と国務院に採用されたものも少なくない。
末端組織の民主は、公民が直接さまざまな民主的権利を行使するのを保障する重要な手段である。農村の人民大衆は、村民委員会メンバーの直接選挙、民主的討論による自村の重大事務の決定などを通じて、民主的選挙、民主的政策決定、民主的管理、民主的監督の権利を十分に行使している。1988年いらい、全国農村の村民委員会は普遍的に3〜4期の改選が行われ、多数の村民委員会は村民会議、村民代表会議および村務公開制度を確立した。1999年に新しい「村民委員会組織法」が公布、施行されてから、半分近くの省、直轄市、自治区は自行政区域の村民委員会選挙法規を公布した。村民委員会の選挙はますます規範化され、村民の候補者指名権が尊重され、予選による正式候補者の選出、正式候補者の平等な競争、差額選挙、演説、秘密投票室の設置、公開開票、および選挙結果の現場公表など選挙人の権利を確保するための手順も規範化されてきている。統計によると、1999年度の村民委員会選挙を終えた省では、農民の投票率はほとんど90%を上回り、低くても85%を下回らなかった。
中国は、法によって公民の幅広い基本的な自由および権利を保障している。憲法は、公民は言論、出版、集会、結社、行進、示威および信教の自由を享有し、公民の人身の自由、人格の尊厳および住居は侵されない、公民の通信の自由および通信の秘密は法律の保護を受ける、とはっきり定めている。国は報道出版事業の発展に力を入れ、公民が言論、出版の自由を行使するためのよい条件をつくっている。統計によると、1998年、全国で新聞は計2053種類、300億4000万部、各種雑誌は計7999種類、25億4000万冊、書籍は計13万種類余、72億4000万冊発行された。放送局は294局、中央と省クラスの有線、無線テレビ局は560局、県クラスの放送テレビ局は1287局、教育テレビ局は75局あり、全国のテレビの人口カバー率は89%を上回り、テレビ視聴者は10億人以上に達している。1999年6月現在、中国のネットワーク接続コンピュータは146万台、ネットワーク利用者は400万人に達している。中国では、憲法および法律の規定に合致し、必要な登記手続きをとって結成された社会団体はすべて国の保護を受けている。1998年末現在、全国に16万5600の社会団体があり、その組織活動などはすべて法によって憲法および法律の保護を受けている。
国は、公民の信教の自由および正常な宗教活動を保護する。いかなる国家機関、社会団体および個人も、公民に宗教を信じ、または宗教を信じないよう強制してはならず、宗教を信仰する公民と、宗教を信仰しない公民を差別してはならない。おおまかな統計によると、中国には現在、各種宗教の信者が1億人余り、登記済みの宗教活動場所が8万5000カ所余り、各種宗教事務専従者が約30万人、全国的宗教団体と地方的宗教団体が3000余り、宗教学院・学校が74校ある。各宗教はいずれも自ら経典、書籍と刊行物を出版し、「聖書」の印刷部数だけでも2000万冊に達している。中国の各宗教団体は世界の70余カ国・地域の宗教組織、宗教界人士と連携を保っている。中国の人民代表大会、政治協商会議でも、各宗教の信者と各社会団体や組織の人が代表、委員に選出されており、全国の各級の人民代表大会代表、政治協商会議委員に選出された宗教界人士は1万7000人余りいる。
公安・司法機関は法によって犯罪行為を取り締まり、公民の合法的権利が侵されないよう保護している。統計によると、1998年、全国の各級法院が審理した各種の一審事件数は540万件で、内訳は刑事事件48万件、民事事件337万件、経済トラブル事件145万件、行政事件10万件近くであった。公安・司法機関は法によって殺人、爆発、毒物混入、強奪、重大窃盗、強姦、拉致および暴力団的性質をもつ組織による犯罪、銃器にからむ犯罪など重大な刑事犯罪活動を取り締まり、人民大衆の生命と財産の安全を力強く保障し、同時に法によって犯罪容疑者、被告人の合法的権利を守っている。1983年いらい、人民法院は証拠不十分で罪を構成しない者4万人余りに対し、法によって無罪を言い渡した。
