ジン族は広西チワン族自治区防城県のいくつかの島に暮らしており、ほとんどが漁労を主とし、農業を従とする暮らしを送っている。中国で人口がかなり少ない民族の一つである。
「哈祭」の踊り
ジン族は神様と先祖の祭祀、歌と踊りの娯楽と祭日の飲食を結び付ける日を「哈祭」と呼んでいる。「哈祭」の祭祀行事は一般に3-5日も続く。「哈祭」の期間に踊る踊りは祭祀の踊りと労働を表わし、愛をうたう踊りの二種類に分かれている。
最初の日には最も盛大な「神を迎える」儀式を催さなければならず、しかも歌と踊りの内容も最も豊かである。祭祀の儀式が始まると、まず主祭者が人々を率いて神々と先祖を位牌に迎え入れ、続いて神様と先祖へお酒と供え物をささげる。この時、4人のピンクの絹織物の長い服、黒色の長いズボンという姿の、頭にスミレ色のヘア・バンドを縛りつけたジン族の少女が祭祀太鼓のリズムに合わせて踊り出す。神々にお酒を勧める『お酒をささげる踊り』の中で、くり返して両膝が少し震えるような三角形のステップで神様の位牌を供えている机の前で進退をくり返し、同時に両手を胸の前で小指から順次に指を換えて手の首を回転させる「輪指手花」(手の指を順次に転換する手の花)と両手が互いにまつわり、指を順番に回して散らす「転手翻花」などの柔らかくて美しい踊りを披露し、それによって神々への敬愛と崇敬の気持ちを示す。
祭祀のあとの神様を喜ばせる過程において、演技の内容は古代の詩歌、歴史物語を歌う以外に、踊りのパフォーマンスもある。例えば、『茶を摘み、巻き貝を手探りでさがす踊り』は娘さんたちが茶を摘み、巻き貝の漁労をする動作を真似て、労働の喜びを表わす踊りである。『模様入りのげたを交互に歌う』は結婚相手を求める踊りである。
最初の日の儀式のあと、娘さんたちはいま一度神々のために『線香をささげる踊り』を踊り出す。3人の娘さんはそれぞれ左手に3本の火のついた線香を持って、右手でさまざまな動作をし、唱和のリズムの変化に伴って、踊りは厳かなものから明るいものに転じ、人間と神様がともに祭日の喜びを享受することになる。
「哈祭」のその後の数日にもいくつかの踊りの披露がある。例えば、何人かのピンクの絹織物の長い服をまとった娘さんたちが演じる『ランプ踊り』がその一つである。娘さんたちはそれぞれ小さな皿の中に立って燃えているろうそくを頭の上に載せたり、掌の上に載せたりし、太鼓と楽器の伴奏の下で、神々の位牌が供えられている机の前を往復するようにして踊る。踊りの動作は両腕と手の首に集中し、上半身はまっすぐで、両膝がやや曲がり、軽快なステップは腕の上のランプは踊りの動作に伴ってしきりに回り、非常に美しい。
数日に渡る「哈祭」の最後には、人々は「諸神様」を見送らなければならず、このときの踊りは『棒を舞わせる』である。大きな木製の太鼓の低くて重みのある響きを耳にして、人々は村の大木の下に集まり、白色の長い服をまとい、紫色のヘア・バンドを縛りつける少女が、両手でリボンを巻き付けた「棒」を持って太鼓の音に合わせて踊る。この娘さんは小さなステップを踏んで、両手が長さ約40センチの「棒」を体の上下、前後に動かし、同じ動作を東南西北の四方向に向かってそれぞれ1回やり、それによって各方向の悪魔を追い払い、神々と先祖のために道を切り開き、見送ることを示す。木製の太鼓のリズムの変化に伴って、踊りのテンポもますます速くなり、最後にこの娘さんは「棒」を後ろへ遠く投げ出す。この時、人々は前に駆け寄って空から落ちてくる「棒」を奪い取る――ジン族の風俗習慣に基づいて、この魔除けのご利益のある「棒」を奪い取ったら、この年のすべての災いと疫病から免れることができ、思い念通りに諸事万端を成功させることができるというのである。
「チャイナネット」2005年6月10日