国家統計局局長、国務院全国国勢調査指導グループ副組長の朱之�且≠ﾍ今年3月、中国の人口高齢化のプロセスが速くなったと発表し、次のように指摘した。第5回国勢調査は中国の人口年齢構成にかなり大きな変化が生じたことを示している。0歳から14歳までの人口が総人口に占める割合は22.89%で、1990年の国勢調査の時より4.8ポイント下がり、65歳とそれ以上の人口が総人口に占める割合は6.96%で、1990年の国勢調査の時より1.39ポイント上昇した。老齢人口は総人口の6.96%を占め、中国は人口高齢化の挑戦に直面している。

　日に日に激化する人口高齢化

　一つの国が老齢化に入ったかどうかは、一般には60歳以上の老人が総人口の10%を越えたかどうか、総人口に占める65歳以上の老人の割合が7％に達しているかどうかを見る。第5回全国国勢調査のデータによると、中国に60歳以上の人口が1億3200万あり、すでに人口総数の10%を占めている。今後50年内に、老齢人口は年平均3.2％の率で増加するものと予想され、専門家は2040年まで、中国の60歳とそれ以上の老人は約4億人に達し、総人口の約26%を占めるものと見ている。つまり、平均4人足らずで老人が一人おり、大都市では2人ないし3人ごとに老人が一人いることである。

　西側の先進国に比べて、中国の高齢化が速く、このように高い老齢人口の割合は人類史上にもこれまでなかったことであり、それがますます高くなることは、社会と経済の発展、産業構造、養老のパターンおよび社会保障システムの確立と健全化などに一連の影響をもたらし、大きな老齢人口の圧力を形成する。

　養老の憂い

　人口の高齢化に従って来るのは養老の憂いである。まず、養老保険基金は目下深刻な財務問題に直面している。一は養老保険基金が支出超過で、財務危機に陥っていることであり、二は個人養老保険口座の未払い額が1990億元に達したことである。

　労働と社会保障部社会保険研究所の何平所長は終始中国の養老保険制度の設計制定に参与しており、氏は人口の高齢化と現金による収入と支出が養老保険基金の赤字を招く主要な原因であると語った。

　中国は80年代から養老年金の引き出しが始まったが、これは限られた人が引き出すだけで、農村と郷鎮企業は養老年金を設立していない。1995年から、養老保険基金の管理方式は現金による収入と支出から部分的蓄積制に変わった。つまり従業員の養老保険はこれ以上国だけに頼って解決するのではなく、仕事に参加した時から個人口座を開設して自分のために養老年金を蓄積することである。定年退職した老齢者がだんだん多くなるにつれて、かつ以前養老年金を蓄積していないため、統一プール基金は支出に間に合わない。統一プール基金と個人口座が一緒であるため、統一プール基金が支出に間に合わない時に、個人口座を当座貸越しにして、個人口座の未払い現象が深刻になった。

　養老圧力を緩和する対策と方法について、何平所長は次のように指摘した。

　一は毎年の不足分を補う財政収入の5％相当の資金を財政予算に組み入れる。中央が立法の形式でこの財政政策を明確にすることを提案する。こうすれば、全般的にみて問題が大きくないが、もともと財政に頼って生計を立てる貧しく、立ち遅れた地区にとって、若干の困難にぶつかる可能性がある。

　二は統一プールに力を入れ、社会保険のカバーする面を拡大し、若者が多く、定年退職従業員が少ない企業を社会保険に参加させ、基金を最大限に徴収する。

　三はさまざまな人を使う部門が申告した社会保険料納入基数および費用納入人数を全面的に検査して、その正確さを保証する。

　四はできるだけ早く定年退職年齢延長案を確定する。推計によると、中国では、定年退職年齢が一年延長すると、養老統一プール基金は40億元増え、支出は160億元減り、基金の不足分は200億元縮小する。各地が多くの従業員の繰り上げ定年退職を認めることに対し、繰り上げて定年退職した従業員も遊んでおらず、このようにやるのは事実上地元の就業の圧力を軽減することができず、逆に養老に新しい圧力を増加するという異なった意見を表明した。

