西部大開発

西部大開発

　外国業者にとっての西部開発の意味

　西部大開発戦略の実施がもたらすビジネス・チャンスは、中国国内の企業を引き付けているだけでなく、外国業者に対しても同様の強い吸引力を持っている。アメリカのモトローラ社の頼炳栄高級副総裁は、中国西部の市場の潜在力はとてつもなく大きく、多国籍企業が西部の市場と魅力ある投資リターンを放棄するようなことはないと語った。

　モトローラ社の対四川投資はすでに三億ドルを超えた。このほど、同社はまた同省省都の成都市で「モトローラ�シティ」を設立した。これは同社が成都市に一億元を投資してネットワーク研究開発センターを設立した後、中国西部の市場を開拓するために踏み出した重要な一歩である。
　西部地区の外資導入が、投資のためのハード環境とソフト環境の不備、投資情報の未発達、管理人材不足、労働力の教養水準の低さといったいくつかの客観的要因の制約を受けているにもかかわらず、経済グローバル化と貿易自由化の急速な発展は多くの投資・協力のチャンスをつくり出している。
　西部地区は外国業者にとって次に挙げるような独特な魅力がある。一、まだ全面的に開発されていない地区として、市場競争力は比較的弱いが、発展の潜在力が大きい。二、土地、エネルギー、鉱産物、生物資源に恵まれている。三、労働力が相対的に安い。四、国が投資面で西部に傾斜し、優遇する政策を実行している。五、西部地区の重慶、西安などの重点都市にはかなり強力な科学研究陣があり、科学技術レベルと付加価値の高い製品の協力開発の面で一定の潜在力を持っている。

　現在、中国はすでに西部地区の金融、保険、電信などの十数分野を外国投資分野としてある程度開放するとともに、これらの分野における外国業者の投資企業設立の条件と持ち株の比率などを緩めている。中国は外資銀行が西部に代表機構や営業支店を設立するのを歓迎し、外国業者が西部の農業、水利、交通、エネルギー、原材料、環境保全などのプロジェクトに投資するのを奨励する。
　対外貿易経済合作部の石広生部長は次のように語った。西部大開発の戦略を実施する中で、中・西部地区に対する外国業者の投資を奨励するため、国は一連の優遇政策を実行する。
　これらの優遇措置は次のようなものがある。西部地区の強みを持つ産業とプロジェクトを選んで、専門の外国投資産業指導目録を作成し、目録にあるプロジェクトは「外国投資産業指導目録」の中の奨励プロジェクトに与える優遇を享受する。二〇〇〇年一月一日から、西部地区に設立される、国が設立を奨励する外国投資企業に対しては、現行の納税優遇政策の実行期間満了後の三年間は、企業所得税を一五％に減税する。外国投資企業が西部地区に再投資するプロジェクトは、外資比率が二五％を上回る場合、外国投資企業と同じような待遇を享受することができる。東部地区で試行を認められた開放分野とプロジェクトは、中・西部地区でも同時に試行するのを認める。東部地区の外国投資企業が西部地区で外国投資企業や国内企業を請け負い、経営、管理するのを認める。西部地区の各省・自治区の省都、区都と直轄市の経済技術開発区は認可を経て国家クラスの経済技術開発区に昇格することができる。
　国はまた、情勢の発展に基づいて、外国業者の対西部地区投資を奨励するいくつかの政策と措置を制定し、中・西部地区の経済発展を速めるであろう。
　これらの政策と措置は外国業者にとっては、間違いなく利益をあげられるはずである。以前の東部開発と比べて、現在の西部開発は主に客観的条件が変わっている。一九九九年末現在、国の外貨準備高はすでに千五百五十億ドルを超えたが、これは二十年前では想像しがたいことである。同時に、外国業者たちは対中投資の模索を二十余年も続けてきて、中国の建設と開発に参与することで自信を確立し、経験も積んだ。このほか、中国のWTO加盟の見通しも日増しに明るくなっている。これらの要素はいずれも外国業者を西部開発に引きつける新たな契機となるであろう。
　事実、長年来中国西部地区の省・自治区はずっと国際協力を求め、経済を発展させることに努めてきた。四川省では、アメリカのモトローラ社のほかにも、アメリカのＰ＆Ｇ、ドイツのシーメンス、日本のトヨタなど四十社近くの多国籍企業が投資して工場を設立しており　　全省の外資企業はすでに五千社を突破した。
　雲南省では、台湾企業の投資プロジェクトはすでに三百二十件を超え、投資額は一億七千七百万ドルを超え、主に飲食・サービス業、木材加工、不動産開発などの分野に投資している。
　シーメンス社は重慶における業務範囲を絶えず拡大し、現在は工業、エネルギー、情報、交通、医療、家電など多くの分野に及んでいる。今後の一定期間に、シーメンス社はさらに多くの面で重慶市と協力する予定で、目下汚水処理、ライト・レール交通（ＬＲＴ）、天然ガスパイプ網など一部の重要なインフラ建設プロジェクトとハイテク�プロジェクトについて商談中である。シーメンス社によると、同社は中国の西部大開発戦略に積極的に呼応し、これからの中・西部における業務開拓のために基礎を築く考えであるという。
　いままでのところ、西部地区にはすでに一万五千社余りの外資企業が設立され、投資総額は約七百億ドルに達している。
　投資家が西部地区の強みをフルに生かし、市場をつかみさえすれば、必ず良好な投資リターンを得ることができると関係者は見ている。

