一つの中国の原則と台湾問題


五. 国際社会で一つの中国の原則を堅持することに  
ついてのいくつかの問題




    中国政府は、国際社会において一つの中国の政策が普遍的にとられていることにたいし称賛の意を表す。われわれは1993年8月に白書「台湾問題と中国の統一」を発表し、その第五部分「国際事務における台湾とかかわりのあるいくつかの問題」のなかで、中国と国交を樹立した国と台湾との関係、国際機構と台湾との関係、中国と国交を樹立した国と台湾との航空ルートの開設、中国と国交を樹立した国の台湾への兵器売却などの問題に対する立場と政策を述べているが、ここに、関係ある立場と政策について改めて申し述べたい。    

    台湾は国連、およびその他の主権国しか参加できない国際機構に参加する権利がない。国連は主権国からなる政府間の国際機構である。中華人民共和国政府の国連における合法的権利が回復されてから、国連機構における中国の代表権問題は完全に解決されたので、台湾当局の国連加盟という問題は全く存在しなくなった。台湾当局は、国連の2758号決議は「中国の代表権問題」を解決しただけで、「台湾の代表権問題」を解決していないと公言し、「国連参与」を要求している。これは「二つの中国」、「一つの中国、一つの台湾」をつくり出す分裂行為であり、絶対に許すことができない。国連のすべての加盟国は「国連憲章」の宗旨、原則および国連の関係決議を順守し、主権と領土保全の相互尊重、相互内政不干渉などの国際関係の準則に従い、いかなる方式にせよ、台湾が国連、および主権国しか参加できないその他の国際機構に加盟するのを支持すべきではない。

    地域の参加を許す一部の政府間国際機構に対しては、中国政府はすでに一つの中国の原則に基づき、関係国際機構の性質、規約と実状に応じて、同意し、受け入れることのできる方式で台湾の加盟問題について按配している。台湾はすでに中国の一地区として、「中国台北」の名義でそれぞれアジア開発銀行(この機構での英文表記は「TAIPEI, CHINA」である)、アジア太平洋経済協力会議(この機構での英文表記は「CHINESE TAIPEI」である)などの機構に参加している。1992年9月、世界貿易機関(WTO)の前身であるガット(関税および貿易に関する一般協定)理事会議長は声明を発表し、中華人民共和国のガット加盟後に台湾が「台湾・澎湖・金門・馬祖単独関税区域」(略称「中国台北」)の名義で加盟することができると指摘した。WTOは台湾の該当機関加盟問題を審議しこれを受け入れるに当たっては、上述の声明で定められた原則を堅持すべきである。上述の特別の措置は、その他の政府間国際機構および国際活動が模倣するモデルとはならない。

    中国と国交を樹立した国は台湾に兵器を売却してはならず、あるいは台湾といかなる形の軍事同盟をも結んではならない。およそ中国と国交を樹立した国は主権と領土保全の相互尊重、相互内政不干渉の原則にのっとって、いかなる形または口実にせよ、台湾に兵器を売却したり、台湾の兵器製造を援助したりしてはならない。

    台湾問題は、中米関係における最も核心的な、最も敏感な問題である。中米間の三つの共同コミュニケは、両国関係を健全に、安定して発展させる基礎である。ここ二十余年来、アメリカは一つの中国の政策を堅持すると約束し、自分自身に米中国交樹立、両国関係の発展および台湾情勢の相対的安定などの利益をもたらしている。しかし遺憾なことに、アメリカは「八・一七コミュニケ」のなかで中国にたいしおこなった自らの厳かな約束に一再ならず背き、たえず台湾に先進的な兵器と軍事装備を売却している。このところ、米議会でいわゆる「台湾安全保障強化法案」をでっち上げた者もおり、さらに台湾を戦域ミサイル防衛システムに組み入れようと企んでいる。これは、中国の内政にたいする粗暴な干渉であり、中国の安全にたいする重大な脅威であり、中国の平和統一の進展を妨げ、同時にアジア太平洋地域ないし世界の平和と安定にも危害をもたらしている。これに対し、中国政府は断固反対する。

    中国政府は一つの中国の原則にのっとって台湾の対外往来活動に対応する台湾当局は世界でいわゆる「実務外交」を極力推しすすめ、いわゆる「国際生存空間」を広げているが、その実質は「二つの中国」「一つの中国、一つの台湾」をつくり出すことにある。中国政府は当然のことながらこれに断固反対する。同時に、台湾の経済・社会発展の必要および台湾同胞の実際の利益を考慮して、中国政府は台湾と外国との間で行われる民間の性格をもつ経済、文化の往来にたいし異議を唱えないし、かつ一つの中国を前提として多くの柔軟な措置をとり、台湾と外国との経済、貿易、文化の往来に便宜をはかっている。たとえば、台湾が「中国台北」の名義で引き続き国際オリンピック委員会(IOC)に残ることができる、がそれである。事実、台湾は世界の多くの国や地域と幅広い経済貿易、文化のつながりを保っており、毎年観光、ビジネス、就学のため、また学術、文化、スポーツの交流のため海外に出かける台湾同胞は延べ百万人にのぼっており、年間の輸出入額は2000億ドル余りに達している。これは、一つの中国の原則の堅持が台湾同胞の民間の対外交流活動に従事することに影響せず、台湾の正常な経済貿易、文化活動の必要にも影響しないことを示している。

    中国政府は台湾同胞の海外におけるすべての正当かつ合法的な権益を保障する。台湾人民はわれわれと血のつながりをもつ同胞である。中国政府は一貫して台湾同胞の海外における正当かつ合法的な権益を守るために力を尽くしている。中国の在外大使館・領事館はつねに台湾同胞とのつながりを強化し、台湾同胞の意見や要望に耳を傾け、台湾同胞の利益を保障することを自らの責任とし、彼らが困難を解決するのをできる限り助けている。湾岸戦争の時、中国大使館はクウェートに留まっていた台湾の労務者が危険地帯から安全に脱出するのを援助した。日本の阪神地方で大地震が発生したとき、中国の大使館と領事館はただちに災難を受けた台湾同胞を見舞った。カンボジアで内戦が発生した後、中国大使館は生命・財産をひどく脅かされた台湾のビジネスマンや観光旅行者が安全に移転し、離れるのを積極的に援助した。これらの事例は、中国政府が台湾同胞に関心をよせ、配慮していることを示している。海峡両岸の統一が実現すれば、台湾同胞はよりよく全国各民族人民とともに国際における中華人民共和国の尊厳と栄誉を十分に享受することができる。