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中国で実施されている最低生活保障制度
最低生活保障制度は中国の社会保障システムの「最後の保障ネット」である。上海市が1993年に真っ先に実施していらい、すでに8年近くも経っている。この制度の実施状況は果たしてどうだろうか。貧困地域にもこの制度があるのか。地元の財政はこの救済措置を保証することができるのか。また、どのように保証しているのか。現在、すでに出来あがっているこの「社会保障セーフティーネット」は都市部の貧困人口の貧困からの脱却を保障できるのか。これら一連の問題について、チャイナネットは民政部救災・救済局救済処の王治坤処長にインタビューした。次はその一問一答である。

記者  「最低生活保障ライン」実施の現状はどうなっているか。大、中都市には行き渡っているのだろうか。

王   都市部住民の最低生活保障制度は、最低生活保障ラインを基準に救済を行う新しいタイプの社会救済制度で、従来の社会救済制度を改革、改善し、発展させたものであり、中国社会保障システムの中の「最後の保障ネット」である。

 1993年、上海市は他の都市に先んじて都市部住民の最低生活保障制度を確立した。1997年9月、国務院が全国的範囲で都市部住民の最低生活保障制度を確立する旨の通達を出した。1999年末までに、全国の667の大、中、小都市と1682の県の政府所在地(中国では県城といわれている)では、すべて最低生活保障制度が実施されている。現在、数少なからぬ地域では最低生活保障ネットはあらゆる非農村戸籍の住民層へと広がっている。2001年第一四半期現在、最低生活保障制度を享受している人口は全国に416万人もおり、一人当たり月額約60元の保障金を受け取っている。

記者  中国の最低生活保障はどのぐらいのレベルのものか。高いラインはいくらになっているか、また低いラインはいくらになっているか。実際の生活水準と「ライン」との間の格差をどのように無くすことにしているのか。その「ライン」のもとで暮らしている人々の間にも違いがあるはずだが、実際に救済を行う時には、どのように取り扱っているのか。地域間の状況もまちまちだろうが、各地域ではどのように実施されているのか。

王   最低生活保障は全国で実施されている制度として、基本原則、実施範囲、資金源、管理体制などの面で統一的な規定があるべきである。ただ、東部地区と西部地区のギャップは大きく、大、中、小都市の消費レベルもそれぞれ違うので、中央政府は最低生活保障基準の原則しか制定できず、具体的な基準は各地が実情に基づいて制定することになっている。1999年10月1日に実施され始めた「都市部住民最低生活保障条例」では、都市部住民の最低生活保障基準は、市、県人民政府の民政部門が現地の財政、統計、物価などの部門と共同で、「地元の都市部住民が基本的生活を維持するのに必要な衣服、食物、住居費用に基づいて、水道料金、光熱費および未成年者の義務教育費用を適当に考慮して確定する」と定められている。その中からは、都市部住民の最低生活保障は社会保障システムの中の「最後のセーフティーネット」として、その保障レベルは都市部住民の基本生活を維持できることを原則として、社会保障システムの中で最も低い基準になっていることが読み取れる。

現在、全国の各市、県の保障基準は大きく異なり、同じ省、自治区の中でも市や県によって基準が違っている。全体から見ると、北京、上海、広東省の保障基準は比較的に高く、最も高いのは深せん市の319元である。割に低いほうは貴州、江西、内蒙古などで、最も低いのは貴州省黔西県の78元である。

36の主要都市(市街区)の保障基準

(単位:元/人・月)

都市   基準   都市   基準

北京   280   広州   300

天津   241   南寧   183

石家庄  182   海口   221

太原   156   成都   156

フフホト 143   重慶   169

瀋陽   195   貴陽   156

長春   169   昆明   182

ハルビン 200   ラサ   170

上海   280   西安   156

杭州   220   西寧   155

合肥   169   銀川   160

福州   200−220ウルムチ 156

南昌   143   深せん  319

済南   208   廈門(アモイ)265−315

鄭州   169   寧波   215

武漢   195   青島   200

長沙   200   大連   221

ある家庭が最低生活保障金を受け取れるかどうかを判断する際に、その家族の平均収入が地元の最低生活保障ラインより低いかどうか、また、その家庭の実際の生活水準が地元の一般生活水準より明らかに高いかどうかの両方を見なければならない。

