ウイグル族は主に中国北西部の新疆ウイグル自治区に集中して住んでいる。歌や踊りに長じた民族であり、歌と踊りの種類も多い。
『セネム(賽乃姆)踊り』
『セネム踊り』はウイグル族の最も普遍的な民間の踊りの一つであり、長い歴史がある。
ウイグル族の人々は喜んで祭日を祝い、結婚式を催し、親族や友人たちが楽しく集う時に、いずれもマイシレフの夕べを催すことになり、いつも村の一世帯がホストとなり、その村の老若男女が一緒に参加し、夕べの主な内容は『セネム踊り』を踊ることである。
『セネム踊り』は自由かつ活発で、決まったパターンはなく、踊り手は即興的に踊り、音楽のリズムに合わせることで済み、一人で踊り、二人が向かい合って踊り、三人が一緒に踊るなどどちらでもよい。セネム踊りの特色は主に頭、肩、手首、腰、すね(足首から膝までの部分)の敏しょうな動作と巧妙な組み合わせに現れている。踊りの動作は叙情的で美しく、姿がたおやかで、いろとりどりである。踊りの動作の多くは生活の中から抽出したものであり、例えば帽子を手に載せる形、袖を捲くる形、スカートを引っぱる形、眺める形、手で胸を押さえる形などがそれである。『セネム踊り』を踊る時、一般に中速から次第に速くなり、歌と踊りがクライマックスに達すると、みんなは情熱をこめて「けーなあ!」(がんばれ!)とくり返して叫ぶのである。この時、人々の叫び声、太鼓の音、楽器の音が盛り上がり、熱気に満ちた雰囲気がクライマックスへと押し上げられるのである。
新疆ウイグル自治区は土地が広大なので、各地のセネム踊りには異なった地方色がある。新疆南部地域ではカシュガルを代表としており、この地の『セネム踊り』は比較的明快かつ活発で、叙情的で美しく、ステップが軽快かつ敏活で、体の各部位の動きがかなりきめ細かく、特に手首と踊りの姿勢の変化は極めて豊富である。新疆北部では、イリを代表とする『セネム踊り』はその他の民族の踊りの要素をいくつか吸収しており、動作はあっさりして豪放で、軽快かつスピーディーで、ときには突然静止することやユーモアたっぷりの動作を見せることもある。新疆東部ではハミを代表とし、『セネム踊り』の音楽のテンポは比較的緩慢で、あまり見ることのないリズムも残っており、動作が穏やかで、手首の変化も大きくなく、両手は基本的に半ば握る状態で頭の上で左右に揺り動かすことになっている。
セネムの音楽は各地区の民間音楽をもとに形成された歌と踊りの音楽であり、楽曲の節回しは優美で、情感に富み、リズムも鮮明である。
『ドァラン踊り』
『ドァラン踊り』はウイグル族の長い歴史のある、完ぺきな形の、動作に飾り気がなくて力強い民間の踊りであり、表現しているのは「みんなが狩猟に参加することを呼びかける」、「たいまつをかかげて獣を探す」、「勇敢に獣と格闘する」、「獣を追いかける」、「獣を包囲して殺す」と「勝利の喜び」などを含む「狩猟のプロセス」である。
豊作後の夕べで、人々は輪を作って地べたに坐り、婉曲な琴の音が奏でられると数人の歌手が序曲を歌い、続いて手つづみが力のこもった厚みのあるリズムを打ち鳴らし、みんなが次々と立ち上がって踊りに長じる相手を招いて一緒に踊り、普通は男女がそれぞれ踊ることになっている。つづみの音が速くなったら、踊りも穏やかな状態から激しくなり、二人が向かい合って旋回する状態から分散的な競い合うような旋回の動作となり、最後に一人だけが残って踊り場の中央部でスピーディーに左右に旋回し、最後には奮い立たせられるような、軽快な盛り上がりの中で終了する。
『ドァラン踊り』の伴奏は「ドァランムカム」と呼ばれ、節回しの構造は素朴で、おおらかで勇ましく、濃厚な草原の雰囲気と労働の息吹を保っている。現在、保存されている「ドァランムカム」は9セットあり、いずれも自らの名称がある。
『シャディヤナ踊り』
『シャディヤナ踊り』は祭日と盛大な集会の時にみんなでグループになって踊る民間の踊りの一つであり、新疆全域ではやっており、新疆南部ではさらに盛んである。「シャディヤナ」はウイグル語では「楽しい」という意味である。