近年、法律を厳しく執行し、司法の各環での人権保護を強化するため、人民法院は審判方式の改革を深くおこない、法による公開裁判を全面的に推しすすめ、裁判にたいする社会と世論の監督を強化して、司法の公正を確保している。一審事件は、法律で公開審理をしないと定められたものを除いてすべて公開審理をおこない、二審事件の開廷率もちくじ高められた。公開審理または非公開審理の事件は、すべて公開判決をおこなっている。開廷による事件審理はその場で挙証、証拠調べ、認証、弁論をおこない、法廷の判決率が高くなった。検察機関は、法があってもこれによらない、法を厳格に執行しない、司法が公正でないといった問題を法によって是正するため、法執行に対する監督に力を入れている。1998年、全国の検察機関が立件搜査すべき事件であるのに立件されていないものに対し、法によって公安機関に立件しない理由の説明を求めた件数は9335件、立件通告を求めた件数は5207件、期限を過ぎた拘置に是正の意見を出した人数は延べ7万992人、搜査活動における違法行為に是正の意見を出した件数は9964件、公安機関、国家安全機関から逮捕の審査と許可を求めるために送られてきた犯罪容疑者を受理した人数は68万9025人、審査を終えて逮捕を許可した人数は58万2120人、法によって追捕した人数は6957人、逮捕不許可の決定をおこなった人数は9万3218人、起訴するために送られてきた犯罪容疑者を受理した人数は66万8425人、審査を終えて公訴を提起した人数は55万7929人、法によって追訴した人数は3094人、不起訴の決定をおこなった人数は1万1225人、確実に誤りが認められる刑事事件の判決、裁定に対し控訴した件数は3791件、裁判活動における違法状況に是正の意見を出した件数は1211件、関係部門の減刑、仮釈放、刑務所外での一時執行における違法状況に是正の意見を出した件数は9672件であった。刑務所機関はあくまで法によって刑務所を管理し、刑務所の事務公開に努め、法執行の透明度を高め、在監者の合法的権利を確実に保障している。統計によると、1998年、全国の刑務所が在監者を減刑、仮釈放した人数は36万1000人で、在監者総数の25%を占めた。
弁護士制度、法律援助制度の健全化とその発展は、公民の合法的権益が侵されないよう法によって保護し、法律を正しく施行するうえで、ますます重要な役割を果たしている。現在、全国に弁護士事務所が9000カ所近くあり、登録弁護士が10万人余りいる。1979年から1999年にかけて、全国の弁護士は合わせて300万件の刑事事件で弁護を取り扱い、そのうち1998年だけでも弁護士が弁護をおこない、弁護を代理した刑事事件は29万6668件で、犯罪被疑者または被告人の合法的権益を効果的に守った。1996年と1997年に司法部法律援助センターと中国法律援助基金会が正式に成立してから、800余りの法律援助機構が設立され、ますます多くの貧しい公民が法によって費用減免の法律サービスを受けている。おおまかな統計によると、1997年、全国の各級法律援助機構と各種の法律サービス提供者が取り扱った法律援助件数は約5万件、法律相談で解答してもらった者は延べ40万人余りであった。1998年の20の省・直轄市の不完全な統計によると、取り扱った法律援助件数は合わせて6万件余り、法律相談で解答してもらった者は延べ80万人余りであった。1999年前半の24省の不完全な統計によると、取り扱った各種の法律援助件数は合わせて4万件余りであった。
公民は、国家機関と国家公務員に対し批判および提案をおこなう権利を享有し、その違法行為、職務怠慢に対して上申、告訴または告発する権利を享有する。公民の上申、告訴、告発の権利を保障するため、各級の各種国家機関はいずれも投書・来訪機構を普遍的に設置し、人民検察機関および行政監察部門は中央から地方に至るまで普遍的に違法行為、犯罪行為通報機構を設置した。国家公務員のとく職、職権乱用、および公民の合法的権益を侵す行為に対するマスメディアの世論監督は大いに強化された。国家機関または国家公務員が公民の権利を侵したために損失を受けた者は、法律の規定によって賠償を受ける権利を享有する。中国は1991年と1995年に「行政訴訟法」と「国家賠償法」をとくに制定し、これまでに人民法院はさまざまな行政事件を44万件近く審理し、国家賠償の事件を2566件処理して、公民の合法的権益を力強く守った。
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