温家宝総理の内外記者会見

人々の注目を集めていた全国人民代表大会(全人代)は今日(14日)閉幕した。大会のクライマックスである総理の記者会見が午前10時15分から始まった。取材に有利な席につこうと、内外の記者たちは2時間前から入場を始めた。

温家宝総理は記者の質問に答える前に、まず今回の「両大会」の報道のために来ている2000人の記者や今日の記者会見の会場に来た700人の記者のみなさんに感謝の意を示し、我が国の国柄に関心を寄せ、わが政府の考慮に資するためのアドバイスや意見を提出してくださり、我が国の改革開放と経済建設について客観的かつ公正に報道してくれた内外の記者たちに感謝の意を表した。

 

 

新華社記者:昨年のマクロ調整について、どう評価されますか。今年のマクロ調整はどんな特徴があるのでしょうか。さらに力を入れていくつもりなのでしょうか。

温総理:過去2年間に、われわれは経済面で「遭遇戦」に直面しましたが、適時かつ果断にマクロ調整の措置を取ることにより、マクロ調整には著しい成果が見られることになりました。われわれは経済の大きな起伏と物価の過度の上昇を効果的に抑制し、経済の平穏で比較的急速な運行と物価の基本的な安定を維持しました。しかしながら、われわれはいささかも手を緩めてはならず、われわれが現在直面している情勢は流れに逆らって行く舟のごとく、進まなければ後退することになるのです。一、マクロ調整の基礎はまだ確固たるものではなく、穀物の増産、農民の収入増の難度は高くなっており、とくに生産手段の価格の上昇幅は大きくなっています。固定資産投資の規模は再び増大する可能性が高く、石炭・電力・石油・輸送の供給はなお逼迫しています。今年の1月と2月に、電力の供給は12%増えましたが、25の省・直轄市・自治区では電力使用を制限したことがあり、これは経済生活面で電力の供給が逼迫していることを物語っています。二、われわれは一連の難問に直面しています。経済の発展が遅くなれば、就職のプレッシャーが大きくなり、財政収入も減少し、諸般の事業も資金不足に陥るでしょう。ところが、経済の発展が速くなってもだめで、経済生活が長い間逼迫状況に陥り、持続的に発展しつづけることが難しくなるのでしょう。三、中国経済の問題は、結局は構造面・経済成長パターン・体制面の問題であり、これらの問題を解決していくためには、時間が必要です。

以上述べたように、みなさんにはっきりと伝えたいのは、政府の第一の任務としては、マクロ調整にさらに力をいれて改善を図り、経済の安定的で快速な成長を維持していくことです。われわれは具体的な事例に区別して対応して、助成政策あるいは抑制政策をとり、経済手段による調節の方法を取ります。

 

 

台湾年代テレビ記者:温総理にひとつ教えていただきたいことがあるのですが、私の知る限り、閉幕したばかりの全国人民代表大会で、非常に高い得票率で『反国家分裂法』が可決されたということですが、この法律は打ち出されたばかりで、その内容は大きな関心を集めています。ただ、われわれ個人としてはこの法律の条文のかなり多くの部分においては未来の海峡両岸の持続的な交流について強調されていることに関心を持っています。国務院の各機関がこの法律の枠組みの下で、どのように具体的な措置を講じて、海峡両岸の持続的な交流を促していくつもりでしょうか?

また、われわれは国内のさまざまな都市に多くの台湾ビジネスマンがいることも知っていますが、こちらでビジネスに取り組んでいるかひいてはここを生活の基盤としているわけですが、この新しい法律はこれらの数多くの台湾ビジネスマンの権益にどうのような影響をもたらすことになるでしょうか?もしくはその逆で、影響をもたらすではなく、彼らの権益をいっそう保障するものになるのでしょうか?

温総理:私は先ずお尋ねしたいのですが、あなたはこの法律の条項に目を通したことがあるのでしょうか?