『シャディヤナ踊り』は形式が自由かつ活発で、参加する踊り手の人数は限られることがなく、踊りの特徴は楽しく、躍動感があり、軽快で、隊形も固定せず、動作もムリに一致するよう求めず、個人の条件とちゃんと身についた動作に基づいて自由に活用することができるのである。踊りの基本的なステップは小さな跳躍のステップを主とし、両足を交互に使って跳ね上がり、足のうらを軽く着地させるのである。手の動作もかなり簡単で、比較的多くの動きは両腕を上へ挙げ、掌が内外へすばやく振り動かすものである。
「シャディヤナ」の音楽の節回しはかなり弾力的で、段落の長短、フレーズのくり返しもかなり自由で、常に異なった状況に基づいて変化するものである。
「シャディヤナ」の伴奏楽器もかなり自由に選定することができ、楽器が多くても少なくてもよく、長短さまざまなチャルメラおよび音色の異なる、何組かの鉄製の太鼓と大小さまざまな手つづみで合奏してもよく、弦楽器と手つづみで伴奏してもよく、演奏した音楽は情熱的な多声部の効果を持つものである。
『ナズルクム踊り』
『ナズルクム踊り』のルーツはトルファンで、シャンシャン、トクシュン、ハミなどの地域ではやっている。結婚式、めでたい祭日と夕べに披露されるすばらしい出し物である。
『ナズルクム踊り』の多くは男性が二人一組で即興的に踊るものである。踊り手は踊るだけで歌は歌わず、楽隊とそばにいる人たちが歌うことになっている。踊りの内容は一般に歌詞と関係はなく、歌で踊りの伴奏の役を演じることは雰囲気を盛り上げるためのものである。始めは、人々は音楽に合わせてそれぞれ踊り、リズムが速くなるにつれて盛り上がり、それから競い合うような演技に入っていくのである。周囲を囲んで観賞している野次馬たちは規則正しい太鼓の音に合わせて叫び声で演技者たちを元気づけ、興を添える。
『ナズルクム踊り』の動作の特徴は自由で、活発で、楽天的で、ユーモアたっぷりのものである。
『皿踊り』
『皿踊り』はウイグル族の長い歴史のある民間の踊りの一つで、女性の叙情的な踊りであり、動作はたおやかでいろいろな動きがある。
踊り手は頭の上に茶碗を載せ、両手にそれぞれ一つの小さな皿と1本のはしを持ち、音楽のリズムに合わせてはしで皿を叩きながら踊るのである。踊る時、はしで皿を叩くほか、頭に載せている茶碗にお茶を入れるかまたは口に銜えているシャクシの取っ手で頭の上の茶碗をたたき、曲芸のようである。
『皿踊り』の音楽は一般に叙情的な民謡の楽曲を取り入れ、スローなテンポで、節回しに抑揚があって人々の興味をそそるものがある。
『サバイ踊り』
サバイはウイグル族の民間の打楽器の一つである。長さ約半メートルのだ円形の木の棒の上端にブリキをかぶせるとともに、二つの鉄の環をつけ、叩いて演奏する時、右手で取っ手を持って棒の上端でリズミカルに右肩をたたき、前後の方向へ揺り動かし、鉄の環は澄んだ、きれいな音を出す。サバイを手にして踊るこの民間の踊りは『サバイ踊り』といわれている。新疆南部のカシュガル一帯をルーツとし、はやっているもので、男性の踊りである。
ウイグル族は一般にめでたい祭日に楽しい場所で、サバイを手にして歌いながら踊り、特にみんなの気持ちが激高する盛り上がりの中で、演技者が踊り場の中央部でさまざまな姿勢で鉄の環を揺り動かし、さまざまなリズムを奏でながら軽快に踊り、それにやじうまの興を添える叫び声も加わり、楽しい雰囲気はさらに熱烈なものになるのである。
『サバイ踊り』のリズムと動作はいずれも速いもので、リズムが正確なものでなければならない。
『撃石踊り』
「撃石」はウイグル族の民間の打楽器の一つであり、両手でそれぞれ2個の天然の薄い石(現在、多くはすでにスチールまたはアルミニウムの板で作ったものに改められている)を持って手の指を曲げたり伸びたりする動作と手首を揺り動かすにつれて、澄んだ、きれいな音がする。両手で二枚の石を突き合わせながら踊る踊りは『撃石踊り』と言われている。この踊りは新疆南部のアクスゥ、カシュガル、サチェ、ホータンの一帯をルーツとするとともにその一帯ではやり、力強い動作の男性の踊りである。「撃石」は打楽器で伴奏する役割を果たし、リズムは複雑で変化に富み、音がすんでいて気持よい。
「チャイナネット」2005年6月10日