漢族の人口は全国総人口の約93.3%を占めている。漢族には古代から豊富な歌と踊りがあった。そして歌と踊りの種類も多種多様で、風格もそれぞれ異なっている。
春節の期間の歌と踊り
中国の旧暦の新年は春節とも言われ、漢族の人たちにとっての最も盛大で、伝統的な、民俗的祝日である。春節の期間に民俗的な歌と踊りをあちこちで目にすることができる。そのうち、竜を舞わせること、獅子踊り、ヤンコー踊りなどが伝わっている地域は最も広く、最も人々に喜ばれている。
春節の期間の竜を舞わせる行事は全国的なものである。よく見かける舞わせる竜の長さは約10メートルで、色物のシルクで作った「布製の竜」である。竜を舞わせることは、耳をつんざかんばかりの爆竹の音の中を、10数人の男子が竜の胴体を支える木の取手を高くかかげて、走りながら「転げまわる」、「しっぽを振る」、「柱に絡みつく」などの極めて気迫のある造型の踊りをくりひろげるものである。このほか、いくつかの地域の「竜を舞わせる」行事には自らの特色がある。浙江省ではやっているのは「百葉竜」というもので、多数の女性が両手に雲とハスの花の造型を掲げて優美で叙情的なハスの花の踊りを踊り、ハスの花で長い「百葉竜」をつなぎ合わせ、長い竜が舞わせる人のリードに従って雲の中を舞っているというものである。一部の地域では、竜はワラで作った「草の竜」であり、竜の胴体にはゆらゆらの煙の立つ線香がいっぱい刺されており、春節(旧暦大晦日)の夜に線香の燃えている部分がぴかぴかと光る草の竜は漂う煙の中を舞っているのである。一部の地域では、舞わせる過程で頭を挙げてしきりに周りへ水を吐き出す「地竜」というものである。黄河以南のいくつかの省では、人々に喜ばれている竜を舞わせる様式は、精緻に作った小さな竜を細長い腰掛の上に縛りつけて、3人の男がそれぞれ一本の腰掛の足を挙げて、どらや太鼓ではやし立てるうちに走ったり、跳ねたり、ひっくり返ったりして踊る「細長い腰掛の竜」である。また竜の胴体をいくつかの「区切り」または「節」に分けた「区切り竜」、「五節竜」および単独で舞わせる精緻な「紙の竜」などもある。
獅子踊りは動物の動きを真似た踊りで、1000余年 の歴史がある。新春を迎えるにあたり、爆竹の音の中で「獅子踊りを踊る」ことは、人々が魔除けをし、災禍を免れ、吉祥と福を求めるやり方の一つであり、それは強い芸術的美感を持つものである。
獅子踊りは一般に二人で踊り、前の一人は獅子の 頭を挙げて、両足は獅子の前の両足と見なされ、後ろの人は獅子の胴体を装い、両足は獅子の後ろの両足と見なされ、二人は体に長い毛を施した金色の獅子の毛皮のようなものをかぶり、獅子の動作を組み合わせてくり広げるものであり、迫真感がある。時には一人で扮した一匹の活発で可愛い小さな獅子が獅子踊りの中に現れることもある。獅子踊りを踊る時には武士に扮した人がいることもあり、この人は絹の布を丸い球の形にした「繍球」を手にして踊りを導き、獅子をリードしてさまざまな動作をさせる。獅子踊りを踊る時はまた、太鼓、シンバル、どらなどの打楽器を組み合わせ、熱気に満ちた軽快な雰囲気を作るのである。
獅子踊りの演技には二種の異なったスタイルがあり、一種は獅子がまりを踏んづけ、それをつかまえようとして飛びかかり、走り、何頭かの獅子が重なり合ってさまざまなポーズをとる演技で獅子のどうもうで、咬み合いが好きで、捕えようとするものを必ずものにすることに長じた本性を表わしたものである。いま一種は痒いところを掻き、毛をなめ、転げまわり、毛を振り動かすなどのパフォーマンスで獅子のおとなしくて、敏しょうで、遊びに夢中になる性格を表わしたものである。
獅子踊りは激しい動きからなり、獅子踊りを踊る人は一定の武術の基礎を身につけており、高いところから飛び降り、転げ回り、跳ねたり跳んだり、迫真感のあるパフォーマンスで獅子の雄雄しくてどう猛な性質を表わすことに長じていなければならない。
ヤンコー踊りは春節の期間にくり広げられる祝賀行事の中の大衆的な踊りである。一般的に言って、比較的典型的な春節のヤンコー踊りは多種類の民俗的舞踊芸術形態からなるもので、数十人、百人ぐらいの人からなるヤンコー隊がまず町の大通りに沿って演技を披露し、最後は広場に集まって正式な歌と踊りの公演を行うものである。ヤンコー隊は来年の好天候を象徴する大きな傘を高く掲げる芸人によってリードされ、その後にさまざまな踊りの隊列がついていく形になっている。一番先は「竜を舞わせる踊り」と「獅子踊り」の隊列であり、その次は腰に繋がれている色とりどりの絹の帯を手にして前へ進みながらヤンコー踊りを踊っている隊列であり、続いて腰に太鼓の結び付けた「腰鼓隊」であり、踊り手たちは腰に結び付けた小さな赤い太鼓を打ち鳴らしながら踊り、さらに続いては一組の男女が体にロバ或いは船の造型をくっつけて、新郎が新婦を実家まで送って行くことを表わす踊りであり、その後は「竹馬踊り隊」で、いずれの踊り手はみな芝居の衣装をまとい、くま取りを描き、両足に縛り付けられた半メートルから数メートルまでの長さのまちまちな竹馬の上で踊り、その後ろはツルとハマグリに扮した演技者で、この二人はペアとなって民間の寓話を演じ、一番後ろにはまた伝統芝居の演技隊があり、人々に喜ばれているいくつかの芝居のシーンを演じる、というものである。なお、春節の「ヤンコー隊」にはまたいくつかのその他の演技、例えば雑技、さまざまな人物の造型を見せるなどの出し物がある。
「チャイナネット」2005年6月10日