　次に、養老の憂いは中国の農村家庭の養老能力の低下にも現れている。中国の家庭は非常に強い凝集力があり、老人の生活が困難にぶつかった時、子女、配偶者は依然として最も主な援助者であり、家庭は大きな程度において老人の養老問題を引き受けている。このような状況は農村では特に著しく、中国の農村ではずっと老後のために子供を育てるという言い方が流行しているが、これは中国農村の最も簡単な養老の方式だとも言える。今年の旧正月に、深センに出稼ぎに行った農民が全国各地に送った金は13億元にも達したという。各地から浙江省に出稼ぎに行っている数百万の農民は、11億元を郷里に送金した。

　しかし、現在社会に次のような新しい趨勢が現れた。家庭の機能が弱まり、次第に核家族化し、家庭の若い人はますます自分に関心を持ち、これにもまして個人の小さな家族に関心を寄せている。そのため中国農村の家庭の養老能力は低下している。現在社会養老保険システムはまだそこまで配慮することができない。

　社会保障措置は向上が待たれている

　「空巣」家庭は老人が独りでまたは夫婦が二人で一緒に暮らし、子女がすでに小鳥が巣立つように家を離れ、老人に付き添う人がいなくなったことを指す。

　中国老齢委員会の提供した資料によると、中国高齢者の「空巣」率はすでに高齢者人口総数の1/4以上を占めているが、この数字はまだ絶えず大きくなっている。

　専門家の分析によると、高齢者の「空巣」が増える現象が出現したのには主に次の二大要因がある。一は人々の住宅条件が次第に改善され、子女と別居する老人がますます増えていることであり、二は高齢者が増え、配偶者に死なれて独り暮らしをする老人も絶えず増えていることである。そのため、社会高齢化の加速と家庭構造の変化が結合して、「空巣」家庭が大量に増えている。予測によると、2005年になると、中国の高齢者の「空巣」家庭は老人家庭の50%以上を占めるだろう。

　ところが、それに対応する社会保障措置ははなはだ不足している。関連部門の統計によると、現在施設がそろっている老人ホームに住んでいる老人は100万人足らずで、高齢者総数に占める割合はかなり低い。一部の施設条件がわりによい老人ホームの住居率も30%前後しかない。同時に、中国の伝統的思想観念の影響を受けて、特に子女のある老人も老人ホームに行って安らかに晩年を過ごしたくない。老人ホームに住むと他人から子女が親不孝だと言われると思う老人はかなりいる。

　そのほか、社会養老保障体制が不健全で、地域社会（コミュニティー）に養老保健サービスがないため、人々は「空巣」家庭の老人を心配している。とりわけ都市の高層住宅に住む「空巣」家庭は、隣り近所の人たちとの助け合いがきわめて少なく、地域社会のサービス保証措置が遅れ、ひいては一部の地域社会にはいまなお特に老年家庭に奉仕する措置がなく、ごく少数の「空巣」家庭の老人が数日後にようやく隣り近所の人に発見される始末である。

　これに対し、関係筋はこう見ている。人口構成の変化は社会保障事業に多くの新しい難題をもたらし、中国の経済と社会にも若干の消極的影響をもたらしている。中国の人口高齢化の特徴に基づき、先進国の養老保障制度の経験を参考にして、地域社会の養老奉仕保障体系を確立し、できるだけ早く実行可能な対策と措置を探し求めるべきである。

　新しい産業は新しいメカニズムが必要

　高齢者の急速な増加に伴って、高齢者の消費総量も逐次大きくなり、これによって興された老齢産業は大いにやりがいのあるものであり、開発をさし迫って待たれている産業となっている。

