04年予算執行状況と05年予算案に関する報告(2)

二、二〇〇五年度中央及び地方予算案

中央が決めた今年度の経済活動の布石に基づき、二〇〇五年度予算の編成と財政活動に関する全般的な構想は次のようなものである。鄧小平理論と「三つの代表」の重要思想を指針とし、中国共産党の第十六回全国代表大会、十六期三、四中全会及び中央経済活動会議の精神を真剣に貫徹するとともに、科学的発展観をもって統轄し、経済発展の促進と財政の実力増強をメインテーマとし、人間本位の堅持と公共財政体制の構築を基盤とし、穏健財政の確実な実施と改革の推進を原動力とすることにより、財政資金運用の規範化、安全性と実効性の向上に力を入れ、国民経済の持続的かつ急速で、調和のとれた健全な発展と社会の全面的進歩の促進をはかる。

(一)穏健財政の実施について

二〇〇五年度において穏健財政を実施することは、中央が経済情勢の変化に基づいて打ち出した重大な政策決定である。一九九八年以来、わが国が七年連続で積極財政を実施してきたが、これによりアジア金融危機の影響と国内需要の不足に対処し、経済の安定成長を促すうえで重要な役割を果たした。当面、わが国経済の需給関係にはすでに変化が生じているため、経済構造の調整が急務となっている。農業、教育・科学技術・文化・医療衛生や環境保全、社会保障、インフラなどを強化する必要がある一方、一部の業種においては投資が過熱し、おびただしい重複建設現象が際立っている。このほか、当面、社会全体の投資規模がすでにふくらんでおり、民間資金もかなり増大しているため、インフレの圧力は依然として存在している。これらの情況が十分示しているように、拡張型の積極財政を緩急適度の穏健財政へ転換させる必要があり、またその条件も備わっている。これは主として、財政赤字や長期建設国債発行の規模を適度に縮小するとともに、財政支出の構成と国債資金の投入方向の調整に力を入れるべきであることを意味している。これにより、二〇〇五年度財政赤字を三〇〇〇億元に抑え、前年度の予算より一九八億三〇〇〇万元減らすとともに、長期建設国債を八〇〇億元計上し、前年度より三〇〇億元減らすこととする。同時に、中央予算内に経常建設投資を一〇〇億元増やす。上述の赤字規模と長期建設国債を維持するのは、主に次のような要因を配慮したからである。科学的発展観を全面的に具現させ、「五つの協調」の要請に照らして、農業や教育・科学技術・文化・医療衛生、社会保障、環境保全、生態系整備などの脆弱な部分を強化し、とりわけ食糧の増産と農民の収入増を促進する長期的かつ効力的メカニズムがまだ不健全であるため、財政のさらなる支援が必要とされている。建設中の国債依存プロジェクトの中には引き続き国債資金のバックアップを必要とするものがかなりある。西部の大開発や東北地区などの旧工業基地の振興、中部地域の勃興促進、地域間の調和のとれた発展の推進において、国債資金の支援が欠かせないのである。また、国内外の情勢も不確定要素がかなり存在しているため、われわれは発展を速めるとともに必要な財力を蓄えておかなければならない。このほか、経済の発展と国内総生産の成長に伴い、二〇〇五年度予算の赤字の国内総生産に占めるウェートは二〇〇四年度の二・五%から二%に下がり、〇・五%低くなる。

(二)二〇〇五年度予算の主要指標について

二〇〇五年度予算の主要指標の設定は下記のように提示する。中央の歳入は一兆六六六二億八〇〇万元で、二〇〇四年度より一五八〇億五四〇〇万元増やし、一〇・五%増とする。中央の歳出は一兆九六六二億八〇〇万元で、二〇〇四年度より一三八七億六九〇〇万元増やし、七・六%増とする。収支を差し引くと、赤字額は三〇〇〇億元で、二〇〇四年度の予算より一九八億三〇〇〇万元減少する。二〇〇五年度の中央財政は国債依存プロジェクトの資金を八〇〇億元計上して、前年度より三〇〇億元減らした。その内、七〇〇億元を中央予算に組み入れ、残りの一〇〇億元は地方政府に代行して発行し、同時に中央予算内の経常建設投資を一〇〇億元増やす。二〇〇五年度中央財政の期限切れで償還すべき国内外債務元金は三九二三億四〇〇〇万元で、本年度の補填すべき赤字額三〇〇〇億元を加えると、国債発行の総規模は六九二三億四〇〇〇万元となる。その外、地方政府に代行して一〇〇億元を発行する。中央と地方の財政収支計画を集計して見ると、二〇〇五年度全国の歳入は二兆九二五五億三〇〇万元で、二八九九億一五〇〇万元増え、一一%増となる。全国の歳出は三兆二二五五億三〇〇万元で、三八九四億二四〇〇万元増え、一三・七%増となる。

