だが、環境保護活動家はこうした説明を受け入れることはできない。これは、こうした企業の環境保護管理体制に問題があったことを説明するだけなのだ。いち早く「中国の特色」を身につけ、親会社を下回る環境保護基準を採用する多国籍企業もある。したがって、こうした企業の環境保護制度の信頼性も低下する。
吉林省環境保護局・監督管理処の趙処長は「多国籍企業が中国で環境保護基準を緩める現象は確かにある。主に大きな環境と関係があり、一部の地区は企業誘致のため環境保護への要求を緩めている」と指摘する。
また、中国の環境基準は一般に海外より低く、世界では欧州連合(EU)や米国の軍需産業の基準が高いとされる。上海市環境保護局のある処長によると、現在中国の工業廃水の測定ではCOD(有機物汚濁の総合指標)が中心だが、海外では電気メッキ生産には重金属の濃度を重視するなど、各業種の特性に応じた異なる指標が適用されている。
馬氏は「1つには、多国籍企業が世界で同じ環境保護基準を守ってこなかったこと、もう1つには中国の環境保護のエンフォースメントの弱さがある。競争の視点から見ると、同業種の中国企業がより低い環境保護基準を採用しているため、コスト面で損をしないように、多国籍企業は環境保護に大規模な投資を行う必要はないと考える」と指摘する。
上海市環境保護局の職員は「世界の一部の地域からの汚染の移転も見られる。産業構造の転換の中で、汚染度が高く、環境への悪影響が強い生産部門が、発展途上国へと流れている。こうした国々は経済成長の必要に迫られて、これを歓迎することが多い」と言う。
リストアップされた多国籍企業の大部分は、親会社と同じ環境保護基準を採用していると主張する。アメリカン・スタンダード陶瓷公司の副総経理も親会社と同じ環境保護基準を採用していると強調する。
上記の違反企業には、環境保護で有名なブランドで、中国で良いイメージを持つ企業も多い。松下電器(中国)公司は、今年3月27日に他の企業66社とともに、環境保護など12分野で自らを厳しく律する「企業の社会的責任に関する北京宣言」に調印した。3M中国公司も中国で数多くの環境保護プロジェクトに参加している。別の企業の公式サイトは、1990年以降「環境保護賞」を設け、環境保護事業への全従業員の貢献を奨励しているとしている。
環境保護活動家がさらに懸念するのは、多国籍企業に対する監視体制だ。「グリーンピース」の中国部門を取り仕切る盧思騁氏は「地方政府が外資導入を望むため、その下の地方環境保護部門が、多国籍企業の汚染問題において大きな制約を受けていること、多国籍企業は中国企業と比べて姿勢が良いため、国家観光保護総局の重点的な注意対象とならないことなどから、監視体制に隙間が生じている」と指摘する。
「人民網日本語版」2006年10月30日