中国の対外開放の拡大とともに、翻訳人材に対するニーズが絶えず増えているが、このほど開催された「第一回翻訳コンクール」の結果は予想外のものであった。最もすぐれた訳文がなかったので、トップクラスの賞がなかったばかりか、シンガポールの応募者が二等賞に入賞した。ある翻訳家によると、中国大陸部の翻訳者たちは翻訳の「テクニック」を重視しているが、訳文の芸術性をゆるがせにし、翻訳人材の断層が目立つようになっている。
「北京青年報」の関連報道によると、上海翻訳家協会と上海訳文出版社の「外国文芸・訳文」誌が共同で開催した「第一回翻訳コンクール」には700部の訳文が送達されたが、その中で、最年小の応募者は15歳の少年で、これは若者たちの文芸作品の翻訳への関心の深さを示すものである。
しかし、中国の応募者たちは訳文の「雅」、つまり表現の美しさだけに注意し、「信」(正確さ)という翻訳の原則を厳守していないものが目立った。訳文のスタイルが原文により近いものであることや語彙の正確さということが見落とされ、訳す際に見落としたところ、句読点や翻訳の間違いのあるところがいたるところで目についた。
上海翻訳家協会の黄源深副会長は「唯一の二等賞をシンガポールの姚登南氏に授与したことには、まったく異議はない。姚氏のレベルが他の応募者より高いことは歴然たるものであった。しかし、反省しなければならないのは、姚氏の受賞はそのすばらしい英語だけでなく、すらすらとした中国語の表現も重要な要素となっている。シンガポールの応募者が中国の応募者に勝った事実は中国における英語と中国語の教育に存在している弊害をさらけ出すことになった」と語った。
黄源深副会長は「中国大陸部の翻訳人材には高齢化傾向があり、『銀髪のプロジェクト』とも呼ばれている。「第一回翻訳コンクール」でシンガポールの応募者は中国の応募者たちに勝ったこの事実は大陸部の翻訳人材の断層を顕在化させることにもなった。著名な翻訳家である草嬰氏は「文芸作品の翻訳は感情を込めてすすめる仕事であるため、翻訳の芸術性を念頭に置かなければならない。翻訳者は職人でなく、翻訳はテクニカルな仕事ではない。しかし、現在の中国の翻訳界では、名人級の翻訳家を目にすることがない一方、テクニカルな翻訳は優位を占めている。経済的実益のため、一冊の本の翻訳を何人かに委託する出版社もあり、これでは翻訳の質が劣ることは疑いなく、さらに外国の文芸作品を国内に紹介する上でもマイナスの影響を及ぼすことになっている。今回の翻訳コンクールの結果を通じて、われわれはこの現状に注意しなければならない」と語っている。
「チャイナネット」 2004/12/29