二〇〇五年度全国歳入の伸びを一一%と設定したのは、一方で中央経済活動会議の定めたマクロ経済の所期目標に合わせるためであり、もう一方で収入減をもたらす諸要因を念頭に置いたためである。「五つの協調」を実現させ、経済体制の改革を支援し、発展を促進し、社会の安定を維持するために、二〇〇五年度には財政・税制の面でひきつづき優遇策を実施し、さらに一連の新しい優遇策を打ち出す。例えば農業税の継続的減免、関税率の継続的下方修正、中国―アセアン自由貿易地域(CAFTA)のような地域間或いは二国間の優遇関税の適用、就業と再就業への助成、西部大開発や東北地区などの旧工業基地の振興及び中部地区勃興の促進、ハイテク産業の発展を奨励するための税収面からの支援などである。さらに輸出による租税還付金を十分計上するとともに、累積した未払い還付金の返済に必要な資金などをも適切に計上するので、財政収入はそれだけ減少することになる。二〇〇四年度の歳入増をもたらした特殊的あるいは一時的要因も情況の変化により弱まりあるいは消失するであろう。それに、ここ数年財政収入の増収ベースが絶えず上昇しており、財政収入の大幅な伸びを望むことは難しくなる。このため、二〇〇五年度全国財政の収入予算は比較的穏健かつ積極的に編成したのである。

(三)二〇〇五年度予算支出の重点

穏健財政を実施する要請に基づき、二〇〇五年度中央財政の支出編成については、協調性を重んじ、長期的視野に立ち、促進とコントロールの両方を使い分ける。経済構造の最適化を促すために、経済・社会事業発展の脆弱な部分へ傾斜すること。調和のとれた社会の構築を促進するために、貧困地区、貧困層及び財政難の末端部門へ傾斜すること。経済成長パターンの転換を速めるために、改革・イノベーションへ傾斜することである。主として次のように計上した。

1.ひきつづき農業、農村と農民への投入を増やし、政策面からのバックアップを強めていく。一つは、農村における租税・費用の改革を深化させる。二〇〇五年、全国広範囲で農業税を大幅に引き下げる。国が貧困扶助事業の開発を推し進めている五九二の重点県で、一律に農業税を廃止する。二〇〇四年度農業税の税率を一ポイント引き下げた省(自治区、直轄市)ではさらに四ポイント引き下げ、すでに三ポイント引き下げた省(自治区、直轄市)ではさらに二ポイント引き下げる。全国にわたって牧畜業に対する課税を撤廃する。これらの政策の実施をサポートするため、中央財政は地方への移転支出を一四〇億元追加する。二〇〇六年から、全国で農業税を全部廃止するとともに、中央財政は規定に基づいて移転支出補助金を与える。昨年度より、全国の農村における租税・費用の改革は過去の「租税・費用の規範化と農民負担の軽減」から、農業税を逐次廃止するようになった。郷・鎮機構、農村の義務教育体制及び県・郷の財政体制などの改革を大いに推進してこそはじめて、農業税撤廃の改革成果が確実なものとなる。二つは、食糧生産の支援に関連する政策の安定と充実をはかる。食糧作付農家への補助金を増やし、食糧主産地の食糧作付農家を対象にした一〇〇億元の直接補助金を減少させないよう確保し、条件の備わった省(自治区、直轄市)では適切にこの補助金を追加してもよい。中央財政は優良品種への補助金を三七億元計上し、前年度より八億五〇〇〇万元増やし、二九・八%増とする。農機具購入の補助金を三億元計上し、前年度より二億三〇〇〇万元増やし、三二八・六%増とする。一方、一部の県・郷の財政難を緩和させる政策として、特別資金を捻出し、食糧大量生産県への支援に振り向ける。三つは、農業科学技術への投入を大幅に増やし、農業科学技術のイノベーション能力を強化し、農業技術普及事業の業務体系をさらに健全化し、重要農業技術普及向けの特別補助金を増やす。四つは、農業と農村のインフラ建設、生態系の整備、農業の総合開発、貧困扶助開発などの面への投入を増やす。五つは、新規増加した教育、文化、医療衛生支出を主として農村に振り向ける政策を引き続き実施する。六つは、引き続き農村労働力の移動・就業及び農民の技術研修・トレーニングをサポートする。

