李 梓
中国では、各クラスの指導幹部の任用制度は、これまでずっと「内定」の方式をとり、どのような人を選び、どのような人を使うかは、完全に組織、指導者によって決められた。そのため、長年来、勤務年限によって役人になり、人情によって役人になるというやり方に大衆は大きな不満をもっている。幹部採用の不正と腐敗現象を無くすため、中国は党と政府の指導幹部の選抜・任用制度を改革し、競争によって指導幹部のポストにつき、適任でないものは幹部から下ろすことを実施し始めた。
党・政府指導幹部制度の改革は政治体制改革の重要な内容である。中国共産党中央は力強い措置をとって絶えず改革を進め、民主主義を拡大し、考課方法を改善し、交流を促進し、監督を強化し、幹部が高い地位に就くこともできれば平らの職員になることもできることを促すなどの面で大きな進展を見た。『党・政府指導幹部選抜・任用工作暫定条例』などの重要な法規制度の制定と実施、および党・政府指導幹部の選抜・任用、考課、交流、監督などの規範化によって、優秀な人材の選抜のためのよい条件がつくられ、幹部採用の不正と腐敗現象もある程度抑えられた。
競争によってポストにつく
「わたしは反汚職賄賂総局の副局長になるため……」と、最高人民検察院特別捜査一部の徐進輝主任が壇上で答弁し始めた。最高人民検察院庁クラス指導職務の競争によってポストにつく試験制度がここに幕を開けた。
今回競争によってポストにつくための講演・答弁に参加したものは86人で、反汚職賄賂総局副局長、職務犯罪予防庁庁長、告訴検察庁庁長、政治部弁公室主任、刑事上告検察庁副庁長など16のポストの競争に参加した。
参加者が講演を終えると、次々と質問が彼らに出され、総合的分析、決断力、専門知識についての審査が行われた。審査員は参加者の講演と答弁を採点し、また会場で競争者に対する大衆による投票が行われた。
反汚職賄賂総局局長補佐兼捜査指揮センターの徐海法主任は講演・答弁を終えた後、記者の質問に、次のように述べた。わたしはこの競争に参加することができ、非常にうれしい。最高人民検察院が競争激励メカニズムを導入したことは大変人心を得、この方法は最高人民検察院機関に新しい気風を吹き込み、これまでの活気のなかった現象がなくなり、各部門は積極的進取の生気と活力に満ちるようになった。この改革は検察機関が仕事のレベルと能率を高め、法に依って国を治め、社会主義の法治国家を建設する中でより大きな役割を果たすものと確信している。
法律学修士の雷東生(30)さんは、今年5月に筆記試験、面接試験を受けて、ずば抜けた成績で公安部弁公庁研究室総合処処長になり、部機関の最も若い正処クラスの幹部の一人となった。彼は「競争によってポストにつくことにより、職務の昇進が公開、透明になった。これは日光の下での競争である」と語った。
北京市の指導幹部の公開選抜は新しい突破がみられた。2001年、北京市政府は再び副局長クラスの指導幹部の公開選抜を行った。以前の選抜条件の一つとして必要であった「北京市都市部住民戸籍」が初めて取り消された。
1995年から現在まで、北京市指導幹部公開選抜弁公室の副主任として、孟令華さんは北京市が副局クラスの指導幹部を公開選抜する仕事を4回経験した。
1995年、1997年、北京市は指導幹部を2回公開選抜したが、その条件の一つとして「北京市都市部住民戸籍」が必要であった。1998年8月、北京市は再び副局クラスの指導幹部の公開選抜を行ったが、博士、修士の学位をもつ帰国者、高級会計職名を持つ財務関係者および国内外の公認の高級専門技術者については「戸籍の制限を受けない」と規定し、合格者は、配偶者との別居問題を優先的に解決し、18歳未満の子女も戸籍を北京に移転できると決定した。
これについて、専門家は次のように分析している。1998年の公開選抜は、戸籍政策の面でいくらか緩められただけであるが、これは指導幹部の公開選抜における「戸籍問題」解決の試みであった。
この試みで12人の北京以外の省、市の幹部が北京の戸籍に入ることができた。競争参加者の知識レベルも向上し、大学院生以上の学歴を持つ者は38%を占め、高級専門技術職名を持つ者は49%を占めた。
今年の北京での公開選抜は、全国に目を向け始めた。北京は一部の人材たとえば経済師長、会計士長、技師長が不足している。北京の多くの重要な部門にとっては、これらの人材が大きな役割を果たしており、欠かせないものである。