　西部開発の政策的支持と資金

　中国政府が西部大開発戦略の実施を決定してから、国務院の関係部�委員会はすでに行動に立ち上がり、新しい措置を講じ、実際の行動をとって西部地区の開発を支援している。

　国が西部地区への投資を増加

　国家発展計画委員会の曾培炎主任は、重大なシステム�エンジニアリングとしての西部大開発は「市場に基づく資源配置」の原則にのっとり、新しい考え、新しい方法、新しいメカニズムを採用し、社会と個人が西部に投資するのを奨励するほか、政府は傾斜政策を採って、西部地区への投資を増加する必要があると語った。
　同主任によると、二〇〇〇年に発行する千億元の長期国債の七〇%を西部のインフラ建設に充て、中央財政予算の四千四百二億元の地方助成金の七〇%を西部に支出し、外国政府の援助金と国際金融機構が提供する資金も七〇%が西部に注ぎ込まれる。
　同主任はさらに、西部大開発に関する一連の政策と措置が相次いで公布されることを明らかにした。

　金融業界、西部地区への貸付支援を強化

　中国人民銀行の戴相竜行長によると、二〇〇〇年、金融業界は次の六つの方面から西部大開発を援助するという。
　一、中長期融資を増加して、西部地区のインフラ建設を支援する。商業銀行が国債を引き受けるとともに、適時に相応の融資を供与し、国家開発銀行が重点プロジェクトに対する投資を適度に増加するよう積極的に促す。
　二、地方の中小金融機構に役割を発揮して、西部地区の生態環境の保全と建設を支援させる。農業金融機構は農業貸付構成を調整し、生態環境保全プロジェクトを支持する。
　三、金融にテコとしての役割をフルに発揮して、農業の産業構造調整を積極的に支持させる。農業融資を増加し、農民の借り入れ難の問題を解決する。銀行は西部で、すでに一定の規模を形成し、資源に恵まれ、基礎がわりにしっかりしている小都市を選んで、住宅、給水、給電などのインフラ建設、農産物�副業生産物加工、第三次産業に貸付を供与して支援する。
　四、科学技術成果の普及と人材の養成・訓練を支持する。規定に照らして科学研究事業部門への貸付サービスを確実に提供し、積極的に学資助成ローンと学生寮建設ローンを供与し、西部地区の人材養成を促進する。
　五、東部と西部の経済協力を支持し、西部経済の対外開放を促す。銀行は東部企業が西部地区に投資して企業を設立し、東部地区の強みのある企業が西部の欠損企業を併合するのを支持し、より多くの国際機構と外国業者を西部地区に投資するように誘致する。
　六、金融体制改革のテンポを速め、西部大開発の必要に応える。西部地区の金融サービス機構、サービス機能と金融市場を整備し、貸付資金の利用効率を高める。関係規定に基づいて、西部の国有商業銀行支店の歴史的に形成された重荷を優先的に解決し、貸付の供与と経営管理指標の考課方法を改善し、西部大開発の面で役割を発揮させる。
　国家開発銀行の陳元行長も、これからの一時期、国家開発銀行は西部開発支持を貸付業務の重点とすることを表明した。
伝えられるところによると、同行はすでに四川省政府と一括取決めを結び、四川省に五百三十億元の融資を供与する予定で、最初に実行するプロジェクトに三十八億元を融資した。
　中国輸出入銀行の羊子林行長によると、同行は中西部地区の輸出プロジェクトを優先的に支持し、貸付を増加し、機械�電子製品とハイテク製品を輸出する大手企業と大型プロジェクトの融資のニーズを重点的に保証する。このほか、また中・西部地区の外国政府借款の又貸しプロジェクトを優先的に実施し、中・西部地区のインフラ、農業�林業、環境保全、エネルギー建設をいっそう支持する。

　税務総局、西部の外国投資企業を優遇

　国家税務総局の金人慶局長は次のように発表した。二〇〇〇年一月一日から、西部地区に設立される、国が奨励する外国投資企業に対し、現行優遇政策の実行期間満了後の三年間は、以前三〇％だった企業所得税を一五％に減税する。
外国投資企業の西部地区における再投資プロジェクトは、外資の比率が二五％を上回った場合、外国投資企業と同じような待遇を享受することができる。