2.一部の県・郷の財政難を緩和させる。農村部での租税・費用改革の成果を定着、発展させ、末端機関の執政能力を高め、末端政府と社会の安定を維持し、バランスのとれた発展を促し、調和のとれた社会を構築するには、中央財政は財政力の弱い地区への移転支出を増やすと同時、二〇〇五年から「奨励をもって補助に代える」構想に基づき、インセンティブメカニズムと制約メカニズムを打ち立て、一五〇億元を追加して地方に対し「三つの奨励と一つの補助」という政策を実施する。すなわち、県・郷の税収収入を増やした財政難の県・郷政府に対し、また、財政難の県へ財力補強の移転支出(中央財政の省に対する財力補強の移転支出の運用を含む)を増やした省市クラスの政府を奨励するのは、県・郷の財政難を緩和させる各クラス地方政府の意欲と能動性を十分に発揮させるためであり、機構の簡素化と人員の削減を推し進めた県・郷政府を奨励するのは、県・郷政府が行政能率を高め、行政コストを引き下げるよう促すためであり、食糧大量生産県を奨励するのは、食糧の安全を確保し、これらの県の食糧生産意欲を引き出すためである。またこれまでに県・郷の財政難緩和に取り組んだ地方を奨励するのは、公平性を具現させ、「成績を上げれば上げるほど損する」現象を避けるためである。同時に、監督・管理を強化し、奨励金と補助金の分配と運用の規範性、安全性と効率を確保する。引き続き財力補強の移転支出を追加し、省の県に対する、県の郷に対する財政管理方式を刷新し、県・郷の財政管理を強化するなどの関連措置を講じて、総合対策を実施し、政策目標が順調に達成されるよう確保する。各レベルの財政が共に努力し、三年ほどの時間をかけて県・郷の財政難の状況が著しく改善されるよう努める。

3.社会発展の脆弱な部分への資金投入を増やす。中央財政は教育、科学技術、医療衛生、文化・スポーツ、ラジオ・放送、計画出産、公安・検察・裁判・司法部門などへの支出を一二九七億九〇〇万元計上し、前年度比一七八億七六〇〇万元増とする。教育事業費増加分は関係規定に則って主として農村に振り向けることとする。義務教育とりわけ農村の義務教育を強化し、引き続き国の西部地区の「二つの基本」の難関突破計画の実施をつづけ、農村の小中学校の老朽化校舎の改築及び現代遠隔教育プロジェクトを推し進める。国の貧困扶助開発事業の重点県において「二つの免除と一つの補助」(義務教育段階にある貧困家庭の小中学生の教科書代と雑費を免除し、寄宿生に生活費補助金を提供すること)を実施するといった政策実施のテンポを速め、今年春の新学期から、国は五九二の国家貧困扶助開発事業重点県における農村貧困家庭の小中学生一四〇〇万人に教科書を無料配布し、雑費を免除すると同時に逐次寄宿生に生活補助金をあたえるようにする。そのため、中央財政は一三億元を、地方財政は二八億一〇〇〇万元を計上する。二〇〇五年度中西部地区において無料の教科書を受け取る農村貧困家庭の小中学生人数は約三〇〇〇万人に達する見込みである。引き続き高等教育を受けている困窮学生への学資援助政策のシステムを健全化する。新しいタイプの農村合作医療のテストを行うための補助金として一〇億元を計上し、前年度比七億四〇〇万元増とする。公共衛生システム整備への支出としては四二億元(エイズ、住血吸虫症、地方病など被害の大きい疾病の予防対策を含む)を計上した。これは前年度比二億元増である。農村における一部の計画出産家庭への奨励・扶助制度のテストに四億元を計上し、前年度より二億元を増やすとともに、中央財政貧困扶助資金から一部の経費を割いて、「少なく生むことによって早く豊かになる」テストをバックアップする。貧困地区に対する公安・検察・裁判・司法の特別補助経費として四八億一〇〇〇万元を計上し、前年度比十六億八〇〇〇万元増とする。このほか、対外交流と経済協力のニーズに基づいて、六九億二〇〇〇万元の対外援助支出を計上し、前年度より八億五〇〇〇万元増やした。