今年、戸籍の制限を取り消したことにより、78人の北京以外の幹部が「首都へ行って試験を受ける」ことができた。
ある責任者は次のように述べている。指導幹部の公開選抜は市場経済体制改革に適応したもので、その最終的目的は旧い幹部選抜方式の欠陥を克服し、人材資源の高効率かつ最適化の配置を実現することにある。戸籍の制限の取り消しで、最大限度に人力の資源、人材の資源を解放し、本当に優秀な人材を指導ポストにつけることができるようになった。
競争によってポストにつくのは「公開、平等、競争、優秀なものを選ぶこと」を主な特徴とする幹部選抜任用方法であり、公開的な申し込み、試験・答弁、大衆評議、組織審査を通して、幹部を任用する。これは過去の幹部選抜任用制度に対する改革と完備化である。
この方法は、公務員制度の実施にともなって現れたものである。1993年8月に『国家公務員暫定条例』が公布されてから、競争によってポストにつくことが中央国家機関、各省、自治区、直轄市の党・政府・大衆の機関で実行され始めた。統計によると、今年4月までに、全国の29の省、自治区、直轄市の計5万近くの機関、部門がこの方法をとり、各クラスの機関幹部80余万人が35万近くのポストをめざして、この競争に参加した。
機構改革以来、国務院の20余りの部・委員会・局は100の司クラス指導ポスト、800以上の処クラスの指導ポストで競争によってポストにつくことを実施している。最近、中央組織部、人事部、教育部、対外経済貿易部、国家税務総局、国家計画出産委員会などの部門は一部の司クラス、処クラスの指導ポストについて公開選抜あるいは競争によってポストにつくことを実施した。
この方法は地方でもとられるようになっている。広東省政府の46の部門では計2490人の機関幹部が1235の処クラスの指導ポストをめざし、そのうち才徳兼備、働き盛りの1136人の幹部が正・副処長になった。山西省政府弁公庁は機関内部の処クラスの指導ポストについて全部競争によってポストにつく方式をとり、43人の「合格者」がそれぞれ正、副処クラスの指導ポストについた。
競争によってポストにつくことは喜ばしい変化をもたらした。「人情によって役人になる」、「役人の職務を金で買う」などの「内定」、「裏口」は市場がなくなった。各地は競争のポスト、ポストにつく資格、競争の手続き、試験の成績、競争の結果を大衆に公開し、同時に規律検査、監察部門の監督を受け入れている。競争によってポストにつくことはすでに公務員制度を実施した初期の人員移動の一種の手段から、一種の制度化、規範化された人材選抜の方式となっている。
高い地位につくこともできれば、平らの職員に下りることもできる
以前は、指導幹部になる、平らの職員に下げられるようになることはなく、適任でなく、過ちを犯しても転職して引き続き指導幹部になることができた。現在では、このような現象が無くなり、指導幹部が適任でなかったり過ちを犯すと、ポストから離れなければならない。
統計によると、1995年から、全国の各省、自治区、直轄市は処クラス以上の適任でない現職幹部を10109人調整し、そのうち庁・局クラスの幹部366人、課クラスとその以下の幹部6万3000人がそれぞれ非指導的職務に変えられるか、降職されるか、あるいは機関から移動させられた。
上がることもできれば下りることもできるメカニズムの確立は当面幹部人事制度改革を進める重要内容で、そのうち幹部が下りることができるようにすることが難題であり重点である。下りることができるようになれば、幹部人事制度の改革は順調にいくだろう。
下りるのが難しいのは、歴史的原因があり、現実的な原因もある。長い間、社会に「年が来るまで下りない、下りるのは過ちを犯したからだ」という見方があった。幹部人事制度では、退職年齢を除き、幹部の「下りる」判断の基準、政策の根拠、具体的な方法を欠き、どんな状況で下りるのか、どこへ下りるのか、どんな形式で下りるのかについて、科学的な、操作しやすい実施方法がなかった。
指導的幹部の考課制度を完全なものにし、適任でない現職幹部を「下ろす」のは、幹部人事制度改革の重要な一環である。1994年の党の14期4回総会は、現職を担当する能力のない幹部を断固として調整し、上がることもできれば下りることもできる制度をつくるべきだと提出した。つづいて、中央と中央組織部は『党・政府指導幹部選抜・任用工作暫定条例』、『党・政府指導幹部考課工作暫定規定』を配布し、適任でない現職幹部を調整するための基本的基準をうち出した。