　科学技術部、五千万元の特別資金を投入

　科学技術部の朱麗蘭部長は次のように語った。西部大開発は科学技術を先行させなければならない。二〇〇〇年、科学技術部は五千万元の特別資金を投入して「西部大開発科学技術特別行動」を始動させる。科学技術の開発には生態環境の回復・整備技術、工業汚染防除技術を研究、開発し、先進的な実用技術を普及させ、西部の特色を持つ強みのある産業を発展させることが含まれている。
　おおまかな統計によると、科学技術部は第九次五カ年計画期に、各種計画を通じて約二億八千万元の資金を支出して、中・西部地区の科学技術の発展活動を支持し、西部地区の「乾燥地区生態環境推移」「節水プロジェクト」「黄河水資源の推移と持続可能な利用」など一部の重点プロジェクトを実施し、火花計画を西部で実施する考えを明らかにし、東・西部地区の技術結合の手本を示す活動を繰り広げている。

　鉄道建設に千億元

　鉄道部の傅志寰部長によると、次の五カ年計画期で、西部鉄道の大中型基本建設プロジェクトへの投資は約千億元に達し、二〇〇五年には、西部の鉄道は約一万八千キロに達する見込みである。
　西部の省・自治区間の通路を整備するため、主に神木北＝延安北、西安＝安康、内江＝昆明の各鉄道を建設すると同時に、チベットに通じる鉄道の建設の準備活動に拍車をかけ、国際通路建設を速め、主に中国＝キルギス＝ウクライナ鉄道を建設し、パン・アジア鉄道の建設計画を作成する。
　現在、西部地区の鉄道網の規模は一万四千八百五十八キロで、輸送能力が逼迫し、鉄道線が少なく、規準が低く、西部と中部をつなぐ通路が少なく、西部の省�自治区間の鉄道輸送路が不足している。

　交通部、七千億元を投入

　西部大開発にとって、交通は基礎である。交通部の黄鎮東部長は西部地区の道路と水路発展の長期目標を打ち出した。
西部地区の道路建設の総体的目標は、約五十年かけて西部地区の道路交通の様相に抜本的な変化をもたらし、配置が合理的で、機能が完備した自動車道路輸送サービス網を基本的に形成し、西部地区の道路交通の現代化をはかるというものである。
　短期目標として、今から二〇一〇年まで西部地区の道路建設を速め、西部地区の道路交通の条件を著しく改善し、西部大開発戦略の実施のために比較的有利な交通条件をつくり出す。それは国道主幹線を基本的に完成すること、農村の道路開通プロジェクトを基本的に完成し、条件を備えた郷、行政村、特に古い革命根拠地、少数民族地区、辺境地区、貧困地区のうち道路の通じる条件のある郷、行政村に道路が通じるようにすること、西部開発の大通路プロジェクトを実施し、八本の道路の大通路を重点的に企画、建設することである。
　水路建設の総体的目標は、水運の主要航路の建設を重点とし、西部地区の水運資源を全面的に開発し、西部地区の経済発展のニーズに応えることである。
　水路建設の重点は、二本の海に出る交通路（長江、西江）と一本の国境に跨る航路（瀾滄江）を建設し、その他の域内航路を相応に建設することである。
　交通部のある責任者が最近明らかにしたところによると、国は七千億ないし八千億元を西部大開発に充てることにしているという。

　水利部、四項目の重点開発を決定

　汪恕誠水利部長によると、水利部は次の四つの方面から西部の水利開発活動の重点を決めている。一、生態環境の改善を根本とし、また起点として水利計画を作成する。二、節水灌漑を重点として灌漑区域を建設する。三、水資源の最適な配置を目標として、流域と区域の水資源の統一的な管理を強化する。四、長期と全局から出発し、必要に応じて地区、流域に跨って水を引く。
　水資源の合理的な開発�利用は西部大開発戦略実施の極めて重要な内容である。西部地区の水資源の持続可能な利用を実現し、経済発展のニーズに応えるため、水利部は生態環境の改善を根本とし、また起点として水利建設計画を作成する。
　西部地区の水利計画はその他の地区と異なる特徴を持っている。この計画は西部の各省・自治区の異なる状況に基づき、生態環境を破壊せず、改善することを原則とし、科学的で実行可能なものでなければならない。例えば、新疆ウイグル自治区は水土資源に恵まれ、周辺地区を促進する上で大きな意義があることから、開発の重点となる可能性がある。
　目下、水利部は西部地区の水資源開発�利用計画の検討と制定を急いでおり、計画を作成してからは重点を際立たせ、段階を分けて実施し、しかも十分に論証する基礎の上で、力を入れて一部の重要な基幹プロジェクトを実施することにしている。