チベットの交通事情の現状と発展の展望

                            陳蓬

悠久な歴史、さんぜんと輝く文化、豊かな資源に恵まれたチベットは、われわれの偉大な祖国の南西辺境地域の輝きにみちた真珠である。この地には、美しい河川、広大な土地があり、人びとは勤勉で英知にあふれ、情熱で素朴である。山は高く谷は深く、河の流れは激しく、地質・地形が非常に複雑である。解放以前、全自治区の120万平方`の土地には近代的な道路が1本もなく、地元の人びとは、自分の肩で荷物を担ぐか、役畜で運ぶか、丸木橋を渡って運ぶような原始的な運搬法に頼り、不便な交通事情のもとで、社会経済の発展はひどく制約されていた。

チベットが平和解放されてからは、交通状況には天地をくつがえすような変化が生じた。1954年に、世界にその名の知れわたった青蔵(青海=チベット)道路、川蔵(四川=チベット)道路が同時にラサに通じるようになり、人類の道路建設史上の奇跡を創り出し、チベットに道路がなかった歴史に終止符が打たれた。飛ぶように速く回転する車輪の音は、閉鎖的で立ち後れた厳寒の高原を呼び覚まし、チベットの近代的な交通事業の幕が開かれた。

2001年5月16日、チベット自治区交通局のカツォ局長は、チベットの交通現状について記者のインタビューを受け、次のように答えた。

中国共産党第11期3中総以来、党と国家の親身の配慮および全国人民の大きな支援の下で、全自治区の各クラスの中国共産党委員会、政府と各民族の人々および駐チベット人民解放軍の共同の努力によって、チベットの交通状況には天地をくつがえすような変化が現われ、大きな成果をおさめ、道路による輸送を主とし、航空、パイプ輸送を補足とする現代的輸送の新たな枠組みが形成された。

チベットの交通の発展は次のような特徴が挙げられる。

国の資金投下が絶えず増加していること。1952年から1980年までのチベットの道路建設への国の資金投下は合計5億元であったが、1980年代末から2000年末には、中央はそれに60億元の資金を投入した。

同時に、投資の密度も大きくなっている。第7次5ヵ年計画期における国の総投資額は3億3000万元で、第8次5ヵ年計画期には、14億7000万元に増え、第9次5ヵ年計画期になると、国の総投資は40億元へと急増し、特に1999年、2000年の2年間の投資額は第7次5ヵ年計画期と第8次5ヵ年計画期の投資額の合計を上回った。

国の政策面からの傾斜および資金投入の効果は著しいものである。2000年末現在、全自治区では耐久的橋梁が1000基も架設され、総延長は3万b近くに達し、道路の開通総距離数は2万2500`に達し、そのうち、二級道路は568`(青海省境内にあるチベット管轄のゴルムド=タングラ山区間は含まない)、三級道路は1322`、三級およびそれ以上のランクの道路は8.4%を占め、総距離数の7.4%を占めている。ラサを中心に、5本の国道を骨格として、2横3縦を主な構造とする、全自治区に放射状に通じる自動車道路ネットワークが初歩的に形成されている。メド県を除く、72の県には道路が開通し、80%の郷・鎮と63%の行政村に道路が通じている。

50年来のチベットの交通運輸業の飛躍的発展は誰の目にも明らかである。しかし、チベットでは今だに鉄道が通じていないし、水運もなく、道路による交通が大きな発展を見るに至ったにもかかわらず、全国ないし西部地区と比べて、格差が大きく、全自治区の経済、社会の発展のニーズに適応するにはほど遠く、次のような問題と困難がかなり存在している。

道路の技術レベルが低く、通行能力が悪い。現在の2万2500`の中で、等級以下の道路が道路総距離数の53%を占めているのに、西部では平均26%を占めるのみである。これは、チベットの道路事情は全国との隔たりを縮小するのではなくて日に日にそれが拡大していることを物語っている。チベットの道路のハイレベルあるいはそれより少し劣るレベルの道路の路面舗装率は7.4%のみであるのに、西部では平均30%である。このような状況になったことには歴史的原因もあり、チベットにおける大部分の道路は、1960〜1970年代につくられたもので、科学的調査と測量をしたことがなく、洪水に見舞われると、道路が姿を消してしまうことは非常に普遍的なことである。

道路はひどい自然災害にさらされ、防災能力も弱い。チベットの地形・地質条件は複雑で、気候が極めて悪く、既存の道路は青蔵道路と拉沢(ラサ=ズェダム)道路以外の道路は、災害の頻発、防災能力の弱体化のため、程度の差はあるが交通が中断するようなことがしばしば起こっている。

道路は奥地には通じておらず、農民たちが外へ出かけることは難しい。現在は全国で唯一の道路が通じていない県――メド県はチベットにある。現在、チベットでは、なお20%の郷・鎮、37%の行政村には直通バスが出なく、国境警備隊は役畜で運搬作業をおこない、3000`もの国境線で、4つの国と地域と接するが、4つの関門には道路が通じていない。これに対し、隣国インドの道路は、すでに完全にアスファルト舗装となっている。

道路建設資金の調達ルートが単一的で、自律的発展能力が低い。チベットの道路建設資金は主に国の資金投下に頼っており、道路保守費は主に自治区の徴収した道路使用料および地方の財政補助によるものである。チベットの財政は主に中央の補助に頼るものであるため、道路の建設・保守に必要な資金を捻出することができない状態である。現在、半数近くの道路は保守維持をおこなっていない状態にあり、国の支出した2億元の道路保守費の大部分は労働者の賃金に使われている。

道路建設の専門人材が欠けていることも致命的な原因である。チベット自治区の道路交通で必要なさまざまな専門技術者の数は少なく、全体の資質も高くなく、特に各専門分野においては、普遍的にハイレベルの技術面のリーダーが不足している。

今後の5年間はチベットの交通の発展にとっての良いチャンスである。第10次5ヵ年計画期における全自治区の道路への資金投下は120億元を上回る予定であり、2005年までにチベットの道路総距離数は2万7000`(新たに築造した低水準の道路は含まない)に達し、そのうち、3級以上の道路は12%、ハイレベル、その次のレベルの道路は10%をそれぞれ占め、区都のラサから各地区・市まで、地区・市から一部の県までの道路交通事情は目に見えて改善されることになると同時に、90%の郷・鎮と77%の行政村には直通バスが通じることを実現する。計画中のラサからコンガ空港までの道路改築拡充工事は11月に着工されることになり、ラサ=ゴンガ道路の全長は50.47`、予算の見積もりは7億2400万元で、完工のあかつきには走行距離数は42.5`短縮することができる。要するに、第10次5ヵ年計画期に、自治区の道路交通の立ち後れた状況は初歩的に改善され、道路交通の経済、社会に対するボトルネックとしての制約は初歩的に緩和されることになる。

「チャイナネット」2001/06/05