実のところ、福州、アモイなどのように家族の人数によって保障基準を決める都市もある。一人家族の保障ラインは最も高く、二人家族はその次で、三人以上の家族は最も低い。また、統一基準を使用すると同時に、身寄りのないお年寄りに対して保障基準を20%引き上げているところもある。例えば、広州、大連などである。

保障金は家族構成者の平均収入と現地の最低生活保障基準の差額に基づいて家庭単位で給付される。例えば、ある3人家族の家庭で、一人あたりの月収が170元、地元の最低生活保障基準が200元の場合、その家庭は月額90元の保障金を受け取るべきである。もちろん、家族のいないお年寄りのような、何の収入もない人に対しては保障基準通り全額給付する。

また、保障の対象に対して、最低生活保障金を支給すると同時に実物を配っている地域もある。例えば北京市では、月に280元の最低生活保障金を支給すると同時に、保障の対象に40元に相当する「食品、食用油補助カード」を渡している。このカードで指定された食糧店から食糧や油をもらうことができる。

記者  中国の貧困地域にも「最低生活保障ライン」があるのか、地元の財政は救済の実施を保証できているだろうか。また、どのように保証しているのか。

王   先ほどお話したように、中国のすべての都市と貧困地域を含めたすべての県で住民最低生活保障制度が実施されている。この制度を実施する過程で、貧困地域特とりわけ財政的に困難な地域では、難しい現実問題にぶつかったケースもある。特に資金難である。これらの地域の財政に頼るだけでは全面的な保障の実施は難しい。今、これらの地域は中央政府の要求に応じて、財政支出構造を調整し、最低生活保障を含めた社会保障への投入を増やしている。一方、中央財政も中西部の社会保障への投入を増やして、社会保障制度の確立と改善をサポートしている。

記者  最低生活保障事業の実施は各地の民政局が責任を負っているのか。保障金が保障対象の手元に届くまでどのような手続きが必要なのか。

王   「都市部住民の最低保障条例」によると、都市部住民の最低生活保障制度の実行は地方の各レベルの人民政府が責任を負うことになっている。県レベル以上の地方各レベル人民政府の民政部門が具体的にその行政地域内の都市部住民最低生活保障の管理責任を負うことになっている。財政部門が保障資金を確保することに責任を負う。統計、物価、会計監査、労働保障と人事などの部門も関連業務を立派にやり遂げなければならない。民政部が全国の都市部住民最低生活保障の管理の仕事を担当する。

 最低生活保障実施のプロセスには主に申請、審査、批准、受領、変更と調整などが含まれる。具体的な手続きは以下の通りである。

1、家長が戸籍の所在地の街区弁事処或いは郷鎮人民政府に書面で申請し、関連証明書類を提示したうえで、「都市部住民最低生活保障待遇審査表」に書き込む。

2、街区弁事処または郷鎮人民政府は第一回の審査をしてから、関連書類と審査意見を県(市、区)レベルの人民政府の民政部門に報告し、審査してもらう。

3、県(市、区)レベルの人民政府の民政部門の審査を経て、条件に合致した者に対して最低生活保障待遇に該当することを批准し、「都市部住民最低生活保障金受領カード」を発給する。条件に合致しない人に対しても書面でその結果を通知する。

県、区の民政部門と街区弁事処、郷鎮人民政府が申請者の経済状況および実際の生活水準について確認のための調査を行う際、申請者および関連会社、組織或いは個人が調査を受け入れ、関連情報をありのままに提供しなくてならない。

4、保障の対象が「都市部住民の最低生活保障金受領カード」と身分証明書、戸籍謄本を持参して、指定された時間帯と場所で最低生活保障金を受け取る。現在は、金融部門または郵便局を通して保障金を支給しているところも少なくない。

5、管理、審査の機関は四半期ないし半年ごとに、保障対象の家庭収入状況について再確認を行い、家庭収入の変化に応じて調整を行う。

 住民委員会は住民の自治組織であり、街区弁事処または郷鎮人民政府の委託を受けて保障の申請を受理し、家庭訪問調査などの実務を担当し、政府部門に協力してもよい。

記者  「保障を受けるべき者が保障を受けていない」という問題が存在しているのか。今の「社会保障セーフティーネット」は都市貧困人口の貧困からの脱却を保障できるのか。