台湾年代テレビ記者:関連のある法律の条文に目を通したことはあります。

温総理:この台湾記者の質問に感謝します。ここで私は先ず2300万の台湾同胞に挨拶の言葉を送りたいと思います。あなたの質問はこの法律の肝心の部分をつかみ取ったものです。つまりこの法律は海峡両岸関係を強化・促進する法律であり、平和統一の法律であり、台湾人民に対するものではなく、「戦争のための法律」でもありません。

この法律のなかでは、両岸の人的交流を促進することを明確に定めており、 経済面での協力と直接の「三通」を奨励・促進し、教育、科学技術、文化などの分野などざまざまな事業における交流を奨励・促進するものであります。この法律では台湾の業者の利益を保護することが定められています。この法律は「台湾独立」勢力を抑制し、それに反対するものであります。「台湾独立」勢力を抑制し、それに反対してこそはじめて、台湾海峡に平和な情勢がありうるのであり、台湾海峡の平和と安定は台湾の業者の大陸での投資にプラスとなり、また、外国からの大陸への投資にもプラスとなるのです。

あなたは私がどんな措置をとるのかと尋ねましたが、胡錦涛総書記は先般、台湾問題についての重要談話のなかですでにわれわれは台湾業者の大陸での合法的権益を保護し、台湾人民にプラスでさえあれば、われわれはそれをするであろう、と語っています。

一、できるだけ早く海峡両岸間の旅客チャーター便を祭日のものから常態化することであります。二、措置を講じて、台湾とりわけ台湾中南部地区の農産物の大陸での販売という問題を解決することであります。 三、できるだけ早く大陸の漁民の台湾への労務輸出を回復し、それを解決すること。 われわれはさらに一連の優遇政策と便宜をはかるための措置を打ち出す準備もしています。

 

 

ロイター通信記者:人民元為替レート問題はつねに世界中で非常に注目されている問題のひとつであり、中国の数多くの重要な貿易相手も中国にいっそう弾力的な人民元為替レートメカニズムを取るよう促しています。しかし、中国はそれは長い道のりとなろうとしています。当面、あなた方にはなにかこれならいいというような改革プランがあるのでしょうか?最初の変化はどういうものになるのでしょうか?

温総理:中国の為替レートに関する改革は1994年から始まり、今日に至るまで止まったことはありません。われわれの目標は市場ニーズに依拠した、管理のもとに置かれた、変動為替レート制度であります。現在、われわれはさらに為替レート改革のプランを検討しており、市場においてさらに弾力性のある為替レートメカニズムを形成することに努めています。われわれが今取り組んでいるのは、為替レート改革のために確固とした基礎を打ち固めることであります。一、マクロ経済の安定と発展を保つことです。二、金融分野の健全な運営を維持することです。 それと同時に、われわれは外国為替管理の面ですでに一連の緩和措置を取っています。中国の為替レート制度改革或いは人民元の切り上げは、果たして中国の経済、中国の企業にどんな影響を及ぼし、近隣諸国ひいてはその他の世界の国々にどんな影響を与えるかについては、いろいろ議論されています。 率直に言えば、一部の人たちは人民元の切り上げを強く求めていますが、人民元切り上げがもたらす問題について完全に理解してはいません。われわれの国は責任のある国であり、人民元の切り上げ及び為替レートメカニズムの形成において、われわれは自国の利益を考えるばかりでなく、周辺諸国や世界に対する影響を考えなければなりません。 最後に、私は皆さんに申し上げることができるのは、この作業をわれわれは進めており、いつそれを打ち出すか、どんな案になるかは、人々にとって意外なものとなる可能性があります。

 

 

中央テレビ記者:総理はさまざまな場所で、2005年の経済活動の重点は諸改革をおしすすめることで、今年は改革の年と言われており、政府活動報告の中でも改革の深化を強調し、経済成長を阻害し、経済の不安定をかもし出す体制的な根源をなくすとしています。これら体制的な根源について、解決が迫まられているのはどんなものでしょうか。よろしくお願いします。

温総理:私はいろいろな場所で今年は改革の年であると言いました。その理由は三つあります。一、経済の中の健康でない、不安定な要素をなくし、マクロ調整の成果を強固にするには、改革をしなければなりません。二、経済生活の深層部にある矛盾や問題の解決、構造調整、経済成長方式の切換えのためには改革しなければなりません。三、社会の公平と正義の実現、調和のとれた社会の構築のためにも改革しなければなりません。

中国の改革は一年のことではなく、長期にわたる任務です。しかし、一部の問題は早いうちに解決したほうがいいです。さもなければ、積弊となって改めにくくなります。今年の改革について、私は五つの任務を列挙しています。一、政府自身の建設と改革を強化し、政府の職能を切換えること。二、国有企業の改革を促し、主に会社法人の企業統治構造の整備と株式制を実行することです。三、金融改革です。これは中国経済にとって非常に重要な問題で、しかも問題点が多く、大いに力を入れなければなりません。四、徴税と費用の改革を中心とした農村改革で、主に農村部の経済の土台にふさわしくない上部構造の一部の問題を解決することです。五、社会保障制度の改革で、中国の国情に適した社会保障体系の構築を加速することです。

