2006年3月14日午前14時、第10期全国人民代表大会の閉会後、温家宝総理は人民大会堂の三階ホールで記者会見をおこない、内外記者の質問に答えた。
日本人記者の質問に次のように答えた。中日関係の発展は確かに多くの困難に直面している。これはわれわれの望まないところである。こうした状況をもたらした原因は中国側にあるのではなく、日本のトップにある。日本のトップは度重ねて第二次世界大戦のA級戦犯を合祀している靖国神社を参拝し、中国人民およびアジア人民の感情を傷つけ、またこの問題が解決されなければ、中日関係は順調に発展することはむずかしいと思う。中日は近隣であり、世々代々の友好を発展していくことはわれわれのゆるぐことのない外交方針である。中日関係の発展は必ず「歴史を鑑とし、未来に目を向ける」という中日間の三つの政治文書の原則を順守しなければならない。
中日関係をさらに促進するため、温家宝総理は三つの点を強調した。一、政府間の戦略的対話を継続して、中日関係に影響を及ぼす障害を取り除くこと。二、民間交流を強化し、相互間の理解と信頼を増進すること。三、両国間の経済貿易関係を安定させ、発展させ、互恵でともに利益を得る協力を拡大すること。
中国はすでに責任を負う国となり、強大になっても覇を唱えない
中央人民放送局記者の中国の平和発展の道を歩むことに関する質問について、中国が平和発展の道を歩むことを堅持するのは、中国の伝統文化、発展の必要、国益によって決まるものであり、中国はすでに責任を負う国となっている。
温総理は中国の平和発展の道をめぐり以下10点を語った。
一、 中国は改革と建設を通じて、13億人の食糧の問題の解決に成功し、2億人あまりの人たちの貧困問題を解決した。中国の発展と安定は世界の平和と繁栄に大きく貢献するものである。
二、 中国は建設の実践を通じて科学的発展の道を模索してきた。これは即ち省資源、環境保全をめざすことである。中国の発展は世界に影響を及ぼすことはない。
三、 中国は独立自主の平和外交政策を実行し、イデオロギーでものを区別せず、いかなる国といかなる国家グループとも盟約を結ぶことはなく、平和共存の五原則を踏まえた上ですべての国と平和的につき合うことを願っている。
四、 中国は隣をもって善となし、隣をもって伴となすという外交政策を実行し、周辺国と友好的な協力関係を発展させていく。
五、 中国は国際システムの参与者であり、それを維持する者である。われわれは100以上の国際組織に加入しており、300近くの国際条約に調印している。われわれは国際社会と一緒に国際政治、経済の新たな秩序をつくるために、ともに努力していきたい。
六、 中国は世界平和を断固維持する国である。われわれは朝鮮半島核問題、イラン核問題などの地域と国際間の重要な問題について一貫して平和交渉を促す立場をとってきた。中国は非伝統的な安全事案に対し、国際的な重要な自然災害に対しても協力的な姿勢で対処してきた。昨年、インド洋スマトラ沖大地震による津波が発生した際、われわれは最大の国際援助活動を組織した。
七、 中国はテロリズムと核拡散に断固反対する。
八、 中国は世界貿易機関(WTO)加盟後、みずからの承諾を確実に履行している。
九、 中国自身が発展途上国であるにもかかわらず、国連のミレニアム発展目標を積極的に実行している。われわれはすでに44の後進国の200億人民元相当の債務を減免し、3年後には後進国に100億㌦の特恵借款を提供することになっている。中国が提供する援助はいかなる付加条件もついていないものである。
十、 中国は自衛の国防政策を実行している。中国の国防予算の限られた増加は、まったく軍隊の条件の改善と自衛能力を向上させるためである。われわれの外交政策は透明なものであり、国連の平和維持部隊に参加する以外、世界中のどこへも派兵することはなく、いかなるところも占領したことはない。中国は強大になっても、いかなる者をも干渉せず、いかなる者にも影響力を行使することはせず、覇を唱えることはしない。
中国とインドの関係は新しい歴史的段階に
温家宝総理は外国の記者の質問に答えた際、「2005年にインド訪問に成功し、中国とインドは平和と繁栄に向けて戦略的なパートナーシップを結び、中国とインドの国境問題の解決をめぐる政治的な指導原則に調印し、両国の経済・貿易の発展の五カ年計画を作成した。今年は『中国とインドの友好の年』であり、そのなかの重要な内容は両国の文化面での交流である」と語った。
今や、中国とインドの関係の発展は新しい歴史的段階に入っている。中国とインドは正真正銘の強国となった時に、それぞれの民族精神と姿を十分に世界に示すことは、まさに「アジアの時代」を宣することであると言えよう。その時には、両国間の兄弟のような友情は存在し続け、この二つの東方の民族の心に根づくことを願っている。