「下りる」べき幹部をどのように下ろすかについて、各地は実践を通じて積極的にいくつかの新しい方法をさぐってきた。
考課制度を確立し、完全なものにする。指導グループに対する年度、任期中、交代の考課を行って、適任でない現職幹部を調整する。
幹部の試用期制を実施する。この方法をとると、適任でない幹部を適時に下ろすことができる。湖北省襄樊市は1998年以来、9923人の新しく抜擢した幹部に対して試用期制を実施し、そのうち39人が現職に不適任なために職務を解かれ、49人が試用期間を延長された。
最下位淘汰制を実施。遼寧、吉林、福建、湖北、重慶などの省、直轄市の一部の地方は指導幹部に対して統一考課評価を行い、順位を決め、最下位の者は淘汰するという方法をとっている。この制度を通じて、適任でない現職の幹部は降職、免職される。吉林省長春市は1998年、市直属機関の処クラス以下幹部の年度考課で最下位淘汰制を実施し、最下位の79人の幹部が免職、降職され、公職を解かれた。
ポスト待ち制を実施する。ポストを待つ間(一般は1ないし2年)は、臨時の仕事をしながら、学習する。期限が終わると、態度のよい者に再びポストを与える。態度のよくない者は、降職、免職される。河北省滄州市はこの方法によってポスト待ちの143人の幹部うち、27人が降職されるか、あるいは非指導的職務に変えられ、8人が免職された。
招聘任用制を実施。一般に招聘してポストにつかせ、任期が終わると、考課し、それに合格した者は引き続き招聘資格を獲得することができる。広州白雲区は招聘任用制の実施を通じて、22人の幹部が仕事の能力が悪く、目標と任務を完成できなかったので、淘汰された。
改革を通じて、伝統的な意識が打破され、上がることもできれば、下りることもできる制度は次第に形成されつつある。
監督・管理を強化
幹部人事制度の改革は、共産党の執政能力と指導レベルにとっての厳しい試練である。
そのため、指導幹部に対する監督を強化する必要がある。一つは指導幹部が話をし、知らせる制度を確立する。つねに幹部と話をし、幹部の考え、仕事の状況などを知る。特に幹部の職務が変動したり、誤りを犯す兆候があったり、清廉政治面で大衆が不満であったりする時、その幹部と話をし、本人に注意し、未然に防ぐようにする。二つは幹部の勧告激励制度を実施する。誤りがあるが、まだ規律処分を与えるまでにはなっていない幹部に対し、批判、教育を行い、警告を出し、期限を切って誤りを正させる。誤りがわりに大きいか定められた期限内に誤りを正さない者に対しては、職務の調整を行う。
社会の監督ルートを広げる。一つは幹部公開制度を実施し、副局級の党と政府の指導幹部を公開選抜する時、次の競争者について、報道界などを通じて公開し、社会の監督を受け入れるようにする。二つは指導幹部任期経済責任審査制度を実施し、審査の結果を幹部使用の主な根拠とする。三つは幹部仕事監督巡視制度を確立し、巡視員が定期的に各市、区の幹部選抜任用活動に対して巡視を行う。四つは陳情、投書の仕事に力を入れ、指導幹部の政治思想、道徳、品性、清廉政治、人材の選抜任用などについて意見が出た時、直接話をするなどの形式をとり、指導幹部にありのまま党組織にはっきり話させ、もしウソを言ったり、事実の真相を隠したり、組織をだましたりする者には厳重な処分を与える。
各地は幹部の監督特に幹部選抜任用に対する監督を強化する面で、新しい方法をとっている。各クラスの組織部門は大衆の摘発専用電話を設け、人を派遣して大衆の摘発を聞き、大衆の反映した問題について、調査し、事実の真相をはっきりさせたうえで任用するかどうかを決める。2000年から、中国共産党中央組織部は2回検査グループを派遣し、11の省、自治区、直轄市、6の中央国家機関、部、委員会の幹部任用制度の実施状況を調査し、制度に違反した行為に対する処分の度合いを大きくした。このほか、幹部に対する監督を強化するため、各地は普遍的に党内の監督、法的監督、大衆の監督、民主諸党派の監督と世論の監督を有機的に結びつけ、強大な監督の合成力を形成している。
ここ4年、全国で『中国共産党規律処分条例(試行)』に違反した事件を約1200件取り調べ、県・処クラス以上の規則違反者を353人処分した。
「北京週報」 2001年9月6日