　統計によると、中国では60歳以上の老人は毎年3％の率で増え、80歳以上の老人は5%の率で増えているが、これは毎年60歳以上の老人が380余万人増え、80歳以上の老人が50余万人増えることを意味する。関係方面の提供した資料によると、現在、老人の退職金、再就職の所得、親戚・友人の援助は毎年3000億ないし4000億元に達し、2025年と2050年には、高齢者の潜在的市場の購買力は１兆4000億元と５兆元に達する見込みである。これにより、老年市場は未来の国民経済各業種の中でかなり大きな影響をもつ消費市場の一つになるであろう。

　現在、中国の老齢産業はまだ認識とスタート段階にあり、産業化の規模を形成しておらず、すでに人口高齢化の発展の必要に適応していない。中国老齢協会の張文範会長は、福祉形式の社会奉仕と家庭奉仕に頼るだけでは人口高齢化の急速な増加の客観的必要に適応しにくくなる、もし社会化、市場化、産業化の運行メカニズムを通じて、潜在的な強みを現実の市場に転化させることができれば、中国の老齢産業は21世紀における社会・経済発展の新しい経済成長要素になるだろうと見ている。

　北京市政治協商会議の張寧委員は、現在、この方面ではまだ専門の研究がなされておらず、保険業、観光業など一部の産業と部門は老人を門外に阻み、一部の保険は70歳以上の老人の加入を認めず、一部の旅行社は高齢者の団体観光を受け付けない。専門に老人のための保険、観光、医療保健は極めて少ないと語った。

　予測によると、次の産業の市場は日ましに大きくなる。

　家庭世話業。技能を身につけた年寄り世話係、パートタイマー、看護士、臨時の家政婦などの家政サービスは老人に大いに歓迎されるであろう。

　老年マンションの不動産業。中国の現在の住宅設計とインテリアはまだ高齢者の特殊な必要を考慮に入れておらず、部屋のドアが狭く、車椅子が通れないものさえある。高齢者の住宅区は生態環境、文化娯楽体育活動の空間と休息の空間を際立たせる必要がある。

　レジャーと療養を主とするリズムの遅い老年観光業および関連ある娯楽用品業。

　地域社会の高齢者福祉、高齢者教育、高齢者文化、高齢者文化・娯楽、高齢者スポーツ事業も現実的な、差し迫って必要とする大きな市場である。それから高齢者の医療・保健、看護業、高齢者の医療サービスネットの完全化、高齢者の医療衛生条件の改善なども、大いにやりがいのある市場である。

　「星光計画」がスタート

　今年６月初め、中国民政部は、人口高齢化の挑戦に対応するため、全国の「地域社会高齢者福祉サービス星光計画」をスタートさせると発表した。

　「星光計画」の主要な任務は、今年から3年内に、中央から地方に至る民政部門は福祉宝くじの発行で集めた福祉金をほとんど都市部の地域社会高齢者福祉サービス施設、活動場所と農村部の郷・鎮老人ホームの建設に用いることである。

　「星光計画」の実施は中国政府が人口高齢化の挑戦に対応する重要な措置であり、それは短い期間内に全国の大中都市で町をカバーし、付帯施設がそろった地域社会の養老福祉サービスシステムを基本的に確立し、中国の高齢者事業全体の発展にきわめて深遠な影響を及ぼすことを意味する。

　この「星光計画」の投資総額は100億元を上回り、資金源は地方政府と社会の投入を主とするが、そのうち、民政部と省クラスの民政部門は今後三年内に支配する福祉金の80%(40億元ないし50億元)を「星光計画」の援助に集中的に用いることになる。

　中国は1987年から福祉宝くじを発行してから、昨年末現在までに、あわせて500億7000万元を発行し、126億3000万元の福祉金を調達して、社会の福祉プロジェクト10万件近くを援助した。これらのプロジェクトは全国に及んでおり、一億以上の高齢者、身体障害者、孤児など特殊な困難を抱えている人々を援助した。

　「北京週報」2001.No.29 より