台湾当局の指導者は道義にもとり、支持を失う
台湾問題について記者の質問に答えた際、中国国務院の温家宝総理は次のように語った。
中国には「道義にかなえば多くの支持が得られ、道義にもとれば支持を失う」ということわざがある。台湾当局の指導者は「三通」(通航、通商、通信)の開放を妨げ、台湾海峡の両岸の経済・貿易の往来を減らし、さらに制限を加えようとしている行為は、台湾省の経済の発展にマイナスな影響をもたらし、台湾同胞の利益をも損うことになる。
台湾当局の指導者はごたごたをつくり出し、台湾省の人々の視線をそらせ、台湾省における内部の紛争と台湾海峡の両岸の情勢に緊張感をもたらした。台湾当局の指導者はわれわれ中華民族の歴史を忘れ、愚かにも中華民族の血のつながりを遮断し、両岸の骨肉のような間柄を断ち切ることをたくらんでいるものである。台湾当局の指導者の行為は両岸の「平和、安定、ともに利益を得る」という趨勢にもとるものであり、台湾同胞を含む中国人全体の願いに反し、必ず「道義にもとれば多くの支持を失う」結末に終わることであろう。
台湾当局の指導者が「国統会」と「国統綱領」を撤廃しようとしていることは「一つの中国」の原則に対して公然といどみ、台湾海峡両岸の平和と安定をゆゆしく破壊し、極めて大きな冒険、危険、ペテンである。
台湾当局の指導者はこれまでよりさらに「台湾独立」の分裂活動、「法理で台湾の独立」を目標とする「憲法」の改正プロジェクトを進めていることについて、われわれは警戒しなければならない。われわれは情勢の発展を密に注目し、すべての結果に対応する準備を進めている。
われわれは一貫して明らかに「一つの中国」の原則を堅持し、つまり、世界には中国は一つしかなく、台湾海峡の両岸はこの一つの中国に属する。中国の主権と領土を分割することは決して許さない。
「一つの中国」の原則に基づき、台湾海峡の両岸が協議と話し合いの形を通じて台湾問題を解決することをわれわれは主張している。これは完全に平等なものであり、「誰か誰を呑み込む」という問題は存在しない。
ここで重ねて言明したいのは、いずれの政党でも、どの人物でも、以前に何をしたとしても、どんな言論を発表したとしても、「一つの中国」の原則を堅持するならば、われわれは対話と話し合いを願っている。民進党にしても、「台湾独立の綱領」を放棄しさえすれば、われわれは真正面から反応を示し、接触と話し合いを行うことにしている。
われわれは平和の形で「台湾問題」を解決するための努力を放棄しないが、「台湾独立」の分裂活動に反対する立場も揺るぐことはなく、台湾を祖国から分裂することを決して許さない。
「第11次五カ年計画」、大陸部と香港の共同の繁栄を促す
温総理は、大陸部の発展と香港の発展の関係、香港の発展が中国全般の政治・経済の発展において果たす役割についての質問に、次のように答えた。
香港祖国復帰からすでに9年間が経った。香港の資本主義制度は変わってはおらず、法律も基本的に変わっていない。香港の人々の自由と権利はしかるべき保障を受けている。アジアの金融危機による困難を克服した香港は、経済が新たな発展をとげ、民生も逐次改善されている。
世界の航空・海運センター、金融センター、貿易センターである香港は、世界で最も自由で開放的な経済システム、かなり整備された法律と制度、望ましいビジネス環境、国際市場との広いつながり、多数の国際経済に精通した人材などの優位性を持っており、これらの優位性は、香港の発展にとってはいうまでもなく、大陸部の発展にとっても取って代わることのできない重要な役割を果たしている。
ここ20年来、香港はすでに大陸部にとっての四番目の貿易パートナーと最大の外資誘致先となっている。「第11次五カ年計画」の実施にともない、香港のこれらの優位性と役割はさらに大きく発揮されることになろう。
近年、大陸部と香港との間でも最も密接な経済・貿易関係(CEPA)が結ばれており、「メード・イン・ホンコン」の製品が大陸部に輸出される際、ゼロ関税の政策が実施されている。大陸部は、27のサービス貿易の分野を開放しており、特に金融、会計、法律などの分野では、市場参入のためにさらに便利な条件を提供している。
大陸部では、市民の香港への個人旅行が許可された都市はすでに38に達し、今年のメーデーまでには、また5都市を増やすことになっている。香港の銀行が取り扱う人民元業務の範囲も絶えず拡大している。香港と大陸部をつなぐインフラ施設は、着工したばかりのものもあるし、工事が急ピッチに進められているものもある。とにかく、「第11次五カ年計画」の実施及び大陸部と香港との間に結ばれた最も密接な経済・貿易関係は、大陸部と香港がともに繁栄し、発展することを促すことになろう。
もう一つ指摘しておきたいが、香港の経済の発展と民生の改善は、香港の同胞たちが「基本法」の原則に基づいて、民主政治の建設を逐次推し進めていくことにも役立つことになろう。