今年は改革の年であるばかりか、正確に言えば、難関突破の改革の年と言えましょう。

 

 

香港明報記者:中央政府は一貫して香港の安定と繁栄を願っていると思います。現在、香港の経済は好転しており、社会の安定も達成しています。中央政府はなぜ今の時に董建華氏の辞職を受理したのでしょうか、曾蔭権特別行政区長官代行にどんな期待を寄せられているのでしょうか。

温総理:ご質問ありがとうございます。董氏の辞職は香港同胞が非常に注目していることであります。

あなたが言われたように、香港の祖国復帰以降7年余このかた、一国二制度の方針は香港で着実に実行されてきました。香港の資本主義制度は変わってはおらず、香港の法律も基本的には変わっておらず、香港人の生活様式も変わってはいません。

特に見て取らなければならないのは、香港はアジア金融危機によってもたらされた困難を克服し、経済が回復し始め、人々の生活も改善していることです。

こうした状況の下で、董氏は健康上の原因で辞職を提出されたのは誠心誠意のものであると私は見ており、香港同胞に理解されることであろうし、中央政府の尊重も得られると私は思います。

7年来、董氏は一国二制度の方針と『基本法』を貫徹し、香港の繁栄と安定の確保のために数多くのパイオニア的な仕事をされてきました。董氏は勤勉忠実に執務し、苦労をいとわず、なんのうらみつらみもなく、敢然と責任をとり祖国と香港に対する高度な責任感をもつ精神を示されました。

氏の特別行政区長官であった7年間における努力と貢献に対して、歴史は公正な結論を下すことであろうし、香港同胞も忘れることはないでしょう。

董氏の後任の選出については、完全に香港『基本法』と関連法律について事を運ぶことであります。でも、私は、香港人には香港を上手に管理する能力があると私は確信しています。中央政府の香港に対する一国二制度、香港人による香港統治という高度の自治の方針はあくまでも変わることではありません。

この時点においては、香港の同胞に心を一つにして、ともに発展を図り、香港のさまざまな仕事を上手におしすすめ、香港をさらに繁栄させ、安定させるよう望んでいます。

 

 

日本「朝日新聞」の記者:中日関係に関する質問でございます。温総理が先ほどロシアの記者の質問にお答えになった際、中ロ関係は歴史上一番よい時期に入ったとおっしゃいましたが、現在、中日両国の間の人的交流と貿易額が絶えず増大しているにもかかわらず、中日関係は「政治が冷え込み、経済が熱い」状況から、現在の「政治が冷え込み、経済も冷え込んでいる」状況となったと考えている人がいますが、温総理はこれをどう見ているのでしょうか。中国側の日本側に対する期待は何でしょうか。中国はこの問題をどういうふうに解決していくつもりでしょうか。

温家宝総理:中日関係は最も重要な二国間関係であり、われわれが喜びをもって目にしているように、中日国交正常化以来、中日関係は大きな発展を遂げており、昨年の二国間の貿易額は約1700億ドルに達し、人的往来は400万人を超えました。さきほど女性の記者がお話しになったとおり、中日関係には障害もあり、その障害は主に政治面のものであり、根本的な問題は日本側がいかに歴史問題に正しく対処するかにあります。私はこの機会をお借りして、中日関係を緊密化させ、改善させるため3つの原則を提出したいと思います。中日関係は中日国交正常化の際の三つの政治文書を遵守する上で、以下の三つの原則を遵守すべきであります。一、歴史を鑑みとして未来に向かうこと。今年は中国人民の抗日戦争が勝利を迎えた60周年にあたり、この歴史を記念するのは、戦争が中国人民、アジア人民ひいては日本人民にもたらした災禍を思い出させることにもなります。われわれは日本側もこの機会を捉えて、中日の友好を促進するよう願っております。二、一つの中国の原則を堅持すること。日米安全保障同盟は日米両国間のことでありますが、中国はそれに関心を寄せるのは、それが台湾問題にも触れているからです。台湾問題は中国の内政であり、いかなる国の直接あるいは間接の干渉も許すことはできません。三、協力を緊密にし、ともに発展すること。中日友好協力には、大きな潜在力があり、とくに経済貿易面では、両国の共同発展を目標に掲げています。そのため、私はさらに3つのことを提起したいと思います。一、積極的に条件を創出し、中日両国のハイレベルの相互訪問を実現させること。二、両国の外交部門が共同で、中日友好の戦略的研究に着手すること。三、歴史によって残された問題に適切に対処すること。

「チャイナネット」2005年3月14日


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