4.就業・再就業と社会保障活動へのサポートに大いに力を入れる。第一に、就業と再就業活動が順調に進むよう引き続きサポートする。中央の定めた財政・租税面の優遇政策を真剣に実施し、再就職の助成資金を引き続き増やしていく。中央財政は再就業支出に一〇九億元計上し、前年度より二六億元増やした。第二に、引き続き都市部の社会保障システムの充実化をサポートする。国有企業の一時帰休者の基本生活を保障する活動を着実にサポートし、それを失業保険へ移行させる作業を基本的に完遂させる。第三に、諸般の社会保障政策を充実させ、実施していく。それには、都市住民最低生活保障制度が充実するようサポートすること、企業に就業した一部退役・除隊軍人幹部の生活困窮問題を適切に解決すること、軍人に対する優遇・救済、配置に関する諸政策を着実に実施すること、農村の「五保戸」(衣、食、住、医療、葬儀など五つの方面から保障を受ける労働能力に欠け、身寄りのない者)の生活保障と都市農村の医療・救助などをしっかり行うことなどが含まれている。それと同時に、自然災害への救援活動を積極的におこない、他の特殊な困難を抱える大衆にも扶助と救助の手を差し伸べる。

5.地方への移転支出を引き続き増やす。基本的公共サービスの地域間の一層の均衡化をはかり、地域間のバランスのとれた発展を促すために、二〇〇五年度中央財政は地方とりわけ中西部地区への移転支出をさらに増やし、租税還付と体制的補助金四四九九億二一〇〇万元のほか、地方への移転支出を六七二四億八七〇〇万元計上し、前年度比七二五億三一〇〇万元増とする。そのうち、財力補強のための移転支出は三〇九三億四三〇〇万元、前年度比五〇八億九八〇〇万元増となる。二〇〇五年度、中央から地方への租税還付と補助支出は合わせて一兆一二二四億八〇〇万元で、中央財政の歳出の五七・一%を占めている。

6.諸般の改革を積極的に推し進める。まず国有企業と国有資産管理体制の改革を一層サポートし、金融と投資体制の刷新を推し進め、鉄道、郵政体制の改革に拍車をかけ、電力、電信・電話、民間航空などの業種の改革、再編を促進し、綿花、化学肥料、砂糖など主要商品の流通体制の市場化に向けての改革などを促す。そのうち、国有企業の政策的閉鎖・倒産資金を一七〇億元計上する。第二に、輸出の租税還付メカニズムの改革成果を定着させ、発展させる。新たな輸出の租税還付額分担メカニズムの規定により、二〇〇五年度中央財政は輸出の租税還付金二八九一億四〇〇〇万元設定し、地方も十分な額を計上し、還付金を遅滞なく支払えるよう確保し、未払い問題が生じないよう努めるとともに、租税還付の過程で一部の地区に見られる輸出品の課税と還付金のアンバランスなどの新しい問題を積極的に検討、解決し、その租税還付メカニズムとやり方を充実させるべきである。第三に、付加価値税の消費型への転換などの改革を積極的かつ穏当に推進する。テスト地区の経験を総括し、措置を充実させてから全国範囲に広める立案を検討する。国内企業と外資系企業の所得税についての「二つの法律」を一本化させるための諸検討や準備作業をしっかりおこない、個人所得税と消費税の関連政策を一段と充実させていく。中国のWTO(世界貿易機関)加盟の公約を真剣に履行し、二〇〇五年一月一日より輸入関税をさらに引き下げ、全体の関税率を一〇・四%から九・九%に下げる。輸入関税政策を充実化させ、WTOの新ラウンド交渉と国際貿易ルールの策定に積極的に参画する。第四に、中小企業への扶助を強化し、中小企業の発展をはかる財政・租税政策体系を逐次確立、健全化し、中小企業が市場競争に平等に参加し、経済活力を増強し、就業者を吸収する良好な外部政策環境を作り出す。

このほかに、わが軍のハイテク条件下における防衛作戦と突発事件への対応能力を向上させ、国家主権と領土保全を擁護するために、国防支出を二四四六億五六〇〇万元計上し、前年度比一二・六%増となる。中央財政はさらに科学的発展観の具現化、改革、発展、安定という大局に奉仕するその他の重点支出を積極的に保障する。

「人民網日本語版」2005年3月17日


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