社会主義の新農村の建設について、3つの考え方
温総理は、社会主義の新農村に関する政策についての質問に、次のように答えた。
農業・農村・農民の問題は、現代化建設の全局にかかわる根本的な問題である。社会主義の新農村の建設という政策の策定には、次の3点のより深みのある考え方がある。
一、 社会主義の新農村を建設することは、現代化建設の全局において、農業と農村に関する仕事がさらに突出した地位に位置づけられるということを意味する。工業が農業を、都市が農村をサポートすることを通じて、農村の小康(ややゆとりのある)社会の構築や農業の現代化の発展を促すことは、現代化建設の全般における重要な一環である。もう一つ強調したいのは、農業と農村の建設がうまく進めば、内需と消費を牽引することが可能となり、中国の経済発展の基盤をさらに強固なものにすることになろう。
二、 社会主義の新農村の建設において、現代的な農業の発展と農業のトータルな生産能力の向上に着目すべきである。農民の生産と生活の条件の改善を目指すことこそ、われわれが農村のインフラ整備と社会諸事業の発展を強化していく目的である。
社会主義の新農村の建設において、二つの根本的な原則を堅持しなければならない。①農民の民主権利、とくに土地の請負いと経営の自主権を保障すること。農民の意思を尊重しなければならず、強制的な命令で農民に従わせてはならない。②農民が確実に利益を手にすること。農民の物質面と文化面の生活のレベルの向上を終始貫徹し、政府の活動を評価する上での基準ともすべきである。政府活動の実効を重んじ、形式主義に走ってはならない。
農民の土地経営権を保障、永遠に変わらない
温家宝総理は、中国の耕地保護政策についての質問に答えた際、次のように語った。
中国では、必ず最も厳格な耕地保護制度を実行すること、必ず農民の土地に対する生産・経営権を保護すること、農民の土地の占用には必ず補償を与えることをするようにしなければならない。また、土地譲渡料は主に農民に与えるべきで、むやみに農民の土地を占有することは必ず法律に基いて懲罰しなければならない。
中国の農民問題のカギは土地の問題である。中国の改革は農村から始まり、最も重要なのは土地の家庭請負制の実施であった。土地は集団に属しているが、生産と経営の権利は農民に属しており、これは大きな特徴の一つであり、また優位性の一つでもある。
われわれは農民に長期的な土地経営権の保障を与えるといっており、15年変わらず、30年も変わらず、永遠に不変である。
揺るぎなく改革開放を推進 逆戻りは許されない
温家宝総理は記者の質問に答えた際、揺るぎなく改革開放を推進し、中国の特色のある社会主義の道を歩むという姿勢を示した。さらに、前進の道に困難があるにしても、中断することができないし、逆戻りも許されないと語った。
温家宝総理はまた次のように語った。
両大会は人々の幅広い関心を集めており、彼らは代表、委員やメディア、インターネットを通して、政府の仕事について数多くの提言と提案を行っており、人民網、新華ネット、捜狐ネット、新浪ネット及び中央テレビ局国際ネットなどの大まかな統計によると、政府への提言及び総理への質問は数十万件に達している。
私は、人々の提言から政府への期待や励ましの気持ちを感じ取っており、さらに人々の自信とパワーをも感じ取っている。われわれの国と民族は新しい歴史のスタートラインに立っており、新しい課題に直面している。われわれには、いっそうの冷静さ、いっそうの辛抱強さ、いっそうの努力が必要である。
冷静さが必要というのは、われわれのすでに収めた成果は、近代化の過程で踏み出した第1歩に過ぎず、今後においてもかなり長い道のりがあり、多くの困難が待ち伏せているという認識を持たなければならないことである。情勢がいくらか良くなった時には、特に慎むべきである。「常に危険な事態を招く原因を考えれば、安定を保つことができ、常に騒ぎの原因を考えれば、平和を保つことができ、常に亡国の原因を考えれば、国の長期的な繁栄を保つことができる」(『新唐書·魏征伝』の言葉)。
辛抱強さが必要というのは、ゆるぎなく改革開放を推進し、中国の特色のある社会主義の道を歩むことである。前進の道には困難はあるが、中断することはできないし、逆戻りも許されない。
努力が必要というのは、すなわち、われわれはさまざまな困難やリスクに対応する心構えを持つべきという意味である。予測できるものもあれば、予見できないものもあるからである。われわれの民族が活力に満ちているのは、その堅忍さ、ふとう不屈の精神、刻苦奮闘の精神があるからである。われわれは、長期にわたり努力しつづける心構えを持つべきである。
商業銀行改革は2つの原則を堅持 損失を回避
温家宝総理は、中国の国有商業銀行改革について質問に答えた際、次のように語った。