王    現在、都市部住民生活保障制度が設けられてはいるが、まだ初歩的なもので、この制度を規範化、充実させる任務はまだ重い。特に、「保障を受けるべき者が保障を受けていない」という問題がまだ多くの地域で存在している。民政部門の調査によると、全国の都市の貧困人口は約1400万人であるが、今年度の第一四半期末まで、都市部住民最低保障待遇を受けている人口は全国で416万人しかいない。まだ1000万人近くの人口が最低生活保障ネットに組み込まれていない。その原因は主に三つある。一、一部地方は財政難で、それに自らの支出構造を調整する余裕にも限りがあり、財政が許す範囲内で保障を与えるしかできず、まず貧困人口の中で最も貧しい人に保障を与えている。二、また、仕事の中にはまだ規範化されていないところがある。たとえば、一部地方では、就業年齢層の人なら仕事や収入の有無を問わず、一概に一定の収入があるものとされ、貧困の人々が最低生活保障ネットに入ることを人為的に制約することになっている。三、一部家庭は保障基準が低く、金額が少ないとして申請する気持ちさえない。また、子供が学校や外で差別されることを恐れて救済を申請しない家庭もある。

記者   現在、中国の都市貧困層はどのような人たちからなっているのか。

王    中国の都市貧困層は「生計費がない、労働能力がない、法的に扶養してくれる人がいない」(即ち「三つのない」人たち)という従来からの救済対象のほかは、主に次の三種類の家庭に集中している。一、家庭内の主な稼ぎ手がリストラで失業し、それに他の収入もない家庭。リストラで失業した人の中で、年齢が比較的大きくてなんの技能も身に付けていない者、それから都市から遠く離れたところにある国有企業の労働者は再就職が難しく、生活が最も苦しい。二、身体障害者や病人、高額医療費用のかかる者を抱えている家庭。三、労働力に欠けていながら、就学の学生を抱え、支出の多い家庭。

記者   農村部の最低生活保障の状況はどうなっているか。

王    都市部住民の最低生活保障を力強く推し進めると同時に、各地では農村部の最低生活保障制度の確立をも重視している。統計によると、2000年末までに、全国の29の省、自治区、直轄市では程度の違いはあるがこの事業が展開されている。そのうち、北京、天津、河北、河南、遼寧、吉林、上海、江蘇、浙江、福建、広東、広西、陝西、寧夏など14の省(自治区、直轄市)ではすべて農村部の最低生活保障制度を確立し、実施している。農村人口の中で300万人余が最低生活保障を受けており、保障金額は7.3億元(実物を含む)に達し、そのうち財政と集団による資金投入が半々となっている。

 都市部住民の最低生活保障と比べると、農村部で実行されている最低生活保障制度は救済内容、救済方式、救済基準、救済周期、資金源などの面で大きく異なっている。例えば、家庭収入を一年間を周期として計算し、保障基準も年単位で決められる。普通は上半期の家族構成者の平均収入と保障基準の差額に基づいて、本年度の保障金や実物を支給している。月に一回支給する場合もあれば、四半期または半年ごとに一回支給する場合もある。資金源は財政からの割当金と郷、村からの投入である。すでにこの制度を実施している地域の平均レベルを見ると、大体一人あたりの月額差額補助金は15−20元で、農村部の貧困層の衣食、必要品等の最低の生活要求を基本的に保障している。

 農村部最低生活保障制度は、従来の政府と集団による臨時的救済から規範化された社会的救済制度に転換されつつある。この事業の進捗状況を見ると、経済が比較的に発達している地域では必要条件が比較的に整っており、すでに基準と方法の違った農村部最低生活保障制度が確立されている。経済が立ち遅れている地域では、農村社会における救済任務が重く、地方財政が苦しいなどの原因で、農村部最低生活保障制度の確立は比較的に難しいが、現在、多くの地域で積極的な模索が繰り広げられている。

 民政部は都市部住民の最低生活保障を着実に実施すると共に、農村の最低生活保障への指導をも強めている。すでにこの制度を実施している地域に対しては主に調査研究や政策面の指導に力を入れ、実施の過程で生じた問題をタイムリーに検討して解決し、経験を総括して交流を行い、この制度の規範化と充実を目指している。一方、この制度を実施していない地域に対しては、その地域の事情に適した措置を取り、個別に指導を行い、できるかぎりのことを着実に推し進めている。具体的な実施日時は各地の必要と可能性に基づいて自ら決定するものとする。

 「チャイナネット」 2001年8月1日

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