歯並びが悪いと、いろいろ不都合が起きる。まず、食べ物をかむ力が低下する。そしてよくかめないと、脳への適切な刺激が伝わりにくいともいわれている。第2に、正しい発音ができなくなることがある。第3に、むし歯や歯肉の病気にかかりやすくなる。第4に、顎の発育の不調和を招く。第5に容貌を損ね、心理的な悪影響を招くことにもなる。
こうした不都合が起こらないようにするためには、乳歯が永久歯に生え代わるときだけでなく、子供のうちからよくかむ習慣をつけて、顎の成長を促すことが必要である。
乳歯は、生後6カ月ごろになると前の歯から生え始め、3歳ごろまでには、上下ともに10本ずつ、計20本が生えそろう。乳歯は、歯と歯の間に多少すき間があるほうが、顎の発達には好ましいといえる。なぜなら、乳歯と永久歯の幅は違うので、すき間がないと乳歯から永久歯に生え代わるときに永久歯の生える場所が十分に確保されないことになるからである。ときどき、糸切り歯(犬歯)が前に突出して、隣の歯と重なってしまっている人を見かけるが、これは糸切り歯が生え代わるときに出てくる場所が十分になったためである。
「乳歯はいずれ生え代わるのだから、むし歯になっても大丈夫」などと、むし歯を放置している方を見かけるが、これは大変な誤解である。例えば、むし歯で奥の乳歯を早く失うと、永久歯で最初に生えてくる六歳臼歯が前のほうに出て、後から生え代わる永久歯の出る場所を狭くする原因にもなるので、注意が必要である。
ところで、歯の大きさはほぼ決まっているが、歯を支える顎骨は後天的に形態が変化する。これは、よくかむことによって決まるので、成長発育の時期に柔らかいものばかりを食べてあまりかまないと、顎の成長が妨げられ、歯並びを悪くすることにつながる。
いずれにしても歯並びが悪くならないように、子供のときから心がけることが大切である。
「CRI」より 2006年1月5日