国有商業銀行改革の目標は、近代的商業銀行制度を作り上げることにある。われわれは公有制実施のさまざまなパターンを模索しており、株式制はそれを効率的に実施する上でのひとつのパターンである。
株式制の導入は目的ではなく、その目的はコーポレートガバナンスの改善、先進的な管理のノウハウを参考にすることによって、国有商業銀行の管理のレベル及び経営効率を高めることにある。商業銀行改革の過程では、われわれは2つの原則を堅持すべきである。
1、国による絶対的な持株であること。これによって、経済の死活にかかわる分野をコントロールする能力を保ち続け、金融危機を防ぐこと。
2、改革の全プロセスにおける管理を強化し、内部コントロール及び監視・管理システムを健全化し、国有資産の流失を防ぐこと。
中国の国有商業銀行改革は進行中であり、一定の成果が見られたと言えよう。われわれは引き続き改革を推進すると同時に、随時に経験を総括し、損失、特に大きな損失を回避すべきである。
人民元為替レート改革にはサプライズはない
温家宝総理は、人民元為替レート改革について記者の質問に答えた際、人民元には自律的に上下に変動する空間と力があり、今後においてはもうサプライズはないと語った。
温家宝総理はその際、「政策的かつ一回限りの人民元為替レートの切り上げあるいは切り下げはもうありえない。今後においては、もうサプライズはない」と語った。中国は引き続き人民元為替レート形成メカニズムを健全化させ、外国為替市場を拡大し、人民元為替レートの弾力性を向上させることに力を入れる。現在のシステムでは、市場の変化によって、人民元には自律的に上下に変動する空間と力があるとしている。
昨年7月に中国は人民元為替レート形成メカニズムの改革を行い、単一的な人民元ドル連動制を改め、市場ニーズの変化に基づいた管理された変動為替相場制を確立した。人民元為替レート改革の実施以来、すでに半年が過ぎ、ドルが堅調である状況のもとでも、人民元はドルに対して3%近く上昇しており、ユーロと円に対する上昇幅はさらに大きいと語った。
温家宝総理:教育事業を一般の人々に向けての教育にする
教育問題について、温家宝総理は記者会見の席で、「中国が義務教育と職業教育を最も重要な位置におくのは、わが国の教育を一般の人々に向けての教育にし、人々に教育を得させることを目指している。世界では大多数の人々は一般の人々であり、その人たちの資質はその国のトータルな国民資質を決定するものである。中国には13億人の人口があり、そのうちの9億人は農民であり、一般の人たちの比率は他国よりも高い。教育は現代化国家の基盤であり、国の発展は国民全体の資質を向上させることによって実現するものである。われわれは全国において義務教育を強化し、普及させ、職業教育を大いに発展させ、高等教育の向上に努める枠組みを構築し、この三つの面での成果を目指すことになる」と語った。
インターネットに対する管理は、国際慣行に合致するもの
温総理は、インターネットに対する管理についての質問に答えた際、「人民の政府として、インターネット上に流れる人々の意見を含む人々の民主監督を受けるべきである。人民の監督があるからこそ、政府は怠ることなく仕事をすることになるのである。人々のすべてが責任をまっとうしてこそ、諸事業の順調な発展が可能になる」と述べ、さらに次のように語った。
まず、二つの名句を引用したいが、一つはバーナード・ショーがかつて言った「自由は責任を意味する」ということ、いま一つは、アメリカのジャーナリストのストランスキー氏の名言「民主について語ろうと思うなら、部屋に閉じこもってアリストテレスの本のみを読むだけではだめだ。ときどき地下鉄やバスに乗ってみなくてはならない。」という二句である。
中国のインターネット事業はずっと急速な発展ぶりを保っており、現在、インターネットユーザーはすでに1億を上回っている。中国政府は、インターネットの発展と広い範囲での応用をサポートしている。
「憲法」の規定によれば、すべての公民はインターネットを利用する自由と権利を持っている。ところがそれと同時に、すべての公民は法律と秩序を自覚をもって守り、国家、社会と集団の利益を守らなければならない。中国は法律に基づいてインターネットを管理していると同時に、業界の自律や自己管理をも提唱している。中国のやり方は国際慣行に合致するものであり、中国は世界のインターネット管理に関する経験を参考することを非常に重視している。
サイトは正しい情報を発信すべきであり、人々をミスリードするようなこと、ましてや社会秩序に悪影響を及ぼすようなことはしてはならない。これらの規範は職業モラルとして、順守しなければならない。
「チャイナネット」2006/03/14
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